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コンピュータオセロ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
コンピュータオセロ
NTest - 強豪きょうごうオセロプログラム

コンピュータオセロは、みずか選択せんたくしてオセロ対局たいきょくおこな能力のうりょくつコンピュータ技術ぎじゅつである。

ここでは、コンピュータオセロの技術ぎじゅつてき情報じょうほうについて解説かいせつする。オセロとコンピュータとのかかわり一般いっぱんについての外延がいえんてき情報じょうほうは、オセロとコンピュータ参照さんしょう

オセロプログラム

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現在げんざいインターネットから無料むりょうでダウンロード可能かのうNTestやSaio、Edax、Cassio、Ponty Stone、Herakles、WZebra、Logistelloといったおおくのオセロプログラムが存在そんざいする。これらのプログラムは、最新さいしんコンピュータうえ動作どうささせたとき最強さいきょう人間にんげんのプレーヤーを容易よういかすことができる。これは、結果けっかはコンピュータと人間にんげんとも予測よそくできるが、コンピュータがそれらの予測よそくすぐれているためである[1]

探索たんさく技術ぎじゅつ

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コンピュータオセロプログラムはゲームもちいてすべての可能かのう探索たんさくする。理論りろんじょうは、プログラムはすべてのこま配置はいち/ふし調しらべ、ここでは1人ひとりのプレーヤーによるそれぞれのは「プライ plyそう)」とばれる。この探索たんさく任意にんい最大さいだい探索たんさく深度しんどまで、あるいはプログラムが最終さいしゅう配置はいち到達とうたつしたと決定けっていするまでつづく。

ミニマックスネガマックスばれるこのアプローチのばか正直しょうじき実装じっそうは、実際じっさいじょう時間じかんないちいさな深度しんどしか探索たんさくすることができない。そのため、より探索たんさくする速度そくどおおきくすための様々さまざま手法しゅほう考案こうあんされている。これら、αあるふぁβべーたえだNegascoutMTD-f、NegaC*にもとづく[2]

よい順番じゅんばん置換ちかんひょう選択せんたくてき探索たんさくといったいくつかの経験けいけんそく探索たんさくおおきさをらすためにもちいられる[3]

マルチプロセッサあるいはマルチコアをつマシンじょうでの探索たんさく高速こうそくするため、「並列へいれつ探索たんさく」も実装じっそうされる。ABDADA[4]あるいはAPHID[5]のように、オセロについて複数ふくすう実験じっけんがなされている。近年きんねんのプログラムじょうでは、YBWC[6]がよりこのまれる手法しゅほうのようにえる。

評価ひょうか技術ぎじゅつ

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評価ひょうか関数かんすう作成さくせいするためには3つのことなる枠組わくぐみが存在そんざいする。

いし-ますひょう

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ことなるますことなる価値かちつ - かくはよく、かくとなりますわるい。対称たいしょうせい無視むしすると、盤上ばんじょうには10のことなる位置いちがあり、これらの個々ここ位置いちは3つの可能かのうせいについて価値かちくろしろ空白くうはく)があたえられる。より洗練せんれんされた手法しゅほうは、ゲームのことなる段階だんかいでそれぞれの位置いちことなる価値かちつ。たとえば、かく序盤じょばん中盤ちゅうばん前半ぜんはんでは終盤しゅうばんよりも重要じゅうようである[7]

可動かどうせい

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ほとんどの人間にんげんのプレーヤーは、可動かどうせい可能かのうかず)を最大さいだいし、境界きょうかいいし空白くうはくかく隣接りんせつしたいし)を最小さいしょうすることを目指めざす。プレーヤーの可動かどうせい相手あいて可動かどうせい計算けいさんされ、プレーヤーの潜在せんざいてき可動かどうせい相手あいて潜在せんざいてき可動かどうせい同様どうよう計算けいさんされる[8]。これらの指標しひょう非常ひじょうはやつけることができ、つよさをいちじるしく上昇じょうしょうさせる。ほとんどのプログラムはえんかく配置はいちかんする知識ちしきゆうしており、中盤ちゅうばん前半ぜんはんでのいしかず最小さいしょうしようとこころみる(人間にんげんのプレーヤーでも使つかわれる戦略せんりゃく[7]

パターン/パターン係数けいすう

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可動かどうせい最大さいだい境界きょうかい(のいし)の最小さいしょうは、局所きょくしょてき配置はいちへと分解ぶんかいすることができる。通常つうじょう実装じっそうは、それぞれのくだりれつたいかくかく配置はいち別々べつべつ評価ひょうかし、それぞれの価値かち合計ごうけいするため、おおくのことなるパターンを評価ひょうかしなければならない[7]すべての配置はいちについての価値かち決定けっていする過程かていは、強豪きょうごうプレーヤーあいだでプレーされた試合しあいおおきなデータベースを入手にゅうしゅし、すべての試合しあいからそれぞれのゲーム段階だんかいにおけるそれぞれの配置はいちについての統計とうけい計算けいさんすることによっておこなわれる[7]

勝者しょうしゃ対応たいおうするいしかずだけボーナスをるようにおもけされたいしかず指標しひょうが、最終さいしゅうてきいしかず予測よそくするためにもっと一般いっぱんてきもちいられる[7]

オープニングブック

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オープニングブック(序盤じょばん定石じょうせきのデータベース)は、まずいオープニングに反撃はんげきするよい方法ほうほうなされている一般いっぱんてきなオープニングをあたえることでコンピュータプログラムをたすける。すべての強力きょうりょくなプログラムはオープニングブックを使用しようし、それぞれの試合しあい自動的じどうてき自身じしん定石じょうせきデータベースを更新こうしんする。試合しあいデータベースちゅうすべての試合しあいすべてのポジションを調しらべ、データベースの試合しあいたれていない最良さいりょう決定けっていするため、以前いぜん探索たんさくされたポジションを記録きろくするための置換ちかんひょうもちいられる。これは、それらのポジションをふたた探索たんさくする必要ひつようがないことを意味いみする[7]個々ここのポジションについてふか探索たんさく実行じっこうしなければならないためこれは多大ただい時間じかん必要ひつようとするが、一度いちど実行じっこうしてしまえば、定石じょうせきデータベースの更新こうしん容易よういである。それぞれの試合しあいをプレーしたのちすべてのあたらしいポジションが最良さいりょう偏差へんさについて探索たんさくされる。

完全かんぜん解析かいせき手法しゅほう

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4×4ばん

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4×4ばんオセロは非常ひじょうちいさなゲームち、すべての可能かのう局面きょくめん(1せんまんちかく)を生成せいせいするミニマックスほうもちいるおおくの単純たんじゅんなオセロプログラムによって1びょう以内いない解決かいけつされる。結果けっかしろ後手ごて)の10せきちである[9]

6×6ばん

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6×6ばんオセロは、すべての可能かのう局面きょくめん(3.6ちょうちかく)を生成せいせいするミニマックスほうもちいるおおくの単純たんじゅんなオセロプログラムによって100時間じかん以内いない解決かいけつされる。結果けっかしろ後手ごて)の4せきちである[10][11]

8×8ばん

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8×8ばんオセロのゲームのサイズは1054ノードと推定すいていされており、合法ごうほうてきなポジションのかずは1028推定すいていされている。数学すうがくてきには未解決みかいけつであるが、はや並列へいれつハードウェアじょうあるいは分散ぶんさんコンピューティングつうじたプログラムによる徹底的てっていてき計算けいさんおこなうことでかいつけることは可能かのうかもしれない[よう出典しゅってん]

すうおおくのけへの道筋みちすじしめされているが、このような道筋みちすじ完全かんぜん判明はんめいしていない[12]

一部いちぶ強豪きょうごうプログラムは長年ながねん自身じしんのデータベースを拡張かくちょうしてきた。ななり、たてり、ならりの23つの主要しゅようなオープニングにかんしては、ななりとたてりはけのすじいた傾向けいこうにあり、一方いっぽうならりはくろ先手せんて)のちとなる。は、たてりののちよりもななりののちほうおおきいようである[13]ならりはくろ先手せんて)に非常ひじょう有利ゆうりであり、完璧かんぺきった場合ばあいつねつことができる[14]証明しょうめいされてはいないが、実質じっしつてきには双方そうほうのプレーヤーが完璧かんぺきった場合ばあい試合しあいつねけとなる。オープニングブックを使用しようした標準ひょうじゅんてきゲームでは、トッププログラムのけるかくりつは1%未満みまんである[よう出典しゅってん]

10×10ばん

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10×10ばんでは、先手せんてくろ)がよりちやすい。10x10は中盤ちゅうばんがよりながい。コンピュータの解析かいせきでは、両者りょうしゃ完璧かんぺきったとするとけがもっとこりやすいことがしめされている。ゲーム複雑ふくざつさは非常ひじょうたかく1090推定すいていされており、合法ごうほうてきなポジションのかずは1044推定すいていされている[よう出典しゅってん]

年表ねんぴょう

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  • 1977ねん: Creative ComputingがEd WrightによってFORTRANかれたオセロのバージョンを発表はっぴょうした[15][16]。なお、日本にっぽんでは8がつ7にちに「だいかい 全日本ぜんにほんオセロ選手権せんしゅけん大会たいかい」(日本にっぽんオセロ連盟れんめい主催しゅさい)にて人間にんげんvsコンピューターのオセロゲーム対決たいけつおこなわれている。コンピューター代表だいひょう電電でんでん公社こうしゃげん・NTT)技術ぎじゅつきょく室谷むろたに正芳まさよし調査ちょうさやくが、どう公社こうしゃ大型おおがたコンピューターに「10の60じょうの"しゅ"を記憶きおくした」というソフトウェアをんだもの。たいする人間にんげん代表だいひょう日本にっぽんオセロ連盟れんめい長谷川はせがわ会長かいちょうや、前年ぜんねんどう大会たいかい男子だんし2強豪きょうごうらがえらばれた。結果けっかはコンピューターの20しょう8はい[17]
  • 1978ねん: 任天堂にんてんどうレジャーシステムアーケードゲームコンピューター・オセロ」をリリースした[18][19]
  • 1980ねん: Mike ReeveとDavid LevyによってかれたオセロプログラムMoor世界せかいチャンピオン井上いのうえひろしとのろくばん勝負しょうぶで1しょうげた[18]ノースウェスタン大学だいがくのPeter W. FreyがBYTEにおいてコンピュータと人間にんげんのオセロ戦略せんりゃくについて議論ぎろんし、CDC 6600うえ動作どうさするWriteのプログラムに容易ようい勝利しょうりするとFreyが主張しゅちょうするオセロゲームTRS-80について議論ぎろんした[16]カーネギーメロン大学だいがくのPaul RosenbloomはIAGO開発かいはつし、ノースウェスタン大学だいがくおこなわれたコンピュータの大会たいかいで3はいった[20]
  • 1981ねん: DEC KA10うえ動作どうさするIAGOが、カリフォルニア大学だいがくサンタクルーズこうでのSanta Cruz Open Othello Tournamentでその19の対戦たいせん相手あいてたいして無敗むはい優勝ゆうしょうした。Charles HeathのTRS 80ベースのゲームは2であった。マイクロコンピュータ CPUベースエンジンが2から7め、メインフレームやミニコンピュータを上回うわまわった。Freyは、これがコンピュータオセロがよりはや浮動ふどう小数点しょうすうてん演算えんざんといった大型おおがたコンピュータの複数ふくすう利点りてんから恩恵おんけいけていないためだと推測すいそくした[20]
  • 1980年代ねんだいまつ: Kai-Fu LeeとSanjou MahajanはオセロプログラムBILL作成さくせいした。BILLはIAGOとているが、ベイズ学習がくしゅうんでいる。BILLはIAGOを確実かくじつかした[18]
  • 1992ねん: Michael BuroはオセロプログラムLogistello開発かいはつはじめた。Logistelloの探索たんさく技術ぎじゅつ評価ひょうか関数かんすう、パターンの知識ちしきベースはふるいプログラムのものよりもすぐれていた。Logistelloは10まんきょく以上いじょう自分じぶん自身じしん対戦たいせんすることで仕上しあげられた[18]
  • 1997ねん: Logistelloは世界せかいチャンピオン村上むらかみけんとのろくばん勝負しょうぶ全勝ぜんしょうした。実際じっさいには、それ以前いぜんからコンピュータオセロは人間にんげん上回うわまわっており、1997ねん時点じてんで、Logistelloがいかなる人間にんげんよりもつよいことはうたがいようがなかった[18][21][22]
  • 1998ねん: Michela BuroはLogistelloの開発かいはつ中止ちゅうしした。オセロにおける研究けんきゅうてき興味きょうみ幾分いくぶんおとろえたが、NtestやSaio、Edax、Cassio、WZebra、Heraklesをふくむいくつかのプログラムの開発かいはつつづいた[18]
  • 2004ねん: Ntestが(Logistelloよりもかなりつよい)最強さいきょうプログラムとなった。
  • 2005ねん: Ntest、Saio、Edax、Cyrano、WZebraがLogistelloよりもかなりつよくなった。NtestとWZebraが引退いんたいした。
  • 2011ねん: Saio、Edax、CyranoがLogistelloやそののプログラムよりも高速こうそくになった。
  • 2019ねん: 吉田よしだたくしん開発かいはつした「さいじゃくオセロ」が公開こうかいされた[23][24][25]従来じゅうらいのプログラムではちを目指めざすものであるが、この「さいじゃくオセロ」はまったくのせい反対はんたいになっており人間にんげんけるのがむずかしくなっている。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ http://www.dcs.gla.ac.uk/~daw/masters-projects/dissertations/Colquhoun.2008.pdf
  2. ^ Jean-Christophe Weill (1992). The NegaC* Search. ICCA Journal, Vol. 15, No. 1, pp. 3-7.
  3. ^ Buro, M. (1997). “Experiments with Multi-ProbCut and a New High-Quality Evaluation Function for Othello”. Games in AI Research: 77-96. http://www.cs.ualberta.ca/~mburo/ps/improve.pdf. 
  4. ^ Jean-Christophe Weill (1996). The ABDADA Distributed Minimax Search Algorithm. Proceedings of the 1996 ACM Computer Science Conference, pp. 131-138. ACM, New York, N.Y, reprinted ICCA Journal Vol. 19, No. 1
  5. ^ Mark Brockington (1997). KEYANO Unplugged - The Construction of an Othello Program. Technical Report TR-97-05, Department of Computing Science, University of Alberta.
  6. ^ Rainer Feldmann, Peter Mysliwietz, Burkhard Monien (1991). A Fully Distributed Chess Program. Advances in Computer Chess 6
  7. ^ a b c d e f Writing an Othello program April 02, 2007
  8. ^ How Ntest Works March 02, 2005
  9. ^ Solution of Othello 4 x 4 September 02, 2008
  10. ^ A free software for solving 4x4 and 6x6 othello
  11. ^ Perfect play in 6x6 Othello from two alternative starting positions November 17, 2004
  12. ^ Edax 4.0 Opening Book[リンク] November 01, 2008
  13. ^ Strongest othello program in term of artificial intelligent[リンク]
  14. ^ Saio's book[出典しゅってん無効むこう]
  15. ^ Wright, Ed (November–December 1977). “Othello”. Creative Computing: pp. 140–142. http://www.atariarchives.org/bcc3/showpage.php?page=258 18 October 2013閲覧えつらん 
  16. ^ a b Frey, Peter W (July 1980). “Simulating Human Decision-Making on a Personal Computer”. BYTE: pp. 56. https://archive.org/details/byte-magazine-1980-07/1980_07_BYTE_05-07_Computers_and_Education/page/n57/mode/2up?view=theater 18 October 2013閲覧えつらん 
  17. ^ 毎日新聞まいにちしんぶん朝刊ちょうかん (7th August 1977). “今日きょうなん?】8がつ7にち世界せかいはつ人間にんげんとコンピューターがオセロ対決たいけつ(1977ねん)/ 雑学ざつがくネタちょう”. pp. 昭和しょうわ52ねん8がつ9にち. 27 August 2023閲覧えつらん
  18. ^ a b c d e f The History of Computer Games
  19. ^ Game Machine” (PDF). ゲームマシン アーカイブ - Game Machine Archive. ゲームマシン だい98ごう. p. 18 (1978ねん6がつ15にち). 2019ねん6がつ9にち閲覧えつらん。 “コンピューター・オセロ テーブルがたTVゲーム発売はつばいした任天堂にんてんどう
  20. ^ a b Frey, Peter W (July 1981). “The Santa Cruz Open / Othello Tournament for Computers”. BYTE: pp. 16. https://archive.org/details/byte-magazine-1981-07/1981_07_BYTE_06-07_Energy_Conservation/page/n27/mode/2up?view=theater 18 October 2013閲覧えつらん 
  21. ^ 人間にんげんVSコンピュータオセロ 衝撃しょうげきの6せん全敗ぜんぱいから20ねんもと世界せかいチャンピオン村上むらかみけんさんにいた「けたのちえてきたもの」 (2/3)”. ITmedia (2017ねん10がつ21にち). 2020ねん3がつ22にち閲覧えつらん
  22. ^ 人間にんげんVSコンピュータオセロ 衝撃しょうげきの6せん全敗ぜんぱいから20ねんもと世界せかいチャンピオン村上むらかみけんさんにいた「けたのちえてきたもの」 (3/3)”. ITmedia (2017ねん10がつ21にち). 2020ねん3がつ22にち閲覧えつらん
  23. ^ けるのがむずかしい」…世界せかいさいじゃくのオセロAIを体験たいけん開発かいはつしゃ誕生たんじょうのきっかけをいた【特集とくしゅう
  24. ^ けられるならけてみてくれ!」 世界せかいさいじゃくのオセロAIが開発かいはつされ、けられないと話題わだい
  25. ^ 世界せかいさいじゃくのオセロAI」が話題わだい一体いったいなにのためにつくったの?開発かいはつしゃいた

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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