ペースノート

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ペースノートのれい

ペースノートえい: pacenotes)とは、モータースポーツ用語ようごで、ラリー使つかわれるタイムトライアル区間くかんスペシャルステージ)の情報じょうほう記載きさいしたノートである。

概要がいよう[編集へんしゅう]

ラリーの競技きょうぎは、基本きほんてき主催しゅさいしゃから配布はいふされる「ロードブック」で指示しじされたルートを走行そうこうする[1]。ロードブックには走行そうこう距離きょり進行しんこう方向ほうこうなどをしるしたりゃく地図ちずがあり、日本にっぽんではコマともばれる[1]

スプリントタイムを重視じゅうしするラリーでは、交通こうつう閉鎖へいさした道路どうろでタイムトライアルをおこなうスペシャルステージ (SS) とばれる区間くかんもうけられる。そのそう延長えんちょうすうひゃくキロメートルにおよぶこともあり、整備せいびされたサーキット周回しゅうかいするレースとはちがって、ドライバーがコースのすべて(路面ろめん状況じょうきょうとうふくむ)を暗記あんきすることはほぼ不可能ふかのうである。そのため、本番ほんばんまえ試走しそうレッキ)と、SSの詳細しょうさい情報じょうほうんだペースノートの作成さくせいみとめられる。

レッキちゅう、ドライバーは運転うんてんしながらコースじょう注意ちゅういすべきてんげていき、それをとなりすわコ・ドライバーがノートにめておく[1]。2かい以上いじょうのレッキがゆるされている場合ばあい今度こんどはコ・ドライバーがノートをげ、ドライバーが訂正ていせい箇所かしょをチェックしてノートを修正しゅうせいする。本番ほんばんのSSアタックにはコ・ドライバーがノートをげ、ドライバーはその情報じょうほうたよりに全開ぜんかい走行そうこうすることとなる。ペースノートの存在そんざい競技きょうぎ成績せいせきだけではなく、乗員じょういんクルー)の安全あんぜんにもかかわる[2]

なお、SS以外いがい移動いどう区間くかんリエゾン)ではペースノートは使用しようせず、ロードブックにしたが法定ほうてい速度そくど走行そうこうする。ロードブックとペースノートは根本こんぽんてき用途ようとことなるものであるが、メディアによってしばしば混同こんどうされることがある。

詳細しょうさい[編集へんしゅう]

ペースノートはB5サイズ程度ていど横行おうこうのリングノートが一般いっぱんてき。SSルートのながれに沿い、簡略かんりゃく文字もじ数字すうじ記号きごうわせた速記そっきのようなかたち情報じょうほう記載きさいし、1ページずつめくりながらげていく。どこまですすんだか混乱こんらんしないよう、おお文字もじサイズでいてある。

ペースノートのかたには定型ていけいがなく[3]かくクルーは趣向しゅこうらしたペースノートを作成さくせいする。みやげに使つか言語げんごかくクルーの母国ぼこくであったり、共通きょうつう言語げんご英語えいごであったりと様々さまざまである。また、はげしくれる車内しゃないでの視認しにんせいげるために、レッキと本番ほんばんアタックのあいだ清書せいしょしたノートを作成さくせいするクルーもいる。

上級じょうきゅうレベルでは事細ことこまかな情報じょうほうまれるが、初級しょきゅうレベルでは混乱こんらんけるため情報じょうほうりょうすくなくすることもある。レッキ走行そうこう不慣ふなれな入門にゅうもんしゃには、主催しゅさいしゃからペースノートが配布はいふされる場合ばあいもある。

最高峰さいこうほうWRCレベルのワークスチームでは、舗装ほそう凍結とうけつ路面ろめん状況じょうきょう調しらべる専門せんもんクルー(グラベルノートクルーやアイスノートクルー)が競技きょうぎまえにペースノートのコピーをってSSを偵察ていさつ走行そうこうする。コ・ドライバーはこれらのクルーと携帯けいたい電話でんわ連絡れんらくい、レッキとはことなる最新さいしんのSS情報じょうほうをペースノートに加筆かひつする。

いちれいとして、ペースノートに記載きさいされる内容ないよう以下いかのようなものがある。

  • コーナー特徴とくちょう
    • 角度かくど - ステアリングのかくを1〜8程度ていど段階だんかいあらわ[1]数値すうちちいさいほど旋回せんかい半径はんけいR)がちいさいタイトなコーナー[1]
    • き - ひだりコーナーはLみぎコーナーはR[1]
    • ながさ - s(ショート)、(ロング)、V・(ベリーロング)など[1]
    • 変化へんか - <(オープン、出口でぐちけてゆるくなる)、>(タイトゥン、出口でぐちけてきつくなる)[1]
    • コーナーのつながり - 連続れんぞくコーナーは(イントゥ)、やや距離きょりひら場合ばあい+(アンド)。
    • ラインり - KI(キープイン)、KO(キープアウト)、cut(インカット)、DCT(ドント・インカット)など。
  • コーナーあいだ距離きょり - 5080100など10メートル単位たんい数字すうじしるす。トリップメーター実測じっそくでなくとも、ドライバーの距離きょり感覚かんかくにあった目測もくそくでよい。
  • さき見通みとおせない起伏きふく - C(クレスト)[1]
  • 直線ちょくせんてきけられるみちのうねり - kinx(キンクス)
  • 補助ほじょ説明せつめい - /(オーバー)。たとえば4R/Cならば「クレストをえながらのみぎ4コーナー」という意味いみ
  • 要注意ようちゅうい - !(コーション)、!!(ダブルコーション)、!!!(トリプルコーション)
    • はし[1]グレーチング[1]など、高速こうそく通過つうかするとくるまにダメージをおよぼすおそれのある段差だんさ
    • がけいわなどのコースアウト、クラッシュの原因げんいんとなるもの。
    • ダート路面ろめん凍結とうけつみずたまりなどのすべりやすい路面ろめん状況じょうきょう
    • くるまがジャンプしうるクレスト。
    • クレスト直後ちょくごのコーナー、鋭角えいかくコーナー直後ちょくご障害しょうがいぶつなど、死角しかくさき危険きけん要素ようそ
  • 道案内みちあんない交差点こうさてん分岐ぶんきなど)
  • 目標もくひょうぶつ標識ひょうしき樹木じゅもくなど)
  • コ・ドライバー自身じしんげるタイミングのおぼ

このほかにも記載きさいされる要素ようそ多岐たきにわたるが、ドライバーが瞬間しゅんかんてきにイメージしやすいことが重要じゅうようであり、レッキとSSの走行そうこう速度そくどにも配慮はいりょする必要ひつようがある。ペースノートをつくちからちからはドライバーの感覚かんかく経験けいけんめんがあり、純粋じゅんすい運転うんてん技術ぎじゅつとはべつ技量ぎりょうもとめられる。また、コ・ドライバーはドライバーと距離きょり間隔かんかくわせ、適切てきせつなタイミングでききとりやすいように情報じょうほうつたえる必要ひつようがある。

表記ひょうきれい[編集へんしゅう]

80 2R 30 4Rsh→4L< kinx130 8Rvlgflat 40 !bump KR 5L+6R/C 50 2Rcut 20/bridge 5L>4

  • かた:エイティー ツーライト サーティー フォーライトショート イントゥー フォーレフトオープン キンクスワンサーティー エイトライトベリーロングフラット フォーティー コーションバンプ キープライト ファイブレフト アンド シックスライトオーバークレスト フィフティー ツーライトカット トウェンティーオーバーブリッジ ファイブレフトタイトゥンフォー
  • 意味いみ直線ちょくせん80 m、みぎ2コーナー、直線ちょくせん30 m、みぎ4ショートコーナーすぐひだり4出口でぐちゆるいコーナー、うねった直線ちょくせん130 m、みぎ8とてもなが全開ぜんかいコーナー、直線ちょくせん40 m、凸凹おうとつ注意ちゅうい右側みぎがわキープ、ひだり5コーナーから起伏きふくえのみぎ6コーナー、直線ちょくせん50 m、インカットできるみぎ2コーナー、はしえの直線ちょくせん20 m、ひだり5から4へきつくなるコーナー

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • David Williams「コドライバーのお仕事しごと」『WRC Plus』だい14かんだい24ごうニュにゅズ出版ずしゅっぱん、1999ねん、78-81ぺーじASB:WRC19991112 
  • Rally X「サイドシート、かれらはなにおもう。」『Rally X』だい5かん山海さんかいどう、2007ねん8がつ、55-61ぺーじ 
  • 足立あだちさやか (2015ねん). “Lesson3 ラリーを練習れんしゅうしよう”. 足立あだちさやかラリーじゅく. 2022ねん10がつ1にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]