逆ぎゃく刃は刀がたな

るろうに剣けん心しん -明治めいじ剣客けんかく浪漫ろうまん譚たん- > 逆ぎゃく刃は刀がたな

逆ぎゃく刃は刀がたな（さかばとう）は、和わ月がつ伸宏のぶひろの漫画まんが『るろうに剣けん心しん -明治めいじ剣客けんかく浪漫ろうまん譚たん-』に登場とうじょうする架空かくうの日本にっぽん刀がたな。

概要がいよう

主人公しゅじんこう・緋ひ村むら剣つるぎ心しんが所有しょゆうする日本にっぽん刀がたな。その名なのとおり、通常つうじょうの刀かたなとは刃はと峰みねが逆ぎゃく向むきに打うたれた構造こうぞうのため、普通ふつうに使用しようすれば常つねに峰打みねうちの状態じょうたいとなり殺傷さっしょう力りょくを持もたない。幕末ばくまつ期き最強さいきょうの「人ひと斬ぎり抜刀ばっとう斎とき」として多おおくの人間にんげんを斬きってきた悔恨かいこんから、二度にどと人ひとを殺あやめないという剣けん心しんの「不ふ殺ころせ（ころさず）」の信念しんねんを体現たいげんした一刀いっとう。

反そりの外側そとがわが峰みねとなった構造こうぞうから、普通ふつうの刀かたなよりも鞘さやから抜ぬく際さいの滑すべりが悪わるく、抜刀ばっとう術じゅつには適てきさないと作中さくちゅう言及げんきゅうされているが、剣けん心しんは神速しんそくと評ひょうされる飛天ひてん御剣みつるぎ流りゅうの達人たつじんであり、さらに抜刀ばっとう術じゅつが避さけられた際さいの攻撃こうげきも心得こころえているため、この点てんを全まったく感かんじさせない強烈きょうれつな抜刀ばっとう術じゅつをたびたび繰くり出だす。剣けん心しんは「人間にんげん以外いがいのものは容赦ようしゃなく斬きり捨すてる」と語かたり、作中さくちゅうでは相手あいての武器ぶきや障害しょうがい物ぶつなどは逆ぎゃく側がわの刃はで斬きっている。また、拵こしらえに関かんしては鞘さやなどが鉄製てつせいの堅牢けんろうなもので、相手あいての攻撃こうげきに対たいする咄嗟とっさの防御ぼうぎょや刀身とうしん自体じたいが折おれた場合ばあいに打撃だげきに使つかうことも可能かのう。

本ほん作品さくひんの作者さくしゃ・和わ月がつは、「主人公しゅじんこうに人ひとを殺ころさせたくないが、竹光たけみつや木刀ぼくとうでは格好かっこうが付つかない」と考かんがえていたとき、「峰みねと刃はを逆ぎゃくにすれば普通ふつうに斬きったときは峰打みねうちとなり人じんは死しなないのでは」と考かんがえ、この刀かたなを登場とうじょうさせたと語かたっている。

作中さくちゅうの逆ぎゃく刃は刀がたな

逆ぎゃく刃は刀がたな・影かげ打だ（さかばとう かげうち）

幕末ばくまつの刀工とうこう・新井あらい赤あか空むなしが、長州ちょうしゅう藩はんを辞やめて剣けんを持もたずに流浪るろうの旅たびに出でようとする剣けん心しんに対たいし、「剣けんを捨すてることで人ひと斬ぎりであったことを忘わすれるな」という戒いましめを込こめて授さづけた一いち振ふり。逆ぎゃく側がわの刃はの斬きれ味あじは相当そうとうなものであり、作中さくちゅうでは左ひだり之の助すけの斬き馬うま刀がたなや斎藤さいとうの愛あい刀がたな、橋はしを容易たやすく一刀両断いっとうりょうだんにする斬きれ味あじを見みせた。それ以降いこう、剣けん心しんの愛あい刀がたなとして長年ながねん活躍かつやくしてきたが、新月しんげつ村むらでの瀬田せだ宗次郎そうじろうとの戦たたかいで長曾根ながそね虎とら徹てっと刃はを交まじえ、真まっ二ぷたつに折おられた。その後ご、沢下条さわげいじょう帳ちょうとの京都きょうと・白山はくさん神社じんじゃでの戦たたかいでは残のこった刀身とうしんに鞘さやを被かぶせて使用しようした。しかし、薄刃うすば乃太刀がたなによってその鞘さやも真まっ二ぷたつにされ、残のこった刀身とうしんも飛ひ竜りゅう閃によって打うち出だされたが、その戦闘せんとう後ご、この刀かたな自体じたいがどうなったかは描写びょうしゃされていない。

逆ぎゃく刃は刀がたな・真打しんうち（さかばとう しんうち）

白山はくさん神社じんじゃに御ご神かみ刀がたなとして奉納ほうのうされていた、赤あか空そら最後さいごの一いち振ふり。登場とうじょう当初とうしょは鞘さやも柄えも白木しらき拵こしらえだった。その刀身とうしんの茎くきには、殺人さつじん剣けんを作つくり続つづけた赤あか空そらが平和へいわを願ねがう辞世じせいの句くが刻きざまれていた。御ご神かみ刀がたなとして複数ふくすう本ほん打うたれた中なかで最上さいじょうの出来できである真打しんうちゆえ影かげ打だとは比較ひかくにならない強度きょうどを誇ほこり、瀬田せだ宗次郎そうじろうの愛あい刀がたな・菊きく一文字いちもんじ則宗のりむねとの衝突しょうとつにも打うち勝かち、縁えんの倭やまと刀がたなも真まっ二ぷたつにしており、この刀かたなの天翔あまがけ竜りゅう閃を受うけ止とめて無事ぶじだった刀かたなは同おなじ赤あか空そら作さくの兄弟きょうだい刀がたなたる志こころざし々雄ゆうの無限むげん刃ばのみ。また影かげ打だ同様どうよう、逆ぎゃく側がわの刃はの斬きれ味あじは相当そうとうなもので鯨波げいは兵庫ひょうごとの闘たたかいの際さいは彼かれの右腕うわんに接続せつぞくされたアームストロング砲ほうを容易たやすく一刀両断いっとうりょうだんにした。

飛天ひてん御剣みつるぎ流りゅうでは「師匠ししょうの命いのちと引ひき換かえに奥義おうぎを習得しゅうとくする」という習ならわしが存在そんざいするが、剣けん心しんの奥義おうぎ伝承でんしょうの際さいにはこの刀かたなの目釘めくぎが緩ゆるんでおり、それによって力ちからが僅わずかに吸収きゅうしゅうされたおかげで、十じゅう三さん代だい・比ひ古こ清せい十郎じゅうろうは死しを免まぬかれる。

本ほん作品さくひんの最終さいしゅう幕まく、15歳さいの誕生たんじょう日びを迎むかえた明神みょうじん弥彦やひこに「不ふ殺ころせ」の信念しんねんとともに託たくされる。OVA『星霜せいそう編へん』では、弥彦やひこから緋ひ村むら剣つるぎ路ろに託たくされる。また、OVA『新しん京都きょうと編へん』では、「京きょう心こころ（けいしん）」の銘めいがある。

和わ月がつの構想こうそうでは、のちに剣けん路ろと明神みょうじん心こころ弥わたる（弥彦やひこと三条さんじょう燕つばめの息子むすこ）が、この刀かたなの継承けいしょうを巡めぐって争あらそう宿命しゅくめいにあるとされている。

破壊はかい力りょく

漫画まんがファンの要望ようぼうから作成さくせいされた同どう形状けいじょうの模擬もぎ刀がたなを使用しようして、逆ぎゃく刃は刀がたなの破壊はかい力りょくを検証けんしょうする企画きかくが探偵たんていファイルにて行おこなわれており、結果けっかはパイナップルを一刀両断いっとうりょうだんしている。このことから、たとえ刃はが入はいっていなくとも、十分じゅうぶんな強度きょうどと質量しつりょうを持もつ鋼はがねの板いたであれば、殺傷さっしょう能力のうりょくは十分じゅうぶんにあると考かんがえられる。本編ほんぺん開始かいし前まえの読よみ切きりでも、剣けん心しんらしき流浪るろう人じん（維新いしん後ごの本名ほんみょうは明あかされていないものの、本編ほんぺんでいえば剣けん心しん）が「骨ほねの数すう本ほんはへし折おれる」と発言はつげんしている。実際じっさい作中さくちゅうでも、前述ぜんじゅつの奥義おうぎ継承けいしょうの際さいは、危あやうく比ひ古こ清せい十郎じゅうろうを死しなせそうになった。剣けん心しんの逆ぎゃく刃は刀がたなで死人しにんが出でないのは、彼かれの絶妙ぜつみょうな力ちから加減かげんや戦術せんじゅつ（急所きゅうしょを外はずす、相手あいての武器ぶきを破壊はかいする、説得せっとくするなど）によるところが大おおきいと言いえる。唯一ゆいいつの例外れいがいは新しん京都きょうと編へんで斎藤さいとうの牙きば突零式しきのダメージがあったとはいえ、柄頭つかがしらの一いち撃げきで志こころざし々雄お真実しんじつの頭あたまを叩はたき割わり死しに追おいやっている。

実際じっさい、弥彦やひこによると、剣けん心しんは相手あいてを打うつ際さいに柄えを握にぎる手てを逆ぎゃくに緩ゆるめることで相手あいてに威力いりょくが完全かんぜんには伝つたわらないように、かつ相手あいてを行動こうどう停止ていしできるだけの威力いりょくが出でるギリギリの力ちから加減かげんをしているらしく、殺人さつじん剣けんを熟知じゅくちしている剣けん心しんだからこそ使つかえるとのこと。弥彦やひこは譲ゆずられた後のち、その使つかい方かたの難むずかしさを痛感つうかんしており、使つかいこなすには人間にんげんの一生いっしょう分ぶんの時間じかん、鍛錬たんれんをこなす必要ひつようがあるとして、今いまの自分じぶんより北海道ほっかいどうへ向むかう剣けん心しんに必要ひつようだと逆ぎゃく刃は刀がたなを返却へんきゃくしている。

なお、『るろうに剣けん心しん』作中さくちゅうは廃刀はいとう令れいが出でた時代じだいであるが、剣けん心しんの逆ぎゃく刃は刀がたなは（少すくなくとも剣けん心しんの住すんでいる地域ちいきの町まちでは）「仕込しこみ杖づえよりも安全あんぜんな代物しろもの」として不問ふもんとされている。ただし、読よみ切きり版ばんや京都きょうと編へんで東京とうきょうを離はなれている時ときは廃刀はいとう令れい違反いはんで追おいかけられる場面ばめんもある。

類似るいじの武器ぶき

『るろうに剣けん心しん』完全かんぜん版ばんのキャラクターをリファインする企画きかく「剣けん心こころ再さい筆ふで」では、緋ひ村むら抜刀ばっとう斎ときの愛あい刀がたなとして新井あらい赤あか空そら初期しょき型がた殺人さつじん奇き剣けん「全ぜん刃は刀がたな」が設定せっていされた。こちらは逆ぎゃく刃は刀がたなとは対照たいしょう的てきに、峰みねと鍔つばも刃はになった刀かたな（諸刃もろは）として設定せっていされている。

なお、2013年ねん10月がつに千葉ちば県けん白井しろい市しで江戸えど時代じだいに牧まき士しだった旧家きゅうかから、刃はと峰みねが逆ぎゃくになった小刀こがたな（刃渡はわたり約やく22cm）が発見はっけんされ、市し教育きょういく委員いいん会かいに寄贈きぞうされている。この刀かたなは、茎くきの部分ぶぶんが非常ひじょうに小ちいさいなど、日本にっぽん刀がたなの製法せいほうに則のっとっていないことから、千葉ちば県けん教育きょういく委員いいん会かいは美術びじゅつ刀がたなとしての申請しんせいを却下きゃっかした。茎くきが小ちいさいため、何なにかに斬きりつけると折おれるほどに脆もろい可能かのう性せいが指摘してきされており、削そぎ蹄鎌（馬うまの爪つま切きり）の代用だいようだったという説せつ（牧まき士しは牛馬ぎゅうばに関かかわる職しょく）、単たんに人ひとを驚おどろかせるために遊あそびで作つくった、観賞かんしょう用ようの工芸こうげい品ひんなどの説せつがある。この刀かたなは、白井しろい市しの郷土きょうど資料しりょう館かんで展示てんじされている。

逆ぎゃく刃は刀がたななど『るろうに剣けん心しん』に登場とうじょうした刀かたなの模造もぞう刀がたなは複数ふくすう販売はんばいされているが、2019年ねんには刀工とうこうの尾川おがわ兼けん國こくが正式せいしきな許可きょかを得えて製作せいさくした逆ぎゃく刃は刀がたな・真打しんうちを再現さいげんした真剣しんけんが公開こうかいされた。