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ゲル抽出ちゅうしゅつ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

分子生物学ぶんしせいぶつがくでは、ゲル抽出ちゅうしゅつ(ゲルちゅうしゅつ、えい: gel extraction)またはゲルたんはなれ(ゲルたんり、えい: gel isolation)とは、アガロースゲル電気でんきおよげどうアガロースゲルから損傷そんしょうDNA所望しょもうのフラグメント(断片だんぺん)をたんはなれするためにもちいられる技術ぎじゅつである。抽出ちゅうしゅつ目的もくてきのフラグメントを混合こんごうし、沈殿ちんでんさせ、簡単かんたんなステップで酵素こうそてきライゲーション結合けつごう)することができる。このプロセスは通常つうじょうプラスミドうえおこなわれ、初歩しょほてき遺伝子いでんし工学こうがく基礎きそである。

ゲル抽出ちゅうしゅつ手順てじゅん[編集へんしゅう]

DNAサンプルをアガロースゲルで電気でんきおよげどうしたのち抽出ちゅうしゅつには4つの基本きほんてきなステップがある。目的もくてきのフラグメントを特定とくていし、対応たいおうするバンドを分離ぶんりし、それらのバンドからDNAを分離ぶんりし、付随ふずいするしおよごれを除去じょきょする。

まず、ゲルに紫外線しがいせん照射しょうしゃして、においエチジウム染色せんしょくされたすべてのDNAを蛍光けいこうさせる。DNAを、変異へんいばらせいのある紫外線しがいせん必要ひつよう以上いじょうながくさらさないように注意ちゅういしなけれればならない。目的もくてきのバンドを識別しきべつし、カバーガラス剃刀かみそり物理ぶつりてき移動いどうする。したゲルのスライスには、目的もくてきのDNAがふくまれていなければならない。また、SYBR Safe DNAゲル染色せんしょく青色あおいろこう照射しょうしゃ利用りようするべつ方法ほうほうでは、においエチジウムや紫外線しがいせんによるDNA損傷そんしょうけることができる[1]

目的もくてきのDNAフラグメントを分離ぶんりして洗浄せんじょうするためにつぎにあげる方法ほうほうがある。

スピンカラム抽出ちゅうしゅつ[編集へんしゅう]

ゲル抽出ちゅうしゅつキットは、いくつかの主要しゅようなバイオテクノロジーメーカーから、1サンプルあたりやく1~2あめりかドルの最終さいしゅうてきなコストで入手にゅうしゅできる。これらのキットにふくまれている手順てじゅんしょでは通常つうじょう、ゲルスライスを3倍量ばいりょうカオトロピックざいに50 °Cで溶解ようかいしたのち溶液ようえきスピンカラムほう英語えいごばん処理しょりし(DNAはカラムないのこる)、70%エタノールで洗浄せんじょうし(DNAはカラムないのこり、しお不純物ふじゅんぶつあらながされる)、少量しょうりょう(30 µL)のみずまたは緩衝かんしょうえきでDNAを溶出ようしゅつする[2]

透析とうせき[編集へんしゅう]

ゲル断片だんぺんを、液体えきたい透過とうかするがDNAサイズの分子ぶんし透過とうかしない透析とうせきチューブ英語えいごばんれ、TEバッファー英語えいごばんひたしてもDNAがまく通過つうかしないようにする。チューブの周囲しゅうい電界でんかい発生はっせいさせ(ゲル電気でんきおよげどう同様どうよう方法ほうほうで)、DNAがゲルから移動いどうしてもチューブないのこるようにする。その、チューブ溶液ようえきをピペットでして、バックグラウンドを最小限さいしょうげんおさえ、目的もくてきのDNAをふく溶液ようえきる。

従来じゅうらい方法ほうほう[編集へんしゅう]

ゲル抽出ちゅうしゅつ従来じゅうらいほうでは、パラフィンフィルム(パラフィルムしゃ)をたたんでポケットをつくり、そのなかにアガロースフラグメントを配置はいちする。アガロースをゆびでポケットのすみ物理ぶつりてき圧縮あっしゅくすると、ゲルとその内容ないようぶつ部分ぶぶんてき液化えきかする。つぎに、このえきしずくをポケットからパラフィルムの外側そとがわうつし、ピペットでちいさなチューブにれる。ブタノール抽出ちゅうしゅつによりにおいエチジウムの染色せんしょく除去じょきょしたのち、フェノール/クロロホルムで洗浄せんじょうしたDNAフラグメントを抽出ちゅうしゅつする。

ゲル分離ぶんり欠点けってん[編集へんしゅう]

ゲルたんはなれ欠点けってんは、紫外線しがいせんこう使つかって物理ぶつりてき識別しきべつできないとバックグラウンドを除去じょきょできないことである。2つのバンドが非常ひじょう接近せっきんしている場合ばあい汚染おせんなしにそれらを分離ぶんりするのはむずかしい場合ばあいがある。目的もくてきのバンドを明確めいかく識別しきべつするために、さらに制限せいげん消化しょうか英語えいごばん必要ひつよう場合ばあいがある。類似るいじサイズの不要ふようなバンドに固有こゆう制限せいげん部位ぶいは、これらの潜在せんざいてき汚染おせん物質ぶっしつ分解ぶんかいするのに役立やくだつ。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ Quest: An Invitrogen Publication for Discovery Vol. 4, Issue 2, pp. 44–45 (2007).
  2. ^ Zymoclean Gel DNA Recovery Kit Instruction Manual. http://www.zymoresearch.com/zrc/pdf/D4001i.pdf