陽子ようし放出ほうしゅつ

陽子ようし放出ほうしゅつ(英語えいご：Proton emission)は原子核げんしかくから陽子ようしが放出ほうしゅつされる放射ほうしゃ性せい崩壊ほうかいの崩壊ほうかい形式けいしき。

陽子ようし過多かたの核かくAの崩壊ほうかいはβべーた+放出ほうしゅつや電子でんし捕獲ほかくで娘むすめ核かくBの励起れいき状態じょうたいに集合しゅうごうする(EC)。娘むすめ核かくBの基底きてい状態じょうたいに向むかったγがんま放出ほうしゅつによってこれらの励起れいき状態じょうたいは、陽子ようし崩壊ほうかいの分離ぶんりエネルギー(Sp)の下したにある。高位こうい励起れいき状態じょうたいのため、孫娘まごむすめCへの陽子ようし放出ほうしゅつの競争きょうそう崩壊ほうかい経路けいろが存在そんざいし、βべーた崩壊ほうかい陽子ようし放出ほうしゅつと呼よばれている。

陽子ようし放出ほうしゅつはベータ崩壊ほうかいに続つづく核かくの高位こうい励起れいき状態じょうたいから生しょうじ、これらの場合ばあい、崩壊ほうかい過程かていはベータ崩壊ほうかい陽子ようし放出ほうしゅつとして知しられている。また、陽子ようしに富とむ原子げんしの基底きてい状態じょうたい、低位ていい状態じょうたい異性いせい体たいからも起おこり、この場合ばあいは崩壊ほうかい形式けいしきはアルファ崩壊ほうかいに似にている。

陽子ようしが原子核げんしかくから逃のがれるために、陽子ようし分離ぶんりエネルギーは負まけでなくてはならない。このため陽子ようしは解とき放はなたれ、有限ゆうげんの時間じかんで核かくの外そとへ移動いどうする。陽子ようし放出ほうしゅつは自然しぜん構築こうちくされた異性いせい体たいでは見みられず、多おおくの場合ばあいある種しゅの加速器かそくきを利用りようして核かく反応はんのう経由けいゆで引ひき起おこされる。

もっとも早はやい陽子ようし放出ほうしゅつは1969年ねん、コバルト53の異性いせい体たいに既すでに観測かんそくされていたが、西にしドイツのGSIでの実験じっけんの際さいにルテチウム151とツリウム147の陽子ようしの放射ほうしゃ性せい基底きてい状態じょうたいが観測かんそくされるまでその他たの陽子ようし放出ほうしゅつの状態じょうたいは1981年ねんまで見みつからなかった。その分野ぶんやでの研究けんきゅうはこの打開だかいによって成長せいちょうし、現在げんざいまでに陽子ようし放射ほうしゃを示しめす25を超こえる異性いせい体たいが見みつかっている。陽子ようし放出ほうしゅつの研究けんきゅうは核かくの応力おうりょく変形へんけい、質量しつりょう、構造こうぞうの理解りかいを助たすけ、また量子りょうしトンネル効果こうかの純粋じゅんすいな例れいであった。