清水しみずの「イニシャルB」

NASけSSD「WD Red SN700 NVMe SSD」でQNAP NASを強化きょうか! 「なにく?」「キャッシュ?階層かいそう?」「オーバープロビジョニングは?」

最適さいてきな「SSDの設定せってい方法ほうほう」とは?

 Western DigitalからNASけSSD「WD Red SN700 NVMe SSD」が発売はつばいされた。「WD Red」でられるNASに最適さいてきされたストレージ製品せいひんしんモデルで、従来じゅうらいのSATAからNVMeへと進化しんかし、高速こうそくこう耐久たいきゅうせい実現じつげんされている。その実力じつりょくをQNAPの4ベイNAS「TS-473A」で検証けんしょうしてみた。

Western DigitalのNASけM.2 SSD「WD Red SN700 NVMe SSD」

NASを「HDD+SSD」構成こうせいにすることで「アクセス速度そくど」と「内部ないぶ処理しょり」が高速こうそく

 SSDの高性能こうせいのうてい価格かかくすすんだいま、NASでもSSD採用さいよううごきが活発かっぱつしている。

 これまで、オールフラッシュやSSDキャッシュ、階層かいそうストレージとえば、エンタープライズ用途ようとがほとんどだったが、最近さいきんでは4ベイクラスの中小ちゅうしょう規模きぼけNASや家庭かていようの2ベイNASであっても、SSDを利用りようすることが可能かのうとなりつつある。

 NASでSSDを利用りようするメリットは、現状げんじょうおおきくけて2種類しゅるいがある。1つはネットワーク経由けいゆでのアクセス速度そくど向上こうじょうだ。HDDよりも高速こうそくなSSDをキャッシュなどに利用りようすることで、よく使つかうファイルや仮想かそう環境かんきょうでのストレージ利用りようのアクセスを高速こうそくすることができる。

 もう1つは、内部ないぶ処理しょり高速こうそくだ。現状げんじょう、NASはたんなるデータの保管ほかんとしてだけでなく、仮想かそうやデータ分析ぶんせきなど、さまざまな処理しょりになうサーバーとしての利用りよう価値かちたかまりつつある。

NASでSSDを利用りようするメリット。キャッシュや階層かいそうがたストレージとして利用りようすることで、ネットワーク経由けいゆでのアクセスのほか、内部ないぶ処理しょり速度そくど向上こうじょう貢献こうけんする

 なかでもSSDの効果こうか体験たいけんしやすいのが画像がぞう関連かんれん機能きのうだろう。NASを写真しゃしん保存ほぞんさきなどに使つかっているひとおおいとおもうが、NASはたん画像がぞう保存ほぞんするだけでなく、保存ほぞんした写真しゃしんのサムネイルを自動じどう生成せいせいしたり、AIで分類ぶんるいしたりする機能きのうそなえている。

 こうした処理しょりのため、内部ないぶてきにストレージへアクセスする場合ばあい、HDDではランダムアクセスがボトルネックになり、NAS全体ぜんたい処理しょり速度そくど低下ていかにつながる可能かのうせいがあるが、SSDをキャッシュなどに活用かつようすることで、高速こうそく処理しょり実現じつげんできる。

 いまやNASは、データを保管ほかんするだけでなく、そのデータを活用かつようするためのプラットフォームになりつつあるだけに、SSDによる高速こうそくが、快適かいてきさをめるカギになりつつあるわけだ。

NASけストレージの定番ていばん「WD Red」にNVMe SSDが登場とうじょう

 そんななか、Western Digitalから登場とうじょうしたのが、今回こんかいげるWD Red SN700 NVMe SSDだ。

 WD Redとえば、いまやNASけストレージの定番ていばんえるブランドで、品質ひんしつたかさや故障こしょうりつひくさなどからたか支持しじあつめる製品せいひんとなっている。

 今回こんかい登場とうじょうしたWD Red SN700 NVMe SSDは、そんなWD RedシリーズのSSDだ。NASでの利用りよう前提ぜんてい開発かいはつされていて、24あいだ365にち常時じょうじ稼働かどう想定そうていされていたり、複数ふくすうユーザーのアクセスが集中しゅうちゅうするような利用りようシーンでのパフォーマンスや耐久たいきゅうせい徹底的てっていてききたげられていたりと、一般いっぱんてきなSSDとはことなる方向ほうこうせい開発かいはつされた製品せいひんとなっている。

WD Red SN700 NVMe SSDのProduct Brief(PDF)に掲載けいさいのスペックひょう

 ポイントは、従来じゅうらいのSATAからNVMe(PCIe Gen3×4)対応たいおうへと進化しんかしたてんとなる。4/2/1TBと500/250GBのかく容量ようりょう用意よういされており、もっとやすい250GBモデルでも、シーケンシャルのリードが最大さいだい3100MB/s、ライトが最大さいだい1600MB/sで、キャッシュなどに利用りようした場合ばあいのパフォーマンス向上こうじょう期待きたいできる。

 よりだい容量ようりょうのモデルでは速度そくど耐久たいきゅうせいがさらに向上こうじょうするため、実際じっさい購入こうにゅうするさいはスペックをよく検討けんとうすべきだが、どのモデルも5年間ねんかん製品せいひん保証ほしょう付帯ふたいしており、信頼しんらいせい心配しんぱいはない。

SSD装着そうちゃく前提ぜんてい設計せっけいされたQNAP「TS-473A」

 それでは、実際じっさいにWD Red SN700 NVMe SSDがどれほどの実力じつりょくっているのかを検証けんしょうしてみよう。今回こんかい利用りようするのは、QNAPのTS-473Aという4ベイNASだ。

Ryzenを搭載とうさいしたQNAPの4ベイNAS「TS-473A」
正面しょうめん

 CPUとして、2.2GHz駆動くどうで4コア8スレッドのAMD Ryzen V1500を搭載とうさいした中小ちゅうしょう規模きぼけのNASで、標準ひょうじゅんで2.5Gbps×2のネットワークを搭載とうさいしていたり、内部ないぶのPCIeスロットに10Gbpsやグラフィックカードなどを増設ぞうせつしたりできる高性能こうせいのうなモデルとなる。

 SSDは、フロントベイに2.5インチのSATAを装着そうちゃくすることも可能かのううえ内部ないぶにM.2 2280(PCIe Gen3×1)を2スロット搭載とうさいしており、ここにNVMe SSDを装着そうちゃくすることも可能かのうとなっている。

側面そくめん
背面はいめん
標準ひょうじゅんで2.5Gbps対応たいおうのLANポートを2つ搭載とうさい
フロントベイには3.5インチHDDや2.5インチSATA SSDを搭載とうさい可能かのう今回こんかいはWestern DigitalのNASけ3.5インチHDDで2TBの「WD Red Plus WD20EFZX」を4ほん搭載とうさいした

 なお、250GBのWD Red SN700は、シーケンシャル性能せいのう上限じょうげんが3100MB/sとなるが、今回こんかい使用しようしたTS-453Aは、内部ないぶのM.2スロットがPCIe Gen3×1の仕様しようとなっていて、内部ないぶてき転送てんそう速度そくど上限じょうげんが1GB/sとなる。 このため、今回こんかいは、PCIe接続せつぞくのM.2アダプタ「QM2-2P-344」を利用りようしてWD Red SN700を装着そうちゃくした。QM2-2P-344は、内部ないぶのM.2スロットがPCIe Gen3×4対応たいおうで、拡張かくちょうスロットもPCIe Gen3×4対応たいおう製品せいひんだ。

内部ないぶにM.2スロットを2搭載とうさいする

 ネットワーク経由けいゆ場合ばあいは、そもそもネットワークが10Gbpsなので、PCIe Gen3×1でもネットワーク経由けいゆでの性能せいのうおおきな影響えいきょうはないが、NASじょう動作どうさするアプリなど内部ないぶ動作どうさ速度そくど向上こうじょう目指めざすのであれば、より高速こうそくなインターフェースで利用りようするほう効果こうかてきだ。

 ただし、NASは、なにより信頼しんらいせい耐久たいきゅうせい重視じゅうしされるため、どちらかというとピーク性能せいのうよりも耐久たいきゅうせい重視じゅうししたほうがいい。実用じつようシーンでは、そこまで速度そくどにする必要ひつようはないだろう。

 ちなみに、内部ないぶのM.2スロットは、専用せんよう固定こていでSSDを簡単かんたん固定こていできるようになっており、ねじめは不要ふようだ。端子たんし部分ぶぶん挿入そうにゅうし、固定こていがわむようにするだけで固定こていできる。今回こんかいは、PCIeスロットに装着そうちゃくしたが、通常つうじょう手間てまなく接続せつぞくできる内部ないぶM.2スロットのほう便利べんりだろう。

固定こてい使つかってねじレスで固定こてい可能かのう

 また、装着そうちゃくするためにケースをける必要ひつようがあるが、これはSSDの盗難とうなん防止ぼうし効果こうかてきうえ底面ていめんなどから簡単かんたんにアクセスできると盗難とうなん危険きけんがある)、背面はいめんのファンによってSSDが効率こうりつてき冷却れいきゃくされる効果こうかもある。

小型こがたながらNASの付属ふぞくひんとしてSSDようヒートシンクもどうこりされる

 TS-473A本体ほんたいには、小型こがたながらSSDようのヒートシンクもどうこりされており、SSDを装着そうちゃくするための環境かんきょうととのっているのもこう印象いんしょうだ。

今回こんかいは「QM2-P2-344」を利用りようしてSSDを装着そうちゃくした。またネットワークも10Gbps対応たいおうのQXG-10G1Tを装着そうちゃくした

SSD設定せってい経験けいけん知識ちしきがなくても設定せっていまよわない

 QNAPのNASに搭載とうさいされているファームウェアの「QTS」(最新さいしんは5.0)では、SSDを活用かつようするための機能きのうととのっており、構成こうせい設定せっていまよわない工夫くふうがなされている。

 なかでも心強こころづよいのが「SSD Profiling Tool」の存在そんざいだ。

「SSD Profiling Tool」を利用りよう可能かのう

 たとえば、NASに装着そうちゃくしたSSDを有効ゆうこうしようとして、いきなり「オーバープロビジョニングをなんパーセントに設定せっていするか?」という設定せってい画面がめん表示ひょうじされたとして、即答そくとうできるだろうか?

SSDの設定せっていでいきなりこの画面がめん表示ひょうじされて、適切てきせつ設定せっていできるだろうか?

 いままでのNASは、こうしたSSDを利用りようするための設定せっていが、利用りようしゃ経験けいけん知識ちしき、SSDのスペックに依存いぞんするものだったが、QNAPのQTSでは、実際じっさい測定そくていもとづいたデータをもとに、効率こうりつてき設定せってい選択せんたくできるようになっている。

 具体ぐたいてきには、SSD Profiling ToolでNASに装着そうちゃくしたSSDの性能せいのうをテストできる。さまざまな条件じょうけんみテストを実施じっしすることで、オーバープロビジョニングをなんパーセントに設定せっていすると、具体ぐたいてきにどれくらいのIOPSが実現じつげんできるのかがグラフされる。

SSD Profiling Toolのテスト結果けっか実行じっこうには数時間すうじかんかかるうえ、SSDが構成こうせいでないと実行じっこうできないので、事前じぜんおこなう必要ひつようがある

 オーバープロビジョニングは、SSDの速度そくど低下ていか寿命じゅみょう低下ていかふせぐために、SSDじょう一定いってい領域りょういき確保かくほすることで、速度そくど低下ていか寿命じゅみょう低下ていかふせ機能きのうだ。

 SSDは、その仕組しくじょう、データを直接ちょくせつえることができず、「みたい部分ぶぶんふくむブロック」の全体ぜんたいをいったん消去しょうきょしたのちで、「もとからあったデータ」と「みたい内容ないよう」をみあわてブロック全体ぜんたいすべむ。つまり、ブロックの一部いちぶえるだけでも「ブロック全体ぜんたいみ→ブロック全体ぜんたい消去しょうきょ→ブロック全体ぜんたいみ」という手順てじゅん必要ひつようで、これが速度そくど低下ていかにつながったりSSDの寿命じゅみょうちぢめたりする場合ばあいがある。

 このため、通常つうじょうSSDでは、あらかじめ全体ぜんたい一部いちぶ領域りょういき(7~10%ほど)をキャッシュとして設定せってい(オーバープロビジョニング)し、ファームウェアによってキャッシュを活用かつようしながら稼働かどうするように設計せっけいされている。

 SSD Profiling Toolは、こうしたSSDの特性とくせい実際じっさいのテストによって検証けんしょうすることで、実際じっさいにどれくらいのパーセントをオーバープロビジョニングで確保かくほすればいいかを事前じぜん確認かくにんできる機能きのうとなる。

 NASの場合ばあい、データの容量ようりょうおおいことから、とくにキャッシュで利用りようすると、すぐにSSDのぜん容量ようりょう使つかたし、ランダムアクセスを中心ちゅうしんにアクセス速度そくど低下ていか発生はっせいしやすくなる。NASでSSDキャッシュを設定せっていしたはいいが、時間じかん経過けいかとともにHDDよりも速度そくど低下ていかするようになってしまった、などというトラブルは、こうした原因げんいんかんがえられる。

 このため、おおめにオーバープロビジョニング容量ようりょう確保かくほしたり、RAID構成こうせいわせてオーバープロビジョニング容量ようりょう検討けんとうしたりする必要ひつようがある。

 ようするに、長期ちょうきてき運用うんよう考慮こうりょして、実際じっさい装着そうちゃくしたSSDの性能せいのうねらったIOPSをすためのオーバープロビジョニングの容量ようりょう提案ていあんしてくれる機能きのうというわけだ。

 そして、今回こんかい環境かんきょうでは、以下いかのようなテスト結果けっか表示ひょうじされた。

今回こんかい環境かんきょうでのテスト結果けっか

 たとえば、30000IOPSをターゲットにする場合ばあい推奨すいしょうされるオーバープロビジョニング容量ようりょうは20%ほどということになり、性能せいのうをフルに発揮はっきさせるには、50%のオーバープロビジョニング容量ようりょう推奨すいしょうされる。

 一般いっぱんてきには10%ほど確保かくほされることがおおいが、NASの場合ばあい、データの頻度ひんどたかい(とくにキャッシュの場合ばあい)ため、長期ちょうきてき寿命じゅみょうかんがえると、おおめにオーバープロビジョニングを設定せっていし、余裕よゆうった運用うんようをすべきだろう。

SSD活用かつよう方法ほうほうは「SSDキャッシュ」と「Qtier」の2とお

 QNAPのNASでは、SSDを活用かつようする方法ほうほうおおきくけて「SSDキャッシュ」と「Qtier(階層かいそうがたストレージ)」の2種類しゅるいがある。

 SSDキャッシュは、文字通もじどおりSSDをHDDアクセスのキャッシュとして利用りようする方法ほうほうだ。HDDからデータをむときにSSDへデータをコピーし、次回じかいアクセスするときはSSDから高速こうそくむことができる。みはSSDにんでから、あとでHDDへとデータを移行いこうする。

 Qtierは、階層かいそうがたストレージとばれる方式ほうしきで、NASのストレージを「容量ようりょうおもにHDD)」「高速こうそくおもにSATA SSD)」「ちょう高速こうそく(NVMe SSD)」の3階層かいそうけ(HDDとNVMeの2階層かいそうでも運用うんよう可能かのう)、頻繁ひんぱんにアクセスするデータを「ちょう高速こうそく」に、あまりアクセスしないデータを「容量ようりょう」に自動的じどうてき分類ぶんるいして保管ほかんする方式ほうしきとなる。ちょう高速こうそく保管ほかんされたデータはアクセス頻度ひんどちると自動的じどうてき容量ようりょう移動いどうさせることができる。

 どちらを利用りようするかはNASの用途ようと次第しだいえるが、その目安めやすをQNAPがドキュメントとして公開こうかいしているので、これを参考さんこうにするといいだろう。

QtierとSSD キャッシュの比較ひかく

 オフィスなどで、計画けいかくてきにNASじょうのドキュメントを利用りようする場合ばあいはQtierがてきしている。たとえば、ファイルサーバーなどで、SSDじょう保存ほぞんされた今月こんげつのデータをおも使つかい、つきわればそのデータは頻度ひんどちるので、自動的じどうてきにHDDへと移動いどうされるというように、計画けいかくてき階層かいそう利用りようできる。

 一方いっぽう家庭かていでは、こうした計画けいかくてき利用りようはまれだ。このため、突発とっぱつてきなデータもSSDで高速こうそくできるSSDキャッシュで利用りようするほうてきしているケースがおおい。また、動画どうが編集へんしゅう仮想かそうなどで利用りようする場合ばあいもSSDキャッシュがてきしている。

 設定せってい運用うんようもSSDキャッシュのほう簡単かんたんうえ、QNAPのNASは、最新さいしんのQTS 5.0でLinuxカーネルが5.10に更新こうしんされており、NVMe SSDキャッシュパフォーマンスの改善かいぜんはかられているてん魅力みりょくてきだ。

SSD増設ぞうせつによる効果こうか確認かくにんする

 それでは、SSDの効果こうか検証けんしょうしてみよう。

 今回こんかいは、QTSの「ストレージ&スナップショット」で「キャッシュ加速かそく」を選択せんたくし、NASに装着そうちゃくしたWD Red SN700 NVMe SSDを選択せんたくしてキャッシュとして設定せっていした場合ばあいと、おなじく「ストレージ&スナップショット」で既存きそんのプールをQtierにアップグレードした場合ばあい計測けいそくしている。

 キャッシュの方式ほうしき標準ひょうじゅんでは「り」となる。オフィスで利用りようする場合ばあいは、大量たいりょうのアクセスが発生はっせいするためSSD容量ようりょう節約せつやくするためにもみのみを高速こうそくしたほう効率こうりつてきだが、家庭かてい利用りようする場合ばあいは、バックアップや大量たいりょう写真しゃしん保存ほぞんなど、みも高速こうそくするメリットがあるため、今回こんかいは「り/み」に設定せっていした。

 また、キャッシュモードは、標準ひょうじゅんでは「ランダムI/O」が選択せんたくされるが、こちらも家庭かていでの利用りようはビデオの保管ほかん再生さいせいなどに利用りようする可能かのうせいがあるため、「すべてのI/O」を選択せんたくするといいだろう。キャッシュ容量ようりょうおお消費しょうひするが、その効果こうか体験たいけんしやすい。

 RAIDタイプは、今回こんかいはSSDが2まいなのでRAID 1となる。みを選択せんたくするとデータを保護ほごする必要ひつようがあるが、今回こんかいは2まいなのでRAID 1のみが設定せってい可能かのうだ。なお、キャッシュのパフォーマンスを向上こうじょうさせるには、4まい以上いじょうでRAID 5などを構成こうせいすべきだろう。

 オーバープロビジョンは、あらかじめSSD Profiling Toolで確認かくにんした利用りようする。標準ひょうじゅんでは10%だが、SSDの寿命じゅみょうかんがえるとおおめに設定せっていしておいたほうがいい。とく家庭かていでは、キャッシュ容量ようりょうおおくても使つかれないので、寿命じゅみょう優先ゆうせんしておおめに確保かくほすることをおすすめする。

SSDキャッシュで内部ないぶ処理しょり速度そくどがスピードアップ画像がぞうのAI処理しょりなどが高速こうそく

 キャッシュの効果こうかだが、これは冒頭ぼうとうでもれたとおり、2とおりの見方みかたをする必要ひつようがある。

 まずは内部ないぶてきなキャッシュの効果こうかだ。前述ぜんじゅつしたように、最近さいきんのNASは画像がぞうのAI処理しょりなどで保存ほぞんしたデータを内部ないぶ処理しょりする機会きかいえている。こうした処理しょり時間じかんがかかると、肝心かんじんのデータアクセス速度そくどなどが低下ていかしてしまうおそれがあるため、SSDキャッシュによって内部ないぶ処理しょり高速こうそくされるメリットはおおきい。

 実際じっさい写真しゃしん管理かんりアプリなどを利用りようしている環境かんきょうでSSDキャッシュを有効ゆうこうすると、画像がぞうのサムネイルの表示ひょうじなどが高速こうそく印象いんしょうける。

キャッシュの様子ようす確認かくにんできる。ネットワーク経由けいゆでアクセスしなくても、キャッシュが効率こうりつてき使つかわれる

 なお、SSDの内部ないぶてき転送てんそう速度そくどは、SSHアクセスで「fio」テストコマンドを実行じっこうすることで確認かくにんできる。シーケンシャルリードで2GB/s、ランダムリードで153.08MB/sとなる。HDDはシーケンシャルリードが4ぶんの1となる500MB/s前後ぜんご、ランダムリードが250KB/s(MB/sではなくKB/sであるてん注目ちゅうもく)なので、大幅おおはばにアクセス速度そくど向上こうじょうしている。

 内部ないぶてき処理しょりにこのストレージを使つかえるメリットは非常ひじょうおおきいとえるだろう。

NASじょうでのローカルのSSDのアクセス速度そくど。SSDがはやい。とくにランダムは高速こうそく

アクセス速度そくど向上こうじょうはネットワーク次第しだい実力じつりょく発揮はっきさせるなら10Gbpsの導入どうにゅうを!

 つづいて、外部がいぶからのアクセスのキャッシュ性能せいのうていこう。

 こちらにかんしてはネットワーク次第しだいえる。今回こんかい検証けんしょう利用りようしたTS-473Aは2.5Gbpsのネットワークに対応たいおうしているのだが、そもそものNASの性能せいのうが10Gbps環境かんきょうでも使つかえるほどたか設計せっけいになっているため、2.5Gbpsのネットワーク経由けいゆでは、ベンチマークツールによるSSDキャッシュの効果こうかがほぼえない。

【2.5GbE環境かんきょうでのCrystalDiskMark測定そくてい結果けっか
ひだりがHDDのみ、みぎがSSDキャッシュ設定せってい測定そくてい結果けっか標準ひょうじゅんの2.5Gbpsでは、ネットワーク経由けいゆでのちがいがあらわれにくい

10GbEならシーケンシャルライトが2.8ばい、ランダムアクセスが1.2~2.2ばい

 そこで、今回こんかいはTS-473Aの拡張かくちょうスロットに10Gbps対応たいおうのネットワークカード(QXG-10G1T)を装着そうちゃくし、10Gbps環境かんきょうでCrystalDiskMarkによるベンチマークを実施じっししてみた。

 結果けっかは、以下いかのようになった。なお、WD Redのスペックひょうわせるかたちで、ベンチ結果けっかもシーケンシャルはMB/s、ランダムはIOPSでの表記ひょうきにしてある。

 シーケンシャルにかんしては、おもにSSDキャッシュ設定せっていみで効果こうかあらわれた。みはほぼわらない(10Gbpsの上限じょうげん)が、HDDのみの場合ばあいくらべて、シーケンシャルライトがやく2.8ばい向上こうじょうしている。

シーケンシャルアクセス性能せいのう(SMB接続せつぞく単位たんい:MB/s)
【シーケンシャルアクセス測定そくていぜん結果けっか
SEQ1M Q8TI(MB/s)SEQ1M Q1T1(MB/s)RND4KQ32T1(IOPS)RND4KQ1T1(IOPS)
リードライトリードライトリードライトリードライト
Qtier1216.13479.39954.6477.56181.2185.3226.3821.66
SSDキャッシュ(RW)1218.641196.4990.49630.69190.24189.8725.7926.83
HDDのみ1193.44425.41963.56430.26154.0283.4625.7322.18

 ランダムアクセスにかんしては、リードもライトも効果こうかあらわれた。リードで1.2ばいほど、ライトはシーケンシャルとおなじくSSDキャッシュのみだが、2.2ばいほど高速こうそくされている。

ランダムアクセステスト結果けっか(SMB接続せつぞく単位たんい:IOPS)
【ランダムアクセス測定そくていぜん結果けっか
SEQ1M Q8TI(MB/s)SEQ1M Q1T1(MB/s)RND4KQ32T1(IOPS)RND4KQ1T1(IOPS)
リードライトリードライトリードライトリードライト
Qtier1159.79457.19910.38455.4344240.2320829.596440.675288.57
SSDキャッシュ(RW)1162.191140.97944.61601.4746444.3446355.716297.126550.29
HDDのみ1138.15405.7918.93410.3337603.5220376.956282.965415.04

NAS+SSDはもはやたりまえ時代じだい

 以上いじょう、Western DigitalのWD Red SN700 NVMe SSDをQNAPのTS-473Aで利用りようしてみたが、NASにSSDを追加ついかするメリットは、かなりたかいとえそうだ。

 ネットワーク経由けいゆでのアクセスもおもにライトでおおきな効果こうかえるじょう内部ないぶキャッシュとして機能きのうなNASならではのかく機能きのうをファイルサーバーとしてのスループットをとさずに利用りようできるようになるため、10Gbsp環境かんきょうでNASの性能せいのうをより一層いっそうげることができる。

 そもそもWD Redなので耐久たいきゅうせい紙付がみつきだが、QNAPのNASなら、SSDのオーバープロビジョニングの設定せってい工夫くふうすることで、さらに寿命じゅみょうばしたり、キャッシュがフルになったときなどの速度そくど低下ていかおさえたりできる。

 これからNASを導入どうにゅうするのであれば、同時どうじにSSDの装着そうちゃく検討けんとうすべきだろう。

協力きょうりょく:テックウインド株式会社かぶしきがいしゃ

清水しみず

製品せいひんレビューなど幅広はばひろ執筆しっぴつしているが、実際じっさい大手おおて企業きぎょうでネットワーク管理かんりしゃをしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般ぜんぱん得意とくいジャンル。最新さいしんかん「できる Windows 10 活用かつようへんほか多数たすう著書ちょしょがある。