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既判力きはんりょく

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既判力きはんりょく(きはんりょく、えい:res judicata)とは、まえ確定かくてい裁判さいばんでその目的もくてきとした事項じこうかんする判断はんだんにつき、当事とうじしゃ裁判さいばん別途べっとあらそうことができず、べつ裁判所さいばんしょまえ裁判さいばん判断はんだん内容ないよう拘束こうそくされるという効力こうりょく、すなわちまえ裁判さいばんにおける判断はんだん内容ないようのち裁判さいばんへの拘束こうそくりょくのことをいう。

ただし、刑事けいじ訴訟そしょう場合ばあいは、後述こうじゅつのようにその用語ようごほう混乱こんらんられる。

Angelo Gambiglioni, De re iudicata, 1579

民事みんじ事件じけん場合ばあい

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既判力きはんりょくがある裁判さいばん

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確定かくていした裁判さいばんすべてに既判力きはんりょくしょうじるわけではなく、原則げんそくとして当該とうがい訴訟そしょう事件じけん審理しんり完結かんけつする判決はんけつ、すなわち確定かくていした終局しゅうきょく判決はんけつ既判力きはんりょくみとめられる。

このほか各種かくしゅ裁判さいばん調書ちょうしょ記載きさいなどについて、法文ほうぶんじょう確定かくてい判決はんけつ同一どういつ効力こうりょくゆうする」むねみとめられている場合ばあいがある。この場合ばあい、その内容ないようによって執行しっこうりょく強制きょうせい執行しっこうできる効力こうりょく)や形成けいせいりょく法律ほうりつ関係かんけい変動へんどうしょうじさせる効力こうりょく)がしょうじることは問題もんだいないが、「確定かくてい判決はんけつ同一どういつ効力こうりょく」のなか既判力きはんりょくふくまれるかについては、問題もんだいとなる裁判さいばん調書ちょうしょ種類しゅるいにより結論けつろんことなったり見解けんかいかれたりする。

既判力きはんりょく基準きじゅん

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既判力きはんりょくおよ権利けんり関係かんけいは、事実じじつしん最終さいしゅう口頭こうとう弁論べんろん終結しゅうけつ基準きじゅんとする。だいいちしん判決はんけつ確定かくていした場合ばあいは、だいいちしん口頭こうとう弁論べんろん終結しゅうけつ基準きじゅんとし、控訴こうそしん上告じょうこくしん判決はんけつ確定かくていした場合ばあいは、控訴こうそしん口頭こうとう弁論べんろん終結しゅうけつ基準きじゅんとする(上告じょうこくしんでは法律ほうりつ判断はんだんのみをするため)。

これは、裁判所さいばんしょ事実じじつしん最終さいしゅう口頭こうとう弁論べんろん終結しゅうけつまでに提出ていしゅつされた資料しりょうもとづき権利けんり関係かんけい判断はんだんし、それ以降いこうしょうじた事実じじつ関係かんけい権利けんり関係かんけい変動へんどう判断はんだん対象たいしょうにならないためである。

既判力きはんりょく客観きゃっかんてき範囲はんい

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確定かくていした終局しゅうきょく判決はんけつのうち既判力きはんりょく発生はっせいする部分ぶぶんは、原則げんそくとして、訴訟そしょう目的もくてきとなった権利けんり関係かんけいについての判断はんだん、すなわち主文しゅぶん包含ほうがんされる判断はんだんのみである(民事みんじ訴訟そしょうほう114じょう1こう)。たとえば、貸金かしきん返還へんかん請求せいきゅう訴訟そしょうで、判決はんけつ理由りゆうちゅう被告ひこくすで貸金かしきん返還へんかんした事実じじつ認定にんていしたうえで、原告げんこく請求せいきゅう棄却ききゃくするむね判決はんけつ確定かくていした場合ばあい既判力きはんりょくしょうじるのは原告げんこく被告ひこくたいする貸金かしきん返還へんかん請求せいきゅうけんがないという判断はんだんについてのみであり、被告ひこくすで貸金かしきん返還へんかんしているという認定にんていには既判力きはんりょくしょうじない。

理由りゆうちゅう判断はんだん既判力きはんりょくみとめないのは、一般いっぱんてきに、訴訟そしょう当事とうじしゃ攻撃こうげき防御ぼうぎょ方法ほうほう選択せんたくについての弾力だんりょくせい確保かくほするためと説明せつめいされている。上記じょうき訴訟そしょう場合ばあい被告ひこくほかあらそかたとしては、貸金かしきん契約けいやく不成立ふせいりつ、あるいは消滅しょうめつ時効じこうなどもかんがえられ、どれかひとつがみとめられれば被告ひこく目的もくてき達成たっせいする。これらの攻撃こうげき防御ぼうぎょ方法ほうほう被告ひこくとしては訴訟そしょうつための手段しゅだんとしての意味いみしかないにもかかわらず、既判力きはんりょくみとめると、当事とうじしゃとしては結論けつろんのみをかんがえて訴訟そしょう活動かつどうをすることができなくなり、攻撃こうげき防御ぼうぎょ方法ほうほう選択せんたく弾力だんりょくせいうしなうことになる。

ただし、理由りゆうちゅう判断はんだんであっても、請求せいきゅう成立せいりつまた不成立ふせいりつ判断はんだんをするにさいし、被告ひこくから提出ていしゅつされた相殺そうさい主張しゅちょう可否かひについて判断はんだんをした場合ばあいは、その主張しゅちょうされたがくについて既判力きはんりょくしょうじる(どうほう114じょう2こう)。それ以外いがい理由りゆうちゅう判断はんだんには既判力きはんりょくおよばないが、学説がくせつじょうは、当事とうじしゃ訴訟そしょうにおける主要しゅよう争点そうてんとした場合ばあいは、理由りゆうちゅう判断はんだんであっても拘束こうそくりょくみとめるべきとの見解けんかい主張しゅちょうされている(争点そうてんこう)。

なお、判例はんれいじょうは、訴訟そしょうぶつじゅんじて審判しんぱん対象たいしょうとなる事項じこうについては既判力きはんりょくじゅんじた効力こうりょくしょうじるとされる。

既判力きはんりょく主観しゅかんてき範囲はんい

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既判力きはんりょくおよぶのは、原則げんそくとして当該とうがい訴訟そしょうにつき当事とうじしゃとしてあらそ機会きかいあたえられたものかぎられ、そのものたいしては既判力きはんりょくおよばない。訴訟そしょう当事とうじしゃでなかったものたいして裁判さいばん拘束こうそくりょくおよぼすのは、手続てつづき保障ほしょう観点かんてんから問題もんだいがあるためである。

しかし、口頭こうとう弁論べんろん終結しゅうけつ訴訟そしょう結果けっか利害りがい関係かんけいゆうするものあらわれた場合ばあい、そのものたいして既判力きはんりょくおよばないとすると、既判力きはんりょくによる紛争ふんそう解決かいけつ機能きのう限定げんていされる。また、そもそも権利けんり関係かんけいについてあらそ機会きかいあたえる必要ひつようせいとぼしい立場たちばものもいる。そのため、一定いってい要件ようけん既判力きはんりょく拡張かくちょうみとめられる(どうほう115じょう)。

刑事けいじ事件じけん場合ばあい

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既判力きはんりょく本来ほんらい意味いみは、冒頭ぼうとうかかげたとおり、確定かくていした裁判さいばんのち裁判さいばんたいする拘束こうそくりょくのことである。しかし、刑事けいじ訴訟そしょう場合ばあいは、有罪ゆうざい無罪むざい免訴めんそ判決はんけつ確定かくていした場合ばあいどういち事件じけんについてさい訴をゆるさないとする効力こうりょく、すなわち一事いちじさい効力こうりょく意味いみ伝統でんとうてき使用しようされていた。

これは、民事みんじ場合ばあいは、まえ裁判さいばん判断はんだんされた権利けんり関係かんけい前提ぜんていに、その変動へんどうした権利けんり関係かんけい別個べっこ権利けんり関係かんけいにつきのち裁判さいばん審理しんり判断はんだんすることがかんがえられるのにたいし、刑事けいじ場合ばあいは、一般いっぱんてきにある時点じてん犯罪はんざい事実じじつがあったかかという判断はんだんのみが問題もんだいとなり、おな問題もんだい二度にどげないというかたち裁判さいばん拘束こうそくりょく問題もんだいとなるためとかんがえられる。

しかし、既判力きはんりょくという用語ようご本来ほんらい意味いみ使つかわれていないために混乱こんらんしょうじているという批判ひはん犯罪はんざい事実じじつ有無うむについて判断はんだんしない公訴こうそ棄却ききゃく裁判さいばんについてはこう訴にたいする拘束こうそくりょく問題もんだいになるのではないかという批判ひはん、そもそも一事いちじさい効力こうりょく日本国にっぽんこく憲法けんぽう39じょう採用さいようしたじゅう危険きけん禁止きんし原則げんそくにより説明せつめいすべきとの批判ひはんなどが提出ていしゅつされている。そのような批判ひはんのため、学者がくしゃにより既判力きはんりょくという用語ようご使用しようほうちがいがあらわれ、既判力きはんりょくという用語ようご使用しようける立場たちばもある。

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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