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フラッシュバック (薬物やくぶつ)

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フラッシュバック (薬物やくぶつ)
概要がいよう
診療しんりょう 精神せいしん医学いがく
分類ぶんるいおよび外部がいぶ参照さんしょう情報じょうほう
ICD-10 F16.7
ICD-9-CM 292.89
Patient UK フラッシュバック (薬物やくぶつ)
幻覚げんかくざいは、サイケデリック形容けいようされる、独特どくとく視覚しかく体験たいけんこす。

フラッシュバック (flashback) とは、幻覚げんかくざいによって体験たいけんした感覚かんかく突如とつじょとして再現さいげんされることである[1]幻覚げんかくざい体験たいけんからすうヶ月かげつったあとでは、こることはまれである[1]世界せかい保健ほけん機関きかんの『疾病しっぺいおよ関連かんれん保健ほけん問題もんだい国際こくさい統計とうけい分類ぶんるい』10はん(ICD-10)における正式せいしき診断しんだんめいはフラッシュバックで、すうびょうからすう分間ふんかん出来事できごと定義ていぎし、その用語ようごしゅうにて幻覚げんかくざい知覚ちかく障害しょうがい(Post-hallucinogen perception disorder)と定義ていぎ[2]、アメリカ精神せいしん学会がっかいの『精神せいしん障害しょうがい診断しんだん統計とうけいマニュアル』における正式せいしき診断しんだんめい幻覚げんかくざい持続じぞくせい知覚ちかく障害しょうがいであるが、括弧かっこしてフラッシュバックとしるされ、その診断しんだん基準きじゅんにおいては現実げんじつ検討けんとうができる視覚しかくてき現象げんしょうであるとしている。大麻たいまおよびその成分せいぶんテトラヒドロカンナビノール(THC)は幻覚げんかくざいではない[3]たんなる体験たいけんとはことなり、障害しょうがいである場合ばあいにはそれが重症じゅうしょうであるという診断しんだん基準きじゅんたす必要ひつようがある。HPPDは、幻覚げんかくざい使用しようとの因果いんが関係かんけい実証じっしょうされていない(つまりうたがわしい)研究けんきゅうによって主張しゅちょうされており、シロシビンもちいたいくつかのランダム比較ひかく試験しけんではこうした症状しょうじょう報告ほうこくされていない[4]。フラッシュバック全体ぜんたいふくめると、心地ここちよいものであるとの見解けんかい半数はんすうえる[5]。また幻覚げんかくざいもちいたことがない一般いっぱん集団しゅうだんにも視覚しかく症状しょうじょうこりうる[4]

特徴とくちょう

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ストレスや不安ふあん瞑想めいそう酩酊めいてい大麻たいま吸引きゅういんなど、自我じがはたらきが変容へんようしているときにこりやすい[6]幻覚げんかくざい研究けんきゅうしていたハーバード大学だいがく心理しんり学者がくしゃティモシー・リアリーは、のうなかあたらしい知覚ちかく回路かいろにつながったので、意識いしき拡張かくちょうされ薬剤やくざい必要ひつようとせず感覚かんかく再現さいげんされるとべている[7]

フラッシュバックの頻度ひんどかんして、2256にんリゼルグさんジエチルアミド(LSD)体験たいけんしゃの23%がフラッシュバックを経験けいけんしたという報告ほうこくがある[5]べつ研究けんきゅうでは、235にんちゅう28%がフラッシュバックを体験たいけんし、その64%が人生じんせい邪魔じゃまするものではないとおもい、またフラッシュバック体験たいけんについて以下いかのような割合わりあいでの感想かんそうられた[5]

  • 21% すごく気持きもちよかった
  • 36% 気持きもちよかった
  • 32% すここわかった
  • 11% おそろしい

診断しんだんコード

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フラッシュバックは、幻覚げんかくざい関連かんれんした障害しょうがいとしてしるされている。

DSM-IV(『精神せいしん障害しょうがい診断しんだん統計とうけいマニュアルだい4はん』)における、幻覚げんかくざい持続じぞくせい知覚ちかく障害しょうがい(HPPD)とは、この名称めいしょううしろに括弧かっこつきでフラッシュバックとしるされている[8]。HPPDでは現実げんじつ検討けんとう障害しょうがいされないためそれが幻覚げんかくであることの自覚じかくがあり、診断しんだん基準きじゅんAによりいろうごきにかんする「視覚しかくてき現象げんしょう」であり、診断しんだん基準きじゅんBによりいちじるしい苦痛くつう社会しゃかいてき機能きのう障害しょうがいともな診断しんだん基準きじゅんCによりせんもうなどのほか要因よういん除外じょがいされている場合ばあいである[8]だい5はんDSM-5においては、大麻たいまおよびその成分せいぶんテトラヒドロカンナビノール(THC)は、幻覚げんかくざいではないことが明記めいきされている[3]

世界せかい保健ほけん機関きかんによるICD-10(『疾病しっぺいおよ関連かんれん保健ほけん問題もんだい国際こくさい統計とうけい分類ぶんるい』)においては、F1x.70フラッシュバックの診断しんだんコードが存在そんざいし、おおくはすうびょうからすう分間ふんかんのことであり以前いぜん薬物やくぶつ体験たいけんかんしているという特徴とくちょうから、精神病せいしんびょうせい障害しょうがい鑑別かんべつができる[9]世界せかい保健ほけん機関きかんの『アルコールと薬物やくぶつ用語ようごしゅう』(Lexicon of alchol and drug term)が、F1x.70フラッシュバックとは、幻覚げんかくざい知覚ちかく障害しょうがい(Post-hallucinogen perception disorder)であると定義ていぎしている[2]

このHPPDは幻覚げんかくざい使用しようしたことがない人々ひとびとにも存在そんざいし、また偶発ぐうはつてき視覚しかく現象げんしょう一般いっぱん集団しゅうだんにもこりる。シロシビンでは、いくつかのランダム比較ひかく試験しけんにおいてもフラッシュバックや、持続じぞくてき視覚しかく現象げんしょう報告ほうこくされていない。LSDの使用しよう視覚しかく症状しょうじょうとのあいだ関連かんれん見出みいだした小規模しょうきぼ研究けんきゅうは、研究けんきゅう手法しゅほう重大じゅうだい問題もんだいがあり、LSDぐんけられた人々ひとびと研究けんきゅう目的もくてきらされており、視覚しかく症状しょうじょう関連かんれんしうる精神せいしん障害しょうがいった入院にゅういん患者かんじゃであった。また、最後さいご幻覚げんかくざい使用しようしてからすうねん発症はっしょうしており、その因果いんが関係かんけい実証じっしょうされていない。[4]

覚醒剤かくせいざいによるフラッシュバック(日本にっぽん研究けんきゅう

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日本にっぽん研究けんきゅうしゃは、通常つうじょうは、よりはや完全かんぜん回復かいふくすることで鑑別かんべつされているアンフェタミン一般いっぱん覚醒剤かくせいざい)による精神病せいしんびょうが、すうねんまでのなが期間きかんとなりうると主張しゅちょうし、このような精神病せいしんびょう再発さいはつをフラッシュバックとんでいる[10]幻覚げんかくざいではないので、厳密げんみつにはフラッシュバックとはべず、また日本にっぽん国外こくがいでは統合とうごう失調しっちょうしょう発症はっしょう薬物やくぶつ修飾しゅうしょくされてはやまったという見方みかたをされる[11]

関連かんれん項目こうもく

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脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b レスター・グリンスプーン、ジェームズ・B. バカラー 『サイケデリック・ドラッグ-こう精神せいしん物質ぶっしつ科学かがく文化ぶんかきねふち幸子こうじやく妙木みょうき浩之ひろゆきやく工作こうさくしゃ、2000ねんISBN 978-4875023210。273ぺーじ。(原著げんちょ Psychedelic Drugs Reconsidered, 1979)
  2. ^ a b 世界せかい保健ほけん機関きかん (1994) (pdf). Lexicon of alchol and drug term. World Health Organization. pp. 38. ISBN 92-4-154468-6. http://whqlibdoc.who.int/publications/9241544686.pdf  (HTMLばん introductionが省略しょうりゃくされている
  3. ^ a b アメリカ精神せいしん学会がっかい『DSM-5 精神せいしん疾患しっかん診断しんだん統計とうけいマニュアル』日本にっぽん精神せいしん神経しんけい学会がっかい日本語にほんごばん用語ようご監修かんしゅう高橋たかはし三郎さぶろう大野おおのひろし監訳かんやくしみ俊幸としゆき神庭かみにわ重信しげのぶ尾崎おざき紀夫のりお三村みつむらすすむ村井むらい俊哉としやわけ医学書院いがくしょいん、2014ねん6がつ30にち、517ぺーじISBN 978-4260019071 
  4. ^ a b c Lu, Lin; Krebs, Teri S.; Johansen, Pål-Ørjan; et al. (2013). “Psychedelics and Mental Health: A Population Study”. PLoS ONE 8 (8): e63972. doi:10.1371/journal.pone.0063972. PMC 3747247. PMID 23976938. http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0063972. 
  5. ^ a b c レスター・グリンスプーン、ジェームズ・B. バカラー 『サイケデリック・ドラッグ-こう精神せいしん物質ぶっしつ科学かがく文化ぶんかきねふち幸子こうじやく妙木みょうき浩之ひろゆきやく工作こうさくしゃ、2000ねんISBN 978-4875023210。275ぺーじ。(原著げんちょ Psychedelic Drugs Reconsidered, 1979)
  6. ^ レスター・グリンスプーン、ジェームズ・B. バカラー 『サイケデリック・ドラッグ-こう精神せいしん物質ぶっしつ科学かがく文化ぶんかきねふち幸子こうじやく妙木みょうき浩之ひろゆきやく工作こうさくしゃ、2000ねんISBN 978-4875023210。274-276ぺーじ。(原著げんちょ Psychedelic Drugs Reconsidered, 1979)
  7. ^ ティモシー・リアリー 『フラッシュバックス-ティモシー・リアリー自伝じでん山形やまがたひろしせいやくひさきり亜子あこやく明石あかし綾子あやこやく森本もりもと 正史せいしやく松原まつばら永子えいこやく、1995ねん。58-59、103ぺーじISBN 978-4845709038
  8. ^ a b アメリカ精神せいしん学会がっかい『DSM-IV-TR 精神せいしん疾患しっかん診断しんだん統計とうけいマニュアル(しんていばん)』医学書院いがくしょいん、2004ねん、193、232、249-250ぺーじISBN 978-0890420256 
  9. ^ 世界せかい保健ほけん機関きかん『ICD‐10精神せいしんおよび行動こうどう障害しょうがい:臨床りんしょう記述きじゅつ診断しんだんガイドライン』(しんていばん医学書院いがくしょいん、2005ねん、93ぺーじISBN 978-4-260-00133-5 世界せかい保健ほけん機関きかん (1992) (pdf). The ICD-10 Classification of Mental and Behavioural Disorders : Clinical descriptions and diagnostic guidelines (blue book). World Health Organization. http://www.who.int/classifications/icd/en/bluebook.pdf 
  10. ^ Bramness, Jørgen G; Gundersen, Øystein; Guterstam, Joar; Rognli, Eline; Konstenius, Maija; Løberg, Else-Marie; Medhus, Sigrid; Tanum, Lars et al. (2012). “Amphetamine-induced psychosis - a separate diagnostic entity or primary psychosis triggered in the vulnerable?”. BMC Psychiatry 12 (1): 221. doi:10.1186/1471-244X-12-221. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3554477/. 
  11. ^ 内藤ないとう裕史ゆうじ薬物やくぶつ乱用らんよう中毒ちゅうどく百科ひゃっか丸善まるぜん、2011ねん、41-43ぺーじISBN 978-4-621-08325-3