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酵素こうそ栄養えいようがく

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

酵素こうそ栄養えいようがく(こうそえいようがく、えい: enzyme nutrition)とは、酵素こうそ重要じゅうよう栄養素えいようそだとみなす理論りろんである。エドワード・ハウエル1946ねん専門せんもんしょ[1] を、1980ねんと1985ねん一般いっぱんけの著書ちょしょ出版しゅっぱんしてられるようになった。せい食品しょくひん摂取せっしゅ推奨すいしょうしており、ローフーディズム主要しゅよう根拠こんきょのひとつとなっている。現代げんだい生化学せいかがくはんするという批判ひはんもある。

エドワード・ハウエルの主張しゅちょう

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エドワード・ハウエルは、「潜在せんざい酵素こうそ」、「食物しょくもつ酵素こうそ」という言葉ことばでこの理論りろん説明せつめいした[2]

潜在せんざい酵素こうそ」とは、体内たいない消化しょうかのほか、様々さまざま生体せいたい活動かつどうもちいられる酵素こうそ総合そうごうてきにとらえた概念がいねんである。この潜在せんざい酵素こうそは、生物せいぶつ一生いっしょう使つかわれる総量そうりょう上限じょうげんがあり、これが消耗しょうもうされすぎると病気びょうき原因げんいんとなり、寿命じゅみょうちぢむとかんがえられる。一方いっぽう食品しょくひんふくまれる酵素こうそを「食物しょくもつ酵素こうそ」とんだ。食物しょくもつ酵素こうそおお食事しょくじをすると、食物しょくもつ酵素こうそ食品しょくひん消化しょうかたすけ、人体じんたい自身じしん消化しょうか酵素こうそ分泌ぶんぴつすくなくてすむために、潜在せんざい酵素こうそ消費しょうひおさえることができるとかんがえられた。さらに、酵素こうそには「生命せいめいエネルギー」がふくまれているとし、酵素こうそおお食物しょくもつることは病気びょうき予防よぼうし、寿命じゅみょうばすエネルギーの補充ほじゅう効果こうかがあるとした。

自然しぜん状態じょうたい食品しょくひんには、もととなった生物せいぶつ由来ゆらい酵素こうそふくまれている。おおくの動物どうぶつ複数ふくすうっているが、反芻はんすうなどで食物しょくもつ微生物びせいぶつ酵素こうそ利用りようして「事前じぜん消化しょうか」をおこない、最後さいご自身じしんつくした酵素こうそ利用りようする。ハウエルは人間にんげんでものはじめのほう部分ぶぶんはこうした役割やくわりっていると主張しゅちょうした。

しかし、酵素こうそおおくは加熱かねつによってしつかつする。こうして酵素こうそ活性かっせいうしなった食品しょくひんべた場合ばあい、はじめの食物しょくもつ酵素こうそによる事前じぜん消化しょうかおこなわれず、身体しんたいつくした酵素こうそ使用しようすることになり、消化しょうか酵素こうそつくしている膵臓すいぞうなどにより負担ふたんをかけることになる。これが病気びょうき原因げんいんとなるので、食物しょくもつおおくをなまべることをすすめた。さらに、いま時代じだい食品しょくひん調理ちょうり加工かこうによって酵素こうそ活性かっせいうしなった食品しょくひんおおいので、酵素こうそサプリメント摂取せっしゅすることも推奨すいしょうした。このかんがかたペットフードにも応用おうようされ、ペットようのサプリメントも市販しはんされている。

また、酵素こうそおおふくんでるので、発酵はっこう食品しょくひんすすめた。たとえば、味噌みそでは麹菌こうじきんつくアミラーゼリパーゼをはじめとした各種かくしゅ酵素こうそ蓄積ちくせきされている[3]

酵素こうそむために、食品しょくひんなまべることをすすめているが、穀物こくもつまめなどの種子しゅし例外れいがいとしている。酵素こうそはたらきを抑制よくせいする「酵素こうそ抑制よくせい物質ぶっしつ」をふくみ、そのままべるとがいになるためだ。そこで、種子しゅし発芽はつがさせてスプラウト状態じょうたいにする。発芽はつがする過程かていで、酵素こうそ抑制よくせい物質ぶっしつ消滅しょうめつし、しかも酵素こうそ活性かっせいたかまり、すぐれた酵素こうそ食材しょくざいとなる。

日本にっぽんでは、鶴見つるみ隆史たかし新谷しんたに弘実ひろみらが類似るいじした主張しゅちょうをしている。鶴見つるみはスプラウトに絶大ぜつだい健康けんこう効果こうかがあるとしている。新谷しんたにはすべての酵素こうそもととなる物質ぶっしつ体内たいない蓄積ちくせきされていると想定そうていし、「ミラクル・エンザイム」とづけ、その利用りよう節約せつやくすることで長生ながいきができると主張しゅちょうし、シンヤビオジマを提唱ていしょうしている[4]新谷しんたにはまた、酵素こうそ構成こうせいするアミノ酸あみのさんには、「記憶きおく」があり、食物しょくもつちゅう酵素こうそ分解ぶんかいされ、消化しょうか吸収きゅうしゅうされたのちにも、体内たいない酵素こうそさい構成こうせいされると主張しゅちょうしている。そのため、酵素こうそおおふくんだ食品しょくひん摂取せっしゅすることは消化しょうかたすけになるだけでなく、体内たいない代謝たいしゃ使つかわれる酵素こうそ補充ほじゅうする意義いぎもあるとしている。

アメリカでは、テキサスしゅうヒューストンにてディッキー・フュラー博士はかせ酵素こうそもちいた診療しんりょうおこなっている[5]

一般いっぱんてき生理学せいりがく分子生物学ぶんしせいぶつがくとうとの比較ひかく

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一般いっぱんには消化しょうか酵素こうそざい医薬品いやくひんとして、体内たいない消化しょうか酵素こうそ不足ふそくによる消化しょうか皮膚ひふりゅうといった症状しょうじょう改善かいぜん目的もくてきとする[6]日本にっぽんでは、東京とうきょう老人ろうじん総合そうごう研究所けんきゅうじょ柴田しばたひろしらによって、老齢ろうれいしゃ市販しはん消化しょうか酵素こうそのサプリメントを利用りようすることによって、血清けっせいアルブミンHDLコレステロール上昇じょうしょうしたことが確認かくにんされた[7]

ライト州立しゅうりつ大学だいがく医学部いがくぶ生化学せいかがくのプロチャスカらが医学いがく文献ぶんけん調査ちょうさおこなったところ、食品しょくひんちゅう酵素こうそ食品しょくひん消化しょうかたす栄養えいよう増加ぞうかさせる可能かのうせいしめ証拠しょうこが、穀物こくもつ乳製品にゅうせいひんまめ種子しゅし肉類にくるい検索けんさく対象たいしょうにおいてられた[8]いちれいでは乳糖にゅうとう分解ぶんかいする酵素こうそラクターゼ欠乏けつぼうしゃでは、ヨーグルトちゅう乳糖にゅうとう牛乳ぎゅうにゅうちゅう乳糖にゅうとうよりもよく吸収きゅうしゅうされており、乳酸菌にゅうさんきんつくるラクターゼが原因げんいんとみられている[9]

潜在せんざい酵素こうそ」に該当がいとうする事実じじつ発見はっけんされていないということである。アメリカでは2003ねんFDAは、糖尿とうにょうびょう高血圧こうけつあつなおすと宣伝せんでんした、消化しょうか酵素こうそのサプリメントの販売はんばいしゃたい警告けいこくおこなった[10]


脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Edward Howell (1946). The status of food enzymes in digestion and metabolism. Chicago: National enzyme company. OCLC 5639180 
  2. ^ 小池こいけさと小池こいけすぐる『ホリスティック健康けんこうがく・ホリスティック栄養えいようがく入門にゅうもん』ホリスティック栄養えいようがく研究所けんきゅうじょ、2004ねん、268ぺーじISBN 978-4990196400 
  3. ^ 今井いまい誠一せいいち味噌みそ : いろあじにブレをさない技術ぎじゅつ販売はんばいのうやま漁村ぎょそん文化ぶんか協会きょうかい食品しょくひん加工かこうシリーズ〉、2002ねん、26-27ぺーじISBN 4-540-01151-0 
  4. ^ 新谷しんたに弘実ひろみ病気びょうきにならないかた : ミラクル・エンザイムが寿命じゅみょうめる』サンマーク出版しゅっぱん、2005ねんISBN 4-7631-9619-7 
  5. ^ ディッキー・フュラー ちょ竹内たけうち 進一郎しんいちろう やく病気びょうきいやし、老化ろうかふせ酵素こうそ治癒ちゆりょく現代書林げんだいしょりん、2011ねんISBN 978-4774513393 
  6. ^ 消化しょうか酵素こうそ製剤せいざい解説かいせつ 処方しょほうやく辞典じてん”. 日経にっけいメディカル. 2018ねん7がつ26にち閲覧えつらん
  7. ^ 柴田しばたひろし熊谷くまがいおさむほか「市販しはん消化しょうかざいもちいて虚弱きょじゃく高齢こうれいしゃ栄養えいよう状態じょうたい改善かいぜんするこころみ」『老年ろうねん医学いがく』37(9)、1999ねん、1355-9ぺーじ英文えいぶん文書ぶんしょ
  8. ^ “On the synergistic effects of enzymes in food with enzymes in the human body. A literature survey and analytical report”. Med. Hypotheses 42 (6): 355–62. (June 1994). doi:10.1016/0306-9877(94)90152-X. PMID 7935080. 
  9. ^ “Yogurt--an autodigesting source of lactose”. N. Engl. J. Med. 310 (1): 1–3. (January 1984). doi:10.1056/NEJM198401053100101. PMID 6417539. 
  10. ^ Stephen Barrett (2003ねん3がつ11にち). “"Enzyme Deficiency"”. Quackwatch. 2013ねん10がつ2にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん

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  • エドワード・ハウエル ちょかわ喜田きた昭雄あきお監訳かんやくせら野川のがわ知子ともこ やく『キラー・フード : あなたの寿命じゅみょうは「酵素こうそ」でまる』現代書林げんだいしょりん原著げんちょ1985ねん)。ISBN 4-7745-0097-6 原著げんちょ ENZYME NUTRITION, 1985)
  • エドワード・ハウエル ちょ今村いまむら光一こういち やく食物しょくもつ酵素こうそのbakaりょく』ヘルス・ビジネス・マガジンしゃ、2002ねん原著げんちょ1994ねん)。 原著げんちょ FOOD ENZYMES FOR HEALTH & LONGEVITY, 1994)
  • エドワード・ハウエル ちょ今村いまむら光一こういち やく医者いしゃらない酵素こうそちから』(改版かいはん中央ちゅうおうアート出版しゅっぱんしゃ、2009ねん原著げんちょ1994ねん)。ISBN 978-4-8136-0535-5 原著げんちょ FOOD ENZYMES FOR HEALTH & LONGEVITY, 1994)

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