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スリックタイヤ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
スリックタイヤ
タイヤの粘着ねんちゃくせいにより路面ろめん小石こいしやごみが付着ふちゃくしている

スリックタイヤ(Slick tyre, Slick tire)とは、サイピング排水はいすいようみぞ)のない、おも舗装ほそう路面ろめん走行そうこうするために使用しようされる車両しゃりょうようタイヤ

特徴とくちょう

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自動車じどうしゃようスリックタイヤは路面ろめんとの摩擦まさつによる発熱はつねつでタイヤ表面ひょうめんかしてたか粘着ねんちゃくせいることをおも目的もくてきとしており、そのメカニズムはガムテープにている。そのためタイヤ表面ひょうめん充分じゅうぶん加熱かねつされていないと性能せいのう充分じゅうぶん発揮はっきすることができない。その性質せいしつじょう一般いっぱんどう制限せいげん速度そくどでは発熱はつねつによるグリップがられず、ぎゃく危険きけんであるため使用しようされることは通常つうじょうなく、おもモータースポーツにおいて乾燥かんそう舗装ほそう路面ろめん走行そうこうするさい使用しようされる。

みぞがないためれた路面ろめんではハイドロプレーニング現象げんしょう発生はっせいしやすく、水分すいぶんがタイヤのねつうばいグリップもいちじるしく低下ていかするため、雨天うてんでの使用しよう非常ひじょう危険きけんである。この場合ばあい、スリックタイヤにみぞ加工かこうしたカット・スリック、またはあめ専用せんようレインタイヤ使用しようされる。ミシュランFIA 世界せかい耐久たいきゅう選手権せんしゅけんよう小雨こさめでも使つかえる専用せんようのスリックタイヤ(通称つうしょうマジックスリック)を用意よういしているが、これは例外れいがいえる。

ゴルフじょうのカートやロードローラーなど地面じめん路面ろめん模様もようけたくない場合ばあい用途ようととしても利用りようされる。自転車じてんしゃようとしては軽量けいりょうつくることが出来できるので、舗装ほそう路面ろめんはや快適かいてきはしるタイヤとしても利用りようされている。

法律ほうりつ

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日本にっぽん

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道路どうろ運送うんそう車両しゃりょうほうにてみぞのない自動車じどうしゃようタイヤは公道こうどう使用しようすることができないためスリックタイヤは使つかえない(道路どうろ運送うんそう車両しゃりょう保安ほあん基準きじゅん細目さいもくさだめる告示こくじ167じょうによる)。自転車じてんしゃ場合ばあい使用しよう可能かのうである。

モータースポーツ

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サーキット走行そうこうもちいられたのちのタイヤ

路面ろめん状況じょうきょうによって性能せいのういちじるしく変化へんかするため、レース戦略せんりゃくやレーサーのこのみにおうじて、レースにおいては複数ふくすう種類しゅるい運用うんようされることがおおい。これらは長時間ちょうじかん走行そうこうせい維持いじ性能せいのう短時間たんじかんにおける走行そうこう性能せいのう路面ろめん舗装ほそうちがとう対応たいおうし、様々さまざまなものが使用しようされる。短時間たんじかんのグリップ性能せいのう追求ついきゅうしたタイヤは非常ひじょうやわらかく、アスファルトのうえ走行そうこうすることによって、まるでしゴムをかけるように簡単かんたん表面ひょうめんがえぐられていく。

F1では1998ねん~2008ねんまで、危険きけんなほどはやくなりぎた旋回せんかい速度そくど制限せいげんする目的もくてきで、レギュレーションにより、グルーブドタイヤ使用しよう義務付ぎむづけられていたが、2009ねんからふたたびスリックタイヤを使用しようしている。
グルーブドタイヤによってコーナリングスピードはちたが、ストレートでスリックタイヤよりもはやくなってしまった。これはグルーブドタイヤがスリックタイヤよりもコンパウンドがかたく、そのぶんころがり抵抗ていこう低減ていげんしたためストレートのトップスピードがびたのである[1]

またタイヤ競争きょうそう激化げきかしていた時代じだいには、かくカテゴリにおいて予選よせんように、寿命じゅみょう極端きょくたんみじかいが非常ひじょうたかいグリップをこと可能かのう予選よせんようタイヤ(Qタイヤ)なども用意よういされていた。しかし、寿命じゅみょうみじかさを考慮こうりょしてタイムアタック以外いがい周回しゅうかいいちじるしくペースダウンしてタイムアタック周回しゅうかい最大限さいだいげん性能せいのうようとする行動こうどうが、タイムアタックちゅうくるまとの速度そくど助長じょちょうして非常ひじょう危険きけんであったことから、徐々じょじょにQタイヤは廃止はいしされていった。現在げんざいでは、予選よせん本戦ほんせん同一どういつのタイヤを使用しようすることを義務ぎむづけたり、予選よせん本戦ほんせんつうじて使用しようできるタイヤの種類しゅるい(コンパウンド)自体じたい指定していしたりと、Qタイヤが存在そんざいできないようにしているカテゴリがおおい。スーパーバイク世界せかい選手権せんしゅけんはスーパーポールよう専用せんようのQタイヤが用意よういされるめずらしいレースである。

ドラッグレースにおけるスリックタイヤはおもにドラスリとばれ、おも製造せいぞうメーカーはミッキートンプソンやグッドイヤーなどである。このタイヤの特徴とくちょうラジアル構造こうぞうではなくバイアス構造こうぞうであることと、コンパウンドが極端きょくたんやわらかいことである。空気圧くうきあつ極端きょくたんひく設定せっていされ、タイヤがたわむことでグリップをかせぐものである。

寿命じゅみょう

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公道こうどうようタイヤと同様どうようにスリップサインでコンパウンドのざんりょうることが出来できる。表面ひょうめんにスリップサインようあなひらいておりあなくなった(あなふかさに相当そうとうする部分ぶぶんまで磨耗まもうした)場合ばあい、タイヤの寿命じゅみょうである。スリックタイヤの寿命じゅみょうは、まずタイヤの接地せっちめん構成こうせいするゴムの磨耗まもう状態じょうたい決定けっていされ、しばしば「コンパウンドがくなる」と表現ひょうげんされる。コンパウンド部分ぶぶんうしなわれるとグリップりょく急激きゅうげき低下ていかし、タイヤとしての性能せいのう発揮はっきできなくなる。

競技きょうぎちゅう異常いじょう発熱はつねつによりタイヤ表面ひょうめん沸騰ふっとうして気泡きほうができてしまうことがある。これはブリスターとばれ、タイヤの性能せいのう劇的げきてき低下ていかし、ほとんどの場合ばあい交換こうかん余儀よぎなくされ、そのまま走行そうこうつづけるとバーストなどをこす危険きけんがある。

一度いちど使用しようして高温こうおんさらされたタイヤは表面ひょうめん素材そざい組成そせい変化へんかすることとなり、これがグリップりょく低下ていかまねく。このためコンパウンド自体じたいのこっていてもすで本格ほんかくてき競技きょうぎには使用しようできない場合ばあいもある。ぎゃくに、適切てきせつ温度おんどいち表面ひょうめんねつれて表面ひょうめん組成そせい意図いとてき変化へんかさせることでブリスターの発生はっせいふせぐことができる。モータースポーツではこの行為こういを「かわむき」とぶ。

このほか、グリップりょくがタイヤ表面ひょうめん素材そざいところおおきく、製造せいぞう時間じかん経過けいかしているものは使用しようであっても劣化れっかにより性能せいのう発揮はっきできなくなる。これはのタイヤにもえることであるが、高性能こうせいのう要求ようきゅうされる競技きょうぎようタイヤの場合ばあい、これはしばしば「賞味しょうみ期限きげん」などとばれ、この期間きかん極端きょくたんみじかい。なお、タイヤ表面ひょうめんけてふるいタイヤのグリップりょくもどす「タイヤソフナー」とばれる薬剤やくざいは、おおくの公式こうしき競技きょうぎではタイヤの加工かこう一種いっしゅなされ禁止きんしされている。

入手にゅうしゅかんする注意ちゅういてん

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あくまで競技きょうぎようタイヤであり、しかも一部いちぶ競技きょうぎでしか使用しようできないことから、スリックタイヤを一般いっぱん流通りゅうつうさせる必要ひつようせいく、また法律ほうりつじょう公道こうどう使用しよう可能かのうSタイヤちがい、装着そうちゃくして公道こうどうること自体じたい違反いはんとなるタイヤである。このため日本にっぽんでは、流通りゅうつう自体じたい自主じしゅ規制きせいがある。

  • タイヤ自体じたい公道こうどうでは使用しようできないむね明記めいきされており(おおくは「For competition」という刻印こくいんがサイドウォールにある)、のタイヤとの区別くべつがしやすいようになっている。
  • おおくの場合ばあい特定とくていの(スリックタイヤが使用しようできる)競技きょうぎ参加さんかしゃにしか販売はんばいされない。
  • 競技きょうぎ規則きそくで「スリックタイヤの譲渡じょうと不可ふか」とさだめていることが普通ふつうである

こうした自主じしゅ規制きせいにより、一般いっぱん消費しょうひしゃ容易よういにスリックタイヤを入手にゅうしゅ使用しようできないようなっている。しかしそのためSタイヤより安価あんか入手にゅうしゅできるという、一見いっけんおかしな現象げんしょうきている。

その

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  • ブロックパターンでない、舗装ほそう走行そうこうようMTBようタイヤをこうこともある。
  • ゴルフじょう使用しようされるグリーン専用せんよう乗用じょうよう芝刈しばかには、トレッドパターンでしばいたむのをふせ目的もくてきでスリックタイヤが装着そうちゃくされている。ホイールサイズはおもに8インチで、バイアス構造こうぞうのものがほとんどである。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 『サーキット燦々さんさん』(p363, p364)より。

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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