乱数らんすうひょう

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乱数らんすうひょう(らんすうひょう、英語えいご: random number table)とは、乱数らんすうれつかずひょうのことだが、この記事きじではもっぱら暗号あんごう関係かんけいするものについておも暗号あんごう理論りろん観点かんてんからべる。なお、日本にっぽんにおいてひろられているものに野球やきゅうにおける乱数らんすうひょうがあり、暗号あんごう一種いっしゅではあるが限定げんていされたはなしとなるので、独立どくりつ記事きじの「野球やきゅうにおける乱数らんすうひょう」のほう参照さんしょうのこと。また英語えいごばん記事きじとしては、対応たいおうしている random number table のほかen:Random number book参照さんしょう

暗号あんごう乱数らんすう[編集へんしゅう]

文字もじ出現しゅつげん頻度ひんどかたよりなどといった統計とうけいてき特徴とくちょうは、しばしば暗号あんごう解読かいどくがかり、場合ばあいによってはにもなる。対抗たいこう手段しゅだんとして確実かくじつせいたか方法ほうほうに、乱数らんすう利用りようによって「スクランブル」をける、という手法しゅほうがある。その場合ばあいに、正規せいき受信じゅしんしゃ乱数らんすうからもと数字すうじ文字もじもどすために、送信そうしんがわ同一どういつの、あるいはペアの(ぎゃく関数かんすうとなっている)ひょう必要ひつようになる。そのような、暗号あんごう復号ふくごうのための乱数らんすうひょうにしたものを「乱数らんすうひょう」という。

乱数らんすうひょうは、擬似ぎじ乱数らんすうでないなんらかの方法ほうほうつくられたしん乱数らんすう、それも良質りょうしつ乱数らんすうであることがのぞまれる(コンピュータ普及ふきゅう以前いぜん擬似ぎじ乱数らんすうによるものでも意味いみがあったが、現代げんだいでは普通ふつうの(コンピュータで容易よういられる)擬似ぎじ乱数らんすう乱数らんすうひょうはあまり意味いみがない)。レインボーテーブルなども乱数らんすうならんだひょうであるが、乱数らんすうとしてではなく、特別とくべつ目的もくてきっているてんことなる。

コードと乱数らんすう[編集へんしゅう]

コード (暗号あんごう) 」とは、英単語えいたんごのようなある程度ていどまとまった情報じょうほう単位たんいとして符号ふごう割振わりふ形式けいしき暗号あんごうであり、次節じせつのサイファーと対置たいちされる。いちれいとしては「てき艦隊かんたいゆとの警報けいほうせっし、連合れんごう艦隊かんたいただちに出動しゅつどう、これを撃沈げきちん ほろぼせんとす」というもと文章ぶんしょうを「(アテヨイカヌ)ミユトノケイホウニセツシ(ノレツヲハイ)タダチニ(ヨシス)コレヲ(ワケフウメル)セントス」という暗号あんごうぶんとするような暗号あんごうである(平文へいぶんりゃく)。このれいでは「(仮名かめい3文字もじ)」のコードのうち2文字もじ平文へいぶん連想れんそうさせるようなものになっているのはあつかいの簡便かんべんさが目的もくてきだが、暗号あんごうとしてはそのぶんよわいといえる。これを、乱数らんすう場合ばあいは「らん」ともう)によってランダムに割振わりふることで、推測すいそくむずかしくできる。

サイファーと乱数らんすう[編集へんしゅう]

「サイファー」(w:Cipher)とは、電子でんし以前いぜん暗号あんごうにおいて、文字もじ単位たんい転置てんち置換ちかんけるようなタイプの暗号あんごうであり、前節ぜんせつのコードと対置たいちされる。電子でんし以後いごのブロック暗号あんごうなども、目的もくてき情報じょうほうとは無関係むかんけいに、固定こていのデータサイズで変換へんかんする、一種いっしゅのサイファーとえる。暗号あんごうがくにおいて狭義きょうぎには乱数らんすうひょうとは、このようなサイファーにおいてひょう選択せんたく使つか乱数らんすうを、帳面ちょうめん印刷いんさつもしくは筆記ひっきしたものである[1]乱数らんすうひょう使つか乱数らんすうは、できれば擬似ぎじ乱数らんすうでないしん乱数らんすうのほうがのぞましいが[ちゅう 1]、それよりも実際じっさい安全あんぜんせい影響えいきょうおおきいのは、その運用うんようほうである。次節じせつべるワンタイムパッドとして運用うんようできればいが、そのためには通信つうしん使つかうだけのりょう乱数らんすうれつをあらかじめ送信そうしんしゃ受信じゅしんしゃあいだ共有きょうゆうしておく、というおおきなコストがかる。一方いっぽうで、おな乱数らんすうれつさい利用りようつづければ、てきにその内容ないようさとられる危険きけんたかい。

ワンタイムパッドと乱数らんすう[編集へんしゅう]

しん乱数らんすう使つかいち使つかった乱数らんすうれつは2使つかわない(ワンタイムパッド)、という運用うんようまさしくなされた乱数らんすうによる暗号あんごうについて暗号あんごう理論りろんでは、情報じょうほう理論りろんてき安全あんぜんせいがある、とう。理論りろんじょうもっとつよい」ということだが(どのように解読かいどくしたとしても、どのような解読かいどくも「同様どうようにもっともらしい」ということになるので、解読かいどく不可能ふかのう)、システムとしての暗号あんごうつよさは、その運用うんよう難易なんいなどといったこともふくめて評価ひょうかされねばならず、ワンタイムパッドには、そのただしい運用うんようはコストがきわめてたかい、という弱点じゃくてんがある(ただしくない運用うんようは、暗号あんごう自体じたい理論りろんてき強度きょうど台無だいなしにする弱点じゃくてんに、容易よういになりる)。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ しつたか擬似ぎじ乱数らんすう生成せいせいけいかった過去かこではしん乱数らんすう必要ひつようせいたかかったかもしれないが、近年きんねん暗号あんごうろんてき擬似ぎじ乱数らんすう生成せいせいなども提案ていあんされており(ただし、適切てきせつ運用うんよう必須ひっす)、ここでのしん乱数らんすう必要ひつようせいがっている。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ 『ながた暗号あんごうじゅく入門にゅうもん』( ISBN 4-02-255931-4 ) p. 123