鄒韜奮

鄒韜奮
プロフィール
出生しゅっしょう：	1895年ねん11月5日にち （清きよし光ひかり緒いとぐち21年ねん9月がつ19日にち）
死去しきょ：	1944年ねん（民みん国こく33年ねん）7月がつ24日にち 中華民国ちゅうかみんこく上海しゃんはい市し
出身しゅっしん地ち：	清きよし福建ふっけん省しょう延のべ平たいら府ふ永安えいあん県けん
職業しょくぎょう：	教育きょういく者しゃ・ジャーナリスト
各種かくしゅ表記ひょうき
繁体字はんたいじ：	鄒韜奮
簡体字かんたいじ：	邹韬奋
拼音：	Zōu Tāofèn
ラテン字じ：	Tsou T'ao-fen
和名わみょう表記ひょうき：	すう とうふん
発音はつおん転記てんき：	ゾウ・タオフェン

鄒 韜奮（すう とうふん、1895年ねん11月5日にち - 1944年ねん7月がつ24日にち）は、中華民国ちゅうかみんこくの教育きょういく者しゃ・ジャーナリスト。名なは恩おん潤じゅんだが筆名ひつめいの韜奮で知しられる。抗日こうにち主張しゅちょうを展開てんかいした言論げんろん人じんとして知しられ、中国ちゅうごく国民党こくみんとう（国民こくみん政府せいふ）の安やす内ない攘外政策せいさくを厳きびしく批判ひはんした。国民こくみん政府せいふの弾圧だんあつを受うけ一いち時じ拘禁こうきんされた「七なな君子くんし」の一人ひとりとしても著名ちょめいである。他たの筆名ひつめいには、因いん公こう・落霞・心しん水すい・秋月あきづき・木き旦だん・笑わらい世よなどもある。本ほん貫ぬきは江西えにし省しょう饒にょう州しゅう府ふ安あん仁ひとし県けん。なお、長男ちょうなんは中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくで国務こくむ院いん副ふく総理そうりを務つとめた鄒家華すうかか、次男じなんは気象きしょう学者がくしゃの鄒競蒙こうむである。

事跡じせき

ジャーナリストへの道みち

福建ふっけん省しょうの地方ちほう官僚かんりょうの家庭かていに生うまれる。当初とうしょは旧きゅう学がくを学まなんだが、1909年ねん（宣せん統みつる元年がんねん）に福建ふっけん工業こうぎょう学校がっこうに入学にゅうがくしてからは新しん学がくに親したしんだ。1912年ねん（民みん国こく元年がんねん）、上海しゃんはいの南洋なんよう公おおやけ学がく（後ごの上海しゃんはい交通こうつう大学だいがく）附属ふぞく小学しょうがくに入学にゅうがくし、その後ご南洋なんよう大学だいがく（公おおやけ学がく改組かいそ後ごの学校がっこう名めい）まで進学しんがくしている。ここでは父ちちの鄒国珍ちんの希望きぼうもあって電気でんき工学こうがくを学まなんだが、結局けっきょく関心かんしんを抱いだくことができなかった。そのため1919年ねん（民みん国こく8年ねん）、上海しゃんはい聖きよしヨハネ大学だいがくに転入てんにゅうして外国がいこく文学ぶんがくと教育きょういく学がくを学まなんだ。

1921年ねん（民みん国こく10年ねん）に鄒韜奮は大学だいがくを卒業そつぎょうし、当初とうしょは上海しゃんはい紗しゃ布ぬの交易こうえき所しょで英文えいぶん秘書ひしょを担当たんとうした。1922年ねん（民みん国こく11年ねん）、中華ちゅうか職業しょくぎょう教育きょういく社しゃに移うつり、月刊げっかん誌し『教育きょういく與あずか職業しょくぎょう』の編輯へんしゅうとなる。また、中華ちゅうか職業しょくぎょう学校がっこうなどで英語えいご教師きょうしも務つとめた。この頃ころ、『職業しょくぎょう教育きょういく概論がいろん』などの教育きょういく学がく関連かんれん著書ちょしょも執筆しっぴつした。

1925年ねん（民みん国こく14年ねん）、『教育きょういく與あずか職業しょくぎょう』は週刊しゅうかん誌し『生活せいかつ』となり、翌年よくねん10月がつに鄒韜奮が主おも編へんとなった。鄒韜奮は職業しょくぎょう教育きょういく社しゃ社員しゃいんのみを読者どくしゃ対象たいしょうとしていた同誌どうしの主旨しゅしを変更へんこうし、一般いっぱん社会しゃかい向むけの雑誌ざっしへと衣替ころもがえした。雑誌ざっし内ないにおいて鄒韜奮は職業しょくぎょう教育きょういく関連かんれんのみならず、社会しゃかい改良かいりょう主義しゅぎなどの主張しゅちょうも展開てんかいしている。さらに同誌どうしは、陳ひね調ちょう元もとや王おう伯はく群ぐんなど国民こくみん政府せいふ高官こうかんの腐敗ふはいぶりをも暴あばく記事きじを掲載けいさいした。

抗日こうにち言論げんろんの展開てんかい

1931年ねん（民みん国こく20年ねん）、満まん洲しゅう事変じへん（九きゅう・一いち八はち事変じへん）が勃発ぼっぱつすると、鄒韜奮は『生活せいかつ』で連載れんさい記事きじを執筆しっぴつし、社会しゃかいに向むけて抗日こうにちの団結だんけつを呼よびかけた。しかし、蔣介石せきが安やす内ない攘外政策せいさくを推進すいしんするのを見みて鄒韜奮は失望しつぼうし、蔣介石せきや中国ちゅうごく国民党こくみんとうへの批判ひはんを強つよめることになる。国民党こくみんとう側がわでも自分じぶんたちを批判ひはんする鄒韜奮に苛立いらだちを隠かくせず、胡えびす宗そう南みなみが鄒韜奮に持論じろんを転換てんかんするよう迫せまったり、国民こくみん政府せいふ中央ちゅうおうが『生活せいかつ』の郵送ゆうそうを不ふ許可きょかとしたりするなどの圧力あつりょくをかけた。しかし鄒韜奮は自みずからの立場たちばを変かえず、また『生活せいかつ』も幅広はばひろい読者どくしゃの支持しじを集あつめ発行はっこうされ続つづけている。1933年ねん（民みん国こく22年ねん）7月がつには生活せいかつ出版しゅっぱん社しゃ（生活せいかつ書店しょてん）を設立せつりつし、『生活せいかつ』の出版しゅっぱん体制たいせい整備せいびを進すすめている。

その前まえの1933年ねん（民みん国こく22年ねん）1月がつ、宋そう慶けい齢よわい・蔡元培つちかえらが中国ちゅうごく民権みんけん保障ほしょう同盟どうめいを結成けっせいすると、鄒韜奮もこれに参加さんかして執行しっこう委員いいんに選出せんしゅつされた。しかし6月がつに民権みんけん保障ほしょう同盟どうめい秘書ひしょ長ちょうの楊杏仏ほとけが国民党こくみんとう特務とくむに暗殺あんさつされ、鄒韜奮も命いのちの危険きけんにさらされたことから、8月がつに欧州おうしゅう視察しさつに赴おもむいている。同年どうねん12月がつ、鄒韜奮が国内こくない不在ふざいの間あいだに『生活せいかつ』は国民こくみん政府せいふにより発禁はっきんに追おい込こまれてしまい、さらに雑誌ざっし『新生しんせい』と改あらためて刊行かんこうを継続けいぞくしたが、やはりまもなく発禁はっきんとされてしまった。

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスでの聴講ちょうこうなどを経へて1935年ねん（民みん国こく24年ねん）8月がつに鄒韜奮は帰国きこく、上海しゃんはいで雑誌ざっし『大衆たいしゅう生活せいかつ』を創刊そうかんしてジャーナリスト活動かつどうを再開さいかいする。同年どうねん12月がつ、上海しゃんはい各界かくかい救国きゅうこく会かいが成立せいりつすると執行しっこう委員いいんに選出せんしゅつされた。1936年ねん（民みん国こく25年ねん）2月がつ、『大衆たいしゅう生活せいかつ』も国民こくみん政府せいふにより発禁はっきんされ、鄒韜奮は香港ほんこんに移うつり6月がつに『生活せいかつ日報にっぽう』を創刊そうかんしたが、これもまもなく取締とりしまりの厳きびしさから廃刊はいかんに追おい込こまれた。

七なな君子くんし事件じけん

その直前ちょくぜんの同年どうねん5月がつに、鄒韜奮は全国ぜんこく各界かくかい救国きゅうこく聯合れんごう会かい執行しっこう委員いいんに選出せんしゅつされる。7月には、章あきら乃器・沈鈞儒・陶とう行こう知ちと4人にんで「団結だんけつ禦侮に関かんする幾いくつかの条件じょうけんと最低限さいていげんの要求ようきゅう」（原文げんぶん「團結だんけつ禦侮的てき幾いく個こ基本きほん條件じょうけん和わ最低さいてい要求ようきゅう」）を発表はっぴょうし、国民党こくみんとうと中国共産党ちゅうごくきょうさんとうの双方そうほうに向むけて、自みずからの政治せいじ姿勢しせいを改あらため共同きょうどうで抗日こうにちに向むかうよう呼よびかけた。

しかし同年どうねん11月がつ22日にち、鄒韜奮・章あきら乃器・沈鈞儒に加くわえ、李り公こう樸しらき・王おう造づくり時じ・沙すな千里せんり・史良しりょうは国民党こくみんとうにより逮捕たいほされ、蘇州そしゅうの江蘇ちぁんすー高等法院こうとうほういん看守かんしゅ所しょに収監しゅうかんされた。いわゆる「七なな君子くんし事件じけん」である。この逮捕たいほには世論せろんが激はげしく反発はんぱつしたが、蔣介石せきらはあくまでも裁判さいばんにより判決はんけつを下くだそうと目論もくろんだ。しかし盧溝橋ろこうきょう事件じけんによる日にち中ちゅう戦争せんそう（抗日こうにち戦争せんそう）勃発ぼっぱつを経へた1937年ねん（民みん国こく26年ねん）7月がつ31日にちに、ついに世論せろんの非難ひなんに抗こうし切きれなくなった国民党こくみんとうにより、7人にんは釈放しゃくほうされている。

釈放しゃくほうされた鄒韜奮は上海しゃんはいで新あらたに『抗戦こうせん』三さん日刊にっかんを創刊そうかんし、抗日こうにち団結だんけつを社会しゃかいに呼よびかける一方いっぽう、共産党きょうさんとうを支持しじし、国民党こくみんとうを非難ひなんする言論げんろんを展開てんかいした。上海しゃんはい陥落かんらく後ごも武漢ぶかんに移うつって刊行かんこうを継続けいぞくし、1938年ねん（民みん国こく27年ねん）7月がつには柳やなぎ湜が主おも編へんを務つとめていた『全ぜん民みん周しゅう刊かん』と合併がっぺいして『全ぜん民みん抗戦こうせん』三さん日刊にっかんを創刊そうかんしている。また、鄒韜奮は国民こくみん参政さんせい会かい第だい1期き参政さんせい員いんにも選出せんしゅつされている。

最さい晩年ばんねん

その後ごも鄒韜奮は国民こくみん政府せいふから圧力あつりょく・弾圧だんあつを受うけながらも言論げんろん活動かつどうを継続けいぞくする。1941年ねん（民みん国こく30年ねん）1月がつには参政さんせい員いんを辞じして共産党きょうさんとうの東江あがりえ遊ゆう撃げき区くや蘇そ北きた解放かいほう区くなどの実情じつじょう視察しさつに赴おもむく。このときの視察しさつにより、鄒韜奮はますます共産党きょうさんとうへの支持しじ・傾倒けいとうを強つよめることになった。

1943年ねん（民みん国こく32年ねん）、鄒韜奮は耳みみの疾患しっかんの治療ちりょうのため、秘密裏ひみつりに上海しゃんはいに赴おもむいた。しかしここで病状びょうじょうが悪化あっか、1944年ねん（民みん国こく33年ねん）7月がつ24日にち、そのまま上海しゃんはいで死去しきょした。享年きょうねん50（満まん48歳さい）。鄒韜奮の遺のこ嘱しょくに基もとづき同年どうねん9月がつ、中共ちゅうきょう中央ちゅうおうはその共産党きょうさんとう入党にゅうとうを承認しょうにんしている。

参考さんこう文献ぶんけん

• 宗そう志文しぶみ「鄒韜奮」中国ちゅうごく社会しゃかい科学かがく院いん近代きんだい史し研究所けんきゅうじょ『民みん国こく人物じんぶつ伝でん 第だい9巻かん』中華ちゅうか書しょ局きょく、1997年ねん。ISBN 7-101-01504-2。 
• 徐じょ友とも春はる主ぬし編へん『民みん国こく人物じんぶつ大だい辞典じてん 増ぞう訂てい版ばん』河北かわきた人民じんみん出版しゅっぱん社しゃ、2007年ねん。ISBN 978-7-202-03014-1。