ズルナ

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ズルナトルコ: zurna)は西にしアジア諸国しょこくにおける民俗みんぞく楽器がっきの1つで、ダブルリードかた木管もっかん楽器がっきである。

トルコの代表だいひょうてき楽器がっきである。

歴史れきし[編集へんしゅう]

古代こだいペルシア時代じだいつくられた、ソルナというダブルリード楽器がっき起源きげんであるが、現在げんざいいたるまで基本きほん構造こうぞうはあまり変化へんかしていない。現在げんざいこの楽器がっき使用しよう地域ちいきひろがっており、かく地域ちいきでさまざまな呼称こしょうがついている。トルコ以外いがいでは、れいとして、現代げんだいペルシアではスルナアラビアではスルナイしょうされているほか、地域ちいきによっては、ミズマール(mizmār, エジプト)やズルラ(zurla)など、ほかにもいろいろな呼称こしょうがある。中東ちゅうとうのみならず、かつてオスマン帝国ていこくりょうだったブルガリアマケドニアなどのバルカン半島ばるかんはんとう諸国しょこくでもこの楽器がっき演奏えんそうされている。

つら音色ねいろをした非常ひじょう音量おんりょうおおきいおと楽器がっきであり、そのため室内楽しつないがくにはあまりてきさず、おも野外やがい演奏えんそうされる。トルコをはじめ西にしアジア諸国しょこくにおいては、祭礼さいれい舞踊ぶようなどの音楽おんがく不可欠ふかけつ楽器がっきである。

またズルナは、現在げんざいのオーケストラにおける、オーボエバスーン(ファゴット)の原型げんけいでもある。

楽器がっき構造こうぞう[編集へんしゅう]

ズルナは地方ちほうによって材質ざいしつ概観がいかんおおきさなどが若干じゃっかんことなるが、おおまかにえば楽器がっき構造こうぞうつぎのようになる。

ズルナの本体ほんたい部分ぶぶん木製もくせいであり、ものによって全長ぜんちょうはさまざまであるが、おおむね30 cm - 60 cmたてふえであり、演奏えんそうしゃ要求ようきゅうする音域おんいきおうじてさまざまなながさの楽器がっき製作せいさくされている。ゆびあなひょうに7つ、うらに1つのけい8つであり、なかには下方かほう通気つうきあながあるものもある。また下方かほうクラリネット同様どうよう円錐えんすい形状けいじょうひろがっている。

吹口の基本きほんてき構造こうぞうはオーボエのダブルリードとほぼおなじであり、はば7 mmほどの2まいあしくきリード)をうすけずってかさわせたものが吹口である。ただ、2まい固定こていするのにオーボエではいといてコルクで固定こていするが、ズルナではいといたうえ真鍮しんちゅうほそいパイプにはめて固定こていする。この真鍮しんちゅうパイプをつけたリードを楽器がっき本体ほんたい上部じょうぶにはめて演奏えんそうする。

演奏えんそう方法ほうほうもオーボエとは若干じゃっかんことなる。ズルナでは、リードを固定こていしている真鍮しんちゅうパイプをくちびるくわえ、リード全体ぜんたい口腔こうくうないふくんで演奏えんそうする。そのため、くちびる安定あんていしてくわえて演奏えんそうできるようにするために、真鍮しんちゅうパイプの外側そとがわにぴったりとはまる円盤えんばんじょうのストッパー(これをピルエットという)がついていることもおおい。一方いっぽうのオーボエにおいては、くちびるでリードをはさむようにしてくわえ、そのくわ加減かげんほろ調整ちょうせいして音色ねいろ変化へんかそうとする演奏えんそうほうをとる。

演奏えんそう形態けいたい[編集へんしゅう]

メフテルハーネにおけるズルナ奏者そうしゃ手前てまえ紺色こんいろ衣装いしょうている隊員たいいん

西にしアジア諸国しょこく、とくにトルコでは、ダウル(トルコ:davul)とばれるだい太鼓たいこのリズム伴奏ばんそうとセットで演奏えんそうされることが非常ひじょうおおい。とくに民間みんかんにおける祭礼さいれい舞踊ぶよう伴奏ばんそうでは、ズルナとダウルのみによる演奏えんそうがごく一般いっぱんてきである。

また、オスマン帝国ていこく時代じだい軍楽隊ぐんがくたいであるメフテルハーネにおいても、ズルナとダウルは不可欠ふかけつ楽器がっきである。

派生はせい楽器がっき[編集へんしゅう]

古代こだいペルシャ地方ちほうまれたソルナ(スルナ)は後世こうせい東西とうざい伝播でんぱしていき、各地かくち改造かいぞうされ呼称こしょう変化へんかする。東方とうほうではまず、インドでシャーナーイやナーガスワラムがつくられており、さらに東南とうなんアジアではタイのピー・チャモンなどがある。さらに中国ちゅうごくにはソーナー(嗩吶、簡体字かんたいじは唢呐、ピンイン:suǒnà)、朝鮮半島ちょうせんはんとうにではテピョンソ(태평소、太平たいへいしょう)があり、これらは円錐えんすいじょう開口かいこう朝顔あさがお)が金属きんぞくせい真鍮しんちゅうなど)になっている。

一方いっぽう西方せいほうへは、まずトルコからバルカン半島ばるかんはんとう伝播でんぱした。ブルガリアギリシアではトルコめいがほぼそのまま使つかわれズルナ(zurna、ときにzournasとも)とばれ、原型げんけいをあまりえずに現在げんざい演奏えんそうされつづけている。一方いっぽう西欧せいおう諸国しょこくへも楽器がっき伝播でんぱしたが、こちらでは「ソルナ」系統けいとう名前なまえもちいられず、「あし」のラテン語らてんご calamus を語源ごげんとしてチャラメラ(charamela)などとばれ(チャルメラ語源ごげん)、フランスではシャルメル(chalemelle)とばれ、このかたりから英語えいごではショーム(shawm)、ドイツではシャルマイ(Schalmei)とばれるようになる。これら西欧せいおうのショーム(チャラメラ)はズルナにくらべ、音色ねいろからみはずっとすくなくむしろかるあかるい音色ねいろがする。しかしやはりズルナと同様どうようおおきなおとがしたので室内しつないにはかず、おも屋外おくがい使用しようされ、軍楽ぐんがくなどに必須ひっす楽器がっきとなった。さらに、これをもとに室内楽しつないがくてきするようにと、かん内径ないけいほそくするなどして音量おんりょうおさえ、繊細せんさい音色ねいろせる楽器がっきとして発明はつめいされたのがオーボエである。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]