明治めいじから昭和しょうわにかけ、陶芸とうげいや書しょ、日本にっぽん画が、料理りょうりなど幅広はばひろい分野ぶんやで才能さいのうを発揮はっきした北大路魯山人きたおおじろさんじん(きたおおじろさんじん)(1883～1959年ねん)。希代きたいの芸術げいじゅつ家かの創作そうさく世界せかいを紹介しょうかいする企画きかく展てん「魯山人ろさんじんクロッシング」が、茨城いばらき県けん笠間かさま市しの県けん陶芸とうげい美術館びじゅつかんで開ひらかれている。展示てんじされた陶磁器とうじきや書画しょがなど66件けんは、いずれも総合そうごう商社しょうしゃの関彰商事せきしょうしょうじ(同どう県けん筑西市し)のコレクション。40年ねん以上いじょう公開こうかいされず大切たいせつに収蔵しゅうぞうされてきた名品めいひんで、魯山人ろさんじんの知しられざる美びを伝つたえている。

京都きょうとに生うまれた魯山人ろさんじんは、10代で「書しょ」と出合であい、独学どくがくで実力じつりょくをつけ、頭角とうかくを現あらわす。上京じょうきょうし、書家しょかとして活動かつどうする傍かたわら、食しょくに関かんする見識けんしきを深ふかめ、21年ねんに会員かいいん制せい料亭りょうてい「美食びしょく倶楽部くらぶ」を創業そうぎょう。後のちに会員かいいん制せいの高級こうきゅう料亭りょうてい「星岡ほしおか茶寮さりょう」を開ひらき、顧問こもんとして料理りょうりや食器しょっきの演出えんしゅつに当あたった。27年ねん、40代だい半なかばで、茶寮さりょうで使つかう器うつわ作づくりに乗のり出だす。北きた鎌倉かまくらに「星岡ほしおか窯かま」を築きずき、陶磁器とうじきを本格ほんかく生産せいさん。以後いご、多彩たさいな技法ぎほうで独創どくそう的てきな作品さくひんを生うみ出だし、海外かいがいでも高たかく評価ひょうかされた。

今回こんかいの展示てんじでは、同社どうしゃが40年ねん以上いじょう収蔵しゅうぞうしてきた魯山人ろさんじんの名品めいひん66件けんを一挙いっきょに公開こうかい。陶磁器とうじき57件けん、漆器しっき2件けん、書画しょが5件けん、篆刻てんこく(てんこく)・濡額(ぬれがく)2件けんを紹介しょうかいし、魯山人ろさんじんの初期しょきから晩年ばんねんをたどっている。生前せいぜんの個展こてんの出だし作品さくひんをはじめ、70年代ねんだいの展覧てんらん会かいや著作ちょさくに登場とうじょうする作品さくひんも複数ふくすう含ふくまれており、専門せんもん家かの研究けんきゅうの観点かんてんからも意味いみ深ふかい内容ないようだ。

展示てんじの中心ちゅうしんとなる陶磁器とうじきで、存在そんざい感かんあふれるのが「伊賀いが釉木(いがゆうこ)の葉は鉢ばち(はばち)」。幅はば約やく52センチ、奥行おくゆき約やく44センチと陶芸とうげい作品さくひんの中なかでも破格はかくの大おおきさだ。盛もり上あがる葉脈ようみゃく、側面そくめんの削けずり痕こん、口くち縁えんのつくりなどから、魯山人ろさんじんの制作せいさく場面ばめんが浮うかび上あがる。

皿さらや椀わん(わん)の組くみ物ものの器うつわにも魯山人ろさんじんの強つよい精神せいしんが感かんじられる。鉄てつ絵えのブドウを描えがいた「絵え瀬戸せと葡萄ぶどう図ず四方しほう皿さら(えせとぶどうずよほうざら)」は5客きゃくの四方しほう皿さらで、子孫しそん繁栄はんえいを意味いみするブドウの房ぼうと葉はが5枚まいそれぞれに違ちがいをもたせ、力強ちからづよくも愛あいらしく表現ひょうげんされている。そのほか、朝焼あさやけの富士ふじを描えがいた絵画かいが「富士ふじ朝ちょう暾映嶽だけ図ず(ふじちょうとんえいごくず)」、中国ちゅうごく・唐から時代じだいの詩しを題材だいざいにした篆刻てんこく「晝ひる陰かげ静せい(ちゅういんせい)」なども見みどころとなっている。

同館どうかん主任しゅにん学芸がくげい主事しゅじの岩井いわい基生もとおさんは「40年ねんぶりに公開こうかいされる貴重きちょうなコレクション。魯山人ろさんじんの魅力みりょくを再さい発見はっけんしていただければ」と呼よびかけている。

会期かいきは7月がつ7日にちまで。同館どうかん(電でん)0296(70)0011。