去年きょねん

去年きょねん（こぞ）とは、新年しんねんを迎むかえ、旧年きゅうねんを振ふり返かえり、もう去年きょねん（きょねん）になったのだなあと感慨かんがいを表あらわす言葉ことば。俳句はいくでは、新年しんねんの季語きごとなっている。古こ年とし（ふるとし）、初はつ昔むかし（はつむかし）、宵よいの年とし（よいのとし）ともいう。

俳句はいくでは「去年きょねん今年ことし」という用法ようほうもあり、たちまちのうちに年としが去さり、年としが来くるという、時ときの過すぎゆきの速はやさの感慨かんがいを表あらわす。

去年きょねん今年ことし貫つらぬく棒ぼうの如ごときもの

高浜たかはま虚子きょしの句く「去年きょねん今年ことし貫つらぬく棒ぼうの如ごときもの」は、1950年ねん（昭和しょうわ25年ねん）12月に新年しんねんのラジオ放送ほうそうのためにつくられた。この句くが鎌倉かまくら駅えき（神奈川かながわ県けん鎌倉かまくら市し）の構内こうないに掲かかげられていたのを目めにした川端かわばた康成やすなりが、感嘆かんたんして紹介しょうかいしてから有名ゆうめいになった。川端かわばたは、1969年ねんにハワイ大学はわいだいがくで行おこなった講演こうえんと講義こうぎ「美びの存在そんざいと発見はっけん」の中なかで、次つぎのように述のべている。

鎌倉かまくらの驛えきでは、暮くれから正月しょうがつにかけて、町まちに住すむ文人ぶんじんたちの自筆じひつの歌うたや俳句はいくを驛えきの構内こうないにかかげることがありますが、ある年としの暮くれ、わたくしは驛えきで虚子きょしの「去年きょねん今年ことし」の句くを見みて、あつと思おもひました。「貫つらぬく棒ぼうの如ごときもの」におどろいて、心しん打うたれました。大たいした言げんひ方かたです。禪ぜんの一喝いっかつに遭つたやうでした。 — 川端かわばた康成やすなり「美びの存在そんざいと發見はっけん」