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円形えんけいチェス

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
現代げんだい円形えんけいチェス

円形えんけいチェスは、円形えんけいのボードを使用しようするチェスヴァリアントである。16のマスからなるリングよっつで構成こうせいされた円形えんけいのボードと、標準ひょうじゅんてきチェスこまのセットでプレイする。これはトポロジーまとには、円柱えんちゅう曲面きょくめんじょうでプレイするのと同等どうとうである。

このようなタイプのチェスは7世紀せいきのアラブ世界せかいあそばれていた記録きろくがあり、中世ちゅうせい時代じだいにペルシャやビザンチン帝国ていこく普及ふきゅうしていたようである。これらの時代じだいにはチェスの前身ぜんしんであるシャトランジこまとルールをもちいるゲームであった。

歴史れきしてき円形えんけいチェス

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Representation of the starting position for historical circular chess
歴史れきしてき円形えんけいチェスの開始かいし位置いち

中世ちゅうせい円形えんけいチェスのルールのひとつは、ペルシャの著述ちょじゅつムハンマド・イブン・マフムード・アムリによる「科学かがく宝庫ほうこ」(1325ねん)に記述きじゅつされている。この書物しょもつでは、shatranj al-muddawara (円形えんけいチェス)またはshatranj ar-Rūmīya (ローマまたはビザンチンチェス)とばれており、それぞれ16のスペースに分割ぶんかつされた4つのリングを同心円どうしんえんじょうわせたボードを使用しようしている。合計ごうけいすると(通常つうじょうのチェスとおなじ)64マスで、代数だいすう表記ひょうきでそれぞれのリングにABCDの文字もじてられ、かくスペースに1~16の数字すうじてられている。ゲームは二人ふたりでプレイし、しろくろかれてそれぞれ16のこま使用しようする。円形えんけいチェスの目標もくひょうは、相手あいてのキングをチェックメイトしゲームを終了しゅうりょうさせることである。

このゲームは、シャトランジこま使用しようする。初期しょき位置いちでは、内側うちがわのリングにキングとカウンセラー、つぎのリングにエレファント、そのつぎのリングにナイト、最後さいごのリングにルークが配置はいちされ、それらのりょうわきにそれぞれ4つのポーンが1れつずつ配置はいちされる。一方いっぽうのプレイヤーのキングは相手あいてのカウンセラーと、ボードの中央ちゅうおうあなへだててかいっている。こま移動いどう方法ほうほうはシャトランジとおなじである。ただし、おなじプレイヤーの進行しんこう方向ほうこうことなるふたつのポーンがぶつかってうごけなくなった場合ばあい相手あいてプレイヤーはその両方りょうほうのポーンをのぞくことができる(この除去じょきょにはターンは消費しょうひされない)。ボードに最終さいしゅうランクがないため、ポーンのプロモーションはない。ステイルメイトは、ステイルメイトをもたらしたプレイヤーの勝利しょうりになる。シャトランジと同様どうよう、キング以外いがいのすべてのこまられた場合ばあいけになる(「はだかおう」)が、直後ちょくごのターンで相手あいておな状態じょうたいにできた場合ばあいけになる。

Representation of the starting position for citadel chess
シタデルチェスの開始かいし位置いち

シタデルチェス

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記述きじゅつしているヴァリアントで、こま初期しょき配置はいちことなり、ボードの中央ちゅうおうにシタデル(城塞じょうさい)のスペースがある。このゲームではキングがシタデルに到達とうたつするとけを強制きょうせいできる。

現代げんだい円形えんけいチェス

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英国えいこく、リンカーンの歴史れきしリチャード・レイノルズは、1983ねん、「科学かがく宝庫ほうこ」に記載きさいされていた歴史れきしてき円形えんけいチェスと現代げんだいチェスのルールをわせてリバイバルをこころみた。1996ねん円形えんけいチェス協会きょうかい設立せつりつされ、世界せかい選手権せんしゅけん開催かいさいされている。

Representation of the starting position for modern circular chess
現代げんだい円形えんけいチェスの開始かいし位置いち反転はんてん

初期しょき配置はいち基本きほんてきに、通常つうじょうのチェスのボードをたて半分はんぶんり、げてりょうはしつなげることによってられる。ボードのはし相当そうとうする位置いちにはせんかれており、かくこまはこれをまたぐようにしてそれぞれ配置はいちされる。キングとクィーンは一番いちばん内側うちがわのリングで、ビショップは2番目ばんめ、ナイトは3番目ばんめ、ルークは4番目ばんめになる。ポーンはこれらのこままえ配置はいちされる。

こまうごきは通常つうじょうのチェスとおなじである。クィーンとルークは、障害しょうがいぶつがなければリングを一周いっしゅうすることができるが、おな位置いちもどる「ゼロ移動いどう」は許可きょかされない。ポーンは、初期しょき位置いちから6マス移動いどうして、相手あいてのスタートラインの直前ちょくぜん到達とうたつするとプロモートできる。キャスリングアンパッサンはない。チェックを宣言せんげんする義務ぎむはなく、スナッフリング(相手あいてのキングがチェックにはいるか、チェックからのがれるのを失敗しっぱいしたのちに、キングを捕獲ほかくして勝利しょうりすること)は許可きょかされている。

セオリー

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通常つうじょうのチェスでは、一般いっぱんてきにクィーンに9てん、ルークに5てん、ビショップとナイトに3てん、ポーンに1てん相対そうたいてき価値かちがあるとかんがえられている。円形えんけいチェスのこま価値かちてるこころみはおこなわれていないが、これらのがそのままてはまらないことはたしかである。クィーンとルークの価値かちは、とくどういちリングじょうさえぎるものがないとき非常ひじょう強力きょうりょくになることをもって大幅おおはばつよめられるが、ビショップとナイトの減少げんしょうする。これは、障害しょうがいぶつがないときのかくピースの移動いどう範囲はんいかぞえるだけで簡単かんたん確認かくにんできる。8×8マスのボードでは、クィーン、ルーク、ビショップ、ナイトの移動いどう可能かのうなマスはそれぞれ27、14、13、8であるが、円形えんけいチェスではこれが24、18、6、6になる。ただし円形えんけいボードでは、マイナーピースのうごきを視覚しかくするのがよりむずかしいため、つよいプレイヤーであっても脅威きょうい見落みおとす可能かのうせいがある。


通常つうじょうのチェスと円形えんけいチェスとの実際じっさいてきちがいのひとつはオープニングにある。通常つうじょうのチェスではオープニング理論りろんすう世紀せいきわたって研究けんきゅうされ、またコンピュータの分析ぶんせきによって、トップレベルのゲームのほとんどが20までは既知きち理論りろんからだっしていないことがしめされている。しかし円形えんけいチェスでは、オープニングの理論りろん事実じじつじょう存在そんざいしないため、プレイヤーはいちから自分じぶん自身じしんうごきをしなければならない。通常つうじょうのチェスでは、キングまたはクィーンのまえのポーンをすすめることは一般いっぱん最良さいりょうのオープニングムーブとされている。これは、ふたつの重要じゅうよう中央ちゅうおうのマスを攻撃こうげきするとともに、対角線たいかくせんひらいてビショップやクィーンの移動いどう可能かのうにするためである。しかし円形えんけいボードでは、キングまたはクィーンのまえのポーンどちらも1マスしか攻撃こうげき範囲はんいがなく、その前進ぜんしんはビショップのための移動いどう範囲はんいを1マスけることにしかならないため、この有効ゆうこうせいてはまらない。プレイヤーによってはとにかく中央ちゅうおうのポーンをすすめるものもいるし、より強力きょうりょく攻撃こうげきラインをひらくためルークのまえのポーンをすすめるものもいるが、どのうごきが最良さいりょうであるのかはあきらかでない。


正方形せいほうけいのボードと円形えんけいのボードの幾何きかがくてき形状けいじょうちがいは、エンドゲームの理論りろんにもかなりのちがいをす。通常つうじょうのチェスのける4つの「基本きほんてきなチェックメイト」のうち3つ(キングとルーク[よう出典しゅってん] 、キングと2つのビショップ、およびキングとビショップとナイトの単独たんどくキングにたいするもの)は、防御ぼうぎょがわののキングをボードじょうのコーナーにむことに依存いぞんしているため、円形えんけいのボードでは不可能ふかのうになる。円形えんけいチェスの「基本きほんてきなメイト」は、キングとクイーン、キングとルークとマイナーピース[よう出典しゅってん] 、およびキングと3つのマイナーピースで単独たんどくのキングにたいするものである。通常つうじょうのチェスではエンドゲームでけになる傾向けいこうつよいため、防御ぼうぎょがわ投了とうりょうとみなされるようなポジションでもプレーをつづけることがよくある。しかし円形えんけいチェスでは、特定とくてい局面きょくめんでは攻撃こうげきがわ有利ゆうりになる場合ばあいがある。キングにたいするキングとポーンの攻撃こうげきでは、ステイルメイトの防御ぼうぎょ不可能ふかのう(ポーンがかっているがわへキングがめられることがないため)であり、したがって防御ぼうぎょがわのキングがけにむためには、防御ぼうぎょされるか昇格しょうかくされるまえにそのポーンを捕獲ほかくするしかない(さもなければつね相手あいて勝利しょうりになる)。

その現代げんだい円形えんけいチェス

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  • Noble Celts (1993) - 一方いっぽうのプレイヤーのこま中央ちゅうおう他方たほうのプレイヤーのこま外周がいしゅう配置はいちする円形えんけいチェス[1]
  • Centre Chess (1994) - 72マスの円形えんけいボードを使用しようするチェス。レイノルズの円形えんけいチェスとはちがい、えん中心ちゅうしんへだててかいうように配置はいちする。りょうぐん境目さかいめ通過つうか配置はいちができないマスがある。中央ちゅうおうあなはなく、中央ちゅうおう通過つうかして敵陣てきじん攻撃こうげきできる[2]
  • Circular Chess (2001) - レイノルズとは別種べっしゅ円形えんけいチェス。Centre Chessと同様どうように、外周がいしゅう通過つうかできないエリアがあり、えん中心ちゅうしんへだててかいうように配置はいちする。中央ちゅうおうあながあるが一部いちぶこまあなえて移動いどうできる[3]
  • 3 Man Chess (2004) - 伝統でんとうてきな3にんようチェスを円形えんけいボードに適用てきようしたゲーム。中央ちゅうおう通過つうかできる[4]

脚注きゃくちゅう

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出典しゅってん

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  1. ^ Noble Celts”. The Museum of Abstract Strategy Games - アブストラクトゲーム博物館はくぶつかん. 2022ねん5がつ17にち閲覧えつらん
  2. ^ Centre Chess”. The Museum of Abstract Strategy Games - アブストラクトゲーム博物館はくぶつかん. 2022ねん5がつ17にち閲覧えつらん
  3. ^ Circular Chess” (英語えいご). BoardGameGeek. 2022ねん5がつ17にち閲覧えつらん
  4. ^ 3 Man Chess”. The Museum of Abstract Strategy Games - アブストラクトゲーム博物館はくぶつかん. 2022ねん5がつ17にち閲覧えつらん