吉元よしもと由美ゆみの『ひと・もの・こと』

『令れい和わ』〜優やさしさでつながる時代じだいへ

いよいよ、平成へいせいから令れい和わへ。御代みよが変かわる瞬間しゅんかん、それは大晦日おおみそかのようです。除夜じょやの鐘かねの最初さいしょの音おとを聞きくような緊張きんちょう感かんがあります。１０連休れんきゅう中ちゅうの１日にち、いつもと変かわらない１日にちですが、日本にっぽんにとっては御代みよが変かわる大事だいじな１日にちです。

『令れい和わ』という元号げんごうについて、この１ヶ月かげつ近ちかく、SNS上じょうで多おおくの意見いけんが出だされました。『令れい』という漢字かんじに違和感いわかんを持もつ人ひとも多おおかったようです。

新しん元号げんごうの典拠てんきょが『万葉集まんようしゅう』であると知しったとき、元号げんごうの制定せいていに国文学こくぶんがく者しゃの中西なかにし進すすむ先生せんせいが携たずさわっていらしたのではないかと思おもいました。大学だいがく時代じだい、中西なかにし先生せんせいは国文こくぶん科かで教鞭きょうべんをとっていらっしゃいました。私わたしは英文えいぶん科かだったので授業じゅぎょうを聴きいたことはなかったのですが、ここ数すう年ねん中西なかにし先生せんせいの著書ちょしょを何なん冊さつも読よみ、日本にっぽん、日本語にほんごの美うつくしい在あり方かたに心しんを震ふるわせました。

まず、最初さいしょに感かんじたのはその響ひびきの美うつくしさ。『れいわ』という発音はつおんは優やさしく、女性じょせい的てきな響ひびきがあります。響ひびきは、空気くうきを震ふるわせて伝つたわってくるもの。波動はどうです。その優やさしい響ひびきは、優やさしい波動はどうとなって伝つたわっていく。実際じっさいに目めに見みえるわけではありませんが、これからの時代じだい、日本にっぽんはその優やさしい響ひびきの中なかにあるのです。

『令れい』という字じを見みて、命令めいれい、司令しれいと、権力けんりょくに押おさえつけられる印象いんしょうを持もった人ひとたちも多おおくいます。中西なかにし先生せんせいの説明せつめいによると、「『令れい』という字じは麗うるわしいということを表あらわす究極きゅうきょくの言葉ことばで、『麗うるわしい』という言葉ことばは、乱みだれていない、破綻はたんしていない、整ととのっている」という意味いみを持もつそうです。『令れい』とは、善よいという意味いみであり、善ぜんは儒教じゅきょうの最高さいこうの理念りねんでもあります。また「令れいは律りつなり」という定義ていぎがあり、これが『命令めいれい』につながり、反発はんぱつの意見いけんの原因げんいんです。しかし、命令めいれいとは本来ほんらい善ぜんなるものであるという基本きほんがある。『命いのちの令れい』です。

命いのちという漢字かんじは、口くちと令れいからできています。古代こだい文字もじで記しるすと、令れいという字じは儀礼ぎれい用ようの帽子ぼうしをかぶり、ひざまづいて神かみの御告おつげを受うける人ひとの形かたちを表あらわしているそうです。口くちは、神かみへの祈いのりを入いれる口くちを表あらわしている。命いのちという漢字かんじには、天てんから与あたえられたものという意味いみがこめられているのです。このように漢字かんじをきちんと深ふかめていくと、令れいという字じの意味いみがより伝つたわってきます。

『和わ』についての先生せんせいの解説かいせつは明解めいかいです。

「一人ひとりひとりがそれぞれの価値かちを持もっていてそれぞれを生いかしながらみんなが仲良なかよしであるということが『和わ』です」

そして、戦争せんそうを体験たいけんした日本人にっぽんじんには『和わ』を世界せかいに訴うったえる使命しめいがあると述のべています。

元号げんごうを廃止はいしし、西暦せいれきに統一とういつするのがいいという意見いけんもあります。しかし、元号げんごうは一ひとつの文化ぶんかです。国家こっか、民族みんぞくが古代こだいから伝つたえ、つなげてきた文化ぶんかを、合理ごうり化かという名目めいもくで廃止はいしするなど愚おろかなことです。

『令れい和わ』という元号げんごうは、私わたしたちに母語ぼごである日本語にほんごの美うつくしさと、言葉ことばに託たくされた文化ぶんか、そしてメッセージを知しるきっかけを与あたえてくれました。『令れい』にこめられた尊敬そんけいの気持きもち、人ひとを大切たいせつにする気持きもち。令れい和わという時代じだいは、まさに一人ひとりひとりが担にない手てとなり、その気持きもちでつながっていく時代じだいなのです。

40代だい 「泣なきたい日ひ」の頑張がんばり方かた: 一生いっしょう素敵すてきへのカギはここにある!

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[文ぶん・構成こうせい／吉元よしもと由美ゆみ]