ファック

ファック（英語えいご: fuck）とは、「誰だれかと性行為せいこういに及およぶ」「物事ものごとをダメにする」「破滅はめつさせる」を意味いみする英語えいご表現ひょうげんの一種いっしゅ。

概要がいよう

基本きほん的てきなニュアンスは「『性行為せいこうい』及および『性行為せいこういに及およぶ』」であり、そこから転てんじて「人ひとを不当ふとうに扱あつかう」「人ひとを傷付きずつける」「人ひとを酷ひどく酔よわせる」「干渉かんしょうする、妨害ぼうがいする、余計よけいな首くびを突つっ込こむ」、「物事ものごとをめちゃくちゃにする、ダメにする、台無だいなしにする、失敗しっぱいに終おわらせる」、「性行為せいこういの相手あいて」を意味いみする。

日本にっぽんの国語こくご辞典じてんには、「性交せいこう」、「情交じょうこう」を意味いみする言葉ことばとして掲載けいさいされることが多おおい。

この単語たんごは英語えいごの中なかでもひときわ下品げひんであり、印刷物いんさつぶつに登場とうじょうする機会きかいは長ながきに亘わたって滅多めったに見みられなかった。下品げひんで攻撃こうげき的てきなニュアンスを含ふくみ、この言葉ことばの使用しようが歓迎かんげいされる状況じょうきょう自体じたいが少すくない。

この言葉ことばそのものがタブーに近ちかい存在そんざいであるが、それでも古ふるくから使つかわれ続つづけてきた。

語源ごげん

少すくなくとも15世紀せいきからこの言葉ことばは使つかわれている。オックスフォード英えい英えい辞典じてんで最初さいしょにこの言葉ことばが言及げんきゅうされたのは1503年ねんのことである。「中期ちゅうきオランダ語ごの『Fokken』（「前方ぜんぽうに強つよく押おす、交尾こうびする」）、ノルウェー語ごの方言ほうげんの1つ、『Fukka』（「交尾こうびする」）、スウェーデン語ごの方言ほうげんの1つ、『Focka』（「一いち撃げきを加くわえる、押おす、交尾こうびする」）、および『Fock』（「陰茎いんけい」）、ドイツ語ごの『Ficken』（英語えいごの『fuck』と同おなじ意味いみ）・・・これらのゲルマン語ごと同族どうぞくである」、「16世紀せいき初頭しょとうのゲルマン語ご由来ゆらいの言葉ことばで、スウェーデン語ごの方言ほうげんの1つ、『Focka』、オランダ語ごの方言ほうげんの1つ、『Fokkelen』（「生殖せいしょく、繁殖はんしょく」）まで遡さかのぼり、『拳こぶし』を意味いみするラテン語らてんご『Pugnus』に内包ないほうされる言葉ことばであり、恐おそらくは、『strike』（「一いち撃げきを与あたえる」）を意味いみするインド・ヨーロッパ語族ごぞく(Indo-European)を祖そとする言葉ことばであろう」と見みられている。

用法ようほう

罵倒ばとう・拒絶きょぜつ

人ひとに向むけてこの単語たんごが使つかわれた場合ばあい、極きわめて攻撃こうげき的てきな罵倒ばとう表現ひょうげんとなる。「Fuck off!」で「とっとと失うせろ！」、「what a dumb fuck」 は「大だいマヌケ野郎やろう」で、「頭あたまが悪わるい」を意味いみする形容詞けいようし「dumb」を強調きょうちょうした表現ひょうげんである。「Don't fuck with me.」は、「俺おれをなめんなよ」「ふざけた真似まねするんじゃないぞ」というニュアンスになる。

アーノルド・シュワルツェネッガーは、自身じしんが出演しゅつえんしたアメリカ映画えいがの中なかで、（台本だいほんの都合つごう上じょう）しばしば 「Fuck you」（「くたばれ」「殺ころすぞ」）や、「Fuck you, （ you ）fucking Asshole」（くたばりやがれ、クソ野郎やろう）といった下品げひんな言葉ことばを使つかっている（「asshole」は日本語にほんごの「ケツの穴あな」に近ちかい語感ごかんで、下品げひんな単語たんごの1つ。人ひとに対たいして使つかうと「嫌いやな奴やつ」「ろくでなし」「むかつく奴やつ」「大だいバカ野郎やろう」いうニュアンスになる）。「Fuck you!」は、その相手あいてと「二度にどと関かかわりたくない」際さいに投なげかける極きわめて下品げひんな罵倒ばとう表現ひょうげんであり、日本語にほんごにちょうど当あてはまる訳語やくごは存在そんざいしないのだが、「死しね」「殺ころすぞ」「今いますぐに俺おれの前まえから消きえ失うせろ」といったニュアンスとなる。このい回いまわしのニュアンス自体じたいは、前述ぜんじゅつした忌避きひの表現ひょうげんである「Fuck off」 （「（自慰じいでもして）さっさと消きえろ！」）に近ちかいが、これにさらに強烈きょうれつな怒いかりを込こめたい回いまわしである。

また、他者たしゃや社会しゃかい一般いっぱんの幸福こうふくに対たいする冷淡れいたんさの感情かんじょうを表現ひょうげんするときや、要求ようきゅうを強つよく拒絶きょぜつしたり、何なにかに失敗しっぱいしたり、突然とつぜん嫌いやな思おもいを味あじわったり、怒いかりの感情かんじょうが湧わいてきた際さいにも咄嗟とっさに出でる単語たんごであり、その際さいには「Fuck!」（「クソが！」「畜生ちくしょう！」）といったニュアンスである。「Fuck! The car won't start!」（「くそ! 車くるまが動うごかねぇ!」）は、自動車じどうしゃのエンジンがかからないことに対たいして怒いかりや苛立いらだちを込こめた表現ひょうげんである。

「糞くそ」「排泄はいせつ物ぶつ」を意味いみする「Shit」や、罵倒ばとう表現ひょうげんの一ひとつである「Damn it!」を、その場ばで強つよい調子ちょうしで吐はき捨すてるように発はっしても、ほぼ同おなじニュアンスとなる。

強調きょうちょう

一方いっぽうで、英文えいぶん法ほうの視点してんから見みると、名詞めいし、動詞どうし、形容詞けいようし、副詞ふくし、代名詞だいめいし、間投詞かんとうしなどあらゆる文脈ぶんみゃくで利用りようできる単語たんごであり、必かならずしも否定ひてい的てきな意味いみで使つかわれるとは限かぎらない。「Fucking good」は 「Very good」 の粗雑そざつない方いかたである。「What are you doing in my room?」は、通常つうじょうは「私わたしの部屋へやで何なにをしているのですか？」になるが、「what」と「are」の間あいだに「the fuck」（「the」を必かならずつける）を配置はいちすることで、「What the fuck are you doing in my room!?」（「てめぇ、俺おれの部屋へやで何なにしてやがんだ!?」）という強調きょうちょうの仕方しかたが可能かのうである。文章ぶんしょう内ないの適切てきせつな位置いちにこの単語たんごを配置はいちすることにより、元もとの意味いみをより強調きょうちょうした表現ひょうげんが可能かのう。「Shut up」は、通常つうじょうは「黙だまれ」であるが、 「Shut the fuck up」と、「shut」と「up」の間あいだに「the fuck」を挿入そうにゅうすることで、「黙だんまりやがれ」という強調きょうちょう表現ひょうげんになる。

「the fuck」だけではなく、「fucking」も使用しよう可能かのう。この単語たんごも強調きょうちょう表現ひょうげんの一種いっしゅであり、「Fuck the fucking fuckers.」（「そんなアホ共どもほっとけ」）、「un-fucking-believable」（「絶対ぜったいに信しんじられない」）となる。「unbelievable」だけでも「信しんじられない」の意味いみになるが、これの前まえに「fucking」を挿入そうにゅうすることで、意味いみをより強調きょうちょうできる。

「Are you kidding me?」は、相手あいての発言はつげんに対たいして「冗談じょうだんでしょう？」「私わたしをからかっているのですか？」というちょっとした驚おどろきの気持きもちが込こめられた表現ひょうげんだが、「fucking」を挿入そうにゅうすることで、「Are you fucking kidding me?」というい回いまわしも可能かのう。この場合ばあい、「マジで？」「おいおい、冗談じょうだんだろ？」「おい、からかってんのか？」という強調きょうちょう表現ひょうげんとなる。

相手あいてからの質問しつもんやい分いぶんを否定ひていしたり拒否きょひしたりする際さいに「No」（「いいえ」「違ちがいます」「嫌いやだ」「断ことわる」「ダメだ」）を使つかう際さいにもこの間投詞かんとうしを挿入そうにゅうして「Fucking no!」とすることで、「ねぇよ」「違たがえぇよ！」「嫌いやだね！」「できやしねぇ！」といった強調きょうちょう表現ひょうげんが可能かのう。

「Fucking great!」 は声こえのトーンによって「こりゃすげえや！」というニュアンスになる。挨拶あいさつの際さいに「Fucking」を挿入そうにゅうすることで、「Fucking hello!」 （「よぉ！」）という使つかい方かたも可能かのう。ひどく驚おどろいた際さいに思おもわず出でる表現ひょうげんの一種いっしゅとしては、「What the fuck!（WTF）」「Oh, my fucking god!（OMFG）」で、「どうなってやがる」「何なにてこった！」というニュアンスになる。これらはインターネットやオンラインゲームコミュニティで、しばしば単語たんごの頭文字かしらもじだけで表記ひょうきされる。

規制きせい

英語えいご圏けんの大衆たいしゅう文化ぶんかの中なかで 「fuck」 が広ひろまる一方いっぽうで、この単語たんごに対たいする規制きせいは厳きびしくなった。2000年ねんにフランスで公開こうかいされた暴力ぼうりょく映画えいが『ベーゼ・モア』が、2002年ねんにアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくで公開こうかいされた際さい、そのタイトルは「Kiss me and Rape Me」に変更へんこうされて上映じょうえいされた。フランス語ふらんすごの「Baise moi」を英語えいごに直訳ちょくやくすると「Fuck me」となるためである。これと似にた出来事できごとは、スウェーデンの映画えいが『ショー・ミー・ラヴ』でも起おこった（原題げんだいは 「スウェーデン語ご: Fucking Åmål」）。楽曲がっきょくにおいても、ブリトニー・スピアーズが歌うたうシングル「If U Seek Amy」は、その曲名きょくめいの発音はつおんが 「F-U-C-K-me」 とも聞きこえることから騒動そうどうになり、ラジオ放送ほうそうを自主じしゅ規制きせいする動うごきが出でたことがある。

こういった規制きせいにより、「fuck」以外いがいの下品げひんな響ひびきを持もつ単語たんごに対たいする規制きせいは、相対そうたい的てきに緩ゆるむことになった。

シュワルツェネッガーがカリフォルニア州しゅう知事ちじ選挙せんきょに出馬しゅつばした際さい、「教育きょういく上じょう良よくない映画えいがに出でている人物じんぶつが知事ちじという立場たちばに立たってもいいのか？」とメディアから言いわれ、選挙せんきょで苦戦くせんした話はなしがある。2009年ねんに同どう州しゅうの議会ぎかいが議決ぎけつした財政ざいせい改革かいかく法案ほうあんに対たいして、シュワルツェネッガーが拒否きょひ権けんを発動はつどうした時ときにしたためた公文書こうぶんしょがあり、それに記述きじゅつされた8行ぎょうある文章ぶんしょうの頭文字かしらもじを縦たて読よみすると、「I fuck you」（「ぶっ殺ころすぞ」）となることが話題わだいとなった。議会ぎかいは、シュワルツェネッガーが掲かかげた水道すいどう問題もんだい、保健ほけん行政ぎょうせいへの取とり組くみを完全かんぜんに無視むしする形かたちで今回こんかいの財政ざいせい改革かいかく法案ほうあんを可決かけつしたため、シュワルツェネッガーがこの隠喩いんゆを使つかうことでカリフォルニア州しゅう議会ぎかいに対たいする怒いかりを示しめしたのではないか、とされたためである。

婉曲えんきょく語法ごほう

この単語たんごを直接ちょくせつ扱あつかうことが不適切ふてきせつであると思おもわれる状況じょうきょうでは、「fuck」という単語たんごを 「feck, fvck, fudge, the f-word, the f-bomb, frig, freak, fork, fook, fizzuck, frak, frick, frickin, friggin, f*ck, f**k, f-u, fuk, fahq, fcuk, the hacker, phuck, punk, funk, f***, ****, f'k, f'n, ffffff 」といった具合ぐあいに、スペルを変かえたり、全まったく別べつの単語たんごに置おき換かえることで、間接かんせつ的てきにこの単語たんごの意味いみを伝つたえるのに一役ひとやく買かっている。「fsck, fuk, fark, f2k」などの表記ひょうきも見みられる。西にしインド諸島しょとう（旧きゅう・英えい領りょうカリブ）諸国しょこくでは、fock と綴つづられることがある。fark はイギリス連邦れんぽうに加盟かめいしている国々くにぐにでしばしば見みられる婉曲えんきょく語法ごほうであり、オーストラリア英語えいごにおけるアクセントを誇張こちょうした発音はつおんに由来ゆらいする。イギリスのファッションブランド「フレンチ・コネクション」は、話題わだいを呼よぶために 「French Connection United Kingdom」 の略記りゃっきであるとして小文字こもじのイニシャル 「fcuk」の表記ひょうきを使用しようしている。アイルランドのホームコメディ ファーザー・テッド では、「fuck」は「feck」 とい換いかえられた。

似にた現象げんしょうで、「糞くそ」「排泄はいせつ物ぶつ」を意味いみする単語たんご「shit」は「shoot」に置おき換かえられることがある（英語えいご圏けんにおいては、「fuck」と同様どうように「shit」という単語たんごそのものが下品げひんな響ひびきを持もつため）。これらの単語たんごやスペルのい換いかえは、いずれも、「地獄じごく」を意味いみする単語たんご「hell」を「heck」とい換いかえて使つかう現象げんしょうと同おなじである。

2019年ねんに、CNNが「Fワード」と表現ひょうげんしたことがある。

派生はせい的てき意味いみ

他たの低俗ていぞくな単語たんごと同様どうように、禁句きんくや強つよし意い語ごの一種いっしゅとして用もちいられるが、その際さいに本来ほんらいの意味いみである「性交せいこうする」のニュアンスで用もちいられることはほぼ無ない。既すんで述じゅつのとおり、相手あいてに対たいする罵倒ばとう表現ひょうげんや、話はなし手ての主観しゅかん的てき感情かんじょうを強つよめるための強調きょうちょう表現ひょうげんとして用もちいることが多おおい。書籍しょせき『Practical English Usage』では、以下いかの二に通とおりの文章ぶんしょうが例れいに挙あげられている。

1. Why are you fucking in my bed?
2. What the fuck are you doing in my bed!?

1. は、「なんで俺おれのベッドの中なかでセックスしてんだ？」、2. は、「てめえ、一体全体いったいぜんたい俺おれのベッドの中なかで何なにしてやがんだ！？」というニュアンスになる。だが、1. の意味いみで「fuck」を用もちいる使つかい方かたはほぼ皆無かいむである。間投詞かんとうしとして用もちいる「the fuck」「fucking」には、いずれも「性交せいこうする」の意味いみは無なく、自分じぶんが言いわんとしていることを強調きょうちょうしているだけである。

「Fuck me!」、「Well, I'll be fucked!」といったい回いまわしがある。これらも罵倒ばとう表現ひょうげんではなく、「自分じぶんが何なにか失敗しっぱいをやらかした際さいに、自分じぶん自身じしんに対たいする後悔こうかいや失意しついの念ねんが込こめられた『俺おれは何なにやってんだ・・・』」というニュアンスである。「Well, fuck me stupid!」 は、「なんと愚おろかな」「なんてことをしてくれたんだ」「あのバカ……」のように、驚愕きょうがく・呆あきれ・失望しつぼうの感情かんじょうを表あらわす表現ひょうげんである。

「God」（「神かみ」） という単語たんごを「fuck」に置おき換かえる表現ひょうげんがある。「for fuck's sake」 は、「for God's sake」をい換いかえた、強調きょうちょう表現ひょうげんである。「頼たのむから、お願ねがいだから～してくれ」という懇願こんがんの表現ひょうげんであり、他ほかにも「なんてこったい」「やってられっか」といった、焦あせり、苛立いらだち、怒いかりの感情かんじょうが込こめられている。「Who the fuck knows」 は、「神かみのみぞ知しる」「誰だれにも分わからない」を意味いみするい回いまわし「God knows」 の「God」を「Who the fuck」に置おき換かえた強調きょうちょう表現ひょうげんであり、「知しるかよ」「んなもん、誰だれが知しってるってんだ？」というニュアンスとなる。

関連かんれん項目こうもく

• ファックサイン
• フッキング - オーストリアにある地名ちめいの1つ。綴つづりが「ファック」を動どう名詞めいし化かしたもの（「fucking」）と同おなじであることから、珍ちん地名ちめいの1つと見みなされている。
• FUCK (映画えいが) - この単語たんごに関かんするドキュメンタリー映画えいが。
• 草くさ泥どろ馬ば - 中国ちゅうごく語ご圏けんにおける「fuck」に相当そうとうする隠語いんご。
• 18 - 韓国かんこくでは時ときに「fuck」に相当そうとうする表現ひょうげんとのダブルミーニングとなる。
• 最もっとも多おおくFUCKという言葉ことばが使つかわれた映画えいが一覧いちらん

外部がいぶリンク

• ウィクショナリーには、fuckの項目こうもくがあります。
• ウィキメディア・コモンズには、ファックに関かんするカテゴリがあります。