電子でんし殻から

電子でんし殻から（でんしかく、（英えい: electron shell）は、ボーアの原子げんし模型もけいにおいて、原子核げんしかくを取とり巻まく電子でんし軌道きどうの集あつまりをいう。言いわば電子でんしの収容しゅうよう場ば所ところのことで、それにいかに電子でんしが入はいっているかを示しめすのが電子でんし配置はいちである。実際じっさいの電子でんし軌道きどうは必かならずしも球状きゅうじょうではなく、このモデルも厳密げんみつには正確せいかくではない。しかし、原子げんしに束縛そくばくされた電子でんしの状態じょうたいを理解りかいする上じょうで重要じゅうようなモデルである。

概要がいよう

電子でんし殻からは主しゅ量子りょうし数すう $n=1,2,3,\cdots$ ごとに複数ふくすうの層そうを構成こうせいしているとみなされ、エネルギー準じゅん位いの低ひくい方ほうからK殻から・L殻から・M殻から・N殻から・O殻から・P殻から…と呼よばれている。電子でんし殻からそれぞれに入はいることのできる電子でんしの数かずは $2n^{2}$ 個こに等ひとしい。ここで示しめす電子でんし収容しゅうよう数すうはあくまで計算けいさん値ちであり、各かく電子でんし殻から上じょうで32個こより多おおく電子でんしをもつ原子げんしは発見はっけんされていない。

電子でんし殻からは一ひとつ以上いじょうの「小しょう軌道きどう」(electron subshell) より構成こうせいされ、各かく小しょう軌道きどうでの電子でんし収容しゅうよう数すうの和わがその電子でんし殻からでの収容しゅうよう数すうとなる。次節じせつ参照さんしょう。

電子でんしは、量子りょうし数すうの小ちいさい電子でんし殻からから順じゅんに入はいることになっている。このため電子でんし殻からの数かずは、元素げんそによってそれぞれ異ことなり、元素げんその周期しゅうきを決定けっていする要素ようそとなる。それぞれの原子げんしの最もっとも外側そとがわの電子でんし殻からの電子でんしを最さい外そと殻から電子でんしともいい、希まれガスを除のぞきしばしば価あたい電子でんしの役割やくわりをする。

• 電子でんし殻からのアルファベットがKから始はじまるのは、発見はっけん当初とうしょはまだこれより小ちいさい殻からがあると考かんがえられていたため、10個こ分ぶんの予約よやくを確保かくほし、11個こ目めのKがあてられた。しかし、K殻からよりも小ちいさい殻からは発見はっけんされなかった。

• 英えい版ばん（英語えいご圏けん）では電子でんし殻からを数字すうじで表示ひょうじし、ロろーマ字まじ表示ひょうじもされると記述きじゅつされている。（"1 shell"（K殻から）、 "2 shell"（L殻から）、 "3 shell"（M殻から）、・・・。）

計算けいさん上じょうで電子でんし殻からに収納しゅうのう可能かのうな電子でんし数すう

殻から	主しゅ量子りょうし数すう　n	電子でんし数すう 2n2	小しょう軌道きどう
K殻から	1	2	1s (2)
L殻から	2	8	2s+2p (2+6)
M殻から	3	18	3s+3p+3d (2+6+10)
N殻から	4	32	4s+4p+4d+4f (2+6+10+14)
O殻から	5	50	5s+5p+5d+5f+5g (2+6+10+14+18)
P殻から	6	72	6s+6p+6d+6f+6g+6h (2+6+10+14+18+22)
Q殻から	7	98	7s+7p+7d+7f+7g+7h+7i (2+6+10+14+18+22+26)

しかし、実際じっさいに周期しゅうき表ひょうとしてまとめられている元素げんその電子でんし配置はいちにおいては、電子でんし殻から内ないの電子でんし数すうは、以下いかのような形かたちでしか確認かくにんされていない。

（太字ふとじ（d軌道きどう、f軌道きどう）は、余剰よじょう部分ぶぶんとして、電子でんしの充填じゅうてんが後こうの周期しゅうきへと後回あとまわしにされる軌道きどう。d軌道きどうは1周期しゅうき後ご、f軌道きどうは2周期しゅうき後ごに充填じゅうてんされる。d軌道きどうは主おもに1周期しゅうき後ごのDブロック元素げんそ（遷移せんい元素げんそ）の部分ぶぶんを、f軌道きどうは主おもに2周期しゅうき後ごのFブロック元素げんそ（ランタノイド・アクチノイド）の部分ぶぶんを担になう。）

実際じっさい上じょうの電子でんし殻からに収納しゅうのう可能かのうな電子でんし数すう

周期しゅうき	殻から	電子でんし数すう	小しょう軌道きどう
第だい1周期しゅうき	K殻から	2	1s (2)
第だい2周期しゅうき	L殻から	8	2s+2p (2+6)
第だい3周期しゅうき	M殻から	18	3s+3p+3d (2+6+10)
第だい4周期しゅうき	N殻から	32	4s+4p+4d+4f (2+6+10+14)
第だい5周期しゅうき	O殻から	32	5s+5p+5d+5f (2+6+10+14)
第だい6周期しゅうき	P殻から	18	6s+6p+6d (2+6+10)
第だい7周期しゅうき	Q殻から	8	7s+7p (2+6)

小しょう軌道きどう

英語えいごでelectron subshellといい、「小しょう軌道きどう」、「副ふく電子でんし殻から」、「亜あ殻から」と言いわれる。ここでは本ほん項目こうもくである「電子でんし殻から」と区別くべつしやすくするため「小しょう軌道きどう」と表記ひょうきする。小しょう軌道きどうは電子でんし殻からを構成こうせいする電子でんし軌道きどうの集あつまりで、エネルギー準じゅん位いの低ひくい内側うちがわのs軌道きどうから始はじまり、p、d、f、g軌道きどうと続つづく。各かく小しょう軌道きどうの電子でんし容量ようりょうの和わがその電子でんし殻からの電子でんし容量ようりょうとなる。K殻からではs軌道きどうの2個このみ、L殻からではs軌道きどうの2個ことp軌道きどうの6個この計けい8個こ、M殻からではs軌道きどうの2個こ、p軌道きどうの6個こ、d軌道きどうの10個この合計ごうけいの18個ことなる。

小しょう軌道きどうに収納しゅうのう可能かのうな電子でんし数すう

小しょう軌道きどう	方位ほうい量子りょうし数すう	電子でんし数すう	名前なまえの由来ゆらい
s軌道きどう	0	2	sharp
p軌道きどう	1	6	principal
d軌道きどう	2	10	diffuse
f軌道きどう	3	14	fundamental
g軌道きどう	4	18	fの次つぎ
h軌道きどう	5	22	gの次つぎ
i軌道きどう	6	26	hの次つぎ

電子でんしの収容しゅうよう順じゅん

増ぞう成なり原理げんり（Aufbau principle）電子でんしの各かく電子でんし殻からの各かく軌道きどうへの収容しゅうよう順じゅん。上うえからK(=1)、L(=2)、M(=3)、N(=4)、O(=5)、P(=6)殻から

高位こういの「電子でんし殻から」の低位ていいの「小しょう軌道きどう」のエネルギー準じゅん位いは、低位ていいの「電子でんし殻から」の高位こういの「小しょう軌道きどう」より低ひくくなっており、そちらへ先さきに電子でんしが収容しゅうようされる。これを構造こうぞう原理げんりという。右みぎ図ずの3行ぎょう目めのM殻からではp軌道きどう（3p）に電子でんしが入はいると、次つぎはd軌道きどう（3d）では無なくN殻からのs軌道きどう（4s）へ電子でんしが入はいる。その後ごでM殻からのd軌道きどう（3d）へ戻もどる。以降いこう 3d - 4p - 5s - 4d - 5p - 6sと続つづいていく。ただし第だい4周期しゅうき以降いこうでは例外れいがいもある。詳細しょうさいは電子でんし配置はいちを参照さんしょう。

例たとえるなら、近ちかくの建物たてものの3階かいへ引ひっ越こすより、遠とおい建物たてものの1階かいへ入居にゅうきょするほうが簡単かんたんという事ことである。これがO殻から、P殻からに32個こより多おおくの電子でんしを持もつ元素げんそが見みつかっていない理由りゆうでもある。

2012年ねんの時点じてんで発見はっけんが報告ほうこくされている（未み公認こうにんを含ふくむ）元素げんそは、右みぎ図ずの小しょう軌道きどう6dおよび7sを満みたし、7pに電子でんしを収容しゅうようしている元素げんそである。

関連かんれん項目こうもく

• ボーアの原子げんし模型もけい
• 原子げんし軌道きどう
• 電子でんし軌道きどう
• 量子りょうし条件じょうけん