最初のフリー・シネマのプログラムは、以下の3つの短篇をフィーチャーしたものである。リンゼイ・アンダーソン監督によるケント州マーゲイトの遊園地についての映画『オー・ドリームランド O Dreamland』、カレル・ライスとリチャードソンの共同監督によるノース・ロンドンのジャズクラブについての映画『Momma Don't Allow』、ロレンツァ・マッツェッティ監督によるロンドンの爆撃地イーストエンドのふたりの聾唖者についてのドキュメンタリー風フィクション『Together』。これらの作品には,アンダーソンが主導して書いたフィルム・マニフェストがついており、この映画作家たちを価値あるパブリシティをもたらす手助けとなった。
この作品群は、映画産業の範囲の外側でつくられているという意味において、そして、彼らのスタイルと態度、および彼らの製作の諸条件によって特徴づけられているという意味において、「自由」なのである。全作品が2-300ポンドすらかからぬ規模で安価につくられ、ほとんどが英国映画協会の実験映画ファンドからの補助金を活用しており、後期の作品うちのいくつかはフォード・モーター社が後援を受け、もしくは独立的に出資してはいる。典型的としては白黒の16ミリフィルム(16 mm film)で撮られ、軽量のハンドヘルドの撮影機を使用し、通常は非同期の音声トラックがべつにつけくわえられた。ほとんどの作品では故意にナレーションを省略した。作家たちは、ふつうのそして大多数である労働者階級の英国、という主題にフォーカスする決意を共有しており、それは彼らが、中産階級に支配された当時の英国映画産業に覆い尽くされていると感じていて、希少なシンパシーとリスペクト、そしてなかば意識的な詩的スタイルを見せた。