レメゲトン

レメゲトン Lemegeton Clavicula Salomonis
第だい10の悪霊あくりょうブエル。
言語げんご	ラテン語らてんご
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『レメゲトン』（Lemegeton Clavicula Salomonis）とは悪魔あくまや精霊せいれいなどの性質せいしつや、それらを使役しえきする方法ほうほうを記しるしたグリモワールの一ひとつ。

『ソロモンの小ちいさな鍵かぎ』（Lesser Key of Solomon）ともいう。また、しばしば『ソロモン王おうの鎖骨さこつ』とも訳やくされるが、これは "Clavicula" を「鎖骨さこつ」の意味いみに取とった解釈かいしゃくである。

内容ないよう構成こうせい

以下いかの5部ぶからなるが、もともとそれぞれ別個べっこに成立せいりつした後のちに合本がっぽんされたもので、相互そうごの関連かんれんは薄うすい。

72の悪霊あくりょうの召喚しょうかんに使用しようされる魔法まほう円えんと三角形さんかっけい

ゴエティア (Goetia)

悪魔あくまについての書しょ。ソロモン王おうがいかにして悪魔あくまを使役しえきし名声めいせいを得えたかを記しるし、その悪魔あくまの性質せいしつや使役しえき方法ほうほうを述のべる。レメゲトンのなかでも特とくに有名ゆうめいで、しばしばこれ単独たんどくで『レメゲトン』『ソロモン王おうの小ちいさき鍵かぎ』と呼よばれる。Goetia とは、古代こだいギリシア＝ローマにおける「呪術じゅじゅつ」「妖術ようじゅつ」を指さすギリシア語ご γοητεία（ゴエーテイア）のラテン語らてんご形かたちで、ルネサンス期きには悪霊あくりょうの力ちからを借かりる儀式ぎしき魔術まじゅつとほぼ同義どうぎであった。これは今日きょうの魔術まじゅつでいう喚起かんき魔術まじゅつ、すなわち悪魔あくまなどの人間にんげんより下位かいの霊的れいてき存在そんざいを使役しえきする魔術まじゅつ作業さぎょうに相当そうとうする。

テウルギア・ゴエティア（Theurgia Goetia）

悪魔あくまと天空てんくうの精霊せいれいについての書しょ。つまりこの書しょは善悪ぜんあく双方そうほうの精霊せいれいの使役しえき法ほうを記しるしたものである。Theurgia とは、古代こだいの新しんプラトン学派がくはの人々ひとびとが行おこなったとされる、神霊しんれいを勧請かんじょうする祈祷きとうなどの儀式ぎしき的てき実践じっせんである θεουργία（テウルギア）のラテン語らてんご形がたである。降くだ神かみ術じゅつ、神かみ働はたらけ術じゅつ、動どう神かみ術じゅつ、神通じんずう術じゅつとも訳やくされる。これは今日きょうの魔術まじゅつでいう召喚しょうかん魔術まじゅつ、すなわち神かみなど人間にんげんより上位じょういの霊的れいてき存在そんざいによる魔術まじゅつ作業さぎょうに相当そうとうする。『学問がくもんのむなしさと不確ふたしかさについて』において儀式ぎしき魔術まじゅつを含ふくむあらゆる学術がくじゅつを批判ひはんしたアグリッパは、儀式ぎしき魔術まじゅつにはゴエティアとテウルギアの2部門ぶもんがあるとし、前者ぜんしゃを「不浄ふじょうの霊れいとの交渉こうしょうによる業ごう」、後者こうしゃを「善ぜん天使てんしに導みちびかれた業ごう」（と多おおくの人ひとがみなしている魔術まじゅつ）として論ろんじている。

アルス・パウリナ（Ars Paulina）

惑星わくせい時間じかんを支配しはいする精霊せいれい、黄道こうどう十二宮じゅうにきゅう360度どの角度かくど一ひとつ一ひとつに宿やどる精霊せいれいや十二宮じゅうにきゅうの中なかの惑星わくせいなど、星ほしに関かんする魔術まじゅつについての書しょ。ゴエティアが悪あしき精霊せいれいを、テウルギア・ゴエティアが善悪ぜんあく双方そうほうの精霊せいれいを取とり扱あつかっているのに対たいし、こちらは善ぜんなる精霊せいれいのみを取とり扱あつかっている。そのため『ソロモン王おうのテウルギアの書しょ 第だい一いち章しょう』とも呼よばれる。なお Ars Paulina とは「聖きよしパウロの術じゅつ」の意味いみで、一説いっせつにはこれがパウロによって発見はっけんされたともいう。

アルス・アルマデル・サロモニス（Ars Almadel Salomonis）

天てんの四よっつの高度こうどと黄道こうどう十二宮じゅうにきゅう360度どを支配しはいする大だい精霊せいれいについての書しょ。これもアルス・パウリナと同おなじく善ぜんなる精霊せいれいのみを取とり扱あつかっており、『ソロモン王おうのテウルギアの書しょ 第だい二に章しょう』とも呼よばれる。Ars Almadel とは「アルマデルの術じゅつ」という意味いみである。このアルマデル（Al-madel）というアラビア語ごがどういう意味いみかははっきりしていないが、本書ほんしょでは魔術まじゅつに用もちいる蝋ろう板ばんを「ソロモンのアルマデル」と称しょうしている。

アルス・ノウァ（Ars Nova）

ソロモン王おうが神殿しんでんの祭壇さいだんで行おこなっていた祈いのりの書しょとされ、魔術まじゅつ一般いっぱんと聖せいなる知識ちしきについて記しるされている。大だい天使てんしミカエルが、稲妻いなづまとともにソロモン王おうに授さづけたという。また、ソロモン王おうはこれと同時どうじに多おおくの神かみからの手記しゅきを受うけ取とっており、これによって名高なだかい智恵ちえを得えたという。Ars Nova とは「新あたらしき術じゅつ」の意い。また「名高なだかき術じゅつ」（Ars Notoria）、「書記しょき術じゅつ」（Ars Notaria）とも言いう。

諸しょ本ほん

以下いかは現存げんそんするレメゲトンの英語えいご古こ写本しゃほんのリストである。いずれもロンドンにある図書館としょかんに収蔵しゅうぞうされている。

写本しゃほん	所在しょざい	作成さくせい年代ねんだい	筆記ひっき者しゃ	備考びこう
スローン MS 3824	大だい英えい図書館としょかん	不明ふめい	不明ふめい	未完成みかんせいなレメゲトンの断片だんぺんを含ふくむもの。イライアス・アシュモールの蔵書ぞうしょ。
スローン MS 3825	大だい英えい図書館としょかん	1640/1年ねん	不明ふめい	ジョゼフ・H・ピーターソン編集へんしゅう版ばん『ソロモンの小しょう鍵かぎ』の主要しゅよう底本ていほん。
スローン MS 3648	大だい英えい図書館としょかん	17世紀せいき	不明ふめい	アグリッパとパラケルススの抜粋ばっすいを含ふくむ。
スローン MS 2731	大だい英えい図書館としょかん	1686/7年ねん	不明ふめい	多おおくの現代げんだい版ばんの底本ていほん。第だい5部ぶがなく不完全ふかんぜん。
ハーリー MS 6483	大だい英えい図書館としょかん	1712年ねん-1713年ねん	ピーター・スマート	スキナー＆ランキン『ラッド博士はかせのゴエティア』に収録しゅうろく。
ウェルカム MS 4665	ウェルカム図書館としょかん	19世紀せいき	フレデリック・ホックリー	エベニーザー・シブリーの蔵書ぞうしょから写うつしたもの。断片だんぺんのみ残存ざんそん。
ウェルカム MS 3203	ウェルカム図書館としょかん	1843年ねん	ヘンリー・ドーソン・リー	フレデリック・ホックリーの写本しゃほんの写うつし。第だい2部ぶまで。

参考さんこう文献ぶんけん

• アレイスター・クロウリー編へん 『ゲーティア・ソロモンの小ちいさき鍵かぎ』 松田まつだアフラ訳やく、アレクサンドリア木星もくせい王おう監修かんしゅう 、魔女まじょの家いえBOOKS
• Mathers, S.L.MacGregor and Crowley, Aleister, The Lesser Key of Solomon(1904),The Internet Sacred Text Archive 内ないの文書ぶんしょ（英文えいぶん）
• Joseph H. Peterson. (ed.). The Lesser Key of Solomon, Weiser Books, Maine, 2001.
  • 上記じょうきのオンライン版ばん： The Lesser Key of Solomon, 1999.
• Stephen Skinner & David Rankine. The Goetia of Dr Rudd, Golden Hoard Press, London, 2007.

関連かんれん項目こうもく

• ソロモンの鍵かぎ
• ソロモンの大おおいなる鍵かぎ