QIP

QIP（キューアイピー、正式せいしき名称めいしょうQuality Improvement Paradigm）は、組織そしきにおけるソフトウェア品質ひんしつ改善かいぜんのための枠組わくぐみである。メリーランド大学だいがくのビクター・バシリ教授きょうじゅによって作つくられた。

ソフトウェアプロジェクトで計測けいそくしたデータをうまく蓄積ちくせきして活用かつようすることは重要じゅうようである。QIPではこれを知識ちしき形成けいせいと再さい利用りようの課題かだいと捉とらえる。個別こべつのプロジェクトで得えられた経験けいけんや知見ちけんが組織そしきや対象たいしょうドメインで広ひろく役立やくだつ可能かのう性せいがあっても、役立やくだてることができないまま失うしなわれることはしばしば発生はっせいしている。(ここでいう再さい利用りようとは、例たとえばコードの再さい利用りようのようなものだけでなく、あらゆる種類しゅるいの経験けいけんや知見ちけんの体系たいけい的てきな再さい利用りようを含ふくんでいる。)

QIPでは、プロジェクトレベルの学習がくしゅうと組織そしきレベルの学習がくしゅうを明確めいかくに区別くべつした上うえで、それぞれを構成こうせいするステップと両者りょうしゃの関係かんけいを定義ていぎしたものである。バシリ教授きょうじゅはQIPの構成こうせいを大小だいしょうの2つの環たまきからなる図ずで説明せつめいしている。それぞれの環たまきは知識ちしき形成けいせいが反復はんぷく的てきなプロセスであることを表あらわしており、プロジェクトレベルの大おおきな環たまきの一部いちぶとしてプロジェクトレベルの小ちいさな環たまきが回まわることを意味いみしている。

組織そしきレベルの学習がくしゅうの環たまきは以下いかのステップで構成こうせいされる。

1. 特徴とくちょうづけ: プロジェクトが実行じっこうされるコンテキスト(人ひと、リソース、プロセス、プロダクト面めんからの要因よういんを含ふくむ)を明あきらかにしモデル化かする
2. ゴール設定せってい: GQMなどを用もちいて計測けいそく可能かのうなゴールを定義ていぎする
3. プロセス選択せんたく: 使用しようするプロセスモデルを選択せんたく・調整ちょうせいし、必要ひつような準備じゅんび(トレーニング等とう)を行おこなう
4. プロセス実行じっこう: プロジェクトの実施じっし。ここでプロジェクトレベルの環たまきが実行じっこうされる
5. データ解析かいせき: プロジェクト完了かんりょう後ごにデータを解析かいせきし、ゴールに基もとづいて知見ちけんを得える
6. パッケージング・蓄積ちくせき: 得えられた知見ちけんを再さい利用りよう可能かのうな形かたちに加工かこうし蓄積ちくせきする

プロジェクトレベルの学習がくしゅうの環たまきは以下いかのステップで構成こうせいされる。

1. プロセス実行じっこう: プロジェクトの実行じっこう
2. データ解析かいせき: プロジェクト実行じっこう中ちゅうにデータを解析かいせきし、プロセスやデータ収集しゅうしゅうがうまくいっているか確認かくにんする
3. フィードバック: 適切てきせつなフィードバックを行おこないプロセスやデータ収集しゅうしゅうを調整ちょうせいする

なお、パッケージングのステップでは、知見ちけんや経験けいけんをそれが得えられたコンテキストを含ふくめて記録きろくすることが重要じゅうよう不可欠ふかけつである。ソフトウェアプロジェクトで有用ゆうような経験けいけんや知見ちけんは、自然しぜん法則ほうそくのようなものとは異ことなり常つねに成なり立たつものとは限かぎらないため、組織そしきレベルの反復はんぷくの中なかで個々ここの知識ちしきが適用てきよう可能かのうな条件じょうけんや例外れいがいをコンテキストの情報じょうほうを使つかって明あきらかにしていくことになる。このようなプロセスを効果こうか的てきに実施じっしするために、経験けいけんファクトリーなどを活用かつようした組織そしき体制たいせいづくりが望のぞましいとされる。