刑法けいほうだい95じょう

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条文じょうぶん[編集へんしゅう]

公務こうむ執行しっこう妨害ぼうがいおよ職務しょくむ強要きょうよう

だい95じょう
  1. 公務員こうむいん職務しょくむ執行しっこうするにたり、これにたいして暴行ぼうこうまた脅迫きょうはくくわえたものは、3ねん以下いか拘禁こうきんけいまたは50まんえん以下いか罰金ばっきんしょする。
  2. 公務員こうむいんに、ある処分しょぶんをさせ、しくはさせないため、またはそのしょくさせるために、暴行ぼうこうまた脅迫きょうはくくわえたものも、前項ぜんこう同様どうようとする。

改正かいせい経緯けいい[編集へんしゅう]

2022ねん以下いかのとおり改正かいせい施行しこう2025ねん6がつ1にち)。

改正かいせいまえ懲役ちょうえきしくは禁錮きんこ
改正かいせい拘禁こうきんけい

解説かいせつ[編集へんしゅう]

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ウィキペディア公務こうむ執行しっこう妨害ぼうがいするつみ記事きじがあります。
暴行ぼうこう
公務員こうむいんたいする不法ふほう有形ゆうけいりょく行使こうしで、職務しょくむ執行しっこう妨害ぼうがいとなるべき程度ていどのものであることをようするが、現実げんじつ妨害ぼうがい結果けっか発生はっせい必要ひつようとせず、また、暴行ぼうこうは、公務員こうむいんけられることをようするが、直接ちょくせつ公務員こうむいん身体しんたいくわえられることを必要ひつようとしない。

参照さんしょう条文じょうぶん[編集へんしゅう]

判例はんれい[編集へんしゅう]

  1. 公務こうむ執行しっこう妨害ぼうがい(最高裁さいこうさい判決はんけつ 昭和しょうわ25ねん10がつ20日はつか)
    1. やとい公務員こうむいん
      市長しちょうにより任命にんめいされ統計とうけい統計とうけい事務じむ従事じゅうじするやといは、公務員こうむいんである。
    2. 公務こうむ執行しっこう妨害ぼうがいざいにおける暴行ぼうこう脅迫きょうはく結果けっか発生はっせいよう
      刑法けいほうだい95じょう公務こうむ執行しっこう妨害ぼうがいざい要件ようけんたる暴行ぼうこう脅迫きょうはくは、これにより現実げんじつ職務しょくむ執行しっこう妨害ぼうがい結果けっか発生はっせいしたことを必要ひつようとするものではなく、妨害ぼうがいとなるべきものであればりる。
  2. 公務こうむ執行しっこう妨害ぼうがい(最高裁さいこうさい判決はんけつ 昭和しょうわ26ねん3がつ20日はつか)
    公務こうむ執行しっこう妨害ぼうがいざいにおける暴行ぼうこう直接ちょくせつ公務員こうむいんくわえられることをようしない
    公務員こうむいん職務しょくむ執行しっこうあたりその執行しっこう妨害ぼうがいするに暴行ぼうこうくわえるものである以上いじょう、それが直接ちょくせつ公務員こうむいん身体しんたいたいするものであるととはうところではない。本件ほんけんにおいては、はら判示はんじによれば、被告人ひこくにんはC事務じむ官等かんとう適法てきほう令状れいじょう後段こうだん説示せつじにより押収おうしゅうした煙草たばこ街路がいろじょうげすててその公務こうむ執行しっこう不能ふのうならしめたというのであるから、その暴行ぼうこう間接かんせつにはどう事務じむ官等かんとうたいするものとる。ゆえにかかる被告人ひこくにん暴行ぼうこう公務こうむ執行しっこう妨害ぼうがいざいとえうたぐしたはら判決はんけつ正当せいとうでこれを攻撃こうげきする論旨ろんし理由りゆうがない。
  3. 暴力ぼうりょく行為こういとう処罰しょばつかんするほうだいりつ違反いはん業務ぎょうむ妨害ぼうがい建造けんぞうぶつ侵入しんにゅう窃盗せっとう(最高裁さいこうさい決定けってい 昭和しょうわ26ねん07がつ18にち)
    1. 公務員こうむいんたいする威力いりょく誇示こじ業務ぎょうむ妨害ぼうがいざい成否せいひ
      以上いじょうごと被告人ひこくにんとう行為こうい(スクラムを労働ろうどう高唱こうしょうして気勢きせいげた行為こうい)が暴力ぼうりょくでないとすれば威力いりょくであるから、公務員こうむいん執行しっこう妨害ぼうがいざい成立せいりつしないとしても業務ぎょうむ妨害ぼうがいざい(刑法けいほうだい234じょう)が成立せいりつすると主張しゅちょうするのであるか、業務ぎょうむ妨害ぼうがいざいにいわゆる業務ぎょうむなかには、公務員こうむいん職務しょくむふくまれないものとするを相当そうとうとするから、公務員こうむいん公務こうむ執行しっこうたいし、かりに暴行ぼうこうまた脅迫きょうはくたっしない程度ていど威力いりょくもちいたからといつて業務ぎょうむ妨害ぼうがいざい成立せいりつするとすることはできない。
    2. 生産せいさん管理かんり違法いほうせい
      会社かいしゃ従業じゅうぎょういんとう労働ろうどう組合くみあいいん)が、会社かいしゃとの争議そうぎちゅう会社かいしゃがわ意向いこう全然ぜんぜん無視むしし、いて会社かいしゃ建造けんぞうぶつつてこれを占拠せんきょし、従業じゅうぎょういん就業しゅうぎょう阻止そしし、あるいは会社かいしゃ所有しょゆう物品ぶっぴんをほしいままに管理かんり処分しょぶんするがごと一連いちれん行為こういをした場合ばあいにはかりに、はら判決はんけつ認定にんていのごとき会社かいしゃがわ非難ひなんあたいする仕打しうちがあり、従業じゅうぎょういんがわにむしろ同情どうじょうすべき事情じじょうがあつたとしても、かかる行為こうい緊急きんきゅうむをない争議そうぎ行為こういとして適法てきほうすることはできない。
    3. 社会しゃかい組合くみあいとのあいだ争議そうぎについて妥協だきょう成立せいりつ双方そうほう合意ごういによつて全員ぜんいん解雇かいこされ組合くみあい解散かいさんした場合ばあい争議そうぎ終了しゅうりょう
      争議そうぎちゅう会社かいしゃ組合くみあいとのあいだ妥協だきょう成立せいりつし、双方そうほう合意ごういによつて会社かいしゃ従業じゅうぎょういんたる組合くみあいいん全員ぜんいん適法てきほう解雇かいこされ、組合くみあい解散かいさんしたときはこれにより争議そうぎ終了しゅうりょうする。
    4. みぎ場合ばあい会社かいしゃとなおこうそう継続けいぞくする組合くみあい少数しょうすう反対はんたい行動こうどう争議そうぎ行為こういといえるか
      みぎ場合ばあい組合くみあい少数しょうすう反対はんたいもの会社かいしゃまでこうそうせんとして行動こうどうしても、それは争議そうぎ行為こういとはいえない。
    5. 検挙けんきょむかいつた警察官けいさつかんとうたいしスクラムを労働ろうどう高唱こうしょうする労働ろうどうしゃとう行為こうい公務こうむ執行しっこう妨害ぼうがい成否せいひ
      会社かいしゃ業務ぎょうむ妨害ぼうがい現行げんこうはんとして検挙けんきょむかいつた警察官けいさつかんとうたいし、労働ろうどうしゃとうがスクラムを労働ろうどう高唱こうしょうして気勢きせいげたとしてもそれだけではかならずしも公務こうむ執行しっこう妨害ぼうがいざい成立せいりつしない。
    6. 暴力ぼうりょく行為こういとう処罰しょばつかんする法律ほうりつだい1じょうだい1こう合憲ごうけんせい
      暴力ぼうりょく行為こういとう処罰しょばつかんする法律ほうりつだい1じょうだい1こう規定きていは、憲法けんぽうだい28じょう,憲法けんぽうだい98じょう違反いはんしない。
  4. 公務こうむ執行しっこう妨害ぼうがい(最高裁さいこうさい判決はんけつ 昭和しょうわ34ねん8がつ27にち)
    公務こうむ執行しっこう妨害ぼうがいざい成立せいりつする事例じれい
    司法しほう巡査じゅんさかくせいざい取締とりしまりほう違反いはん現行げんこう犯人はんにんかぶと逮捕たいほする現場げんば証拠しょうこぶつとして適法てきほう差押さしおさ整理せいりのため同所どうしょいたかくせいざい注射ちゅうしゃえきりアンプルを、被告人ひこくにんおつあし踏付ふみつけて損壊そんかいしたときは公務こうむ執行しっこう妨害ぼうがいざい成立せいりつする。
  5. 公務こうむ執行しっこう妨害ぼうがい傷害しょうがい(最高裁さいこうさい判決はんけつ 昭和しょうわ41ねん3がつ24にち)
    刑法けいほうだい95じょうだい1こうにいう暴行ぼうこう脅迫きょうはく程度ていどおよびその客体かくたい
    刑法けいほうだい95じょうだい1こう規定きていする公務こうむ執行しっこう妨害ぼうがいざい成立せいりつには、公務員こうむいん職務しょくむ執行しっこうをなすにあたり、その職務しょくむ執行しっこう妨害ぼうがいするにりる暴行ぼうこう脅迫きょうはくがなされることをようするけれども、その暴行ぼうこう脅迫きょうはくは、かならずしも直接ちょくせつ当該とうがい公務員こうむいん自身じしんたいしてくわえられることをようせず、当該とうがい公務員こうむいん指揮しきしたがいその手足てあしとなり、その職務しょくむ執行しっこう密接みっせつ不可分ふかぶん関係かんけいにおいて関与かんよする補助ほじょしゃたいしてなされるものでもよい。
  6. 威力いりょく業務ぎょうむ妨害ぼうがい(最高裁さいこうさい判決はんけつ 昭和しょうわ41ねん11月30にち)
    国鉄こくてつ事業じぎょうないし業務ぎょうむ刑法けいほうだい233じょうだい234じょうにいう業務ぎょうむふくまれるか
    国鉄こくてつおこなう事業じぎょうないし業務ぎょうむは、刑法けいほうだい233じょうだい234じょうにいう業務ぎょうむふくまれる。
    1. 上告じょうこくじん被告人ひこくにん)の主張しゅちょう
      国鉄こくてつ公務こうむおよ業務ぎょうむ両面りょうめんにおいてじゅう保護ほごけることとなり、民営みんえい鉄道てつどう対比たいひし、法律ほうりつじょう保護ほご差別さべつしょうじ、憲法けんぽういちよんじょうさだめるほうしたにおける平等びょうどう原則げんそくはんする結果けっかとなるのみならず、従来じゅうらい判例はんれい理論りろん判然はんぜん区別くべつしていたみぎ業務ぎょうむ公務こうむとの両者りょうしゃ関係かんけい不明ふめいかくならしめ、明確めいかく規準きじゅんしたほう適用てきようをはかることになり、憲法けんぽうだい31じょう罪刑法定ざいけいほうてい主義しゅぎ精神せいしんはんする結果けっかとなる。
    2. 判決はんけつ理由りゆう
      そのおこな事業じぎょうないし業務ぎょうむ実態じったいは、運輸うんゆ目的もくてきとする鉄道てつどう事業じぎょうそのこれに関連かんれんする事業じぎょうないし業務ぎょうむであつて、くにしくは公共こうきょう団体だんたいまたはその職員しょくいんおこな権力けんりょくてき作用さようともな職務しょくむではなく、民営みんえい鉄道てつどうのそれとなんことなるところはないのであるから、民営みんえい鉄道てつどう職員しょくいんおこな現業げんぎょう業務ぎょうむ刑法けいほうだい233じょうだい234じょう業務ぎょうむ妨害ぼうがいざい対象たいしょうとなるが、国鉄こくてつ職員しょくいんおこな現業げんぎょう業務ぎょうむは、その職員しょくいん法令ほうれいにより公務こうむ従事じゅうじするものとみなされているというだけの理由りゆう業務ぎょうむ妨害ぼうがいざい対象たいしょうとならないとする合理ごうりてき理由りゆうはない。
  7. 公務こうむ執行しっこう妨害ぼうがい監禁かんきん職務しょくむ強要きょうよう(最高裁さいこうさい判決はんけつ昭和しょうわ42ねん5がつ24にち)
    地方ちほう議会ぎかい議事ぎじ進行しんこうかんする議長ぎちょう措置そち会議かいぎ規則きそく違反いはんしていたとしても刑法けいほうだい95じょうだい1こうにいう公務員こうむいん職務しょくむ執行しっこうにあたるとされた事例じれい
    地方ちほう議会ぎかい議長ぎちょう議員ぎいんから提出ていしゅつされた質疑しつぎ打切うちきり、討論とうろん省略しょうりゃくぜん上程じょうてい議案ぎあん一括いっかつ採決さいけつ動議どうぎもとづきぜん上程じょうてい議案ぎあん一括いっかつ採決さいけつ議場ぎじょうはかろうとした措置そちは、かりに会議かいぎ規則きそく違反いはんするものであるとう法令ほうれいじょう適法てきほう要件ようけん完全かんぜんにはたしていなかつたとしても、原審げんしん認定にんていした具体ぐたいてき事実じじつ関係かんけいのもとにおいては、刑法けいほうだい95じょうだい1こうにいう公務員こうむいん職務しょくむ執行しっこうにあたる。
  8. 公務こうむ執行しっこう妨害ぼうがい(最高裁さいこうさい判決はんけつ昭和しょうわ53ねん6がつ29にち)
    1. 刑法けいほう95じょう1こうにいう職務しょくむ範囲はんい
      刑法けいほう95じょう1こうにいう職務しょくむには、ひろく公務員こうむいんあつか各種かくしゅ各様かくよう事務じむのすべてがふくまれる。
    2. 刑法けいほう95じょう1こうにおける職務しょくむ執行しっこうちゅうであるかかの判断はんだんさいしその性質せいしつじょうある程度ていど継続けいぞくした一連いちれん職務しょくむとして把握はあくするのが相当そうとうであるとされた事例じれい
      刑法けいほう95じょう1こうにおける職務しょくむ執行しっこうちゅうであるかかの判断はんだんさいしては、日本電信電話にほんでんしんでんわ公社こうしゃ電報でんぽう局長きょくちょうの、きょく事務じむ全般ぜんぱん掌理しょうり部下ぶか職員しょくいん指揮しき監督かんとくする職務しょくむおよどう電報でんぽうきょく次長じちょうの、局長きょくちょうたすきょくつとむ整理せいりする職務しょくむは、その性質せいしつじょう、その内容ないようおよ執行しっこう過程かてい個別こべつてき分断ぶんだんして部分ぶぶんてきにそれぞれの開始かいし終了しゅうりょうろんずるべきではなく、一体いったいせいないし継続けいぞくせいゆうするものとして把握はあくすべきである。
    3. 刑法けいほう95じょう1こうにおける職務しょくむ執行しっこう終了しゅうりょうしたものではないとされた事例じれい
      本件ほんけん電報でんぽう局長きょくちょうの、電報でんぽう料金りょうきん収納しゅうのうとうかんする会計かいけい書類しょるい点検てんけん決裁けっさい職務しょくむおよ本件ほんけん電報でんぽうきょく次長じちょうの、電報でんぽう配達はいたつ業務ぎょうむとうかんする上部じょうぶ機関きかんへの報告ほうこく文書ぶんしょ作成さくせい職務しょくむかく執行しっこう事実じじつじょう一時いちじてき中断ちゅうだんしたとしても、その状態じょうたい被告人ひこくにん不法ふほう目的もくてきをもつた行動こうどうによつて作出さくしゅつされたものである場合ばあいには、刑法けいほう95じょう1こうにおける職務しょくむ執行しっこう終了しゅうりょうしたものではない。
    4. 公務こうむ執行しっこう妨害ぼうがいざい主観しゅかんてき成立せいりつ要件ようけんとしての職務しょくむ執行しっこうちゅうであることの認識にんしき程度ていど
      公務こうむ執行しっこう妨害ぼうがいざい主観しゅかんてき成立せいりつ要件ようけんとしての職務しょくむ執行しっこうちゅうであることの認識にんしきがあるというためには、行為こういしゃにおいて公務員こうむいん職務しょくむ行為こうい執行しっこうとうつていることの認識にんしきがあればり、具体ぐたいてきにいかなる内容ないよう職務しょくむ執行しっこうちゅうであるかまで認識にんしきすることをようしない。

前条ぜんじょう:
刑法けいほうだい94じょう
中立ちゅうりつ命令めいれい違反いはん
刑法けいほう
だい2へん ざい
だい5しょう 公務こうむ執行しっこう妨害ぼうがいするつみ
つぎじょう:
刑法けいほうだい96じょう
封印ふういんとう破棄はき
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