中学校ちゅうがっこう国語こくご 漢文かんぶん/矛盾むじゅん

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ここでは故事こじ成語せいご「矛盾むじゅん」のもとになった話はなしを解説かいせつする。なお、原文げんぶんの難解なんかいな漢字かんじはひらがなに直なおしている。

書かき下くだし文ぶんと原文げんぶん

楚すわえ人じん(そひと)1に盾たて(たて)と矛ほこ(ほこ)2とを鬻ひさぐ3者もの有あり。これを誉ほめて曰(いは)く「わが盾たての堅かたきこと、よくとほすもの莫きなり」と。また、その矛ほこを誉ほめて曰いわく「わが矛ほこの利り(り)なる4こと、物ものにおいてとほさざる無なきなり」と。ある人ひと曰いわく「子こ(し)5の矛ほこをもって、子この盾たてをとほさばいかん」と。その人ひとこたふることあたはざるなり。

楚すわえ人じん有ゆう鬻楯與あずか矛ほこ者しゃ。譽ほまれ之の曰、吾われ楯だて之の堅けん、莫能陷おちい也。又また譽ほまれ其矛曰、吾われ矛ほこ之の利り、於物無む不ふ陷おちい也。或ある曰、以子之の矛ほこ、陷おちい子こ之の楯だて何なん如。其人弗どる能のう應おう也。

(『韓非子かんぴし』（かんぴし）より)

1. 楚すわえ（そ）とは、現在げんざいの中国ちゅうごくの長江ちょうこう流域りゅういきにあった国くに。楚すわえ人じんとは「楚すわえの国くにの人ひと」の意味いみ。
2. 矛ほこ（ほこ）とは、昔むかしの武器ぶきのひとつであり、両側りょうがわが刃はになっている剣けんに長ながい柄えのついた、槍やり（やり）のような武器ぶき。
3. ひさぐ＝売うる。
4. 利りなる＝鋭するどい。鋭利えいり。
5. 子こ＝あなた。

通つう釈しゃく

楚すわえの国くにの人ひとで盾たてと矛ほこを売うる者ものがいた。この人ひとはこれを誉ほめて「私わたしの盾たては頑丈がんじょうで、これを貫つらぬけるものはない」と言いった。また、矛ほこを誉ほめて「私わたしの矛ほこは鋭するどくて、物ものにおいて貫つらぬけないものはない」と言いった。ある人ひとが「あなたの矛ほこであなたの盾たてを貫つらぬいたらどうなるのですか」といった。商人しょうにんは答こたえることができなかった

解説かいせつ

「何なんでも突つき通とおす矛ほこ」と「どんな攻撃こうげきも防ふせぐ盾たて」の2つがあるというのはおかしい。なぜなら、「何なんでも突つき通とおす矛ほこ」が本当ほんとうならば「どんな攻撃こうげきも防ふせぐ盾たて」はウソになるし、その逆ぎゃくの場合ばあいは矛ほこのほうがウソになるからである。このように、つじつまの合あわないことを「矛盾むじゅん」(むじゅん)と言いうようになったのはこの話はなしによる。