(Translated by https://www.hiragana.jp/)
違いを除いて - Wikipedia コンテンツにスキップ

ちがいをのぞいて

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
同型どうけいのぞいてから転送てんそう

数学すうがく文脈ぶんみゃくにおける「—(のちがい)をのぞいて…」 (のちがいをのぞいて、… "up to" —) という語句ごくは、「— にかんする差異さい無視むしする」ことを意味いみする専門せんもん用語ようごである。このいいまわしの意味いみするところは、「適当てきとう目的もくてきのもとでは、あるひとつの同値どうちるいぞくするもと全体ぜんたいを、なに単一たんいつ実体じったいあらわすものとみなせる」ということである。"—" の部分ぶぶんには、なんらかの性質せいしつや、おな同値どうちるいぞくするもと(つまり一方いっぽう他方たほう同値どうちとなるようなもと)のあいだ変換へんかん過程かてい記述きじゅつする内容ないようはいる。

たとえば不定ふてい積分せきぶん計算けいさんするとき、その結果けっかは「定数ていすうこうちがいをのぞいて」 f (x) であるというようにうことができる。その意味いみは、f (x) 以外いがい不定ふてい積分せきぶん g(x) があったとしても g(x) = f (x) + C (C定数ていすう)とくことができ、その論理ろんり展開てんかいにおいて f のかわりに gもちいても影響えいきょうがないことを示唆しさしている。またたとえば群論ぐんろんで、ぐん G集合しゅうごう X作用さようするとき、X のふたつのもとおな軌道きどうぞくするならば、それらは「ぐん作用さようちがいをのぞいて」同値どうちであるといいあらわすことができる。

ちゅう: すこくだけたいいかたということにはなるが、おな目的もくてきで「— でって」「— をほうとして」(modulo —, mod —) といいまわすこともよくおこなわれる。以下いかげるれいであれば、「すう 4 のぐん同型どうけいわれれば(mod 同型どうけいで)2種類しゅるいである」とか、「クイーンの名前なまえほうとして92かいがある」といった具合ぐあいである。このいいまわしは合同ごうどう算術さんじゅつにおける「7 と 11 とは 4 をほうとして(あるいは 4 でったあまりが)ひとしい」というような構文こうぶん流用りゅうようである(もちろん、ききてがこういった略式りゃくしき数学すうがく用語ようごれていることが前提ぜんてい)。

れい[編集へんしゅう]

卑近ひきんれい[編集へんしゅう]

テトリス
簡単かんたんれいとしては、「回転かいてんちがいをのぞけば全部ぜんぶで 7種類しゅるい反射はんしゃがた[note 1]テトロミノ存在そんざいする」というぶんがある。これはテトロミノ (隣接りんせつする正方形せいほうけい同士どうしかならずひとつのあたり共有きょうゆうするように 単位たんい正方形せいほうけいを4つならべてできる図形ずけい、いわゆるテトリスのピース) の配置はいちななつの可能かのうせい (box, I, L, J, T, S, Z) があることをあらわしている。さらに「回転かいてんかがみうつちがいをのぞいて、テトロミノは5種類しゅるいである」ということもできる。これはなな種類しゅるいのテトロミノのうち、L かたちのものと J かたちのもの、また S のものと Z のものは、それぞれきょううつ対称たいしょうであることを考慮こうりょした結果けっかである。ゲームのテトリスでは反転はんてん(かがみうつ)操作そうさゆるされていないので、最初さいしょにあげた 7種類しゅるいのテトロミノをかんがえるほうが自然しぜんである。
なお、回転かいてんなどの操作そうさおこなわずにすべてかぞえつくす場合ばあいかんがえると、(正式せいしきないいかたというものはないが)「反射はんしゃがたテトロミノは回転かいてんのぞいて7種類しゅるい総計そうけいで19種類しゅるい)である」というようないいかたがされることがよくある。この場合ばあい単純たんじゅんかんがえれば7しゅのピースける4種類しゅるい回転かいてんで28種類しゅるいとなりそうなものだが、ピースのなかには回転かいてんしてもことなる状態じょうたいが4種類しゅるいよりもすくないものがある(たとえばboxなどはあきらかに回転かいてん不変ふへんである)ので実際じっさいにはそうはなっていない(テトリスはこの問題もんだいかんがえるにあたって素晴すばらしいツールとなる)。
エイトクイーン
エイトクイーンパズルでは、8つのクイーンが(名前なまえをつけるなどして)それぞれべつのものとかんがえることができるならば 3 709 440 ことなるかいがある。しかし通常つうじょうは8つのクイーンはすべておなじものとかんがえるので「クイーンをちがいをのぞいて、独立どくりつかいは 92 (= 3 709 440/8!) である」ということができる。ここではことなる配置はいちが、チェスばんきはそのままうごかさず、クイーン全体ぜんたいとしての配置はいちわらずにクイーン同士どうしえをおこなったものになっているとき、それらの配置はいち同値どうちであるものとすることになっている。
クイーンを同一どういつすることにくわえて、チェスばん回転かいてん反転はんてんをもゆるすことにすれば、一方いっぽう他方たほう対称たいしょう変換へんかんになっている配置はいち同値どうちであるとかんがえて「対称たいしょう変換へんかんちがいをのぞけばかいは12しかない」ということができる。

より数学すうがくてきれい[編集へんしゅう]

しょうすうぐん分類ぶんるい
群論ぐんろんにおける文脈ぶんみゃくで「同型どうけいちがいをのぞいてくらいすう 4 のぐん種類しゅるいである」とべることがある。その意味いみは、ぐんたがいに同型どうけいであるときにそれらが同値どうちである、とかんがえたときの同値どうちるい(つまり同型どうけいるい)が2つあるということである。
けんろん普遍ふへんせい
けんろんでは対象たいしょう関係かんけいせい問題もんだいにされ、一般いっぱんにはふたつの対象たいしょう同一どういつであることをしめすことはかならずしも必要ひつようでないし、のぞめないこともおおい(本当ほんとう同一どういつであることを厳密げんみつけんという概念がいねんもある)。よって、せきはじめ対象たいしょうのようにけんろん重要じゅうよう概念がいねんは、それがふた存在そんざいすればそれらは同型どうけい、いいかえると「同型どうけいのぞいて一意いちい存在そんざいする」と表現ひょうげんできることがおおい。
幾何きかがくてき対象たいしょう
位相いそう幾何きかがくでは、ある幾何きかてき対象たいしょう複数ふくすう表示ひょうじ定式ていしきつ(むすはその顕著けんちょれい)ことがおおい。幾何きかてき操作そうさ(たとえば球面きゅうめんへのハンドル追加ついか)が対象たいしょう表示ひょうじ操作そうさほどこ位置いち依存いぞんしていてもその結果けっかすべ位相いそう同型どうけいになることがある。このようなとき、問題もんだい幾何きかてき操作そうさは「同相どうしょうちがいをのぞいて」一意いちいさだまるという。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 反射はんしゃがた (reflecting) はかがみぞう対称たいしょうなものを同一どういつしないという意味いみでついている修飾しゅうしょく

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

  • 合同ごうどう算術さんじゅつ:「—をほうとして」「—ののぞいて」「modulo —」
  • しょう集合しゅうごう:「—を同一どういつして」「同値どうちちがいを無視むしして」「同値どうち関係かんけいって」
  • ひさげたとえ上位じょうい概念がいねん適当てきとう下位かい概念がいねん代表だいひょうさせてあらわ比喩ひゆ表現ひょうげん

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 佐藤さとう文広ふみひろ数学すうがくビギナーズマニュアル』日本にっぽん評論ひょうろんしゃ、1994ねん ISBN 978-4535782082 - 数学すうがくにおける特殊とくしゅないいまわしのひとつとして「…をのぞいて一意的いちいてき」という表現ひょうげんはつ学者がくしゃけに解説かいせつしている