賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけん

賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけん（ばいしょうせきにんほけん）とは、個人こじんの日常にちじょう生活せいかつ、あるいは企業きぎょうの業務ぎょうむ遂行すいこうや被ひ保険ほけん者しゃが所有しょゆう・管理かんりする施設しせつが原因げんいんとなる偶然ぐうぜんな事故じこにより、第三者だいさんしゃ（=Third Party;被ひ保険ほけん者しゃ以外いがいの者もの）に対たいする法律ほうりつ上じょうの賠償ばいしょう責任せきにんを負担ふたんした場合ばあいに、被ひ保険ほけん者しゃが被こうむる損害そんがい（つまり賠償金ばいしょうきんの支払しはらいや負担ふたんする費用ひよう）を填補てんぽする保険ほけんのことである。

概要がいよう

損害そんがい保険ほけんの一種いっしゅであり、特定とくていの物ものに対たいする損害そんがいではなく、被ひ保険ほけん者しゃが賠償ばいしょう責任せきにんを負担ふたんする場合ばあいには賠償金ばいしょうきんの支払しはらいの原資げんしとなる総そう財産ざいさんに対たいする損害そんがいを対象たいしょうとしている点てん、および、被害ひがい者しゃという被ひ保険ほけん者しゃと保険ほけん会社かいしゃ以外いがいの第三者だいさんしゃの存在そんざいを前提ぜんていとする点てんで、火災かさい保険ほけんや傷害しょうがい保険ほけん等とうの他ほかの保険ほけんとは大おおきく異ことなる特徴とくちょうがある。

この保険ほけんで対象たいしょうとなる法律ほうりつ上じょうの賠償ばいしょう責任せきにんの主おもなものは、民法みんぽう上じょうの不法ふほう行為こうい責任せきにん、債務さいむ不履行ふりこう責任せきにん（特とくに、不完全ふかんぜん履行りこうにおける積極せっきょく的てき損害そんがい）であり、生産せいさん物ぶつ賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけんにおいては製造せいぞう物ぶつ責任せきにん法ほうの製造せいぞう物ぶつ責任せきにんが追加ついかされる。また、この保険ほけんでは、被ひ保険ほけん者しゃの故意こいは普通ふつう保険ほけん約款やっかんで免責めんせきとされていることから、被ひ保険ほけん者しゃの過失かしつ責任せきにんを対象たいしょうとしているということができる。なお、被ひ保険ほけん者しゃの犯罪はんざいに関かんしては、犯罪はんざいを構成こうせいする要件ようけんが様々さまざまであることから、普通ふつう保険ほけん約款やっかんでは免責めんせきとしていない。

自動車じどうしゃ保険ほけんや、傷害しょうがい保険ほけんの特約とくやくなどで、対人たいじん事故じこや対物たいぶつ事故じこでの賠償ばいしょう責任せきにんをカバーしているものがあるが、今日きょう一般いっぱんに賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけんという場合ばあいには、自動車じどうしゃ保険ほけんのように独立どくりつした保険ほけん商品しょうひんや他たの保険ほけん商品しょうひんに付帯ふたいする特約とくやくは除のぞかれる（自動車じどうしゃ保険ほけん等とうを賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけんの一種いっしゅとする場合ばあいは、「広義こうぎの賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけん」という）。

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広義こうぎの賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけんとは、ここでの賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけんのほか第三者だいさんしゃに対たいする賠償ばいしょう責任せきにんを対象たいしょうとする保険ほけん一般いっぱんを指さす。以下いかにその主おもなものを挙あげる。

• 自動車じどうしゃ保険ほけん（任意にんい保険ほけん）
• 自動車じどうしゃ損害そんがい賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけん（自賠責しばいせき）
• 運送うんそう保険ほけん（運送うんそう人じんの荷主にぬしに対たいする責任せきにん担保たんぽ）
• 航空こうくう保険ほけん（乗客じょうきゃく賠償ばいしょう・第三者だいさんしゃ賠償ばいしょう・貨物かもつ賠償ばいしょう）
• 船舶せんぱく保険ほけん（衝突しょうとつ約款やっかん）
• 原子力げんしりょく責任せきにん保険ほけん
• 船客せんきゃく傷害しょうがい賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけん
• 労災ろうさい総合そうごう保険ほけん（使用しよう者しゃ賠償ばいしょう）
• 機械きかい保険ほけんの賠償ばいしょう責任せきにん特約とくやく
• 組立くみたて保険ほけんの賠償ばいしょう責任せきにん特約とくやく
• 建設けんせつ工事こうじ保険ほけんの賠償ばいしょう責任せきにん特約とくやく
• ボイラ・ターボセット保険ほけんの賠償ばいしょう責任せきにん特約とくやく

賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけんの種類しゅるい

賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけんの種類しゅるいには、大別たいべつすると次つぎのものがある。

1. 個人向こじんむけ賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけん　（個人こじん賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけん、ゴルファー保険ほけん、テニス保険ほけんなど）
2. 一般いっぱん企業きぎょう向むけ賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけん（施設しせつ所有しょゆう管理かんり者しゃ賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけん、請負うけおい業者ぎょうしゃ賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけん、生産せいさん物ぶつ賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけん、受託じゅたく者しゃ賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけんなど）
3. 特定とくてい業務ぎょうむ向むけ賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけん　（自動車じどうしゃ管理かんり者しゃ賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけん、旅館りょかん、LPガス販売はんばい、旅行りょこう業者ぎょうしゃ、情報じょうほうサービスなど）
4. 専門せんもん職業しょくぎょう人じん賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけん（医師いし賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけん、公認こうにん会計士かいけいし賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけん、建築けんちく家か賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけん、弁護士べんごし賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけん、司法しほう書士しょし賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけん、宅地たくち建物たてもの取引とりひき士し賠償ばいしょう責任せきにん補償ほしょう制度せいどなど）
5. 瑕疵かし保証ほしょう責任せきにん保険ほけん

保険ほけん会社かいしゃは、被ひ保険ほけん者しゃが行おこなう事業じぎょうの種類しゅるい、対象たいしょうとする損害そんがいなどに応おうじて、多おおくの保険ほけん商品しょうひんを用意ようい・提供ていきょうしている。 保険ほけん会社かいしゃが販売はんばいする主力しゅりょく商品しょうひんには、個人こじん向むけの総合そうごう補償ほしょう商品しょうひんである個人こじん賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけんと、企業きぎょう向むけの施設しせつ所有しょゆう管理かんり者しゃ賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけん、請負うけおい業者ぎょうしゃ賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけん、生産せいさん物ぶつ賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけんおよびそれらを包含ほうがんし、まとめて一ひとつの契約けいやくでカバーする、企業きぎょう総合そうごう賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけん（Comprehensive/Commercial General Liability;CGL）がある。

賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけんの機能きのう

賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけんには以下いかの機能きのうがある。今後こんごも権利けんり義務ぎむ観念かんねんの普及ふきゅうによる賠償ばいしょう意識いしきの高揚こうよう、科学かがく技術ぎじゅつの発達はったつによる新あらたなリスクの登場とうじょう、法ほう制度せいどの変更へんこうによる賠償ばいしょう責任せきにんの厳格げんかく化かや損害そんがい額がくの高額こうがく化かなどにより、賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけんの更さらなる発展はってん・変容へんようが今後こんごも続つづくと考かんがえられる。

• 損害そんがい填補てんぽ機能きのう　被ひ保険ほけん者しゃは損害そんがい賠償金ばいしょうきんによりその損害そんがいが填補てんぽされる。
• 事業じぎょう継続けいぞく機能きのう　企業きぎょうが社会しゃかいに有用ゆうような財ざいやサービスを提供ていきょうしている場合ばあい、その企業きぎょうが偶然ぐうぜんな事故じこによる経済けいざい的てき損失そんしつにより事業じぎょう継続けいぞく不能ふのうとなることは社会しゃかい的てきに好このましくない。この場合ばあいに賠償ばいしょう資力しりょくの担保たんぽとして保険ほけんの付づけ保ほが求もとめられる（近年きんねんの立法りっぽうは、市場いちば化かの進展しんてんにより、この機能きのうを重視じゅうししたものが多おおい）。
• 権利けんり保護ほご機能きのう　被ひ保険ほけん者しゃのために保険ほけん会社かいしゃが被ひ保険ほけん者しゃに代かわって被害ひがい者しゃと直接ちょくせつ折衝せっしょうを行おこなうことができると定さだめたものがある。
• 被害ひがい者しゃ保護ほご機能きのう　被ひ保険ほけん者しゃが被害ひがい者しゃに対たいして行おこなう賠償金ばいしょうきんの支払しはらいを間接かんせつ的てきに担保たんぽしており、また、例たとえば自動車じどうしゃ保険ほけんなど一部いちぶの保険ほけんでは被害ひがい者しゃの保険ほけん会社かいしゃとの直接ちょくせつ交渉こうしょう権けんを認みとめたものがある。

契約けいやく構成こうせい

各かく保険ほけんの共通きょうつう事項じこうを定さだめる普通ふつう保険ほけん約款やっかんをベースとして、対象たいしょうとする事故じこを規定きていし、損害そんがいの範囲はんい、免責めんせき事項じこうなどを加除かじょ修正しゅうせいする特別とくべつ約款やっかんを適用てきようし、更さらに修正しゅうせいが必要ひつような場合ばあいには、特約とくやく条項じょうこうを適用てきようするとされている。また、対象たいしょうとする業務ぎょうむ内容ないようなどは「保険ほけん証券しょうけん記載きさいのとおり」とすることで、迅速じんそく・大量たいりょうに締結ていけつされる契約けいやく形態けいたいを踏ふまえ、契約けいやく内容ないようが過度かどに複雑ふくざつとなることを回避かいひしている。つまり、約款やっかん（普通ふつう約款やっかん・特別とくべつ約款やっかん）と保険ほけん証券しょうけんとが合あわさって1つの保険ほけん契約けいやくが構成こうせいされる。なお、普通ふつう保険ほけん約款やっかんには、他人たにんの身体しんたい障害しょうがい・財物ざいぶつ損壊そんかいが生しょうじた場合ばあいの損害そんがいを対象たいしょうとする一般いっぱん的てきな「賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけん普通ふつう保険ほけん約款やっかん」ほか、対象たいしょうとする危険きけんの性質せいしつ・特性とくせいに合あわせていくつかの種類しゅるいがある。

• 賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけん普通ふつう保険ほけん約款やっかん
• 業務ぎょうむ過誤かご賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけん普通ふつう保険ほけん約款やっかん
• 会社かいしゃ役員やくいん賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけん普通ふつう保険ほけん約款やっかん
• General Liability Standard Provisions（英文えいぶん賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけん普通ふつう保険ほけん約款やっかん）

被ひ保険ほけん者しゃ

被ひ保険ほけん者しゃ（ひほけんしゃ:Insured）とは、一般いっぱんに、被ひ保険ほけん利益りえき（保険ほけん事故じこの発生はっせいによって損害そんがいを受うけた場合ばあいに保険ほけん契約けいやくに基もとづきその損害そんがいが填補てんぽされるという利益りえき。被ひ保険ほけん利益りえきは保険ほけん事故じこの発生はっせい時じにあればよく、保険ほけん契約けいやく締結ていけつ時じに存在そんざいすることは必要ひつようではない）がある者ものをいい、物ものを対象たいしょうとする火災かさい保険ほけん等とうでは、物ものの所有しょゆう者しゃや質しつ権けん者しゃ等とうが被ひ保険ほけん者しゃとなり、生命せいめい保険ほけんでは、保険ほけん事故じこ（死亡しぼう・後遺こうい障害しょうがい・病気びょうき・ケガ）の対象たいしょうとなる者ものをいうが、賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけんにおいては、賠償ばいしょう責任せきにんを負担ふたんする可能かのう性せいがある者ものをいう。同一どういつの事故じこで施設しせつの所有しょゆう者しゃ・譲渡じょうと担保たんぽ権けん者しゃや管理かんり運営うんえい者しゃ、工事こうじ関係かんけい者しゃ（発注はっちゅう者しゃ、受注じゅちゅう者しゃ（元請もとうけ業者ぎょうしゃ・下請したうけ業者ぎょうしゃ））など複数ふくすうの者ものの間あいだに共同きょうどう不法ふほう行為こういが成立せいりつし、それぞれが賠償ばいしょう責任せきにんを負担ふたんする場合ばあいがあるので、賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけんでは被ひ保険ほけん者しゃの特定とくていが重要じゅうようである。保険ほけん期間きかんの中途ちゅうとでの被ひ保険ほけん者しゃの変更へんこうは原則げんそくとしてできない。

被ひ保険ほけん者しゃは保険ほけん契約けいやく上じょうの地位ちいによって分類ぶんるいすることができ、一般いっぱん的てきには、告知こくち義務ぎむや通知つうち義務ぎむの履行りこう義務ぎむの有無うむにより、記名きめい被ひ保険ほけん者しゃ（Named Insured；保険ほけん証券しょうけんの被ひ保険ほけん者しゃ欄らんに記名きめいされることからこう呼よばれる。更さらに一時いちじ的てき記名きめい被ひ保険ほけん者しゃと二に次じ的てき記名きめい被ひ保険ほけん者しゃに細分さいぶん化かされることもある）と追加ついか被ひ保険ほけん者しゃ（Additional Insured；保険ほけん対象たいしょう業務ぎょうむの範囲はんいで細分さいぶん化かされることもある）とに分わけることが多おおい。個人向こじんむけ賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけんなど、被ひ保険ほけん者しゃ個人こじんの保護ほごに重点じゅうてんを置おく保険ほけん商品しょうひんでは、約款やっかんによって予あらかじめ被ひ保険ほけん者しゃの範囲はんいが規定きていされることもある。 被ひ保険ほけん者しゃが複数ふくすうとなった場合ばあいも、通常つうじょうは填補てんぽ限度げんど額がくが被ひ保険ほけん者しゃの数かずだけ増加ぞうかすることはなく、保険ほけん証券しょうけんに記載きさいされた填補てんぽ限度げんど額がくが適用てきようされる（いわゆる「団体だんたい契約けいやく」の場合ばあいを除のぞく）。また、被ひ保険ほけん者しゃ間あいだの交差こうさ責任せきにんは原則げんそくとして填補てんぽされない。

保険ほけん事故じこ

保険ほけん事故じこ（ほけんじこ）とは、保険ほけん金きんの支払しはらいの対象たいしょうとなる事故じこのことで、具体ぐたい的てきには、普通ふつう約款やっかん・特別とくべつ約款やっかんにおいて、他人たにんに損害そんがいを与あたえたことや、損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅうを受うけたこと、損害そんがいの原因げんいんとなる行為こういを行おこなったこと、損害そんがいが発見はっけんされたこと、更さらには確定かくてい判決はんけつで損害そんがい額がくが確定かくていしたことなど、保険ほけんの性質せいしつ・特性とくせいに応おうじて定さだめられる。 保険ほけん事故じこと規定きていできるのは、保険ほけん金きん支払しはらいの対象たいしょうとして金銭きんせんに見積みつもることができること、また、保険ほけん金きん詐欺さぎなどの犯罪はんざいを防ふせぐために法ほうに適合てきごうしたもの（例たとえば、麻薬まやく取引とりひきに関かんする損害そんがいは不可ふかである）であることが求もとめられる。

保険ほけん期間きかん

保険ほけん期間きかん（ほけんきかん）は、約款やっかんの規定きていにおいて引用いんよう・参照さんしょうされ、それぞれの事項じこうで次つぎのいずれかの意味いみで用もちいられるが、そのうちで中心ちゅうしんとなるのは保険ほけん責任せきにん期間きかんである。

• 保険ほけん契約けいやく期間きかん
• 保険ほけん責任せきにん期間きかん
• 保険ほけん料りょう計算けいさん期間きかん

保険ほけん期間きかん中ちゅうに普通ふつう保険ほけん約款やっかん・特別とくべつ約款やっかんで定さだめる保険ほけん事故じこが発生はっせいした場合ばあいに保険ほけん金きんが支払しはらわれる。賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけんの保険ほけん期間きかんは通常つうじょう、保険ほけん会社かいしゃの会計かいけい年度ねんどに合あわせることもあり1年間ねんかんである。賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけんの場合ばあい、被ひ保険ほけん者しゃが被こうむる可能かのう性せいのある賠償ばいしょう責任せきにんを対象たいしょうとしているので、物ものを対象たいしょうとする保険ほけんに比くらべてリスクの変動へんどうが大おおきく、長期ちょうき契約けいやくは適当てきとうではない。短期たんきのイベントに関かんする保険ほけんでは1日にちとか1週間しゅうかんとか短期間たんきかんとなることもある。保険ほけん期間きかんが1年ねんを超こえる長期ちょうき契約けいやくとなるのは、長期ちょうきの工事こうじを対象たいしょうとする請負うけおい業者ぎょうしゃ賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけんなどごくわずかなケースに限かぎられる。保険ほけん商品しょうひんによっては、保険ほけん期間きかんを中途ちゅうとで延長えんちょうする「保険ほけん期間きかん延長えんちょう特約とくやく」を中途ちゅうと付帯ふたいして保険ほけん期間きかんを延長えんちょうしたり、モラルリスクを排除はいじょするために保険ほけん期間きかんが開始かいししても一定いってい期間きかん（待機たいき期間きかん）中ちゅうの事故じこは保険ほけん金きん支払しはらいの対象たいしょう外がいとする「責任せきにん期間きかん限定げんてい特約とくやく」が結むすばれることがある。後者こうしゃの場合ばあい、保険ほけん会社かいしゃが填補てんぽ責任せきにんを負おう期間きかんであることを特とくに明記めいきするため、責任せきにん期間きかんが定義ていぎされることがある。

保険ほけん期間きかんを時間じかんでみると、かつての保険ほけん会社かいしゃの営業えいぎょう終了しゅうりょう時間じかんに合あわせた慣例かんれいにより、開始かいし時刻じこくは午後ごご4時じ、終了しゅうりょう時刻じこくも午後ごご4時じが原則げんそくである（四よん時じ-四よん時じ約款やっかん（よじよじやっかん））。基準きじゅん時じは通常つうじょう、保険ほけん証券しょうけん発行はっこう地ちとなる日本にっぽん時間じかんとなるが、証券しょうけん適用てきよう地域ちいきに日本にっぽん国外こくがいを含ふくむ場合ばあいには、日本にっぽん標準時ひょうじゅんじを基準きじゅんとするのか等とう、保険ほけん期間きかんを特定とくていする基準きじゅん時じを予あらかじめ定さだめる必要ひつようがある。

損害そんがいの範囲はんい

一般いっぱん的てきな賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけん（General Liability Insurance;GL）では、他人たにんの生命せいめいまたは身体しんたいの障害しょうがい（Bodily Injury;B.I.）、他人たにんの財物ざいぶつの損壊そんかい（Property Damage;P.D.）が生しょうじたために（生しょうじることを条件じょうけんとして）、被ひ保険ほけん者しゃが法律ほうりつ上じょうの賠償ばいしょう責任せきにんを負担ふたんすることによって被こうむる損害そんがいを対象たいしょうとしている。また、他人たにんの財物ざいぶつの損壊そんかいが生しょうじた場合ばあい（生しょうじることを前提ぜんていとして）、その財物ざいぶつが使用しよう不能ふのうとなったことに起因きいんする経済けいざい的てき損失そんしつ（例たとえば、上うえ階かいからの漏水ろうすいにより店舗てんぽが汚損おそんし休業きゅうぎょうした場合ばあいの、営業えいぎょう損失そんしつ）も担保たんぽするが、電気でんき・ガス・電話でんわ・水道すいどう等とうのユーティリティ施設しせつ等とうの損害そんがいが予想よそうされる場合ばあいには事故じこの際さいにトラブルとなることがあり、保険ほけん契約けいやく締結ていけつ時じに予あらかじめ協定きょうていしておくことが重要じゅうようである。他方たほう、主しゅとして業務ぎょうむ過誤かごを対象たいしょうとする保険ほけん（Erorrs & Ommision Insurance;E&O）や専門せんもん職業しょくぎょう人じん賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけん（Professional Indemnity Insurance;PI）では、他人たにんに与あたえた経済けいざい的てき損害そんがいを対象たいしょうとし、他人たにんの生命せいめいまたは身体しんたいの障害しょうがい、他人たにんの財物ざいぶつの損壊そんかいを対象たいしょう外がいとするものが多おおい。

保険ほけん金きんの種類しゅるい

保険ほけん金きんの種類しゅるいには下記かきのものがある。大別たいべつすると法律ほうりつ上じょうの賠償ばいしょう責任せきにんを負担ふたんする場合ばあいに支払しはらわれる損害そんがい賠償ばいしょう保険ほけん金きんと、賠償ばいしょう責任せきにんを負担ふたんする恐おそれがあれば足たり（実際じっさいの負担ふたんを問とわない）、保険ほけん会社かいしゃが承認しょうにんすることで支払しはらわれるその他たの各種かくしゅ費用ひよう保険ほけん金きんに分わけられる。一般いっぱんに、損害そんがい賠償ばいしょう保険ほけん金きん以外いがいの費用ひよう保険ほけん金きんについては、填補てんぽ限度げんど額がくの外そと枠わくで支払しはらわれる（外そと枠わく払はらい）が、特約とくやくにより、損害そんがい賠償ばいしょう保険ほけん金きんと合あわせて填補てんぽ限度げんど額がく内ないでの支払しはらいとする内うち枠わく払はらいへ修正しゅうせいすることが可能かのうである。なお、保険ほけん金きんの支払しはらい先さきは原則げんそくとして被ひ保険ほけん者しゃであるが、被ひ保険ほけん者しゃの指図さしずにより、被ひ保険ほけん者しゃ以外いがいの者もの（例たとえば、被害ひがい者しゃ）に保険ほけん会社かいしゃから直接ちょくせつ支払しはらわれることもある（指図さしず払はらい）。

損害そんがい賠償ばいしょう保険ほけん金きん

被ひ保険ほけん者しゃが第三者だいさんしゃに対たいして支払しはらうべき損賠そんばい賠償金ばいしょうきんを填補てんぽする。

費用ひよう保険ほけん金きん

求償きゅうしょう権けん保全ほぜん費用ひよう保険ほけん金きん

保険ほけん金きん支払しはらい後ごに保険ほけん会社かいしゃが取得しゅとくする（保険ほけん代位だいいという。）、第三者だいさんしゃへの求償きゅうしょう権けんを保全ほぜんするために必要ひつような費用ひようを填補てんぽする。

損害そんがい防止ぼうし軽減けいげん費用ひよう保険ほけん金きん

損害そんがい発生はっせい後ご、損害そんがいの拡大かくだいを防止ぼうし・軽減けいげんするのに必要ひつよう・有益ゆうえきな費用ひようを填補てんぽするが、上記じょうき損害そんがい賠償ばいしょう保険ほけん金きんに含ふくまれることがほとんどであることと、必要ひつよう・有益ゆうえきかどうかの判別はんべつが損害そんがい発生はっせい・拡大かくだいの時ときには困難こんなんであることから、この保険ほけん金きんが適用てきようされる余地よちは実際じっさい上じょう小ちいさい。

争訟そうしょう費用ひよう保険ほけん金きん

訴訟そしょう費用ひよう、弁護士べんごし報酬ほうしゅう、仲裁ちゅうさい・調停ちょうてい・和解わかいに要ようする費用ひようなどを填補てんぽする。争訟そうしょう費用ひようは、損害そんがい賠償金ばいしょうきんと比較ひかくして高額こうがくになることがあり、損害そんがい賠償金ばいしょうきんが填補てんぽ限度げんど額がくを超こえる場合ばあいには、「填補てんぽ限度げんど額がく÷損害そんがい賠償ばいしょう保険ほけん金きん」の割合わりあいで縮小しゅくしょう填補てんぽされる（外そと枠わく比例ひれい払はらい）。

協力きょうりょく費用ひよう保険ほけん金きん

保険ほけん会社かいしゃが直接ちょくせつ被害ひがい者しゃと折衝せっしょうするにあたり、被ひ保険ほけん者しゃが協力きょうりょくするために要ようした費用ひようを填補てんぽする。

緊急きんきゅう措置そち費用ひよう保険ほけん金きん

応急おうきゅう手当てあて・護送ごそうその他た緊急きんきゅう措置そちに要ようした費用ひようを填補てんぽする。

填補てんぽ限度げんど額がく

填補てんぽ限度げんど額がく（てんぽげんどがく;Limit of Liability;LL）とは、賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけんにおいて損害そんがい賠償ばいしょう保険ほけん金きんにより被ひ保険ほけん者しゃの損害そんがいが填補てんぽされる限度げんど額がくをいい、例たとえば、身体しんたい障害しょうがいや財物ざいぶつ損壊そんかいといった、対象たいしょうとする事故じこごとに保険ほけん会社かいしゃが定さだめる最低さいてい基準きじゅんである基準きじゅん填補てんぽ限度げんど額がく以上いじょうで任意にんいに定さだめられる。物ものの損害そんがいを対象たいしょうとする火災かさい保険ほけんなどの物もの保険ほけんにおける保険ほけん金額きんがくは、保険ほけんの目的もくてきとする物ものの価額かがく（保険ほけん価額かがく）の大小だいしょうと比較ひかくして、超過ちょうか保険ほけんや全部ぜんぶ保険ほけん、一部いちぶ保険ほけんといった考かんがえ方かたがあるが、賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけんでは、予あらかじめ賠償ばいしょう責任せきにん額がくは確定かくていできない関係かんけい上じょう、それら超過ちょうか保険ほけん等とうの考かんがえ方かたがない。

通常つうじょう、身体しんたい障害しょうがいに対たいする賠償ばいしょう責任せきにんに関かんしては、1名めいあたりおよび1事故じこあたりの填補てんぽ限度げんど額がくが設定せっていされ、財物ざいぶつ損壊そんかいに対たいする賠償ばいしょう責任せきにんに関かんしては、1事故じこあたりの填補てんぽ限度げんど額がく（Any 0ne Accident;AOA）が設定せっていされ、保険ほけん期間きかん中ちゅうに何なん回かい事故じこが起おきても填補てんぽ限度げんど額がくに変更へんこうはない（自動じどう復元ふくげん方式ほうしき）が、1回かいの事故じこの損害そんがいが巨額きょがくとなる恐おそれのある生産せいさん物ぶつ賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけんや物もの保険ほけんに近ちかい受託じゅたく者しゃ賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけんなどでは、上記じょうきに加くわえて保険ほけん期間きかん中ちゅうの総そう填補てんぽ限度げんど額がく（Aggregate Limit;AGG.）が設定せっていされ、保険ほけん金きん支払しはらいがあると支払しはらい時じ以降いこうの填補てんぽ限度げんど額がくは支払しはらわれた保険ほけん金きんと同額どうがく、減少げんしょうする（残存ざんそん保険ほけん金額きんがく方式ほうしき）。なお、身体しんたい障害しょうがいと財物ざいぶつ損壊そんかいのいずれか一方いっぽうを対象たいしょう事故じことすることも契約けいやく上じょう可能かのうである。また、身体しんたい障害しょうがい、財物ざいぶつ損壊そんかい等とうの区別くべつなく、保険ほけん証券しょうけん全体ぜんたいでの填補てんぽ限度げんど額がくである証券しょうけん総そう填補てんぽ限度げんど額がく（Policy Limit）が設定せっていされることや、特定とくていの事故じこに対たいして、填補てんぽ限度げんど額がくを通常つうじょうより低ひくい額がく（サブリミット;Sub-Limit）とすることがある。

一般いっぱんに、填補てんぽ限度げんど額がくの枠わく内ないで被ひ保険ほけん者しゃが負担ふたんすべき損賠そんばい賠償金ばいしょうきんが填補てんぽされるが、例外れいがいとして、受託じゅたく者しゃ賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけんなど、他人たにんから預あずかった物ものに関かんして、その持もち主ぬし等とうに対たいする賠償ばいしょう責任せきにんを填補てんぽする保険ほけんでは、更さらにその預あずかった物ものの時とき価額かがくが限度げんどとなる。

免責めんせき金額きんがく

免責めんせき金額きんがく（めんせききんがく）とは、保険ほけん会社かいしゃが保険ほけん金きんの支払しはらい責任せきにんを免まぬかれる、つまり「免責めんせき」される金額きんがくをいい、保険ほけんに加入かにゅうしたために被ひ保険ほけん者しゃの事故じこ防止ぼうしに対たいする注意ちゅうい力りょくが減退げんたいする事態じたいを防ふせぐなど保険ほけん会社かいしゃと被ひ保険ほけん者しゃとのリスク分担ぶんたんを適切てきせつなものとしたり、一定いってい規模きぼ以下いかの損害そんがいについて保険ほけん金きん支払しはらいの対象たいしょう外がいとすることで保険ほけん料りょうが高たかくなることを防ふせぐために設定せっていされる。損害そんがい額がくが免責めんせき金額きんがくを超こえる場合ばあいに、超過ちょうかする金額きんがくを保険ほけん金きん支払しはらいの対象たいしょうとするディダクタブル方式ほうしき（Deductible;DED）と、免責めんせき金額きんがくを超こえる場合ばあいに損害そんがい額がくの全額ぜんがくを支払しはらうフランチャイズ方式ほうしき（franchise）とがあるが、保険ほけん金きんを得えるために免責めんせき金額きんがくを超こえるよう損害そんがい額がくを水増みずましするような誘因ゆういんを排除はいじょするためにディダクタブル方式ほうしきとすることがほとんどである。免責めんせき金額きんがくは一定いってい金額きんがくとする場合ばあいと、他たの保険ほけん（第だい1次じ保険ほけん契約けいやく（Underlying Insurance））で支払しはらわれる保険ほけん金額きんがくを控除こうじょする上乗うわのせ保険ほけん（1次じ保険ほけんの超過ちょうか損害そんがい額がくを担保たんぽ）とする場合ばあいがある。免責めんせき金額きんがくを被ひ保険ほけん者しゃの側がわから見みれば、被ひ保険ほけん者しゃの自己じこ負担ふたん額がく（Retained Limit）あるいは自家じか保険ほけん（Self Insured Retention;S.I.R.）となる。

なお、各種かくしゅ費用ひよう保険ほけん金きんに関かんしては通常つうじょう、免責めんせき金額きんがくの適用てきようはない。

上乗うわのせ保険ほけんの例れいとしては、「企業きぎょう包括ほうかつ賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけん（アンブレラ保険ほけん）」がある。また、高額こうがくな填補てんぽ限度げんど額がくの場合ばあい、1保険ほけん会社かいしゃでその総額そうがくを引ひき受うけることができず、そのため1つの保険ほけん契約けいやくを填補てんぽ限度げんど額がくと免責めんせき金額きんがくの組合くみあわせにより複数ふくすうに区分くぶんし、複ふく層そう構造こうぞうを成なす契約けいやく形態けいたいに細分さいぶん化かし、各かく上乗うわのせ保険ほけんを個別こべつに引ひき受うける場合ばあいレイヤー方式ほうしきがある（上乗うわのせ保険ほけんが複数ふくすうある場合ばあい、第だい1次じ保険ほけんを1st Layerとし、順次じゅんじ上乗うわのせ保険ほけんの免責めんせき金額きんがくが低ひくい方ほうからそれぞれ、2nd Layer,3rd Layer・・・という）。

縮小しゅくしょう填補てんぽ割合わりあい

縮小しゅくしょう填補てんぽ割合わりあい（しゅくしょうてんぽわりあい）とは、一般いっぱんに、保険ほけん金きんを計算けいさんするにあたって、損害そんがい額がくから免責めんせき金額きんがくを控除こうじょした後のちの金額きんがくに乗じょうじる割合わりあいをいう。免責めんせき金額きんがくは一定いっていの金額きんがくや他たの保険ほけんの填補てんぽ限度げんど額がくを保険ほけん会社かいしゃ免責めんせきとするのに対たいして、この縮小しゅくしょう填補てんぽ割合わりあいは、リスクの一定いっていの割合わりあいを保険ほけん会社かいしゃ免責めんせきとする、つまり被ひ保険ほけん者しゃの負担ふたんとするものである。この縮小しゅくしょう填補てんぽ割合わりあいを設定せっていするのは、保険ほけん引受ひきうけ技術ぎじゅつ上じょう、被ひ保険ほけん者しゃに事故じこ防止ぼうしを努つとめてもらうためや、保険ほけん料りょうを節減せつげんするなどの理由りゆうによる。 なお、類例るいれいとして、保険ほけん会社かいしゃと被ひ保険ほけん者しゃの間あいだではなく、複数ふくすうの保険ほけん会社かいしゃ間あいだでリスクを分担ぶんたんとする契約けいやく形態けいたいに共同きょうどう保険ほけん契約けいやくがある。

免責めんせき事由じゆう

免責めんせき事由じゆう（めんせきじゆう）とは、保険ほけん会社かいしゃが保険ほけん金きんの支払しはらいを免責めんせきされる事由じゆうをいう。商法しょうほうでは、次つぎの3つを定さだめている。

• 戦争せんそうなど異常いじょう事態じたいでの損害そんがい
• 農作物のうさくもつの腐敗ふはいや機械きかいの摩損まそんなど、予測よそく可能かのうで偶然ぐうぜんな事故じこによるとは言いえない損害そんがい
• 放火ほうかなど故意こいに事故じこを起おこしたり、重過失じゅうかしつによって生しょうじた損害そんがい

ここで重過失じゅうかしつとは、例たとえば「電力でんりょく会社かいしゃから漏電ろうでんの可能かのう性せいを再三さいさん指摘してきされたにもかかわらず修理しゅうりしなかった」「ダンボール箱ばこの近ちかくに火ひのついたタバコを放置ほうちした」の例れいが挙あげられる。

賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけんでの主おもな免責めんせき事由じゆうには、被ひ保険ほけん者しゃの故意こいなど偶然ぐうぜん性せいに欠かけるもの（注ちゅう：偶然ぐうぜん性せいがあることは損害そんがい保険ほけんの前提ぜんていである）、損害そんがい額がくが巨額きょがくとなるおそれがあるもの（例たとえば、自然しぜん災害さいがい）、施設しせつ所有しょゆう管理かんり者しゃ賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけんにおける自動車じどうしゃの所有しょゆう・使用しよう・管理かんりに関かんする免責めんせきなど、自動車じどうしゃ保険ほけんが独自どくじ商品しょうひんとしてある関係かんけい上じょう、商品しょうひん間あいだの整理せいりを行おこなうために敢あえて免責めんせきとしているものなどがある。以下いかに代表だいひょう的てきなものを挙あげるが、以下いかに掲かかげるほか各かく保険ほけん商品しょうひんで加除かじょ修正しゅうせいが行おこなわれる。なお、「重過失じゅうかしつ」は商法しょうほうの規定きていにかかわらず、賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけん普通ふつう保険ほけん約款やっかんでは基本きほん的てきには免責めんせきとはせず、各かく保険ほけんを構成こうせいする特別とくべつ約款やっかんの規定きていに委ゆだねている。

主おもな免責めんせき事由じゆう

• 被ひ保険ほけん者しゃの故意こい
• 地震じしん・津波つなみ・噴火ふんか
• 戦争せんそう・テロ
• 被ひ保険ほけん者しゃが所有しょゆう・使用しよう・管理かんりする財物ざいぶつが損壊そんかいした場合ばあいに、その財物ざいぶつの持もち主ぬし等とうに対たいする賠償ばいしょう
• 環境かんきょう汚染おせん（ただし、急激きゅうげき・偶然ぐうぜんに生しょうじたものを除のぞく）
• 損害そんがい賠償ばいしょうに関かんして約束やくそくした契約けいやく条項じょうこう（Indemnity Agreement）により生しょうじる損害そんがい賠償ばいしょう責任せきにん（ただし、そうした約定やくじょうがなくても当然とうぜんに生しょうじる賠償ばいしょう責任せきにんは除のぞく）
• 保険ほけん料りょう領収りょうしゅう前まえの事故じこ　　　　　など

保険ほけん料りょう

賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけんの保険ほけん料りょうは、各かく商品しょうひん・各かく保険ほけん会社かいしゃごとに異ことなるものの、一般いっぱんに、次つぎの計算けいさん式しき（あるいは考かんがえ方かた）で求もとめられる。つまり、保険ほけん金額きんがく×保険ほけん料りょう率りつ＝保険ほけん料りょうといった単純たんじゅんな計算けいさん式しきではなく、対象たいしょうとするリスクや補償ほしょう条件じょうけんによって複雑ふくざつなものとなっている。なお、2006年ねん4月がつの保険ほけん業法ぎょうほう改正かいせいにより保険ほけん料りょうを構成こうせいする付加ふか率りつが自由じゆう化かされたことを受うけて、下記かきに米国べいこくのPremium Discount Rate（保険ほけん料りょうの実み額がくに応おうじた割引わりびき制度せいど）を追加ついかすることが可能かのうとなった。

賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけん料りょう＝保険ほけん料りょう算出さんしゅつのための基礎きそ数値すうち×基本きほん保険ほけん料りょう×（填補てんぽ限度げんど額がく変更へんこう係数けいすう－免責めんせき金額きんがく変更へんこう係数けいすう）×補償ほしょう範囲はんい変更へんこう係数けいすう×危険きけん度ど係数けいすう

ここでいう、 保険ほけん料りょう算出さんしゅつのための基礎きそ数値すうちとは、施設しせつの面積めんせきや施設しせつへの入場にゅうじょう者しゃ数すうなど、契約けいやくの実態じったいに応おうじ、危険きけんの度合どあいに影響えいきょうを与あたえると考かんがえられる諸しょ要素ようそのうち、最もっとも適切てきせつなものとして保険ほけん会社かいしゃが採用さいようするものをいう。保険ほけん料りょうの確定かくてい精算せいさんに使用しようするための適切てきせつな数値すうちとして、危険きけん度ど係数けいすうと別べつ建だてとなっているが本来ほんらいは危険きけん度ど係数けいすうの一種いっしゅである。例たとえば生産せいさん物ぶつ賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけんでは、保険ほけん料りょう算出さんしゅつの基礎きそに「売上うりあげ高だか」を採用さいようしながらも規模きぼによる経済けいざい効果こうかを重視じゅうしした「売上うりあげ高だかによる逓減ていげん計算けいさん式しき」を導入どうにゅうして、売上うりあげ高だかの増加ぞうかに伴ともなう危険きけん度どの増加ぞうかは逓減ていげん的てきとして基本きほん保険ほけん料りょうに対たいする乗数じょうすうを補正ほせいしている。

基本きほん保険ほけん料りょうとは、補償ほしょうの最小さいしょう単位たんいとなる填補てんぽ限度げんど額がくと免責めんせき金額きんがくの組合くみあわせ（例たとえば、身体しんたい障害しょうがい1名めいにつき、填補てんぽ限度げんど額がく50万まん円えん、免責めんせき金額きんがく1,000円えん）に対たいし、損害そんがい発生はっせい率りつ（頻度ひんど；Frequency）や1事故じこ損害そんがい額がく（Damage）などの統計とうけいデータに基もとづき保険ほけん数理すうりで求もとめた上記じょうき基礎きそ数値すうちに対応たいおうする保険ほけん料りょうをいう。

填補てんぽ限度げんど額がく変更へんこう係数けいすうとは、上記じょうき基本きほん填補てんぽ限度げんど額がく（例れいでは50万まん円えん）を変更へんこうする場合ばあいに乗じょうずる係数けいすうをいう。通常つうじょう、高額こうがくの損害そんがいが発生はっせいする頻度ひんどは比較的ひかくてき少すくないので、填補てんぽ限度げんど額がくの増額ぞうがくに対たいして比例ひれい的てきではなく、逓減ていげん的てきである。

免責めんせき金額きんがく変更へんこう係数けいすうとは、上記じょうき基本きほん免責めんせき金額きんがく（例れいでは1,000円えん）を変更へんこうする場合ばあいに乗じょうずる係数けいすうである。上記じょうき計算けいさん式しきで、填補てんぽ限度げんど額がく変更へんこう係数けいすうからカッコ内ないでマイナスとなっているのは、免責めんせき金額きんがくは自家じか保険ほけんの側面そくめんもあり、自家じか保険ほけん部分ぶぶんを控除こうじょする意味合いみあいもあるからである。なお、免責めんせき金額きんがく変更へんこう係数けいすうも、填補てんぽ限度げんど額がく変更へんこう係数けいすうと同様どうように、増額ぞうがくに対たいして比例ひれい的てきではなく、逓減ていげん的てきである。

補償ほしょう範囲はんい変更へんこう係数けいすうとは、基本きほん補償ほしょうを拡張かくちょう・縮減しゅくげんする場合ばあいに用もちいる係数けいすうをいう。

危険きけん度ど係数けいすうとは、補償ほしょう範囲はんい変更へんこう係数けいすう以外いがいの、被ひ保険ほけん者しゃ等とうの危険きけん度どに応おうじて適用てきようする係数けいすうをいう。リスクを複数ふくすうの要素ようそに分解ぶんかいすることが可能かのうな場合ばあいには、この危険きけん度ど係数けいすうは更さらに複数ふくすうに細分さいぶん化かした危険きけん度ど係数けいすうの乗算じょうざん・除算じょざんにより構成こうせいし、同一どういつのリスク要素ようそ内ないの大小だいしょうに関かんしては、各かくポイントごとの得点とくてんを加算かさん・減算げんざんして求もとめたりすることが一般いっぱん的てきな考かんがえ方かたであるが、それをリスク・マトリックス表ひょうとして構成こうせいしたり、各かく保険ほけん会社かいしゃは保険ほけん商品しょうひんごとに工夫くふうをこらしている。

概算がいさん保険ほけん料りょう

概算がいさん保険ほけん料りょう（がいさんほけんりょう）とは、保険ほけん料りょう算出さんしゅつのための基礎きそ数値すうちが対応たいおうする保険ほけん期間きかん中ちゅうの施設しせつへの入場にゅうじょう者しゃ数すうなど、変動へんどうが予想よそうされるものである場合ばあいに、保険ほけん契約けいやく締結ていけつ時じの見込みこみに基もとづき、概算がいさんで支払しはらわれる保険ほけん料りょうのことをいう。保険ほけん期間きかん終了しゅうりょう後ごに、基礎きそ数値すうちの確かく定値ていちに基もとづき確定かくてい保険ほけん料りょうを算出さんしゅつし、確定かくてい保険ほけん料りょうと概算がいさん保険ほけん料りょうとの差額さがくを保険ほけん契約けいやく者しゃと保険ほけん会社かいしゃとの間あいだで精算せいさんする（確定かくてい精算せいさんという）。 また、保険ほけん商品しょうひんによっては、概算がいさん保険ほけん料りょうとしつつ、一定いっていの条件じょうけん（例たとえば、概算がいさん保険ほけん料りょうを毎年まいとし、前年ぜんねんの会計かいけい帳簿ちょうぼに基もとづき算定さんていする、概算がいさん保険ほけん料りょうと確定かくてい保険ほけん料りょうの差さが一定いっていの範囲はんい内ない（例たとえば±5％以内いない））のもと、保険ほけん期間きかん終了しゅうりょう時じには確定かくてい精算せいさんを行おこなわないとする特約とくやくが結むすばれることがある。

最低さいてい保険ほけん料りょう

最低さいてい保険ほけん料りょう（さいていほけんりょう）とは、保険ほけん会社かいしゃが受うけ取とるべき保険ほけん料りょうの最低さいてい額がくをいう。保険ほけん会社かいしゃが引ひき受うける危険きけんあるいは保険ほけん会社かいしゃ経費けいひ、保険ほけん料りょう算出さんしゅつの基礎きそ数値すうちの変動へんどうといった諸しょ要素ようそを参考さんこうに定額ていがく（例たとえば、10,000円えん）あるいは定率ていりつ（例たとえば、暫定ざんてい保険ほけん料りょうの80％）で定さだめられることがある。

重複じゅうふく保険ほけん契約けいやくの取とり扱あつかい

重複じゅうふく保険ほけん契約けいやくである場合ばあい、つまり、同一どういつの危険きけんに対たいして複数ふくすうの保険ほけん契約けいやくで保険ほけん金きんが支払しはらわれる場合ばあい、それぞれ他たの保険ほけん契約けいやくがないとして計算けいさんした保険ほけん金きんが按分あんぶんして支払しはらわれる（独立どくりつ責任せきにん額がく按分あんぶん方式ほうしき）のが通常つうじょうであるが、他たの保険ほけんを優先ゆうせんして適用てきようし自みずからはその上乗うわのせ契約けいやくとして填補てんぽ責任せきにんを負おうとするものもある（他た保険ほけん優先ゆうせん払はらい方式ほうしき）。なお、他た保険ほけん優先ゆうせん払はらい方式ほうしきの保険ほけん契約けいやく同士どうしについては、独立どくりつ責任せきにん額がく按分あんぶん方式ほうしきの計算けいさん方法ほうほうが準用じゅんようされる。

証券しょうけん適用てきよう地域ちいき

証券しょうけん適用てきよう地域ちいき（しょうけんてきようちいき;Policy Territory）は、担保たんぽ地域ちいき（保険ほけんで担保たんぽする地域ちいき）ともいい、対象たいしょうとする保険ほけん事故じこの発生はっせい地域ちいきをいう。原則げんそくとして、保険ほけん契約けいやくに関かんしては保険ほけん業法ぎょうほう上うえの付づけ保ほ規制きせいがあるため、日本にっぽん国内こくないで保険ほけん事故じこが発生はっせいする事故じこを対象たいしょうとする。例外れいがいとして、海外かいがいPL保険ほけんでは証券しょうけん適用てきよう地域ちいきを原則げんそくとして海外かいがいとしており（契約けいやくごとに指定していし、保険ほけん料りょうにも反映はんえいされる）、会社かいしゃ役員やくいん賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけん（Directors & Officers Insurance;D&O）は原則げんそくとして全ぜん世界せかいを証券しょうけん適用てきよう地域ちいきとしている。

付づけ保ほ規制きせい（ふほきせい）とは、①自国じこく産業さんぎょうの育成いくせい、②自国じこく内ない保険ほけん市場いちばの秩序ちつじょ維持いじ（保険ほけん契約けいやく者しゃ保護ほご）、③外国がいこく為替かわせ管理かんり政策せいさく、等ひとしを目的もくてきとして、各国かっこくの国内こくない法規ほうきにより、無む免許めんきょ外国がいこく保険ほけん事業じぎょう者しゃに対たいする保険ほけん付づけ保ほを禁止きんしまたは制限せいげんしているものをいう。

準拠じゅんきょ法ほう

準拠じゅんきょ法ほう（じゅんきょほう）とは、被ひ保険ほけん者しゃと第三者だいさんしゃとの関係かんけい、つまり、第三者だいさんしゃに対たいする責任せきにんの有無うむや、保険ほけん契約けいやく者しゃ・被ひ保険ほけん者しゃと保険ほけん会社かいしゃとの関係かんけい、つまり、填補てんぽ責任せきにんの範囲はんいや免責めんせき事由じゆうなど保険ほけん金きん支払しはらいに関かんする事項じこうや保険ほけん会社かいしゃによる解除かいじょの有効ゆうこう性せいなど、保険ほけん契約けいやくを解釈かいしゃくするにあたって用もちいられる法ほうをいう。日本にっぽんで締結ていけつされる保険ほけん契約けいやくの場合ばあい、通常つうじょうは、被ひ保険ほけん者しゃ－第三者だいさんしゃ、保険ほけん契約けいやく者しゃ・被ひ保険ほけん者しゃ－保険ほけん会社かいしゃの関係かんけいの如何いかをいずれかを問とわず、保険ほけん会社かいしゃの所在しょざい国こくである日本にっぽん国こくの法ほうが指定していされる。指定していの効果こうかは、具体ぐたい的てきには、「法律ほうりつ上じょうの賠償ばいしょう責任せきにん」でいう「法律ほうりつ」は日本にっぽん国こくの法ほうとされ、不法ふほう行為こうい責任せきにんにおいては日本にっぽん国こくの民法みんぽうが適用てきようされ、故意こい・過失かしつと損害そんがいとの間あいだに相当そうとう因果いんが関係かんけいが求もとめられるなどの形かたちで表あらわれる。ちなみに受託じゅたく者しゃ賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけんでは、預あずかり主ぬしに対たいする責任せきにんに関かんしては、日本にっぽん国こく以外いがいの法ほうを適用てきようする余地よちがあるが、実務じつむ上じょうは行おこなわれていない。日本にっぽん国こくの法ほうが指定していされた場合ばあい、例たとえば、米国べいこくの外国がいこく人じん不法ふほう行為こうい請求せいきゅう権けん法ほうは適用てきようされない。

管轄かんかつ裁判所さいばんしょ

管轄かんかつ裁判所さいばんしょ（かんかつさいばんしょ）とは、保険ほけん契約けいやくに関かんして保険ほけん契約けいやく者しゃや被ひ保険ほけん者しゃと保険ほけん会社かいしゃとの間あいだに訴訟そしょうが生しょうじた場合ばあいに、どこの裁判所さいばんしょとするかについて指定していされた裁判所さいばんしょをいう。通常つうじょうは、保険ほけん会社かいしゃの本店ほんてんが東京とうきょうにある実情じつじょうを踏ふまえ、東京とうきょう地方裁判所ちほうさいばんしょが指定していされる。特約とくやくあるいは特約とくやく書しょにより、仲裁ちゅうさい条項じょうこうが別途べっと規定きていされることがある。