智さとし尊みこと

凡例はんれい 智さとし尊みこと
瀬田せたの戦たたかいでの智さとし尊みこと/『前賢ぜんけん故実こじつ』より
時代じだい	飛鳥あすか時代ときよ
生誕せいたん	不明ふめい
死没しぼつ	天武天皇てんむてんのう元年がんねん7月がつ22日にち（672年ねん8月がつ20日はつか）
主君しゅくん	大友皇子おおとものおうじ

智さとし尊みこと（ちそん）は、飛鳥あすか時代ときよの人物じんぶつ。旧きゅう仮名遣かなづかいでの読よみは同おなじ。姓せい（カバネ）はなし。672年ねんの壬みずのえ申さるの乱らんの際さい、大友皇子おおとものおうじ（弘文天皇こうぶんてんのう）側がわの将しょうとなり、瀬田せたの戦たたかいで先鋒せんぽうとなったが、戦死せんしした。『日本書紀にほんしょき』の瀬田せたの戦たたかいの箇所かしょに登場とうじょうするのみで、系譜けいふなどは一切いっさい不明ふめいである。当時とうじの日本人にっぽんじんに似につかわしくない名なから、渡来とらい人じんではないかという推測すいそくがある。

経歴けいれき

壬みずのえ申さるの年とし（672年ねん）の7月がつ22日にち、壬みずのえ申さるの乱らんの戦況せんきょうは大友皇子おおとものおうじに不利ふりとなり、都とである近江おうみ大津おおつ宮みやのそばまで村国むらくに男おとこ依よらの敵てき軍ぐんが押おし寄よせた。皇子おうじは群臣ぐんしんを従したがえ自みずから出陣しゅつじんし、瀬田せたの橋はしの西にしに陣取じんどって東ひがしからくる敵てきを迎むかえ撃うった。戦闘せんとうは川かわを隔へだてて矢やを飛とばしあう射撃しゃげき戦せんとなった。このとき智さとし尊みことは先鋒せんぽうの将しょうとなり、精兵せいびょうを率ひきいて瀬田せたの橋はしを守まもった。橋はしの中なかを三さん丈たけ切断せつだんして、長ながい板いたを一ひとつおき、これに綱つなを結むすびつけた。もし板いたを踏ふんで敵てきが渡わたろうとしたら、すぐに綱つなを引ひいて落おとそうというのである。敵てき軍ぐんはしばらく進すすめなかったが、やがて大分おおいた稚やや臣しんが進すすみ出でて、鎧よろいを重かさね着ちゃくして突進とっしんし、板いたを渡わたって綱つなを切きった。これを見みた軍勢ぐんぜいは乱みだれて逃にげ出だした。智さとし尊みことは刀かたなを抜ぬいて退しりぞく者ものを斬きったが、止とめることができなかった。かくして智さとし尊みことは橋はしのそばで斬きられた。大友皇子おおとものおうじは翌日よくじつ自殺じさつし、壬みずのえ申さるの乱らんは終おわった。

参考さんこう文献ぶんけん

• 『日本書紀にほんしょき』天武てんむ元年がんねん是ぜ歳とし条じょう