圧縮あっしゅく率りつのソースを表示ひょうじ

{{Thermodynamics sidebar}}
{{物理量
 |英語= compressibility
 |記号= {{mvar|&kappa;}}
 |次元= [[長さ|L]]{{sup|3}} [[エネルギー|E]]{{sup-|1}}
 |階= スカラー
 |SI= [[パスカル (単位)|Pa]]{{sup-|1}}
}}
'''圧縮率'''（あっしゅくりつ、{{lang-en|compressibility}}）とは、系にかかる[[圧力]]に対して、系の[[体積]]がどの程度変化するかを表す[[物性量]]である。

== 定義 ==
圧力 {{mvar|p}} の下での物体の体積が {{mvar|V}} であるとき、圧縮率は
{{Indent|
<math>\kappa = -\frac{1}{V} \frac{dV}{dp}</math>
}}
で定義される{{sfn|JIS Z 8000-4}}。

一般に圧縮率は圧力の関数であるが、圧力変化 {{mvar|&Delta;p}} が小さく、圧縮率を定数とみなすことができる範囲で
{{Indent|
<math>\theta =-\kappa\, \Delta p</math>
}}
あるいは
{{Indent|
<math>V =V_0 (1-\kappa\, \Delta p)</math>
}}
と表わすことができる。
ここで {{math|''V''{{sub|0}}}} は基準とする圧力での体積、{{math|1=''&theta;'' = ''&Delta;V''/''V''{{sub|0}}}} は[[ひずみ|体積ひずみ]]である。

== 体積弾性率 ==
{{物理量
 |名称= 体積弾性率
 |英語= modulus of compression<br/>bulk modulus
 |記号= {{mvar|K, B}}
 |次元= [[長さ|L]]{{sup-|3}} [[エネルギー|E]]
 |階= スカラー
 |SI= [[パスカル (単位)|Pa]]
}}
圧縮率の逆数を'''体積弾性率'''（{{lang|en|bulk modulus}}）、または'''体積弾性係数'''といい、
{{Indent|
<math>K =\frac{1}{\kappa} = -V \frac{\partial p}{\partial V}</math>
}}
で定義される。
体積弾性率の記号は、''K'' や ''B'' で表されることが多い。

等温体積弾性率は、[[ヘルムホルツエネルギー]] ''F''(''T'', ''V'') を用いると、
{{Indent|
<math>K_T = V \left( \frac{\partial^2F(T,V)}{\partial V^2} \right)_T</math>
}}
と表すことができる。
断熱体積弾性率は、[[内部エネルギー]] ''U''(''S'', ''V'') を用いると、
{{Indent|
<math>K_S = V \left( \frac{\partial^2U(S,V)}{\partial V^2} \right)_S</math>
}}
と表すことができる。

体積弾性率と[[硬さ]]には相関があり、体積弾性率が大きい場合、その物質は硬い場合が多い。窒化炭素（立方晶窒化炭素や&beta;-C<SUB>3</SUB>N<SUB>4</SUB>など）は、[[ダイヤモンド]]より大きな体積弾性率を持つことが理論計算から予測されており、ダイヤモンドより硬い可能性が指摘されている（[[2004年]]現在、まだ実験で検証されていない）。単層カーボンナノチューブを常温加圧した物質（超硬度ナノチューブ相、SP-SWCNT）がダイヤモンドより大きい体積弾性率を持つことが確認されている<ref>[https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2001/pr20011108/pr20011108.html 産業技術総合研究所　ナノチューブを利用して新超硬度相カーボンプレートの合成に成功]</ref>。

== 弾性率の相関関係 ==
弾性体が均質で等方的な場合には二つの自由度で弾性率が表される。
[[ヤング率]]を {{mvar|E}}、[[ポアソン比]]を {{mvar|&nu;}} とするとき、体積弾性率は
{{Indent|
<math>K =\dfrac{E}{3(1-2\nu)}</math>
}}
で表される。また[[ラメ定数|ラメの第一定数]] {{mvar|&lambda;}} と第二定数（[[剛性率]]）{{mvar|&mu;}} を用いれば
{{Indent|
<math>K =\lambda +\frac{2}{3}\mu</math>
}}
と表わされる。

{{main|弾性率#弾性率の相関関係}}

== 温度変化との関係 ==
圧力だけでなく温度の変化によっても物体の体積は変化するため、[[熱膨張]]が無視できない場合には温度変化に関する条件を課す必要がある{{sfn|JIS Z 8000-4}}。

[[等温過程|温度が一定]]である条件の下での圧縮率は'''等温圧縮率'''（{{en|isothermal compressibility}}）と呼ばれる。温度 {{mvar|T}}、圧力 {{mvar|p}} の下での物体の体積を {{mvar|V}} として、等温圧縮率は
{{Indent|
<math>\kappa_T = -\frac{1}{V} \left( \frac{\partial V}{\partial p} \right)_T</math>
}}
で定義される{{sfn|JIS Z 8000-5}}。体積が温度と圧力の関数であるため、定義が[[偏微分]]に置き換えられている。添え字 {{mvar|T}} により温度を固定した偏微分であることを表している。

圧縮率は等温条件だけでなく、[[断熱過程|断熱条件下]]でも考えることができて、この時の圧縮率は'''断熱圧縮率'''（{{en|adiabatic compressibility}}）と呼ばれる。
[[準静的過程|準静的]]断熱過程において[[エントロピー]]が一定に保たれるため、エントロピー {{mvar|S}} を固定した[[偏微分]]により断熱圧縮率は
{{Indent|
<math>\kappa_S = -\frac{1}{V} \left( \frac{\partial V}{\partial p} \right)_S</math>
}}
で定義される{{sfn|JIS Z 8000-5}}。
エントロピーを固定した偏微分であるため等エントロピー圧縮率（{{en|isentropic compressibility}}）とも呼ばれる。

断熱圧縮率と等温圧縮率との比は
{{Indent|
<math>\frac{\kappa_T}{\kappa_S} =\frac{C_p}{C_V} =\gamma</math>
}}
で与えられる。ここで {{mvar|C{{sub|p}}, C{{sub|V}}}} はそれぞれ等圧[[熱容量]]と等積熱容量、{{mvar|&gamma;}} は[[比熱比]]である。

また、断熱圧縮率と等温圧縮率との差は
{{Indent|
<math>\kappa_T -\kappa_S =\frac{TV\alpha^2}{C_p}</math>
}}
で与えられる。ここで {{mvar|&alpha;}} は[[熱膨張係数]]である。

== 脚注 ==
{{Reflist}}

== 関連記事 ==
* [[物性物理学]]
* [[圧縮率因子]]
* [[非圧縮性]]
* [[圧縮性流れ]]

== 外部リンク ==
* {{Cite jis|Z|8000-4|2022|name= 量及び単位－第４部：力学}}
* {{Cite jis|Z|8000-5|2022|name= 量及び単位－第５部：熱力学}}

{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORT:あつしゆくりつ}}
[[Category:物性値]]
[[Category:熱力学]]
[[Category:統計力学]]
[[Category:連続体力学]]

[[de:Kompressionsmodul#Kompressibilität]]