(Translated by https://www.hiragana.jp/)
南部アメリカ英語 - Wikipedia コンテンツにスキップ

南部なんぶアメリカ英語えいご

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
阻害そがいおんまえでのたん母音ぼいん /aɪ//aː/ 定義ていぎした場合ばあい南部なんぶアメリカ英語えいご領域りょういき

南部なんぶアメリカ英語えいご(なんぶアメリカえいご、えい: Southern American English)は、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく南部なんぶ地方ちほうの、南北なんぼくヴァージニアしゅうウェストヴァージニアしゅうケンタッキーしゅうからメキシコわんきしまで、東西とうざい大西おおにしひろしきしからテキサスしゅうだい部分ぶぶんにかけての地方ちほうはなされる英語えいご方言ほうげんアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくなか最大さいだい方言ほうげんグループをなしている[1]地域ちいきごとに方言ほうげんことなるため、南部なんぶアメリカ英語えいごはより細分さいぶんすることができる(アメリカ英語えいご参照さんしょう)。南部なんぶ地方ちほう歴史れきしてきアフリカけいアメリカじんとのつながりがつよいため、黒人こくじん英語えいご類似るいじするてんつ。

南部なんぶアメリカ英語えいご方言ほうげんはニューヨーク・ニュージャージー方言ほうげんなどのアメリカ英語えいご方言ほうげん同様どうよう偏見へんけんたれることがしばしばある。そのため南部なんぶアメリカ英語えいご話者わしゃは「ニュートラルにこえる英語えいご」(標準ひょうじゅんアメリカ英語えいご)をこのみ、南部なんぶ方言ほうげん標準ひょうじゅんアメリカ英語えいご混淆こんこうさせたり自分じぶんたちの言葉ことばから南部なんぶ独特どくとく特徴とくちょうをなくそうとしたりする。しかしこうしたことは語彙ごいよりもむしろ音声おんせい体系たいけいにおいて南部なんぶアメリカ英語えいご変化へんかこしている。

概説がいせつ

[編集へんしゅう]

南部なんぶアメリカ方言ほうげん範囲はんいアメリカ連合れんごうこく南北戦争なんぼくせんそうなか合衆国がっしゅうこく対立たいりつして分離ぶんりした地域ちいき)の領域りょういき南部なんぶもろしゅう隣接りんせつする地域ちいきふくむ。

南部なんぶアメリカ方言ほうげんおおむね17世紀せいきと18世紀せいきブリテン諸島しょとうからやってきた移民いみんはじまる。南部なんぶにはおもイングランド南西なんせいからの移民いみんいた(イングランド南西なんせい方言ほうげん南部なんぶアメリカ方言ほうげん類似るいじする)。そのなかにはおおくのかずアルスタースコットランドからのプロテスタント教徒きょうとふくんでいた。

いくつかの形態けいたい南部なんぶアメリカ方言ほうげんおもアラバマしゅうジョージアしゅうフロリダしゅう一部いちぶテネシーしゅうメリーランドしゅう一部いちぶミシシッピしゅうルイジアナしゅうアーカンソーしゅうテキサスしゅうオクラホマしゅうヴァージニアしゅうだい部分ぶぶんノースカロライナしゅうサウスカロライナしゅうケンタッキーしゅうウェストヴァージニアしゅうミズーリしゅう南東なんとうはしちゅう南部なんぶオザーク高原こうげん)で見受みうけられる。 南部なんぶ以外いがいでも、カンザスしゅうニューメキシコしゅうコロラドしゅうアリゾナしゅうモンタナしゅう、カリフォルニアのサンワーキンヴァレーのように、歴史れきしてき南部なんぶじん移住いじゅうから、南部なんぶ方言ほうげんといってふさわしい、あるいは南部なんぶ影響えいきょう濃厚のうこうけた方言ほうげんひろ使つかわれる土地とちもある。また、オハイオしゅう南部なんぶ地方ちほうだい部分ぶぶんインディアナしゅうイリノイしゅう南部なんぶじん南部なんぶアパラチアじんいた地域ちいき)の言語げんご様式ようしき南部なんぶアメリカ英語えいご影響えいきょう内陸ないりく北部ほくぶアメリカ英語えいごのそれよりも顕著けんちょである。

南部なんぶアメリカ方言ほうげんアラスカしゅう石油せきゆ産業さんぎょう関連かんれんした地域ちいきでも一般いっぱんてきである。これは、20世紀せいき後半こうはんにアラスカで石油せきゆ産業さんぎょうとパイプラインの開発かいはつ集中しゅうちゅうし、こう賃金ちんぎん一攫千金いっかくせんきんもとめてメキシコ湾岸わんがんやオクラホマの石油せきゆ労働ろうどうしゃ大量たいりょううつり、長期間ちょうきかん滞在たいざいしたためである。

音韻おんいん体系たいけい

[編集へんしゅう]

全体ぜんたいとして、南部なんぶアメリカ英語えいご発音はつおんひとつにまとめることはほとんど不可能ふかのうであり、地域ちいきあいだ世代せだいあいだおおきな差異さいがある(くわしくは後述こうじゅつ南部なんぶアメリカ英語えいご方言ほうげん差異さい参照さんしょう)。世界せかい恐慌きょうこうダストボウルだい世界せかい大戦たいせんといった社会しゃかい変動へんどう合衆国がっしゅうこくちゅう人々ひとびとだい移動いどうしたことも差異さい要因よういんとなっている。

旧来きゅうらいかたち

[編集へんしゅう]

ここでべる特徴とくちょう旧来きゅうらい南部なんぶアメリカ英語えいご特色とくしょくであり、わか世代せだい会話かいわではこのような特徴とくちょうあらわれることはすくない。

  • オーストラリア英語えいごイギリス英語えいごのように、ディープサウス沿岸えんがん英語えいご歴史れきしてきnon-rhoticである:子音しいんかたり接続せつぞくするまえ最後さいごの /r/ おと欠落けつらくする。そのためguard(ガード、まもる)はGod(ゴッド、かみ)におととなり(ただしまえおとうしろのおとよりもなが母音ぼいんである場合ばあい)、sore(ソーァ、いたい)はsaw(ソー、た)のようなおとになる。ふたつの母音ぼいんあいだに /r/ おと挿入そうにゅうされる(れい:"lawr and order")というIntrusive /r/南部なんぶアメリカ英語えいご沿岸えんがん特徴とくちょうではない。これはそのおおくのnon-rhoticアクセントとおなじである。今日きょうではニューオーリンズやアラバマしゅうモービル、ジョージアしゅうサバンナ、ヴァージニアしゅうノーフォークのような地域ちいきにしかnon-rhoticの話者わしゃはいない(Labov、Ash、Bomberg 2006: 47-48)。Non-rhoticityはほとんどの南部なんぶアクセント地域ちいき急速きゅうそく消滅しょうめつしていて、東海岸ひがしかいがんニューヨークボストンなまりのようなその伝統でんとうてきなnon-rhotic方言ほうげんよりも消滅しょうめつ程度ていどはげしい。non-rhoticを使つかつづける南部なんぶアメリカ英語えいご話者わしゃも、ニューイングランドやニューヨークのようにintrusive r使つかうようになっている。
/ɹ/ → 0 | before /+con/
/ɹ/ → 0 | before #
  • caught(コート、つかまえた)とcot(カート、簡易かんいベッド)またはtalk(トーク、はなす)とtock(ターク、けつ)のようなかたり区別くべつだい部分ぶぶんたもたれている。ディープサウスのおおくで、talkcaughtのようなかたり母音ぼいん重母音じゅうぼいん(タウク、カウト)に展開てんかいしてきた。これはアメリカ北部ほくぶloud(ラウド、うるさい)を重母音じゅうぼいん発音はつおんするのとおなじようなものである。
  • horse(ホース、うま)とhoarse(ホース、しわがれごえの)、for(フォー、ために)とfour(フォー、よん)などのような/ɔr//or/区別くべつたもたれている。
  • wine(ワイン、葡萄酒ぶどうしゅ)とwhine(ホイン、あわれっぽくく)の混同こんどうこらず、それぞれ/w//hw/発音はつおんされる。
  • yod-droppingの欠如けつじょたとえればdo(ドゥー、する)/due(ドュー、当然とうぜんあたえられるべき)やloot(ルートゥ、戦利せんりひん)/lute(ルュートゥ、リュート)のようなかたりのペアの発音はつおんちがいは明瞭めいりょうである。歴史れきしてきに、duelutenewのようなかたり/juː/ふくんできた(容認ようにん発音はつおん同様どうよう)。しかしLabovとAshとBoberg (2006: 53-54)は、今日きょうでは南部なんぶ話者わしゃしか重母音じゅうぼいん/ru/使つかってそれらのかたり区別くべつしないと報告ほうこくしている。かれらはさらに、これらの区別くべつをする話者わしゃは、ノースカロライナしゅうサウスカロライナしゅう北西ほくせい、ミシシッピしゅうジャクソン、フロリダしゅうタラハシー最初さいしょつかったのだとも報告ほうこくしている。
  • marry(マリー、結婚けっこんする)とmerry(メリー、陽気ようきな)とMary(メアリー、人名じんめい)のなかにある/ær//ɛr//er/区別くべつ年配ねんぱい世代せだいではまずたもたれている。わか世代せだいではほとんど区別くべつされない。rおとはほぼ母音ぼいんになるが、AAVEのようなちょう母音ぼいんのちではまず省略しょうりゃくされる。

近来きんらいかたち

[編集へんしゅう]

ここでべる現象げんしょうは、近来きんらい南部なんぶアメリカ英語えいご比較的ひかくてきひろ普及ふきゅうしているものである。ただし普及ふきゅう程度ていど地方ちほうあいだ田舎いなか都市としあいだことなることがあるほか、年配ねんぱい話者わしゃではこのような特徴とくちょうあらわれることはすくない。

  • はなにかかった子音しいんまえ[ɛ][ɪ]混同こんどうこる。そのためpen(ペン)とpin(ピン)はおな発音はつおんになる。ただしpin-pen混同こんどうニューオーリンズサバンナ、あるいはマイアミ(この都市とし南部なんぶ方言ほうげん地域ちいきではない)では見受みうけられない。このおと変化へんかはここ10ねん南部なんぶえてひろまっており、現在げんざいでは中西部ちゅうせいぶ地方ちほう西部せいぶ地方ちほうでもすっかり浸透しんとうしている。
  • /l/まえゆるんだ母音ぼいん緊張きんちょうした母音ぼいんはしばしば混合こんごうこり、feel(フィール、かんじる)/fill(フィル、ちる)やfail(フェイル、失敗しっぱいする)/fell(フェル、ちた)のようなかたりのペアを南部なんぶのいくらかの地域ちいきでは異形いぎょう同音どうおん異義いぎととる話者わしゃがいる。こうした話者わしゃはこれらのかたりのペアを標準ひょうじゅん発音はつおんぎゃくにして識別しきべつすることがある。れい南部なんぶアメリカ英語えいごでのfeelfillのようにこえ、ぎゃくもまた同様どうようである。(Labov, Ash, and Boberg 2006: 69-73)

共通きょうつうする特徴とくちょう

[編集へんしゅう]

ここでべる特徴とくちょう南部なんぶアメリカ英語えいご新旧しんきゅう共通きょうつうのものである。

  • /n/まえ/z/[d]になる。たとえば、wasn't(ワズント)は[wʌdn̩t]に、business(ビジネス)は[bɪdnɪs]になる。hasn't(ハズント)は時々ときどき[hæzənt]のまま発音はつおんするが、これはhadn't(ハドント)という[hædənt]発音はつおんするかたりがすでに存在そんざいするからである。
/z/ → [d] | before /n/
  • おおくの名詞めいし最初さいしょ音節おんせつつよいきおいアクセントになり、2音節おんせつつよいきおい以外いがいのアクセントになる。たとえば、police(ポリス、警察けいさつ)、cement(セメント)、Detroit(デトロイト、地名ちめい)、Thanksgiving(スァンクスギヴィング、感謝かんしゃ)、insurance(インシュアランス、保険ほけん)、behind(ビハインド、うしろに)、display(ディスプレイ)、recycle(リサイクル)、TV(ティーヴィー)など。
  • 南部なんぶばし(Southern Drawl)、重母音じゅうぼいんpat(パット、なでる)やpet(ペット)やpit(ピット、あな)といった伝統でんとうてきたん母音ぼいんさん重母音じゅうぼいん:これらの要因よういんから、かたり発音はつおん半母音はんぼいん[j]発展はってんする。この場合ばあいあいまい母音ぼいんになることもある。
/æ/ → [æjə]
/ɛ/ → [ɛjə]
/ɪ/ → [ɪjə]
  • 南部なんぶ母音ぼいん推移すいい(Southern (Vowel) Shift)。Lobovによって説明せつめいされた母音ぼいん連鎖れんさ変化へんか
    • これまでにべてきたばしの結果けっかとして、[ɪ]こうぜんした母音ぼいんに、[ɛ]中位ちゅういぜんした母音ぼいんになる。これに並行へいこうして、[i][e]音調おんちょうかくゆるく、またちいさいぜんしたおんとなる。
    • boonのなかの/u/codeのなかの/o/のちした母音ぼいんおおきくまえ移動いどうする。
    • えんくちびるしたこう母音ぼいん/ɑr/ card/ɔ/ boardほう上部じょうぶ移動いどうし、後者こうしゃ順繰じゅんぐりにboonにおけるもと位置いちほう上部じょうぶ移動いどうする。この特有とくゆう移動いどうcot-caught mergerしめ話者わしゃにはたいていこらない。
    • 重母音じゅうぼいん/aɪ/[aː]たん母音ぼいんする。語末ごまつゆうごえ子音しいんまえでこの特徴とくちょうしめ話者わしゃもいるが、無声むせい子音しいんまえではCanadian-style raisingになる。結果けっかride[raːd]に、wide[waːd]になるが、right[rəɪt]に、white[wəɪt]になる。そのほか、/aɪ/をあらゆる文脈ぶんみゃくたん母音ぼいんするひともいる。おおくの地域ちいきで、この[aː]は([æː]ほうに)前部ぜんぶになる傾向けいこうがあり、そのためrod (SAE [raːd]通常つうじょう目立めだったえんくちびるともなわないで発音はつおんされる)とride(SAE [ræːd])のような単語たんごあいだ混同こんどうされることはない。
/aɪ/ → [aː]

かたり使用しよう

[編集へんしゅう]
  • かたり使用しよう傾向けいこう(ハーバードの方言ほうげん調査ちょうさより)[2]:
    • ディープサウスコカコーラ優勢ゆうせいである影響えいきょうであろう、たいていの炭酸たんさん飲料いんりょうは、コーラとは関係かんけいのないものでもcokeまたはcocolaばれる。Soda時々ときどきしか使つかわれない[3]
    • 食料しょくりょう雑貨ざっかてんのカート(The push-cart)のことをbuggyぶ(一部いちぶではjitneytrolleyとも)[4]
  • トンボガガトンボについて"mosquito hawk"や"snake doctor"といういいまわしを使用しよう。(Diptera Tipulidae)[5]
  • "over there"(あそこに、あちらでは)や"in or at that indicated place"のわりに"over yonder"を使用しようとくに"the house over yonder"のような特異とくい場所ばしょのことをとき使つかわれる。くわえて、"yonder"が"here"と"there"をえるさん番目ばんめおおきい距離きょりあらわ度合どあいとして使つかわれる傾向けいこうがある。これは、ながとおみちのり、たいしたことのない範囲はんい教会きょうかい賛美さんびちゅうの"When the Roll Is Called Up Yonder"のようなひらかれたひろ空間くうかんといったものをす。("yonder"といういいかたイギリス英語えいごでは依然いぜんひろ使つかわれている)[6]
  • "goose bumps"にわり"chill bumps"という単語たんご使用しよう[7]

方言ほうげん

[編集へんしゅう]

ある意味いみ、「南部なんぶ」というひとつの方言ほうげん存在そんざいしない。そのわりに、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく南部なんぶひろ見渡みわたすとたくさんの地域ちいき方言ほうげん存在そんざいする。多様たような「南部なんぶ方言ほうげん存在そんざいするけれども、よりへだたりがおおきいアメリカ英語えいごとイギリス英語えいごでもそうであるように、南部なんぶしょ方言ほうげんすべ相互そうご理解りかい可能かのうである。

大西洋たいせいようがん方言ほうげん

[編集へんしゅう]

中部ちゅうぶ高地たかち方言ほうげん

[編集へんしゅう]

メキシコ湾岸わんがん方言ほうげん

[編集へんしゅう]

黒人こくじん英語えいご影響えいきょうけた方言ほうげん

[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう

[編集へんしゅう]
  1. ^ Do You Speak American: What Lies Ahead”. pbs.org. 2007ねん8がつ15にち閲覧えつらん
  2. ^ Noted in the Harvard Dialect Survey
  3. ^ http://cfprod01.imt.uwm.edu/Dept/FLL/linguistics/dialect/staticmaps/q_105.html Harvard Dialect Survey - word use: sweetened carbonated beverage
  4. ^ http://cfprod01.imt.uwm.edu/Dept/FLL/linguistics/dialect/staticmaps/q_75.html Harvard Dialect Survey - word use: wheeled contraption at grocery store
  5. ^ Definition from THe Free Dictionary
  6. ^ Regional Note from THe Free Dictionary
  7. ^ http://cfprod01.imt.uwm.edu/Dept/FLL/linguistics/dialect/staticmaps/q_81.html Harvard Dialect Study - word use: skin bumps when cold