高野文子の代表作『絶対安全剃刀』
世の中は面白いことなんか何もなく、退屈なことばかりだと思って自殺を考える少年の前に、そんな少年をからかいながらもときどき諭そうとする眼鏡をかけた少年がいます。
死に装束を着こんだ自殺願望者の少年が、眼鏡の少年と共に迎えた結末とは……。
- 著者
- 高野 文子
- 出版日
高野文子が初めて出版した単行本であり、1977年から1981年にかけて各雑誌に発表された短編漫画17編が収録されています。それぞれのストーリーに繋がりがあるわけではありませんが、高野文子の世界を堪能できる1冊です。
一読ではとっさに掴みきれない作品の意味を感じようとして、何度でも読み返したくなってしまう、そんな魅力があります。はじめて自分なりの解釈に至った時に、様々な気持ちが浮かんでくるのも面白いところです。
ほのぼのとした優しい雰囲気かと思いきや、時々、ドキッとさせられるようなものがあります。独特の感覚がクセになり、ずっと手元へ置いておきたくなる1冊です。
一つ屋根の下に暮らす4人の科学者『ドミトリーともきんす』
寮母の「とも子」と娘の「きん子」の二人が営むのが学生寮「ドミトリーともきんす」。そこに住んでいるのは、湯川秀樹、朝長振一郎、牧野富太郎、中谷宇吉郎という4人の学生でした。彼らの名前はいずれも有名な科学者たちのものですが、ここに住んでいる4人はまだ学生で、科学者の卵です。
後に科学者として名を馳せた彼らは、科学にはあまり縁のない一般の人向けの随筆を執筆しています。そんな随筆を、それぞれの科学者の目を通して紹介する読書案内漫画の決定版です。
- 著者
- 高野 文子
- 出版日
- 2014-09-24
湯川秀樹、朝長振一郎、牧野富太郎、中谷宇吉郎の4人がプロローグと11編の短編を通し、自身の著作の内容を踏襲するように物語は進んでいきます。
科学者が自らの著作を紹介するような1冊ですが、決して科学の専門誌というわけではなく、科学に詳しくない人でも面白く読むことができるでしょう。本の紹介だけではなく、4人の科学者ととも子さんときん子の交流も、本作の面白いところです。
読書案内漫画といっても、高野文子の世界は健在。不思議な雰囲気を、ぜひ味わってみてください。
高野文子が描く、豊かな暮らし『るきさん』
バブル真っ盛りな時代の中、たぶん三十路で独身のるきさんは、在宅で保健医療の書類を処理する仕事をしています。
事務処理能力に長けるるきさんは、1ヵ月分の仕事を僅か1週間で片付け、残りの3週間は趣味の読書や切手の収集をするなど、自由気ままに過ごしていました。
そんなるきさんの家に入り浸るのは、彼女の親友でOLのえつこさんは、会社の若い後輩に片想い中。バブルの時代が持つ価値観とは少し違うけど、自分の価値観を大切にマイペースに生きる2人の日常系漫画です。
- 著者
- 高野 文子
- 出版日
- 2015-06-25
1988年から1992年にかけ、女性向け情報雑誌『Hanako』に連載、後に単行本化された作品です。
主人公のるきさんは、仕事をさせたら1ヵ月分を1週間で片付けられるほど優秀ですが、だからといって仕事にそれ以上を求めず、仕事を終えた後の残り時間は趣味に浸かったり気ままに生活したりしています。
るきさんの暮らす時代はバブル真っ盛りで、多くの人が華やかに暮らしていた頃です。そんななか、マイペースを貫き平凡に生活するるきさんの姿は、違う時代に生きる読者でも共感や憧れを抱くことができるでしょう。
るきさんとしょっちゅう一緒にいるのは、えつこさんです。2人は仲良しですが、べったりとした間柄ではなくどこかさっぱりとしていて、それも読者に気持ちの良い読後感を与えてくれているのかもしれません。
世の中の価値観に染まらず自分の価値観を貫き、贅沢ではない豊かな生活を送るるきさんに、ぜひ一度会ってみてください。