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ロジャース&ハート

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア（Wikipedia）』
ロジャース&ハート (1936)

ロジャース&ハート(Rodgers and Hart)は、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの作曲さっきょく家かリチャード・ロジャース（1902年ねん–1979年ねん）と作詞さくし家かロレンツ・ハート（1895年ねん–1943年ねん）によるソングライティング・パートナーシップ。1919年ねんからハートが亡なくなる1943年ねんまでミュージカル作品さくひん28本ほん、500曲きょく以上いじょうを作詞さくし作曲さっきょくした [1]。

経緯けいい[編集へんしゅう]

1919年ねん、リチャード・ロジャースがまだ高校生こうこうせいでロレンツ・ハートがコロンビア大学ころんびあだいがくを卒業そつぎょうした後のちにお互たがい紹介しょうかいされた[2]。ロジャース&ハートの最初さいしょのコラボレーションは1920年ねん、コロンビア大学ころんびあだいがくで1894年ねんから続つづく「バラエティ・ショー」の一環いっかんの『Fly With Me』であり、オスカー・ハマースタイン2世せいも関かかわっていた[3]。数すう年間ねんかん一緒いっしょに活動かつどうし、1925年ねん、ミュージカル『The Garrick Gaieties』でブロードウェイで初はつの成功せいこうをおさめた。楽曲がっきょく「Manhattan」がヒットし、以降いこう一連いちれんのミュージカルや映画えいがの成功せいこうに導みちびいた[1]。すぐにアメリカで最もっとも人気にんきのあるソングライターの一員いちいんとなり、1925年ねんから1931年ねん、ブロードウェイ作品さくひん15本ほんを書かき上あげた。1930年代ねんだい初頭しょとう、ハリウッドに移住いじゅうし、「Isn't It Romantic?」、「Lover」などの映画えいが音楽おんがくをヒットさせた。1935年ねん、ブロードウェイに戻もどり、ビリー・ローズのミュージカル『Jumbo』の作詞さくし作曲さっきょくを行おこなった[4]。1935年ねんからハートの亡なくなる1943年ねんまで、高こう評価ひょうかのブロードウェイ・ミュージカルを次々つぎつぎと作詞さくし作曲さっきょくし、そのほとんとがヒットした。

1930年代ねんだい後期こうき以降いこう、『On Your Toes』 (1936)、『Babes in Arms』 (1937)など彼かれらのミュージカルの多おおくが映画えいが化かされたが、楽曲がっきょくがそのまま使用しようされることはめったになかった。最高さいこう傑作けっさくと呼よばれる『Pal Joey』 (1940)は『ザ・ニューヨーカー』誌しのライターのジョン・オハラが脚本きゃくほんを執筆しっぴつした [4]。オハラは自身じしんの短編たんぺんを舞台ぶたい化かし、タイトル・ロールを悪役あくやくとした。批評ひひょう家かのブルックス・アトキンソンは劇評げきひょうにおいて「よくできているが、どのようにして朽くちた井戸いどから甘あまい水みずを汲くみ上あげるのか」と尋たずねたことが有名ゆうめいになった。1952年ねんに再演さいえんされた時ときにはロジャースはオスカー・ハマースタイン2世せいと活動かつどうしており、観客かんきゃくたちは暗くらい内容ないようでも受うけ入いれられるようになっていた。この再演さいえん版ばんはオリジナル版ばんより長ながく上演じょうえんしたとされ、批評ひひょう家かたちから傑作けっさくとされた。アトキンソンは再演さいえんの劇評げきひょうにて「劇場げきじょうのプロ意識いしきへの信頼しんらいを取とり戻もどした」と記しるした[5]。

分析ぶんせき[編集へんしゅう]

1938年ねん9月がつ26日にち、『タイム』誌しはロジャース&ハートの話題わだいをカバーストーリーに取とり上あげた。彼かれらの成功せいこうについて「同どう業者ぎょうしゃらが関知かんちしないと思おもわれる商業しょうぎょう的てき資質ししつがあったからであろう」と記しるした[6]。

彼かれらの楽曲がっきょくはキャバレー歌手かしゅやジャズ・ミュージシャンらに長ながく愛あいされている。例たとえばエラ・フィッツジェラルドはアルバム『Ella Fitzgerald Sings the Rodgers & Hart Song Book』でロジャース&ハートを特集とくしゅうした。アンドレア・マルコヴィッチはキャバレーのショーの1つを全曲ぜんきょくロジャース&ハートで構成こうせいした[7]。

ハートの歌詞かしはわかりやすく親したしみやすく、魅力みりょく的てきで陽気ようきでありながら時々ときどきメランコリックで、ブロードウェイのソングライティングのスタンダードとなった。彼かれの作曲さっきょく能力のうりょくは巧妙こうみょうで誰だれも予想よそうできず、多た音節おんせつのリズムは彼かれらのトレードマークともなっている。しかしハートはとても簡潔かんけつに深ふかい感情かんじょうを表現ひょうげんできる稀有けうな能力のうりょくも持もっている[8]。メロディを作つくり出だすロジャースはジェローム・カーンやアーヴィング・バーリンと並ならび称しょうされる。

彼かれらの上演じょうえん作品さくひんはミュージカルがレヴュー様式ようしきでリブレットがコメディシーンや音楽おんがくの入はいりきっかけでしかなかった時代じだいのものであった。しかし彼かれらの楽曲がっきょくはその前提ぜんていを越こえており、ミュージカル様式ようしきの水準すいじゅんを引ひき上あげるものであった。『コネチカット・ヤンキー』(1927年ねん)はマーク・トウェインの小説しょうせつ『アーサー王おう宮廷きゅうていのコネチカット・ヤンキー』を、『The Boys from Syracuse』(1938年ねん)はウィリアム・シェイクスピアの『間あいだ違ちがいの喜劇きげき』を基もとにしていた。彼かれらは上演じょうえんを成功せいこうさせるには、物語ものがたりと音楽おんがくの融合ゆうごうが重大じゅうだいな要素ようそだと常つねに考かんがえていた。ジョージ・バランシンのバレエを採用さいようするなど、作品さくひんにダンスを多おおく取とり入いれていた[9]。

ロジャース&ハートとロジャース&ハマースタインはよく比較ひかくされる。ハマースタインの歌詞かしは暖あたたかく楽観らっかん的てきで、場合ばあいによってはベタである。ハートの歌詞かしはとてもよく洗練せんれんされ、言葉ことば選えらびが巧妙こうみょうで、より「ニューヨーク」や「ブロードウェイ」を感かんじさせるものである。ロジャース&ハートの典型てんけいとも言いえる「Manhattan」では、一節いっせつ「"The great big city's a wondrous toy/Just made for a girl and boy"」が曲きょくの最後さいごには同おなじリズムで「"The city's clamor(またはglamour) can never spoil/The dreams of a boy and goil(またはgirl)"」になる。「恋こいに恋こいして」、「Little Girl Blue」、「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」など多おおくの曲きょくが物悲ものがなしく、明あかるい曲きょくであっても感情かんじょうの逡巡しゅんじゅんが感かんじられる。例たとえば「You Took Advantage of Me」は恋愛れんあいの喜よろこびを表現ひょうげんしているが、その題名だいめいが示しめす通とおりその関係かんけい性せいが対等たいとうなのかそうでないのか疑問ぎもんが残のこされる。

舞台ぶたいおよび映画えいが作品さくひん[編集へんしゅう]

楽曲がっきょく[編集へんしゅう]

チャック・デニソンによると、「My Heart Stood Still」がロジャース&ハートの最もっとも不朽ふきゅうの名作めいさくの1つとされる。1934年ねん、楽曲がっきょく「ブルー・ムーン」が映画えいが『男おとこの世界せかい』のタイトル・ソングとして使用しようされた。1936年ねん、この曲きょくは改訂かいていされ、グレン・グレイとカサ・ロマ・オーケストラがレコーディングし、3週間しゅうかんチャートのトップとなった。1956年ねん、エルヴィス・プレスリーのデビュー・アルバム『エルヴィス・プレスリー登場とうじょう!』に収録しゅうろくされ長ながく愛あいされている。1961年ねん、マーセルズによるドゥーワップ版はんが第だい1位いを獲得かくとくした。1970年ねん、ボブ・ディランのアルバム『セルフ・ポートレイト』にこの曲きょくが収録しゅうろくされた[10]。

フレデリック・ノーランはミュージカル『Jumbo』のために作曲さっきょくされた「My Romance」について、最もっとも優雅ゆうがで愁うれいのある歌詞かしであり、ロジャース&ハートの最高さいこう傑作けっさくの1つであると記しるした[11]。

ヒット曲きょくは他たに「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」、「恋こいに恋こいして」、「Here In My Arms」、「Mountain Greenery」、「My Heart Stood Still」、「Blue Room」、「Ten Cents a Dance」、「Dancing on the Ceiling」、「Lover」、「Bewitched, Bothered and Bewildered」、「Mimi」、「Have You Met Miss Jones?」などがある[12]。

主おもな楽曲がっきょく[編集へんしゅう]

その他たの活動かつどう[編集へんしゅう]

  • All Points West (1937) - ポール・ホワイトマンからの依頼いらいで、ロジャース&ハートにとって最初さいしょのシリアスな楽曲がっきょくの作曲さっきょくであった。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ a b Rodgers and Hart Biography Guide to Musical Theatre, accessed April 5, 2009
  2. ^ Zinnser, p. 31
  3. ^ Vinciguerra, Thomas. “Sing a Song of Morningside” (英語えいご). The Varsity Show. 2022年ねん1月がつ9日にち閲覧えつらん。
  4. ^ a b Everett, p.747
  5. ^ Green, p. 127
  6. ^ Block, p. 43
  7. ^ Connema, Richard.Review, The Incomparable Andrea Marcovicci Sings Rodgers & Hart talkinbroadway.com, August 7, 2007
  8. ^ Block, p. 22
  9. ^ Everett, p. 754
  10. ^ Self Portrait
  11. ^ Nolan, p. 206
  12. ^ Hart Biography songwritershalloffame.org, accessed April 5, 2009

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • Block, Geoffrey Holden. The Richard Rodgers Reader (2002), Oxford University Press US, ISBN 0-19-513954-2
  • Denison, Chuck. The Great American Songbook: Stories of the Standards (2004), Author's Choice Publishing, ISBN 1-931741-42-5
  • Everett, William and Laird, Paul. The Cambridge Companion to the Musical (2008), Cambridge University Press, ISBN 0-521-86238-8
  • Green, Stanley. The World of Musical Comedy (1984, 4th Edition), Da Capo Press, ISBN 0-306-80207-4
  • Nolan, Frederick. Lorenz Hart: A Poet on Broadway (1995), Oxford University Press US,ISBN 0-19-510289-4
  • Secrest, Meryle. Somewhere for Me: A Biography of Richard Rodgers (2002), Hal Leonard Corporation, ISBN 1-55783-581-0
  • Zinnser, William. Easy to Remember (2000), Godine, ISBN 1-56792-147-7

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]

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