鶯うぐいす

鶯うぐいす（うぐいす）に関かんする引用いんようと諺ことわざ。

随筆ずいひつ

『枕草子まくらのそうし』

鶯うぐいすは、詩しなどにもめでたきものに作つくり、声こえよりはじめて、さまかたちも、さばかりあてにうつくしきほどよりは、九重ここのえの内うちに鳴なかぬぞ、いとわろき。人ひとの、　「さなむある」といひしを、「さしもあらじ」と思おもひしに、十じゅう年ねんばかりさぶらひてききしに、まことに、さらに音おとせざりき。さるは。竹たけ近ちかき紅梅こうばいも、いとよく通つうひぬべきたよりなりかし。まかでて聞きけば、あやしき家いえの見所みどころもなき梅うめの木きなどには、かしがましきまでぞ鳴なく。夜よる鳴なかぬも、寝ねぎたなきここちすれども、今いまはいかがせむ。--清少納言せいしょうなごん三さん巻かん本ほん系けい

和歌わか

『拾遺しゅうい和歌集わかしゅう』

• 勅みことのりなればいともかしこしうぐひすの宿やどはととはばいかがこたへん　--よみ人じん知しらず

古今ここん集しゅう

仮名かめい序じょ

花はなになくうぐひす 水みずにすむかはづのこゑをきけばいきとしいけるものいづれかうたをよまざりける--紀貫之きのつらゆき

巻一けんいち

4) 雪ゆきの内うちに　春はるはきにけり　うぐひすの　こほれる涙なみだ　今いまやとくらむ

5) 梅うめが枝えに　きゐるうぐひす　春はるかけて　鳴なけども今いまだ　雪ゆきは降おりつつ

6) 春はるたてば　花はなとや見みらむ　白しろ雪ゆきの　かかれる枝えだに　うぐひすの鳴なく

10) 春はるやとき　花はなやおそきと　聞ききわかむ　うぐひすだにも　鳴なかずもあるかな

11) 春しゅんきぬと　人ひとは言げんへども　うぐひすの　鳴なかぬかぎりは　あらじとぞ思おもふ

13) 花はなの香こうを　風ふうのたよりに　たぐへてぞ　うぐひすさそふ　しるべにはやる

14) うぐひすの　谷たによりいづる　声こえなくは　春はるくることを　誰だれか知しらまし

15) 春はるたてど　花はなも匂においはぬ　山里やまざとは　ものうかるねに　うぐひすぞ鳴なく

16) 野辺のべ近ちかく　いへゐしせれば　うぐひすの　鳴なくなる声こえは　朝あさな朝あさな聞きく

32) 折おりつれば　袖そでこそ匂においへ　梅うめの花はな　ありとやここに　うぐひすの鳴なく

36) うぐひすの　笠かさにぬふてふ　梅うめの花はな　折おりてかざさむ　老おいかくるやと

巻まき二に

100) 待まつ人ひとも　来こぬものゆゑに　うぐひすの　鳴なきつる花はなを　折おりてけるかな

105) うぐひすの　鳴なく野辺のべごとに　来きて見みれば　うつろふ花はなに　風ふうぞ吹ふきける

106) 吹ふく風かぜを　鳴なきてうらみよ　うぐひすは　我がやは花はなに　手てだにふれたる

107) 散ちる花はなの　なくにしとまる　ものならば　我わがうぐひすに　おとらましやは

108) 花はなの散ちる　ことやわびしき　春霞はるがすみ　たつたの山やまの　うぐひすの声ごえ

110) しるしなき　音おとをも鳴なくかな　うぐひすの　今年ことしのみ散ちる　花はなならなくに

128) 鳴なきとむる　花はなしなければ　うぐひすも　はてはものうく　なりぬべらなり

131) 声こえ絶たえず　鳴なけやうぐひす　ひととせに　ふたたびとだに　来きべき春はるかは