玉椿たまつばき

地歌じうた。作曲さっきょくは、峰みね崎さき勾当こうとう。

見みる度ど（たび）に飽（あ）かぬ色いろなり足あし曳（あしびき）の、かた山やま椿つばき（やまつばき）今いまぞ咲さく。花はなに心しんを越えつの雪ゆき、その初はつ嵐あらし（はつあらし）明あきら（あ）かしけん、まだ青柳あおやぎ（あをやぎ）のいとしほらしき玉水たまみず（たまみづ）の、咲さきぶりもよき都みやこ紅くれない（みやこべに）。文ぶん（ふみ）から糸いとの厳島いつくしま（いつくしま）。互（たがひ）に峰みねの雪ゆき解とけて、千歳ちとせ（ちとせ）をちぎる鹿しか（しか）の松まつ、道みち冴さえ（さ）えわたる照明しょうめい（せうみやう）の月つき。常磐ときわ山さん、八やっつ穂ほ（ほ）の峰みねの玉椿たまつばき。色いろも変かわらで幾代いくよ経けいぬらん。

• 底本ていほん: 今井いまい通どおり郎ろう『生田いくた山田やまだ両りょう流りゅう 箏そう唄うた全ぜん解かい』中ちゅう、武蔵野むさしの書院しょいん、1975年ねん。