マフディー (アッバース朝あさカリフ)

マフディー أبو عبد الله محمد المهدي
カリフ（アミール・アル＝ムウミニーン）
在位ざいい	775年ねん - 785年ねん
出生しゅっしょう	744/5年ねん クーファ
死去しきょ	785年ねん8月がつ4日にち
配偶はいぐう者しゃ	ハイズラーン
	ウンム・アブドゥッラー
子女しじょ	ハーディー ハールーン・アッラシード バヌーカ アッバーサ
家名かめい	アッバース家か
王朝おうちょう	アッバース朝あさ
父親ちちおや	マンスール
母親ははおや	ウンム・ムーサー・アルワー
宗教しゅうきょう	イスラム教いすらむきょうスンナ派は

マフディー（アラビア語ご：المهدي ابو عبد اﷲ محمد بن عبد اﷲ المنصور بن محمد بن علي بن عبد اﷲ بن عبّاس al-Mahdī Abū ʻAbd Allāh Muḥammad b. ʻAbd Allāh al-Manṣūr b. Muḥammad b. ʻAbd Allāh b. ʻAlī b. ʻAbd Allāh b. ʻAbbās, 744年ねん/745年ねん - 785年ねん8月がつ4日にち）は、アッバース朝あさの第だい3代だいカリフ（在位ざいい: 775年ねん - 785年ねん）。イスム（個人こじん名めい）を伴ともなってムハンマド・アル＝マフディー محمد المهدي Muḥammad al-Mahdīとも。父ちちはアッバ−ス朝あさ第だい2代だいカリフ・マンスールで、母はははマンスール・ブン・アブドゥッラー・アル＝ヒムヤリーの娘むすめ、ウンム・ムーサー・アルワー（امّ موسى اروى Umm Mūsā Arwā）。

生涯しょうがい

マフディーは744年ねんないし745年ねん、クーファで生うまれた。760年ねん、アリー家いえ一門いちもんの長老ちょうろうだったアブドゥッラー・アル＝マフドとその息子むすこムハンマド・アン＝ナフス・アッ＝ザキーヤが叛乱はんらんを起おこした時とき、アブドゥッラー・アル＝マフドは息子むすこのアン＝ナフス・アッ＝ザキーヤを救世主きゅうせいしゅ・マフディーと呼よんで決起けっきしたが、カリフ・マンスールはこれに対抗たいこうして自みずからの息子むすこムハンマドに「マフディー」というあだ名なをつけ、これが即位そくい名めいとなった。

775年ねん、父ちちマンスールが亡なくなり、遺言ゆいごんによって後継こうけい者しゃに指名しめいされていたようで、臣従しんじゅうの誓ちかい「バイア」を受うけて即位そくいした。即位そくい後ごただちに廷臣ていしんたちに息子むすこのムーサー（のちのハーディー）とハールーン（のちのハールーン・アッラシード）の兄弟きょうだいを自みずからの後継こうけい者しゃと認みとめるように誓ちかわせたと伝つたえられている。

777年ねんに、ホラーサーンのメルヴにおいて、ハーシム・アル＝ムカンナア（حاكم المقنّع）が叛乱はんらんを起おこした。このアル＝ムカンナアは片目かための人物じんぶつだったと伝つたえられており、輪廻りんね（تناسخ tanāsukh）の教義きょうぎを説といてホラーサーン一帯いったいで支持しじを集あつめた。

781年ねん2月がつ7日にち、マフディーは東ひがしロろーマ帝国まていこく領りょうへ派兵はへいした。遠征えんせい軍ぐん司令しれいには後のちにカリフとなる息子むすこのハールーンを送おくっている。

マフディーは後代こうだいの歴史れきし家かたちの評ひょうによると、大変たいへんに敬虔けいけんな人物じんぶつだったと伝つたえられており、一いち日にち五ご回かいの礼拝れいはいのおりには、その度どごとに人々ひとびととともに列席れっせきして礼拝れいはいを行おこなったという。彼かれがメッカへの巡礼じゅんれい（ハッジ）を行おこなった歳としにはイエメンやエジプトから支出ししゅつし、ハッジの諸々もろもろの儀礼ぎれいにともなう費用ひようとして銀貨ぎんか8万まんディルハムを扶助ふじょしたともいう。また、病人びょうにんや身体しんたい障害しょうがい者しゃのために多おおくの病院びょういんを各地かくちに建設けんせつした。

父ちちのマンスール時代じだいに引ひき続つづき、マニ教徒きょうとなどのいわゆる「ザンダカ主義しゅぎ者しゃ（ズィンディーク）」と呼よばれたアッバース朝あさに反抗はんこうしたキリスト教きりすときょう、ユダヤ教きょう以外いがいの様々さまざまな宗教しゅうきょう勢力せいりょくやメルヴから出現しゅつげんしホラーサーン一帯いったいに割拠かっきょしたアル＝ムカンナアなどの反はんアッバース朝あさ闘争とうそうの鎮圧ちんあつに忙殺ぼうさつされた。ビザンツ帝国ていこくへの遠征えんせいも行おこなっている。

マフディーは785年ねんに死去しきょした。次代じだいはマフディーの遺言ゆいごん通どおり、長男ちょうなんのムーサー（ムーサー・アル＝ハーディー）が継ついだ。

文化ぶんか的てき業績ぎょうせき

マフディーは治世ちせい中ちゅうに、ネストリウス派は総そう主教しゅきょうティモテオス1世せいに依頼いらいして、アリストテレスの『トピカ』など論理ろんり学がく関係かんけいのギリシア古典こてん哲学てつがくの作品さくひんを、ギリシア語ご原典げんてんやシリア語ご訳やくからアラビア語ごへ翻訳ほんやくさせている。

マフディーはアッバース朝あさ政権せいけんの政治せいじ的てき、特とくに宗教しゅうきょう的てき優位ゆうい性せいを確立かくりつするために腐心ふしんし、いわゆる「ザンダカ主義しゅぎ者しゃ（ズィンディーク）」勢力せいりょくを理論りろん的てきにも圧倒あっとうする事ことを意図いとして、これらの勢力せいりょくの研究けんきゅうやギリシア哲学てつがく思想しそうの研究けんきゅうを行おこなわせ、「異端いたん者しゃ」の摘発てきはつ等とうを進すすめた。

このように、反抗はんこう勢力せいりょくとの闘争とうそうと、アッバース朝あさ政権せいけんの磐石ばんじゃく化かを進すすめる中なかで、シリアなど領内りょうないのキリスト教きりすときょう側がわからの協力きょうりょくも受うけてアリストテレス哲学てつがくを受容じゅようし、マフディーの時代じだいにイスラーム（思弁しべん）神学しんがく（ʿIlm al-Kalām）の土台どだいが築きずかれていった。

家族かぞく

マフディーには、イエメン人じんの奴隷どれい出身しゅっしんだったハイズラーン（Khayzrān Umm Walad）という妃ひがおり、即位そくいの翌年よくねん775-776年ねんに彼女かのじょとの間あいだに、後のちにカリフとなるムーサー・アル＝ハーディー、ハールーン・アッラシード、娘むすめのバヌーカ（al-Banūqa）を儲もうけた。また、ハイズラーンを娶めとった同おなじ年ねんにアル＝ファドル・ブン・サーリフの娘むすめ、ウンム・アブドゥッラーとも結婚けっこんしている。

参考さんこう文献ぶんけん

• アミール・アリ『回教かいきょう史し　A Short History of the Saracens』（1942年ねん、善隣ぜんりん社しゃ）

先代せんだい マンスール

アッバース朝あさカリフ 第だい3代だい：775年ねん - 785年ねん

次代じだい ハーディー