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ムスカとは、スタジオジブリの映画『天空の城ラピュタ』に登場する架空のキャラクター。
担当声優は寺田農[注 1]、英語吹き替え版ではマーク・ハミル[2][3]。
人物像
継承名はロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ (Romuska Palo Ur Laputa)。
シータと同様にラピュタ王家の末裔であるが、彼女とは対照的に、ラピュタの力を自らの手中に収め、新たなラピュタ王として全世界に君臨することに強い野心を燃やす。シータとは違い、最初からラピュタのことをよく知っており、ラピュタの伝承を書き写した手帳を携行していた。シータの一族は飛行石を受け継いできたが、彼の一族はラピュタの古文書を受け継いでおり、手帳に書き写していた情報は全てこの古文書からのものである。茶色の髪に金色の瞳という容姿で、視力は低く、度の入ったサングラスを掛けている[注 2]。
軍のラピュタ探索作戦の指揮官であるモウロ将軍は、シータを拷問にかけてラピュタの秘密を吐かせようと考えていたのに対し、ムスカは手荒な真似は控え、一見紳士的な態度を見せる。しかし、その本性は己の目的の為には手段を一切選ばず、何のためらいもなく平然と味方を裏切り、他人の命すらも平気で奪うなど極めて冷酷非情な性格である。特に座乗艦だったゴリアテを撃沈した際には、乗組員たちが次々と海に落ちていくのを見て、「素晴らしい!最高のショーだと思わんかね。」「見ろ、人がゴミのようだ!」と言いながら笑っている。
若くして大佐の地位に登り詰め、政府の密命を受けていることから相当な切れ者であることが窺える。それに加えて教養も非常に高く、旧約聖書やラーマヤーナなど古今東西の古典に通じており、さらにラピュタ文字を解読出来るなど語学力も高い。また射撃の腕も優れており、暗闇の中で、遠距離からシータのツインテール、しかも結び目のみを両方とも片手で撃ち抜き、中折れ式リボルバー(エンフィールド・リボルバー)の再装填をわずか3秒で完了させている。パズーに対して、ドーラが渡した"大砲"と勝負することを持ちかけるなど、射撃の腕には絶対的な自信を持っている。また、ムスカが作中で使用している38口径のエンフィールド・リボルバーは監督の宮崎駿の好む銃であり、後に制作した『紅の豚』や『ハウルの動く城』にも登場している。
年齢は、1986年8月のアニメージュによると28歳。ロマンアルバムのキャラクター覚書では、32歳と紹介されている。
政府内におけるムスカ
政府の特務機関に所属している。階級は大佐で、政府の密命を受けて、謎の空中城塞ラピュタに関する調査を行っている。空賊のドーラと同様に暗号解読に長け、相手の暗号を一瞬にして解読する能力を持つ。モウロの打った暗号はドーラに容易に解読されているが、これは暗号とは名ばかりのラテン文字による単なるモールス符号であった[要出典]。
場面によって、2人から4人ほど黒眼鏡をかけた部下が同行している様子が描かれている(飛行船では3人、シータを捕えたティディス要塞では4人が登場し、ラピュタまで同行したのは2人である)。
名前
元々1つであったラピュタ王家は、地上に降りた際に2つに分かれた。シータの継承名は「リュシータ・トエル・ウル・ラピュタ」であるが、「ウル」はラピュタ語で「王」を、「トエル」は「真」を意味しており、合わせて「真のラピュタ王」、すなわち正統な王位継承者であることを表している。これに対して、ムスカの継承名「ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ」は、「ラピュタ王」ではあるものの、「真」を表す「トエル」がない。なお、「パロ」(παρ、par)はギリシャ語で「従属」の意味を示している(パロディを参照)。つまりトエル・ウル・ラピュタ家が本家、パロ・ウル・ラピュタ家は分家である。
劇中でのムスカ
- 序盤〜中盤
- 物語の冒頭ですでにシータを捕らえており、飛行船でどこかに移動していたところを、ドーラ一家による襲撃を受けて、シータを取り逃がす。その際に、シータにビンで頭を殴られて気絶している。
- その後、シータを再び捕らえると彼女の前でロボットを見せて真実を話し(ただし自身の事については伏せる)、拘束されたパズーの命を条件にラピュタへの道を示すよう強要する。その直後にロボットの暴走事故が起こり、そこに乱入したドーラ一家およびパズーの手でシータをまたしても奪い返されるが、シータの「守りの言葉」により、ラピュタの位置を差すようになったペンダントヘッドの飛行石を手に入れ、モウロとともにゴリアテに座乗しラピュタへ向かう。巨大な低気圧の渦である「竜の巣」において遭遇したドーラ一家の飛行船を撃破。更に飛行石が竜の巣の中心を指している事から、そのままゴリアテを進行させた。
- ラピュタ到着後
- 飛行石が近づいた事で竜の巣が晴れ、その中心にあったラピュタに到着すると、軍隊が黄金や財宝を略奪している間にゴリアテの無線機器を破壊し、本国への連絡手段を断ち、同じくラピュタに到達していたシータに対して三度目の拘束をする。彼女を引き連れて自分のみが知る通路を抜けてたどり着いた中心部でラピュタの機能を掌握、自身の正体を明かし、ラピュタ王の即位とラピュタの復活を宣言する。裏切りに気付いて討伐に赴いてきた軍隊に「ラピュタの雷」でその力を見せつけ、さらにモウロとその部下たちを抹殺、ロボットを使ってゴリアテを撃沈した。しかし、ゴリアテ撃沈に高揚している隙を突かれて拘束していたシータに抵抗され、飛行石を奪われる。
- 玉座の間へ逃げたシータに追いつき、拳銃でシータの(両三つ編みの)髪を撃ち飛ばし飛行石を戻すよう脅迫する[注 3]。そのすぐ後に姿を現したパズーと再会した彼女に、「3分間待ってやる」と言い、猶予を与える (マーク・ハミルがムスカに声をあてた英語版では1分間[注 4]。猶予を与えたのは拳銃に銃弾を再装填するためでもあった)。直後、シータとパズーの滅びの言葉によってペンダントヘッドが発した強烈な光を受けて視力を失い、「目が、目が〜!」と悲鳴を上げながら、崩壊するラピュタと共に遥か高空から下の海へと落ちていった。
脚注
注釈
- ^ 当初は根津甚八を予定していたが、根津本人が出演依頼を断ったため、寺田に変更された[1]。
- ^ ただし、モウロ将軍や将校たちとの会議中、サングラスを外し、素顔を見せているシーンがある。
- ^ この場面のやり取りは、映画と小説版では若干の違いがある。映画では、シータが「土から離れては生きられないのよ!」と言った後に両三つ編みの髪を撃ち飛ばすが、小説版では、「あなたはここから出ることもできずに、私と朽ち果てるのよ」と言った後に片方の三つ編みを撃ち落とし、それでも怯むことなくムスカを睨みつけるシータに「土から離れては-」と言われた後で、もう片方の三つ編みを撃ち落としている。また、パズーが駆けつけるのは、映画ではムスカが「小僧から石を取り戻せ!」と脅迫した後すぐであるが、小説ではこのセリフの後シータに「かわいそうな人、何もわかってない」と反論されたことで、シータの額に銃口を向けたところへパズーが駆けつける。
- ^ DVD(2002年発売)に収録されている英語音声版は、日本語版と同じく3分間と言っている。2014年に発売されたデジタルリマスター版DVDは、マーク・ハミルがムスカを担当した英語音声版である。
出典
関連項目