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ノルレボ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

ノルレボ(NorLevo)は、黄体おうたいホルモンであるレボノルゲストレル(Levonorgestrel)を成分せいぶんとする緊急きんきゅう避妊ひにんやく処方箋しょほうせん医薬品いやくひん)である。

緊急きんきゅう避妊ひにんほう

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緊急きんきゅう避妊ひにんほうは、避妊ひにんせずにおこなわれた性交せいこうまたは避妊ひにんしたものの、避妊ひにん手段しゅだん適切てきせつかつ十分じゅうぶんでなかった性交せいこうのち緊急きんきゅうてきもちいるもので、通常つうじょう経口けいこう避妊ひにんやく避妊ひにん方法ほうほうのように、性交せいこうまえ計画けいかくてき妊娠にんしん回避かいひするものとはことなる[1]

緊急きんきゅう避妊ひにんほう必要ひつようとなる状況じょうきょうとしては、避妊ひにんをしない性交せいこう経口けいこう避妊ひにんやく服用ふくようわすれ、強姦ごうかんコンドーム破損はそん脱落だつらく不適切ふてきせつ使用しよう、などがある。日本にっぽんではレボノルゲストレルが唯一ゆいいつ緊急きんきゅう避妊ひにんやくとして承認しょうにんされている。日本にっぽん産科さんか婦人ふじん学会がっかいの「緊急きんきゅう避妊ひにんほう適正てきせい使用しようかんする指針ししん平成へいせい28年度ねんど改訂かいていばん)」は、レボノルゲストレル(服用ふくようりょう1.5mg)を緊急きんきゅう避妊ひにんほうだいいち選択せんたくとして推奨すいしょうしている[1]

開発かいはつ経緯けいい

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ホルモンざいによる緊急きんきゅう避妊ひにんほうとして1960年代ねんだいよりエチニルエストラジオール経口けいこう投与とうよおこなわれたが、悪心あくしん嘔吐おうとなどの副作用ふくさよう課題かだいであった。その1970ねんだいには副作用ふくさよう軽減けいげん目的もくてきとして、エチニルエストラジオールとノルゲストレルの配合はいごうやく経口けいこう投与とうよするヤツペ(Yuzpe)ほう開発かいはつされた。1990年代ねんだいにはレボノルゲストレルとヤツペほう比較ひかく試験しけんおこなわれ、妊娠にんしん阻止そしりつはヤツペほうでは57%、レボノルゲストレルでは85%であった。また、おも副作用ふくさよう発現はつげん頻度ひんどはレボノルゲストレルがすくなかった[2]。これらのエビデンスを背景はいけいとして「緊急きんきゅう避妊ひにんほう適正てきせい使用しようかんする指針ししん平成へいせい28年度ねんど改訂かいていばん)」はレボノルゲストレルによる緊急きんきゅう避妊ひにんだいいち選択せんたくとし、ヤツペほう緊急きんきゅう避妊ひにんほう利用りようできない場合ばあいにのみ使用しようすることとしている[1]

レボノルゲストレルの経口けいこう製剤せいざいであるNORLEVOはフランスのLABORATOIRE HRA PHARMAしゃによって開発かいはつされ、1999ねんにフランスで販売はんばい承認しょうにん取得しゅとくした。2011ねん日本にっぽんでは、株式会社かぶしきがいしゃそーせいがLABORATOIRE HRA PHARMAしゃからNORLEVOを導入どうにゅうし、2011ねん2がつ承認しょうにん取得しゅとくし、2011ねん5がつより、あすか製薬せいやく販売はんばいしている[3]

作用さようじょ

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妊娠にんしんは、

  1. 卵巣らんそうから排卵はいらんされた卵子らんし卵管らんかんまれる
  2. 精子せいし子宮しきゅううちすす卵管らんかん受精じゅせいこる
  3. 受精卵じゅせいらん子宮しきゅうないまくゆかする

という過程かてい成立せいりつする。レボノルゲストレルを排卵はいらんまえ投与とうよすることによって排卵はいらん抑制よくせいされることが報告ほうこくされており[4]避妊ひにん効果こうかしゅとして排卵はいらん抑制よくせい作用さようによるとかんがえられている[5][6]

適応症てきおうしょう

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効能こうのう効果こうか緊急きんきゅう避妊ひにん[3]

効能こうのう効果こうか関連かんれんする使用しようじょう注意ちゅうい[3]

  1. 投与とうよにより完全かんぜん妊娠にんしん阻止そしすることはできない(臨床りんしょう成績せいせきこう参照さんしょう)。
  2. ほんざいは、避妊ひにん措置そち失敗しっぱいしたまた避妊ひにん措置そちこうじなかった性交せいこう緊急きんきゅうてきもちいるものであり、通常つうじょう経口けいこう避妊ひにんやくのように計画けいかくてき妊娠にんしん回避かいひするものではない[3]

用法ようほう用量ようりょう

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用法ようほう用量ようりょう性交せいこう72時間じかん以内いないにレボノルゲストレルとして1.5 mgを1かい経口けいこう投与とうよする。[3]

用法ようほう用量ようりょう関連かんれんする使用しようじょう注意ちゅうい[3]

ほんざい投与とうよするさいには、できるかぎすみやかに服用ふくようすること。海外かいがい臨床りんしょう試験しけんにおいて、性交せいこう72あいだえて服用ふくようした場合ばあいには妊娠にんしん阻止そしりつ低下ていかする傾向けいこうがあることがしめされている(臨床りんしょう成績せいせきこう参照さんしょう[7]

禁忌きんき

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  1. ほんざい成分せいぶんたい過敏かびんしょう既往きおうれきのある女性じょせい[3]
  2. じゅうあつしかん障害しょうがいのある患者かんじゃ代謝たいしゃのう低下ていかしており肝臓かんぞうへの負担ふたん増加ぞうかするため、症状しょうじょう増悪ぞうあくすることがある[3]
  3. にん成立せいりつした妊娠にんしんには効果こうかがなく、妊娠にんしんしている女性じょせいには有益ゆうえきせいがない[3]

副作用ふくさよう

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日本にっぽんでの発売はつばいおこなわれた使用しよう成績せいせき調査ちょうさでは、578れいちゅう46れい(7.96%)に副作用ふくさようみとめられた。おも副作用ふくさようは、悪心あくしん13けん(2.25%)およ下腹部かふくぶつう4けん(0.69%)とう胃腸いちょう障害しょうがい 23れい(3.98%)、頭痛ずつう8けん(1.38%)およかたぶけねむ6けん(1.04%)とう神経しんけいけい障害しょうがい15れい(2.60%)、不正ふせい子宮しきゅう出血しゅっけつ7けん(1.21%)とう生殖せいしょくけいおよび乳房ちぶさ障害しょうがい12れい(2.08%)であった[3]

臨床りんしょう成績せいせき

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国内こくないだいそう臨床りんしょう試験しけんにおいて、性交せいこう72時間じかん以内いないにノルレボを1かい経口けいこう投与とうよした結果けっか解析かいせき対象たいしょうれい63れいのうち、妊娠にんしんれいは1れいで、妊娠にんしん阻止そしりつは81.0%であった[3]海外かいがい臨床りんしょう試験しけんにおいて、性交せいこう72時間じかん以内いないにレボノルゲストレル製剤せいざい1.5mgを1かい経口けいこう投与とうよした結果けっか妊娠にんしんりつは1.34%(16/1198)、妊娠にんしん阻止そしりつは84%であった。また、性交せいこう72あいだえてほんざい服用ふくようした場合ばあいには63%であり、妊娠にんしん阻止そしりつげんじゃくする傾向けいこうがみられた[7]

オンライン診療しんりょうかんする議論ぎろん

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オンライン診療しんりょうとは遠隔えんかく医療いりょうのうち、医師いし患者かんじゃあいだスマートフォンタブレット端末たんまつなどの情報じょうほう通信つうしん機器ききつうじて患者かんじゃ診察しんさつ診断しんだんなどの医療いりょう行為こういをリアルタイムにおこなうことをす。厚生こうせい労働省ろうどうしょうの「オンライン診療しんりょう適切てきせつ実施じっしかんする指針ししん」では、原則げんそくとして初診しょしん対面たいめん診療しんりょうおこなうことがしめされている[8]。この指針ししん定期ていきてき見直みなおしがおこなわれており、2019ねん見直みなおしにおいて、「緊急きんきゅう避妊ひにんやくのオンライン診療しんりょうによる処方しょほうを、初診しょしん対面たいめん原則げんそく例外れいがいとしてみとめるべきか」というテーマが検討けんとうされている。検討けんとうちゅうあたらしいオンライン診療しんりょう適切てきせつ実施じっしかんする指針案ししんあんでは、「例外れいがいとして、地理ちりてき要因よういんがある場合ばあい女性じょせい健康けんこうかんする相談そうだん窓口まどぐちとう所属しょぞくするまたはこうした相談そうだん窓口まどぐちとう連携れんけいしている医師いし女性じょせい心理しんりてき状態じょうたいにかんがみて対面たいめん診療しんりょう困難こんなんであると判断はんだんした場合ばあいにおいては、産婦人科さんふじんかまた厚生こうせい労働省ろうどうしょう指定していする研修けんしゅう受講じゅこうした医師いしが、初診しょしんからオンライン診療しんりょうおこなうことは許容きょようされる」とされ、地理ちりてき要因よういんとうがある場合ばあいには例外れいがいてき緊急きんきゅう避妊ひにんやくについて初診しょしんからオンライン診療しんりょうみとめる方向ほうこう検討けんとうおこなわれている[9]

スイッチOTC検討けんとうかい委員いいん鈴木すずき邦彦くにひこ日本にっぽん医師いしかい常任じょうにん理事りじは、のぞまない妊娠にんしんらしたいというかんがかたそのものに反対はんたいではないとしつつも、審議しんぎかい議論ぎろんについて、医師いし関与かんよ必要ひつようせい緊急きんきゅう避妊ひにんやくへの国民こくみん理解りかい販売はんばい体制たいせい問題もんだいしめされ、とてもOTCにできないという結論けつろんであり、反対はんたい意見いけんばかりで賛成さんせいだれもいなかったとの見解けんかいしめしている[10]。ちなみに医師いしけサイトでおこなわれた現場げんば産婦人科さんふじんか医師いしのアンケート(n=124)では47%が反対はんたいよりの意見いけん表明ひょうめいしているが、27%がどちらでもないことを表明ひょうめいしている。また60だい男性だんせい医師いしは、基本きほんてきには個人こじん選択せんたくまかせるべき、妊娠にんしん反応はんのうやくとき産婦人科さんふじんかかい反対はんたいしていたことをべている[11]産婦人科さんふじんか有志ゆうし9にんによる5がつ産婦人科さんふじんか緊急きんきゅうアンケート(n=559)では、6わり以上いじょうがアフターピルの市販しはんとオンライン処方しょほうのいずれも肯定こうていしている。ただし主催しゅさいしゃ医師いし緊急きんきゅう避妊ひにんやくのオンライン診療しんりょう解禁かいきんになった場合ばあいせい暴力ぼうりょく被害ひがいしゃ限定げんていされたり、オンライン診療しんりょうおこなっている産婦人科さんふじんかさがすならばいまよりアクセスしやすいかと疑問ぎもんていしている[12]。2019ねんおこなわれたオンライン診療しんりょう指針ししん見直みなお検討けんとうかいでは、ささえあい医療いりょう人権じんけんセンターCOML理事りじちょう 山口やまぐち育子いくこ構成こうせいいんが、産婦人科さんふじんか受診じゅしん抵抗ていこうかんじる女性じょせいおおいため、その受診じゅしん精神せいしんてき負担ふたんのあるときもオンライン診療しんりょう可能かのうとすべきとべ、しょ外国がいこくでは薬局やっきょく緊急きんきゅう避妊ひにんやく購入こうにゅうできるところもあると補足ほそくした。それにたいし、「『精神せいしんてき負担ふたんのあるとき』との表現ひょうげんはあまりにひろすぎだと牽制けんせいし、しょ外国がいこく日本にっぽん文化ぶんかことなることをかかげ、対象たいしょう制限せいげんひろがってはいけないとの指摘してき多数たすうでた(今村いまむらさとし構成こうせいいん日本にっぽん医師いしかいふく会長かいちょう黒木くろき春郎はるお構成こうせいいん医療いりょう法人ほうじん社団しゃだん嗣業のかい理事りじちょう日本にっぽんオンライン診療しんりょう研究けんきゅうかい会長かいちょうら)[13]傍聴ぼうちょうしゃからは検討けんとう委員いいんのひとりで日本医師会にほんいしかいふく会長かいちょう今村いまむらさとし検討けんとうかいで「(緊急きんきゅう避妊ひにんやくへのアクセスが)制限せいげんひろがってしまうのもこまるというおもいがあります」というWHO勧告かんこく逆行ぎゃっこうする趣旨しゅし発言はつげんをしたため、女性じょせいがわからは疑問ぎもんていされている[14]

OTCかんする議論ぎろん

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厚生こうせい労働省ろうどうしょうの「医療いりょうようからよう指導しどう一般いっぱんようへの転用てんようかんする評価ひょうか検討けんとう会議かいぎ」のなかで2018ねん緊急きんきゅう避妊ひにんやくのOTC検討けんとうされたが、使用しようしゃ服用ふくようする女性じょせい自身じしんのリテラシーがひくいこと、販売はんばいする薬局やっきょく薬剤師やくざいし教育きょういく不足ふそくしていることなどの理由りゆうからOTC時期じき尚早しょうそうとしてみとめられなかった。なお、厚生こうせい労働省ろうどうしょう一般いっぱん募集ぼしゅうしたパブリックコメントの結果けっかでは348けん提出ていしゅつがあり、OTC賛成さんせいは320けん反対はんたいは28けんであった[15]

成分せいぶん

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和名わみょう:レボノルゲストレル(JAN)

洋名ようめい:Levonorgestrel(JAN, INN)

命名めいめいほう:IUPAC

規制きせい区分くぶん処方箋しょほうせん医薬品いやくひん

投与とうよ方法ほうほう経口けいこう投与とうよ

分子ぶんししき:C21H28O2

分子ぶんしりょう:312.45

出典しゅってん

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  1. ^ a b c 日本にっぽん産科さんか婦人ふじん学会がっかい. 緊急きんきゅう避妊ひにんほう適正てきせい使用しようかんする指針ししん平成へいせい28年度ねんど改訂かいていばん
  2. ^ Randomised controlled trial of levonorgestrel versus the Yuzpe regimen of combined oral contraceptives for emergency contraception. Task Force on Postovulatory Methods of Fertility Regulation. Lancet. 1998;352:428-33.
  3. ^ a b c d e f g h i j k ノルレボじょう1.5mgインタビューフォーム
  4. ^ Croxatto HB, et al. Pituitary-ovarian function following the standard levonorgestrel emergency contraceptive dose or a single 0.75-mg dose given on the days preceding ovulation. Contraception. 2004;70(6):442-50.
  5. ^ van der Vies J, et al. Endocrinological studies with desogestrel. Arzneimittelforschung. 1983;33:231-6.
  6. ^ Oettel M, et al. STS 557 as an interceptive in rodents and baboons. Contraception. 1980;21:537-49.
  7. ^ a b von Hertzen H, et al. Low dose mifepristone and two regimens of levonorgestrel for emergency contraception: a WHO multicentre randomised trial. Lancet. 2002;360:1803-10.
  8. ^ 厚生こうせい労働ろうどうしょう. オンライン診療しんりょう適切てきせつ実施じっしかんする指針ししん
  9. ^ 厚生こうせい労働ろうどうしょう. オンライン診療しんりょう適切てきせつ実施じっしかんする指針ししん新旧しんきゅう対照たいしょうひょう
  10. ^ 緊急きんきゅう避妊ひにんやくのスイッチOTC日本にっぽん医師いしかい反対はんたいする理由りゆう”. 週刊しゅうかんダイヤモンド編集へんしゅう (2017ねん10がつ16にち). 2020ねん8がつ4にち閲覧えつらん
  11. ^ 緊急きんきゅう避妊ひにんのOTC(一般いっぱん医薬品いやくひん)についてどうおもわれますか?産婦人科さんふじんか120めいきました”. イシコメ (2018ねん2がつ13にち). 2020ねん8がつ2にち閲覧えつらん
  12. ^ アフターピル(緊急きんきゅう避妊ひにんやく)のオンライン処方しょほう 産婦人科さんふじんかの6わりちょうが「のぞましい」”. Buzzfeednews (2019ねん6がつ6にち). 2020ねん8がつ2にち閲覧えつらん
  13. ^ オンライン診療しんりょうでの緊急きんきゅう避妊ひにんやく処方しょほう産科さんかへのアクセス困難こんなん場合ばあい限定げんてい―オンライン診療しんりょう指針ししん見直みなお検討けんとうかい”. GLOBAL HEALTH CONSULTING (2019ねん6がつ3にち). 2020ねん8がつ4にち閲覧えつらん
  14. ^ 福田ふくだ和子かずこ (2019ねん6がつ23にち). “女性じょせい健康けんこう世界せかい会議かいぎだい衝撃しょうげき!23さいが「日本にっぽんヤバイ」と痛感つうかんした理由りゆう”. 現代げんだいビジネス. 2020ねん8がつ4にち閲覧えつらん
  15. ^ 厚生こうせい労働ろうどうしょう. 要望ようぼうされた成分せいぶんのスイッチ OTC 妥当だとうせいかか検討けんとう会議かいぎ結果けっかについて