廬いおり井い鯨くじら

凡例はんれい 廬いおり井い 鯨くじら
廬いおり井い鯨くじら『前賢ぜんけん故実こじつ』より
時代じだい	飛鳥あすか時代ときよ
生誕せいたん	不明ふめい
死没しぼつ	不明ふめい
主君しゅくん	大友皇子おおとものおうじ
氏族しぞく	廬いおり井い造みやつこ

廬いおり井い 鯨くじら（いおい の くじら）は、飛鳥あすか時代ときよの人物じんぶつ。近江おうみ軍ぐんの武将ぶしょう。姓せい（カバネ）は造みやつこ。壬みずのえ申さるの乱らん（672年ねん）において、大友皇子おおとものおうじ（弘文天皇こうぶんてんのう）側がわの別べつ将しょうとなり、中道ちゅうどうで戦たたかって敗やぶれた。

経歴けいれき

廬いおり井い氏し（五ご百井ももい氏し）は、近江おうみ国こく栗太くりた郡ぐん廬いおり井い（現在げんざいの滋賀しが県けん草津くさつ市し志津しづ及および栗東りっとう市し治田はるた）の地名ちめいを由来ゆらいとする氏族しぞくであるが、出自しゅつじは不ふ詳しょう。

壬みずのえ申さるの乱らん勃発ぼっぱつ時じに廬いおり井い鯨くじらがどのような地位ちいにあったかは不明ふめいだが、大友皇子おおとものおうじ（弘文天皇こうぶんてんのう）の側がわの将しょう犬いぬ養やしなえ五ご十じゅう君くんが倭やまと（大和やまと国こく）の敵てき軍ぐんに向むけて南みなみに進すすんだとき、その別べつ将しょうであった。

五ご十じゅう君くんは、村むら屋やまで進すすんで陣営じんえいを置おき、鯨くじらに200の精兵せいびょうを率ひきいさせ、敵てき将しょう大友おおとも吹負の本営ほんえいを衝つかせた。鯨くじらの部隊ぶたいは少数しょうすうだったが、そのときは吹負の周まわりの兵力へいりょくも少すくなかった。しかし、鯨くじらの軍ぐんの前進ぜんしんは徳とく麻呂まろらが射いる矢やでとどめられた。そうするうちに、下道げどうにあった味方みかたの左翼さよくが破やぶれ、そこから三輪みわ高市たかいち麻呂まろと置おけ始はじめ菟うさぎの敵てき部隊ぶたいが転てんじて来きた。鯨くじらの部隊ぶたいは背後はいごに敵てきをうけて敗走はいそうした。

鯨くじらもまた白馬はくばに乗のって逃にげたが、馬うまが泥田どろたにはまった。吹負はこれを見みて、甲斐かいの勇者ゆうしゃに「あの白馬はくばに乗のる者ものは廬いおり井い鯨くじらだ。急いそいで追おって射いよ」と命めいじた。甲斐かいの勇者ゆうしゃが近ちかづくと、鯨くじらは急いそいで馬うまに鞭むちを打うった。馬うまは泥田どろたから抜ぬけ出だし、逃にげることができた。

『日本書紀にほんしょき』において、その後ごの鯨くじらに関かんする記載きさいはない。