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Eu(fod)3

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
Eu(fod)3
Skeletal formula of EuFOD
Ball-and-stick model of the EuFOD complex{{{画像alt1}}}
識別しきべつ情報じょうほう
CAS登録とうろく番号ばんごう 17631-68-4
特性とくせい
化学かがくしき C30H30EuF21O6
モル質量しつりょう 1037.49 g mol−1
外観がいかん 黄色おうしょく粉末ふんまつ
融点ゆうてん

203 - 207 °C, 269 K, -138 °F

特記とっきなき場合ばあい、データは常温じょうおん (25 °C)・つねあつ (100 kPa) におけるものである。

Eu(fod)3化学かがくしきEu(OCC(CH3)3CHCOC3F7)3化合かごうぶつである。EuFODともばれる。このはい化合かごうぶつおもNMR分光ぶんこうほうにおけるシフト試薬しやくとして使つかわれる。ランタノイドけいシフト試薬しやく最初さいしょ化合かごうぶつであり、1970年代ねんだいおよび1980年代ねんだい人気にんきがあった。

構造こうぞうおよび反応はんのうせい

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Eu(fod)3Eu(III) 中心ちゅうしん結合けつごうした3つのはい英語えいごばんアセチルアセトナートはい英語えいごばんからる。この金属きんぞく原子げんしはf6電子でんし配置はいちつ。これら6つの電子でんしたい電子でんし(それぞれがことなるf軌道きどう単独たんどく占有せんゆうしている)であり、これによって分子ぶんし高度こうどつね磁性じせいとなる。この錯体さくたいルイスさんであり、はいすうを6から8に拡張かくちょうすることができる。錯体さくたいエーテルなか酸素さんそ原子げんしアミンなか窒素ちっそ原子げんしといった「かた」ルイス塩基えんきたいしてとく親和しんわせいしめす。極性きょくせい溶媒ようばい溶であり、アセチルアセトンヘキサフルオロアセチルアセトン英語えいごばん類縁るいえん錯体さくたいよりもよくける。Fodはいヘプタフルオロ酪酸誘導体ゆうどうたいである。

使用しよう

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NMRシフト試薬しやく

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Eu(fod)3当初とうしょ利用りようは、NMR分光ぶんこうほうにおいてジアステレオマー化合かごうぶつ分析ぶんせきたいするものだった。つね磁性じせいNMR分光ぶんこうほう英語えいごばんにおいて典型てんけいてきなことだが、つね磁性じせい化合かごうぶつ分子ぶんし ちゅうのルイス塩基えんき結合けつごうする部位ぶいちかくのプロトンにおいて追加ついか化学かがくシフト誘導ゆうどうする。この変化へんかによって、通常つうじょうでは化学かがくシフトが似通にかよっているが、ルイス塩基えんき部位ぶいとはちかくないプロトンとシグナルが分離ぶんりすることで解析かいせき容易よういとなる。試薬しやくつね磁性じせいかくのスピン-格子こうし緩和かんわたて緩和かんわ時間じかん短縮たんしゅくし、せんはばひろがりと分解能ぶんかいのう低下ていか原因げんいんとなるため、ごく少量しょうりょうのシフト試薬しやく使用しようされる。よりたか磁場じば分光ぶんこうけい利用りよう可能かのうとなることで、NMRシフト試薬しやくたいする必要ひつようせい低下ていかしてきた。

最初さいしょのシフト試薬しやくはHinckleyによって開発かいはつされたEu(DPM)3であった[1][2]。その構造こうぞうはEu(fod)3ているが、ヘプタフルオトプロピルもとわりにtert-ブチルもとつ。すなわち、DPMはジピバロイルメタン(2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオン)から誘導ゆうどうされる共役きょうやく塩基えんきである。はいfodはよりおや油性ゆせいであり、ペルフルオロアルキルもとのおかげで、その錯体さくたいはDPM錯体さくたいよりもルイス酸性さんせいたかい。

ルイスさん

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Eu(fod)3は、立体りったい選択せんたくてきディールス・アルダー反応はんのうアルドール付加ふか反応はんのうふく有機ゆうき合成ごうせいにおいてルイスさん触媒しょくばいとしてはたらく。たとえば、Eu(fod)3置換ちかんジエン芳香ほうこうぞくおよび脂肪しぼうぞくアルデヒドとのたまきちぢみあい触媒しょくばいし、endo付加ふかたいたいするたか選択せんたくせいジヒドロピランられる[3]

出典しゅってん

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  1. ^ C. C. Hinckley (1969). “Paramagnetic Shifts in Solutions of Cholesterol and the Dipyridine Adduct of Trisdipivalomethanatoeuropium(III). A Shift Reagent”. J. Am. Chem. Soc. 91: 5160–5162. doi:10.1021/ja01046a038. 
  2. ^ Sanders, Jeremy K. M.; Williams, Dudley H. (1972). “Shift Reagents in NMR Spectroscopy”. Nature 240 (5381): 385–390. doi:10.1038/240385a0. 
  3. ^ Wenzel, T.J.; Ciak, J.M. (2004). “Europium, tris(6,6,7,7,8,8,8-heptafluoro-2,2-dimethyl-3,5-octanedianato)”. Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis. John Wiley & Sons, Ltd.. doi:10.1002/047084289X.rn00449 

関連かんれん項目こうもく

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