あのりふぐ

あのりふぐは、三重みえ県けん志摩しま市しの三重みえ外がい湾わん漁業ぎょぎょう協同きょうどう組合くみあい志摩しま支所ししょ安乗あのり事業じぎょう所しょ（旧きゅう・志摩しまの国くに漁業ぎょぎょう協同きょうどう組合くみあい）が扱あつかう天然てんねんのトラフグの地域ちいきブランド名なのことである。1999年ねん頃ころからブランド化かへの取とり組くみが始はじまり、2003年ねん8月がつに商標しょうひょう登録とうろくされている（登録とうろく番号ばんごう、第だい46990067号ごう）。ここでは、表題ひょうだいとあわせ伊勢湾いせわんでのトラフグの生態せいたいやトラフグ漁りょうについても述のべる。

概要がいよう

三重みえ外がい湾わん漁協ぎょきょうでは、あのりふぐを「伊勢湾いせわんを含ふくむ遠州灘えんしゅうなだから熊野灘くまのなだにかけての海域かいいきで漁獲ぎょかくされる体重たいじゅう700グラム以上いじょうの天然てんねんトラフグ」と定義ていぎしている。

伊勢湾いせわん付近ふきんでトラフグが確認かくにんされたのは、1970年代ねんだいといわれている。1980年代ねんだいからトラフグの捕獲ほかく高だかが大おおきくなる年としが発生はっせいするようになった。これら伊勢湾いせわん付近ふきんのトラフグは、安乗あのり漁港ぎょこう（あのりぎょこう）などで水揚みずあげされ、フグの卸おろし商しょうや加工かこう工場こうじょうの集中しゅうちゅうしていた下関しものせきへと陸路りくろで運はこばれていた。（詳くわしくは下関しものせきとふくを参照さんしょう）

後述こうじゅつするように伊勢湾いせわんの安乗あのり沖おきはトラフグの産卵さんらん場じょうであることが分わかり、冬場ふゆばにはトラフグの良よい漁場ぎょじょうとなる。1999年ねん頃ごろより安乗あのり漁協ぎょきょうが、安乗あのり港こうで水揚みずあげされるトラフグを「あのりふぐ」として地域ちいきブランド化かする動うごきを始はじめた。その後ご、図案ずあん化かしたトラフグと共ともに「あのりふぐ」を商標しょうひょう登録とうろく化かした。

さらに動うごきを漁業ぎょぎょう関係かんけい以外いがいにも広ひろげるため、観光かんこう業ぎょう、旅館りょかん業ぎょう、飲食いんしょく業ぎょうなどと「あのりふぐ協議きょうぎ会かい」を2003年ねんに設立せつりつ、志摩しま地方ちほうの店舗てんぽのみに限定げんていしてあのりふぐを取とり扱あつかう店みせを認定にんてい店てんとして指定していし、それ以外いがいの店舗てんぽで「あのりふぐ」の名称めいしょう使用しようを許可きょかしていない。これら認定にんてい店てんでは、クルマエビやアワビなど同おなじく志摩しま地方ちほうでとれる食材しょくざいと組くみ合あわせたふぐ料理りょうりを提供ていきょうするなどの工夫くふうがなされている。なお、当初とうしょの認定にんてい店てんは55店舗てんぽであった。

「あのりふぐ」ブランドの取とり組くみとして、以下いかの特徴とくちょう的てきな点てんが挙あげられる。

• 資源しげん保全ほぜんとブランドの両立りょうりつ

伊勢湾いせわんや遠州灘えんしゅうなだでの体重たいじゅう700g以下いかのトラフグは、自主じしゅ規制きせいとして再さい放流ほうりゅうを行おこなう。ブランド定義ていぎ内ないにふぐの体重たいじゅうを入いれることで、その規制きせいへの認知にんち度どを高たかめる努力どりょくが払はらわれている。また、トラフグの生態せいたい研究けんきゅうをすすめ、人工じんこう孵化ふかや幼魚ようぎょの放流ほうりゅうなどを定期ていき的てきに実施じっしし、また放流ほうりゅうをイベント化かするなどを行おこなっている。

漁期ぎょきを冬ふゆの11月から2月がつの間あいだに規制きせいし、同どう時期じきにしか出荷しゅっかしないことで資源しげん保護ほごを図はかる。同時どうじに消費しょうひ者しゃに旬しゅんのイメージを宣伝せんでんする効果こうかも期待きたいしている。

• 人材じんざい育成いくせいの推進すいしん

ふぐが下関しものせきへ集中しゅうちゅうする理由りゆうとして、猛毒もうどくであるテトロドトキシンを持もつふぐの処理しょりは独自どくじの技術ぎじゅつ・技能ぎのうが不可欠ふかけつであり、そのためフグの加工かこう場じょうが集積しゅうせきしている点てんがある。そのため、ふぐに関かんする食品しょくひん加工かこう全般ぜんぱんを地域ちいき内ないで行おこなえるように、ふぐに必要ひつような技術ぎじゅつ・技能ぎのうを持もつ地域ちいきの人材じんざい育成いくせいを推進すいしんしている。

• 観光かんこう業界ぎょうかいとの連携れんけいと地域ちいきへの販路はんろの限定げんてい

一般いっぱんに地域ちいきブランドは、認知にんちの向上こうじょうにより大だい消費しょうひ地ちへの販路はんろ拡販かくはんによる生産せいさん規模きぼの増大ぞうだいを目指めざすものが多おおい。しかしあのりふぐでは、販路はんろを地域ちいきの旅館りょかんや料亭りょうていの「認定にんてい店てん」に限定げんていしている。これにより生産せいさん物ぶつを消費しょうひ地ちに送おくり出だす量りょうの増加ぞうかを期待きたいするのではなく、ブランド力りょくで消費しょうひ者しゃを地域ちいき内ないへの観光かんこう客きゃくとして呼よび込こむ量りょうの増加ぞうかを期待きたいし、より高たかい経済けいざい効果こうかを得えることを狙ねらっている。

これら一連いちれんの事業じぎょうに対たいして、三重みえ県けんや志摩しま市しも財政ざいせい等とうで支援しえんを行おこなっており、結果けっかとしてトラフグの魚価ぎょか上昇じょうしょうや観光かんこう客きゃくの増加ぞうかなどが見みられるようになった。2005年ねんには、「地域ちいきづくり総務そうむ大臣だいじん表彰ひょうしょう・地域ちいき振興しんこう部門ぶもん」を受賞じゅしょう、農林水産省のうりんすいさんしょうから、「立たち上あがる農のう山やま漁村ぎょそん」（知的ちてき財産ざいさん分野ぶんや）に選定せんていされた。

一方いっぽうで、天然てんねんトラフグの漁獲ぎょかく高だかは年としによりバラツキが大おおきく安定あんていしておらず、ブランド確立かくりつには安定あんていしたトラフグの供給きょうきゅうが今後こんご必要ひつようとされる。また大量たいりょうにトラフグを扱あつかうためには、専せん門もんの加か工場こうじょう等とうの整備せいびも必要ひつようである。

遠州灘えんしゅうなだ、伊勢湾いせわんで水揚みずあげされる天然てんねんトラフグの生態せいたい

遠州灘えんしゅうなだ、伊勢湾いせわんのトラフグは、稚魚ちぎょ放流ほうりゅうとその捕獲ほかく状じょう況きょうなどから、瀬戸内海せとないかいなどの他ほかの水域すいいきのトラフグとは独立どくりつした系けい群ぐんであると推測すいそくされている。

この海域かいいきのトラフグは、紀伊きい半島はんとうから駿河湾するがわん沿岸えんがん、伊豆半島いずはんとう西岸せいがんを主おもな生息せいそく域いきとして回遊かいゆうしている。産卵さんらん場所ばしょは、三重みえ県けんの安乗あのり沖おきや愛知あいち県けんの渥美半島あつみはんとう周辺しゅうへん水域すいいきで、主おもに荒あらい砂地すなじを好このんで産卵さんらんが行おこなわれる。産卵さんらん期きは4月がつから5月がつごろで、産卵さんらんが終おえると雌めす魚ぎょはすぐに産卵さんらん場所ばしょから離はなれて回遊かいゆうを始はじめるが、雄ゆうは比較的ひかくてき長ながく産卵さんらん場所ばしょの水域すいいきにとどまる。

孵化ふかした稚魚ちぎょは伊勢湾いせわんや三河湾みかわわんの浅瀬あさせで成長せいちょうし、遠州灘えんしゅうなだ方面ほうめんへと回遊かいゆうを始はじめると考かんがえられているが、詳くわしい生態せいたいは不明ふめいである。

トラフグ生態せいたいの研究けんきゅうおよび資源しげん保護ほごへの取とり組くみ

1970年代ねんだいから伊勢湾いせわん付近ふきんではトラフグが漁獲ぎょかくされていたが、1989年ねんに年とし漁獲ぎょかく高だかが200トンを上回うわまわる大量たいりょう発生はっせいがあり、この原因げんいん調査ちょうさが同どう海域かいいきでのトラフグ研究けんきゅうの引ひき金がねとなった。

1990年ねんに、安乗あのり沖おきにトラフグ産卵さんらん場じょうが発見はっけんされ、同時どうじに天然てんねんのトラフグの卵たまご採取さいしゅに成功せいこうした。1995年ねんからはトラフグ稚魚ちぎょの放流ほうりゅう事業じぎょうを始はじめている。

遠州灘えんしゅうなだ、伊勢湾いせわんでのトラフグ漁りょう

遠州灘えんしゅうなだ、伊勢湾いせわんでのトラフグは、延縄はえなわ（底そこ延縄はえなわ）、巻網まきあみなどによる漁りょうで捕獲ほかくされる。三重みえ県けんの他ほかの漁協ぎょきょう、愛知あいち県けんや静岡しずおか県けんの漁協ぎょきょうとの間あいだに、トラフグ漁りょうに関かんする厳きびしい自主じしゅ規制きせいの合意ごういが成なされている。規制きせいの概要がいようは以下いかの通とおりである。

• 延縄はえなわ漁りょうは10月がつから翌年よくねんの2月がつ末まつまで、それ以外いがいの時期じきは原則げんそく禁漁きんぎょ
• 巻まき漁りょうは9月から翌年よくねんの2月がつ末まつまで、それ以外いがいの時期じきは原則げんそく禁漁きんぎょ
• 捕獲ほかくしたトラフグのうち体重たいじゅう700g以下いかの小型こがた魚ぎょは再さい放流ほうりゅう
• 延縄はえなわを使用しようする場合ばあいは基準きじゅんの縄なわの長ながさ、針はり数すう以下いかで実施じっし。操業そうぎょう時間じかんも制限せいげん

この地域ちいきのトラフグの漁獲ぎょかく高だかは年としにより、増減ぞうげんが激はげしく不安定ふあんていであるが、不定期ふていきに大量たいりょうのトラフグが発生はっせいすることが知しられている。

伊勢神宮いせじんぐうへの奉納ほうのう

三重みえ外がい湾わん漁協ぎょきょう安乗あのり事業じぎょう所しょでは、毎年まいとし2月がつ9日にちの「ふぐの日ひ」に合あわせてあのりふぐを伊勢神宮いせじんぐう皇すめらぎ大神宮だいじんぐう（内宮ないくう）に奉納ほうのうしている。2018年ねん（平成へいせい30年ねん）で20回かい目めの奉納ほうのうを迎むかえ、同年どうねんはあのりふぐの活魚いけうお14匹ひき23kgを奉納ほうのうした。

関連かんれん項目こうもく

• トラフグ
• ふぐ料理りょうり

参考さんこう文献ぶんけん

• 堀井ほりい豊ゆたか充たかし、黒木くろき洋明ひろあき『平成へいせい16年ねんトラフグ伊勢いせ・三河湾みかわわん系けい群ぐんの資源しげん評価ひょうか』中央ちゅうおう水産すいさん研究所けんきゅうじょ

外部がいぶリンク

• あのりふぐ公式こうしきページ
• 三重みえ外がい湾わん漁業ぎょぎょう協同きょうどう組合くみあい