元げん史ふみ/卷まき161

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元もと史し卷まき一いち百ひゃく六ろく十じゅう一いち 列傳れつでん第だい四よん十じゅう八はち

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楊大淵ふち　劉りゅう整せい

楊大淵ふち〈文ぶん安やす附ふ〉

楊大淵ふち，天水てんすい人じん也。與あずか兄あに大全たいぜん、弟おとうと大だい楫かじ，皆みな仕つかまつ宋そう。大淵おおふち總そう兵へい守もり閬州。歲とし戊つちのえ午うま，憲けん宗むね兵へい至いたり閬州之の大だい獲え城じょう，遣や宋そう降くだ臣しん王おう仲なか入にゅう招大淵ふち，大淵おおふち殺ころせ之これ。憲けん宗むね怒いか，督とく諸しょ軍ぐん力りょく攻おさむ，大淵おおふち懼，遂とげ以城降くだ。憲けん宗そう命いのち誅之，汪ひろし田た哥諫止どめ，乃免。命いのち以其兵へい從したがえ，招降蓬ほおけ、廣安ひろやす諸もろ郡ぐん，進攻しんこう釣魚ちょうぎょ山やま。擢大楫かじ為ため管かん軍ぐん總そう管かん，從したがえ諸しょ王おう攻おさむ禮れい義ぎ城じょう。己おのれ未み冬ふゆ，拜はい大淵おおふち侍さむらい郎ろう、都みやこ行こう省しょう，悉以閫外之の寄よせ委い之の。

世よ祖そ中ちゅう統すべ元年がんねん，詔みことのり諭さとし大淵おおふち曰：「尚なお厲忠貞之さだゆき節ぶし，共きょう成康なりやす乂之功こう。」大淵おおふち拜命はいめい踴躍，即そく遣や兵へい進攻しんこう禮れい義ぎ城じょう，掠かすめ其饋運うん，獲え總そう管かん黃き文才ぶんさい、路みち鈐、高こう坦ひろし之の以歸。二に年ねん秋あき，調しらべ兵へい出で通とおり川がわ，與あずか宋そう將すすむ鮮恭戰せん，獲え統制とうせい白しろ繼つぎ源げん。秦しん蜀しょく行ゆき省しょう以大淵ふち及青居い山さん征せい南都なんと元帥げんすい欽察麾下きか將校しょうこう六ろく十じゅう三さん人にん有功ゆうこう，言げん于朝。詔みことのり給きゅう虎とら符ふ一いち、金きむ符ふ五ご、銀ぎん符ふ五ご十じゅう七なな，令れい論功ろんこう定じょう官かん，以名聞みょうもん。三さん年ねん春はる，世せい祖そ命いのち出で開ひらけ、達いたる，與あずか宋そう兵へい戰せん于平田ひらた，復ふく戰せん于巴渠みぞ，擒とりこ其知軍ぐん范燮、統制とうせい魏ぎ興きょう、路みち分ぶん黃き迪すすむ、節ふし幹みき陳ひね子こ潤じゅん等とう。

先さき是ぜ，大淵おおふち建言けんげん，謂いい取と吳くれ必先取せんしゅ蜀しょく，取と蜀しょく必先據よりどころ夔，乃遣其姪文ぶん安あん攻おさむ宋そう巴ともみ渠みぞ。至いたり萬まん安やす寨，守將しゅしょう盧の埴はに降くだ。復ふく使し文ぶん安やす相しょう夔、達いたる要衝ようしょう，城しろ蟠わだかま龍山たつやま。山やま四よん面めん巖いわお阻，可か以進攻しんこう退すさ守もり，城じょう未み畢，宋そう夔路提ひさげ刑けい鄭てい子こ發はつ曰：「蟠わだかま龍りゅう，夔之咽喉いんこう，使つかい敵てき得とく據よりどころ之の，則のり夔難守もり矣，此必爭そう之の地ち也。」遂とげ率りつ兵へい來らい爭そう。文ぶん安やす悉力備禦，大淵おおふち聞有宋そう兵へい，即そく遣や姪めい安やす撫なで使し文ぶん仲なか將兵しょうへい往援。宋そう兵へい宵よい遁，追つい敗はい之の。秋あき七なな月がつ，詔みことのり以大淵ふち麾下きか將士しょうし有功ゆうこう，賜金しきん符ふ十じゅう、銀ぎん符ふ十じゅう九きゅう，別べつ給きゅう海うみ青あお符ふ二に，俾事亟則馳はせ以聞，其後賞しょう合ごう州しゅう之の功こう，復ふく賜たまもの白金はっきん五ご十じゅう兩りょう。大淵おおふち欲よく於利州しゅう大安だいあん軍ぐん以鹽易えき軍ぐん糧かて，請于朝あさ，從したがえ之これ。

冬ふゆ，大淵おおふち入にゅう覲，拜はい東川ひがしがわ都と元帥げんすい，俾與征せい南都なんと元帥げんすい欽察同署どうしょ事ごと。大淵おおふち還かえ，復ふく於渠江こう濱はま築ちく虎とら嘯城，以逼宋そう大良だいら城じょう，不ふ踰時而就。四よん年ねん，宋そう賈似道どう遣や楊琳齎空名めい告つげ身み及蠟書しょ、金きむ幣ぬさ，誘さそえ大淵おおふち南みなみ歸き。文ぶん安やす擒とりこ之の以聞，詔みことのり誅琳。五月ごがつ，世せい祖そ以大淵ふち及張大だい悅えつ復ふく神山かみやま功いさお，詔みことのり奬すすむ諭さとし，仍賜蒙こうむ古こ、漢かん軍ぐん鈔百ひゃく錠じょう。

至いたり元もと元年がんねん，大淵おおふち進すすむ花はな羅ら、紅べに邊べ絹きぬ各かく百ひゃく五ご十じゅう段だん。詔みことのり曰：「所ところ貢みつぐ幣帛へいはく，已やめ見み忠勤ちゅうきん，卿きょう守もり邊べ陲，宜むべ加か優ゆう恤。今後こんご以此自給じきゅう，俟有旨むね乃進。」既すんで而大淵ふち擅殺其部將はた王おう仲なか，詔みことのり戒敕之の，令れい免めん籍せき仲家なかいえ。冬ふゆ十じゅう月がつ，大淵おおふち諜知宋そう總統そうとう祁昌由よし間道かんどう運うん糧かて入にゅう得とく漢かん城じょう，^[1]并欲遷其郡ぐん守もり向むかい良りょう及官吏親屬ぞく於內地ち，乃自率りつ軍ぐん掩襲，遇ぐう之の于椒坪つぼ，連戰れんせん三さん日にち，擒とりこ祁昌、向むかい良りょう等とう，俘獲輜重しちょう以數千せん計けい。明日あした，宋そう都みやこ統みつる張ちょう思おもえ廣こう引兵來援らいえん，復ふく大破たいは之の，擒とりこ其將盛もり總そう管かん及祁昌之まさゆき弟おとうと。二に年ねん，大淵おおふち遣や文ぶん安やす，以向良りょう等とう家人かじん，往招得とく漢かん城じょう，未み下した。四よん月がつ，大淵おおふち以疾卒そつ。八はち年ねん，追つい封ふう大淵おおふち閬中郡ぐん公こう，諡おくりな肅翼。

子こ文ぶん粲つばら，襲かさね為ため閬蓬廣安ひろやす順慶じゅんけい夔府等とう路ろ都と元帥げんすい。兄子せこ文ぶん安やす。

文ぶん安やす字じ泰たい叔，父ちち大全たいぜん，仕つかまつ宋そう守まもる敍じょ州しゅう。壬みずのえ寅とら，國くに兵へい入いれ蜀しょく，大全たいぜん戰死せんし，贈おく武節ぶせつ大夫たいふ、眉まゆ州しゅう防禦ぼうぎょ使し，諡おくりな愍忠，官かん其長子ちょうし文ぶん仲なか。文ぶん安方やすかた二に歲さい，母はは劉りゅう氏し鞠きく之の，依よ叔父おじ大淵おおふち于閬州しゅう。戊つちのえ午うま，憲けん宗そう以兵攻おさむ大だい獲え，大淵おおふち以郡降くだ，授侍郎ろう、都みやこ行こう省しょう，文ぶん仲なか亦また授安撫なで使し。

中なか統みつる元年がんねん，授文安やす監かん軍ぐん。攻おさむ禮れい義ぎ城じょう，殺傷さっしょう甚眾，奪だつ其糧船せん，繞にょう出で通とおり川がわ，獲え宋そう將すすむ黃き文才ぶんさい、高こう坦ひろし之これ。二に年ねん，復ふく出で通とおり川がわ，與あずか宋そう將すすむ鮮恭大戰たいせん，擒とりこ統制とうせい白しろ繼つぎ源げん。三さん年ねん，出で開ひらけ、達いたる，戰せん屢勝，擒とりこ知ち軍ぐん范燮、統制とうせい魏ぎ興きょう、黃き迪すすむ、陳ひね子こ閏うるう等とう。^[2]授文安やす開ひらき達たち忠ちゅう萬梁山等處招討使。軍ぐん於巴渠みぞ，萬安寨主盧植降。^[3]遂とげ築ちく蟠わだかま龍りゅう城じょう，以據夔、達いたる要路ようろ。宋そう兵へい來らい爭そう，相そう持もち半月はんつき，文ぶん仲なか以兵來援らいえん，宋そう兵へい宵よい遁，文ぶん安やす追擊ついげき，大敗たいはい之の。四よん年ねん，佩銀符ふ，陞千せん戶こ，監かん軍ぐん如故，進しん築ちく虎とら嘯城，以困大良だいら。

至いたり元もと元年がんねん，宋そう都みやこ統みつる張ちょう喜き引兵攻おさむ蟠わだかま龍りゅう，大戰たいせん，敗はい之の，喜き潛せん師し宵よい遁，出で得え漢かん城じょう，文ぶん安やす遣や兵へい追つい襲かさね，又また敗はい之の，擒とりこ裨將陳ちん亮あきら。復ふく築きずけ方かた斗と城じょう，為ため蟠わだかま龍りゅう聲援せいえん，令れい裨將高だか先さき守之もりゆき。宋そう兵へい攻おさむ潼川，行ぎょう省しょう命いのち文ぶん安やす赴援，敗はい宋そう師し于射洪ひろし之の納おさめ垻，斬き獲え甚眾。宋そう都みやこ統みつる祁昌以重兵へい運うん糧かて餉得漢かん，且遷其官屬ぞく於內地ち，大淵おおふち命いのち文ぶん安やす先さき邀之，昌あきら立たて柵しがらみ椒はじかみ原げん以守，合ごう兵へい攻おさむ之の，連戰れんせん三さん日にち，獲え祁昌，俘得漢かん守もり臣しん向こう良家りょうけ屬ぞく，以招良りょう，良りょう以城降くだ，以所俘獻闕下。

二に年ねん，改あらため授金符ふ，仍前職しょく，還かえ攻おさむ宋そう開ひらく、達いたる等とう州しゅう，擒とりこ其統制せい張ちょう剛つよし、總そう管かん伏ふく林りん。八はち月がつ，宋そう兵へい由ゆかり開ひらき州しゅう運うん糧かて餉達，文ぶん安やす率りつ奇き兵へい，間道かんどう邀擊ようげき之の，獲え總そう管かん方かた富とみ等とう。行くだり省しょう上じょう其功，命いのち充たかし夔東路ろ征せい行ぎょう元帥げんすい，令れい以前いぜん後ご所しょ俘入見み。詔みことのり賜たまもの黃金おうごん、鞍馬あんば有ゆう差さ。還かえ，攻おさむ奪だつ宋そう金きん州しゅう斷だん虎とら隘，殺ころせ其將梁りょう富とみ，擒とりこ路ろ鈐、趙ちょう貴たか等とう。

三さん年ねん春はる，與あずか千戶李吉等略開州之大通，與あずか宋そう將はた硬かた弓張ゆみはり大戰たいせん，獲え統制とうせい陳ひね德とく等とう。冬ふゆ，總帥そうすい汪ひろし惟おもんみ正ただし遣や其將李り木き波なみ等とう由よし間道かんどう襲かさね開ひらき州しゅう，文ぶん安やす遣や千戶王福引兵助之。福ぶく先登せんとう，破やぶ其城，宋そう將すすむ龐彥海うみ投とう崖がけ死し，擒とりこ副將ふくしょう劉りゅう安あん仁ひとし，留とめ兵へい戍其地ち。宋そう諸しょ路みち兵へい來らい救すくえ，圍かこえ城じょう三さん匝，築ちく壘るい城じょう外がい，文ぶん安やす密みつ遣や人ひと入城にゅうじょう，諭さとし以堅守けんしゅ。四よん年ねん春はる，行ぎょう省しょう命いのち文ぶん安やす往援，即そく率りつ兵へい斷だん其糧道どう，宋そう兵へい戰せん甚力，飛ひ矢中やなか文ぶん安やす面めん，拔矢力戰りきせん，大破たいは之の，殺ころせ其將張ちょう德いさお等とう。二に月がつ，文ぶん安やす以創甚，還かえ蟠わだかま龍りゅう，宋そう兵へい遂とげ復ふく開ひらき州しゅう。文ぶん安やす乃遣總そう把わ馬ば才ざい、楊彪掠かすめ達たち州しゅう盧の灘なだ峽かい，與あずか宋そう兵へい遇ぐう，擒とりこ其將蒲かば德いさお。

五ご年ねん，文ぶん仲なか卒そつ，詔みことのり文ぶん安やす就佩金きん虎とら符ふ，充たかし閬州夔東路ろ安やす撫なで使し軍民ぐんみん元帥げんすい，仍相副ふく都と元帥げんすい府ふ事ごと。閬州累るい遭兵變へん，戶口とぐち凋耗，文ぶん安やす乃教以耕桑くわ，鰥寡不能ふのう自存じそん，願ねがい相しょう配偶はいぐう者しゃ，併為一いち戶こ充たかし役やく，民みん始はじめ復業ふくぎょう。冬ふゆ，遣や千せん戶こ馬ば才ざい、張ちょう琪略達たち州しゅう，擒とりこ宋そう將すすむ范伸、王おう德いさお、解明かいめい等とう。六ろく年ねん，遣や蔡邦光こう、李り吉よし、嵇永興きょう略りゃく達たち州しゅう之の朱しゅ師し鄭てい巿，擒とりこ總そう管かん周しゅう德いさお新しん、裨將王おう遷。秋あき，遣や總そう把わ王おう顯あらわ略りゃく達たち州しゅう之の泥どろ垻，擒とりこ總そう管かん張ちょう威たけし。冬ふゆ，遣や兵へい掠かすめ大だい寧やすし之の曲きょく水すい，擒とりこ副將ふくしょう王仁わに。

七なな年ねん，從したがえ嚴いむ僉省攻おさむ重慶たーちん，大戰たいせん于龍坎，敗はい宋そう兵へい。攻おさむ鏵鐵寨，擒とりこ其將袁宜、何なん世せい賢けん等とう。捷とし聞，詔みことのり賜たまもの白金はっきん、寶たから鈔、幣帛へいはく有ゆう差さ。秋あき，攻おさむ達たち州しゅう之の聖せい耳みみ城じょう，擒とりこ宋そう將すすむ楊普、時とき仲なか，芟其禾而還。又また遣や元帥げんすい蔡邦光こう略りゃく開ひらき州しゅう，擒とりこ宋そう將すすむ陳ちん俊しゅん。冬ふゆ，文ぶん粲つばら入にゅう見み，帝みかど諭さとし之の曰：「汝なんじ兄弟きょうだい宣せん力りょく邊あたり陲，朕ちん所しょ知也ともや。」進しん文ぶん安やす階かい為ため明あかり威い將軍しょうぐん。

八はち年ねん春はる，遣や蔡邦光こう攻おさむ達たち州しゅう，戰せん于聖耳みみ城下じょうか，擒とりこ其將蒲かば桂かつら。又また戰たたかえ開ひらき州しゅう之の沙すな平ひらめ，擒とりこ其將王おう順じゅん。時とき宋そう以朱禩孫帥そち蜀しょく，禩孫，閬人也，數すう遣や間諜かんちょう，動搖どうよう人心じんしん，文ぶん安やす屢獲其諜，閬州竟無虞おそれ。秋あき八はち月がつ，文ぶん安やす會かい東川ひがしがわ統みつる軍ぐん匣くしげ剌攻達たち州しゅう，三さん戰せん三さん捷とし。尋ひろ遣や千戶嵇永興攻開州，戰せん于平𭵶、曲きょく水すい，擒とりこ總そう管かん王道おうどう等とう。軍ぐん還かえ，以所俘入見み，帝みかど深ふか加か奬すすむ諭さとし，擢昭勇いさむ大將軍だいしょうぐん、東ひがし川路かわじ征ただし南みなみ招討使し，賜たまもの金銀きんぎん、寶たから鈔、鞍馬あんば、弓矢ゆみや、幣帛へいはく有ゆう差さ。

九きゅう年ねん秋あき，領りょう軍ぐん出で小しょう寧やすし，措置そち屯田とんでん，遣や韓かん福ぶく攻おさむ達たち州しゅう九きゅう君くん山さん，擒とりこ宋そう將すすむ張ちょう俊しゅん。遣や元帥げんすい蔡邦（兒こ）〔光ひかり〕會かい蓬よもぎ州兵しゅうへい，^[4]邀宋師し于永睦むつみ，戰勝せんしょう之の。復ふく遣や嵇永興きょう、楊彪追つい襲かさね宋そう裨將劉りゅう威たけし等とう，破やぶ聖せい耳みみ外城とじょう，獲え寨主楊桂，縱たて兵へい焚掠而還。九月くがつ，築ちく金かね湯ゆ城じょう，以積屯田とんでん之の糧かて，且以逼宋龍りゅう爪つめ城じょう。慮おもんばか宋そう兵へい必來爭そう，遣や韓かん福ぶく出兵しゅっぺい通どおり川がわ，以牽制けんせい之の，與あずか宋そう兵へい遇ぐう于銼耳みみ山さん，敗はい之の，俘總管かん蔡雲龍りゅう等とう。出だし達たち州しゅう牛うし門もん，斷だん宋そう兵へい回路かいろ，擒とりこ總そう管かん李り佺、李り德いさお。宋そう兵へい輸糧達たち州しゅう，遣や兵へい于盧灘なだ峽かい邀擊ようげき之の，擒とりこ統制とうせい孫まご聰さとし、張ちょう順じゅん等とう。

夏なつ，遣や元帥げんすい李り吉きち略りゃく開ひらき州しゅう，^[5]戰せん于瀉油ゆ坡，擒とりこ其提舉李り貴たか，及石笋たかんな寨主雍德。宋そう兵へい復ふく由よし羅ら頂山いただきやま輸糧開ひらけ、達いたる，遣や蔡邦光こう、李り吉よし伏兵ふくへい遮さえぎ之これ，擒とりこ裨將吳くれ金きん等とう，覆くつがえ其糧船せん。閏うるう（十じゅう）〔六ろく〕月がつ，^[6]蓬よもぎ州兵しゅうへい攻おさむ拔龍爪つめ城じょう，東川ひがしがわ統みつる軍司ぐんじ命いのち文ぶん安やす兼けん領りょう之の。時とき蓬よもぎ州兵しゅうへい已やめ去ざ，宋そう都みやこ統みつる趙ちょう章あきら復ふく來らい據よりどころ之の，且出兵へい迎むかえ敵てき，文ぶん安やす與あずか戰たたかえ，破やぶ之これ，擒とりこ總そう管かん王おう元もと而還。秋あき，宋そう都みやこ統みつる閻國寶こくほう、監かん軍ぐん張ちょう應おう庚かのえ，運うん糧かて于達州しゅう，文ぶん安やす邀之于瀉油ゆ坡，奪だつ其糧，并擒二に將しょう。宋そう開ひらく州しゅう守將しゅしょう鮮汝忠ちゅう邀遮歸路きろ，與あずか戰敗せんぱい之の，獲え總轄そうかつ秦はた興きょう祖そ、譚たん友とも孫まご。

十じゅう一いち年ねん春はる三さん月がつ，文ぶん安やす率りつ軍ぐん屯たむろ小しょう寧やすし，得とく俘者言ごと，鮮汝忠ちゅう等とう將はた取と蟠わだかま龍りゅう之の麥むぎ，即そく遣や千せん戶こ王おう新しん德とく、楊彪等とう散ち掠かすめ宋そう境さかい，文ぶん安やす自じ戍蟠龍りゅう以備之の。李り吉きち略りゃく由よし山やま，戰せん于城下か，擒とりこ其將葉は勝しょう。遣や蔡邦光こう、楊彪掠かすめ竹山たけやま寨，與あずか趙ちょう統制とうせい戰せん，擒とりこ其將鄭てい桂かつら、莊そう俊しゅん。秋あき，與あずか蒙こうむ古こ漢かん軍ぐん萬戶怯必烈等攻宋夔東，拔高陽ひ、夔、巫みこ等とう寨，擒とりこ守將しゅしょう嚴いむ貴たか、竇世忠ちゅう、趙ちょう興きょう，因いん跨またが江こう為ため橋きょう，以斷宋そう兵へい往來おうらい之の路みち，宋そう兵へい來らい爭そう，戰せん却之。還かえ攻おさむ牛頭ごず城じょう，以火箭かせん焚其官舍かんしゃ民みん居きょ。十一月じゅういちがつ，遣や蔡邦光こう略りゃく九きゅう君くん山さん，擒とりこ其將孫まご德とく、柳榮りゅうえい、趙ちょう威たけし。

時どき宋そう以鮮汝なんじ忠ちゅう、趙ちょう章あきら易えき鎮開、達二たつじ州しゅう，而汝忠ちゅう家か屬ぞく尚なお留とめ開ひらき。文ぶん安やす曰：「達いたる未み易えき攻おさむ，若わか先さき拔開州しゅう，俘其家か屬ぞく，以招汝なんじ忠ちゅう，則のり達たち可か不ふ煩はん兵へい而下矣。」乃遣蔡邦光こう率りつ千戶呼延順等往攻開州，而盛兵へい駐ちゅう蟠わだかま龍りゅう，以為聲援せいえん。十じゅう二に年ねん正月しょうがつ，諸しょ軍ぐん夜よる銜枚，薄うすき開ひらく州しゅう城下しろした，遣や死し士し先登せんとう，斬き關せき以入，及城中ちゅう人知じんち，則のり千戶景疇已立旗幟于城之絕頂矣。宋そう軍ぐん潰つぶせ散ち，擒とりこ趙ちょう章あきら，而守將しゅしょう韓かん明あきら父子ふし猶なお率りつ所部ところぶ兵へい巷ちまた戰せん，力ちから屈こごめ，亦また就擒。文ぶん安やす遷汝忠ちゅう家か屬ぞく于蟠龍りゅう，遣や元帥げんすい王師おうし能のう持じ檄げき往達州しゅう招之曰：「降くだ則のり家か屬ぞく得とく全ぜん，不ふ降くだ則のり闔城塗炭とたん，汝なんじ宜よろし早はや為ため計けい。」汝なんじ忠ちゅう遂とげ遣や趙ちょう榮さかえ來らい約やく降くだ，王師おうし能のう以兵入にゅう據よりどころ其城。汝なんじ忠ちゅう率りつ所部ところぶ將士しょうし詣まい文ぶん安やす軍門ぐんもん降くだ，悉還其妻孥財物ぶつ。趙ちょう章子あきこ桂かつら楫かじ守もり師し姑しゅうと城じょう，遣や兵へい招之，亦また降くだ。獨どく洋よう州しゅう龍りゅう爪つめ城じょう守將しゅしょう謝しゃ益えき固守こしゅ，併力攻おさむ之の，擒とりこ統制とうせい王おう慶けい，益えき棄城走はし。於是遣や元帥げんすい李り吉よし、嵇永興きょう，千戶せんど王おう新しん德とく等とう，將兵しょうへい以鮮汝なんじ忠ちゅう往招由よし山やま等とう處しょ八はち城しろ，皆みな望もち風ふう迎むかえ降ぶ，凱還。遣や經歷けいれき陳ちん德いさお勝以かつもち鮮汝忠ちゅう、趙ちょう桂かつら楫かじ等とう十じゅう餘よ人にん獻けんじ捷とし京師けいし。帝みかど悅えつ，加か授文安やす驃騎衞まもる上じょう將軍しょうぐん，兼けん宣撫せんぶ使し，賜たまもの鈔一千せん錠じょう；文ぶん粲つばら加か授鎮國上くにがみ將軍しょうぐん。

文ぶん安やす尋ひろ遣や其兄子せこ應おう之の往招都と勝しょう、茂しげ竹ちく、廣こう福ぶく三城みき，自じ將しょう大軍たいぐん，以為聲援せいえん，皆みな降くだ之これ。秋あき七なな月がつ，兵へい至いたり樂勝らくしょう城じょう，宋そう將すすむ蒲かば濟わたる川がわ降くだ。進攻しんこう梁やな山さん，宋そう將すすむ袁世安やす堅守けんしゅ。文ぶん安やす焚其外城とじょう，梁やな山さん軍ぐん恃忠勝軍かちいくさ為ため固かた，力ちから攻おさむ拔之，殺ころせ守將しゅしょう王おう智さとし，擒とりこ部ぶ轄景福ぶく，圍かこえ梁やな山さん四よん十じゅう日にち，世安よやす隨ずい方かた備禦，竟不降くだ。文ぶん安やす乃移兵へい攻おさむ萬まん州しゅう之の牛頭ごず城じょう，殺ころせ守將しゅしょう何なん威い，遷其民みん，進しん圍かこえ萬まん州しゅう，守將しゅしょう上官じょうかん夔戰守もり甚力。文ぶん安やす乃遣監かん軍ぐん楊應之の、鎮撫ちんぶ彭福壽ふくじゅ會かい東川ひがしがわ行こう院いん兵へい，出で小しょう江口えぐち以牽制けんせい援兵えんぺい，果はて與あずか之これ遇ぐう，戰敗せんぱい之の，擒とりこ總そう管かん李り臯、花はな茂實しげみ等とう。萬まん州しゅう固守こしゅ不ふ下した，文ぶん安やす乃解圍かこえ去ざ。攻おさむ石城せきじょう堡，諭さとし降くだ守將しゅしょう譚たん汝なんじ和わ；攻おさむ雞冠城じょう，諭さとし降くだ守將しゅしょう杜もり賦ふ；又また招石馬ば、鐵平てっぺい、小城おぎ、三さん聖ひじり、油木ゆき、牟家、下しも隘等城じょう。冬ふゆ，進しん白しろ帝みかど城じょう，夔帥張ちょう起おこり巖いわお堅守けんしゅ不出ふしゅつ，文ぶん安やす以師老おい，乃還。宋そう都みやこ統みつる弋德復ふく據よりどころ開ひらき州しゅう，文ぶん安やす乃築城ちくじょう神仙しんせん山やま以逼之の，令れい元帥げんすい蔡邦光こう、萬まん戶こ紀きの天たかし英えい屯たむろ守もり。

十じゅう三さん年ねん，進しん階かい金吾きんご衞まもる上じょう將軍しょうぐん，賜たまもの玉だま帶たい一いち。夏なつ，朝あさ廷遣安西あんざい王おう相しょう李り德いさお輝てる經けい畫が東川ひがしがわ課程かてい，宋そう梁やな山さん守將しゅしょう袁世安やす遣や使つかい約やく降くだ。文ぶん安やす以白德とく輝てる，德とく輝てる大喜だいぎ，即そく遣や文ぶん安やす將兵しょうへい，奉たてまつ王おう旨むね往招之の，世安よやす遂とげ降ぶ。秋あき七なな月がつ，進軍しんぐん攻おさむ萬まん州しゅう。遣や經歷けいれき徐じょ政まさし諭さとし守もり臣しん上官じょうかん夔降，夔不從したがえ，圍かこえ之これ數すう匝，踰月，攻おさむ拔外城じょう。夔守張ちょう起おこり巖いわお來らい救すくえ，遣や鎮撫ちんぶ彭福壽ふくじゅ迎擊げいげき，破やぶ之これ，盡つき殺ころせ其舟師し，俘其將はた宋そう明あきら。萬まん州しゅう奪だつ氣き，文ぶん安やす復ふく傳でん王おう旨むね，諭さとし夔使降くだ，夔終不屈ふくつ。文ぶん安やす盡つき銳するど攻おさむ城じょう，潛せん遣や勇士ゆうし梯はしご城じょう宵よい登とう，斬き關せき而入，夔巷戰せん而死。萬まん州しゅう既定きてい，遣や使つかい招鐵檠、三寶さんぽう兩城りょうじょう守將しゅしょう楊宜、黎はじむ拱辰降くだ，分ふん兵略へいりゃく施ほどこせ州しゅう，擒とりこ統制とうせい薛忠，會かい大雪おおゆき，遣や蔡邦光こう夜よる攻おさむ，殺ころせ守もり帥そち何なん艮うしとら，奪だつ其城。

十じゅう四よん年ねん夏なつ，進しん兵へい攻おさむ咸淳府ふ，時じ宋そう以六郡鎮撫使馬堃為守，文ぶん安やす與あずか堃同里さと閈，諭さとし之の使つかい降くだ，堃不從したがえ，乃列柵しがらみ攻おさむ城じょう。冬ふゆ十じゅう二に月がつ，潛せん遣や勇士ゆうし躡雲梯はしご宵よい登とう，斬き關せき納おさむ外がい兵へい，堃悉力りょく巷ちまた戰せん，達いたる州しゅう安やす撫なで使し鮮汝忠ちゅう與あずか宋そう兵力へいりょく戰死せんし，比ひ曉あかつき，宋そう兵へい大敗たいはい，堃力屈こごめ就擒。十じゅう五ご年ねん，進しん兵へい攻おさむ紹慶，守將しゅしょう鮮龍迎むかえ敵てき。二に月がつ，潛せん遣や勇士ゆうし，夜よる以梯衝攻破やぶ其北門もん，鮮龍大だい驚おどろき，收おさむ散ち卒そつ力戰りきせん，兵へい敗はい就擒。

蜀しょく境さかい已やめ定じょう，獨どく夔堅守けんしゅ不ふ下した。朝廷ちょうてい命いのち荊湖都と元帥げんすい達たち海うみ由よし巫みこ峽かい進しん兵へい取と夔州，而西川にしかわ劉りゅう僉院挾はさみ夔守將しゅしょう親おや屬ぞく往招之の。文ぶん安やす乃遣元帥げんすい王師おうし能のう將はた舟ふね師し與あずか俱，張ちょう起おこり巖いわお竟以城じょう降くだ。夏なつ，入にゅう覲，文ぶん安やす以所得しょとく城じょう邑繪圖ず以獻，帝みかど勞ろう之の曰：「汝なんじ攻おさむ城しろ略りゃく地ち之の功こう，何なに若わか是ぜ多た也！」擢四川南道宣慰使，解かい白しろ貂てん裘以賜たまもの之の。

十じゅう七なな年ねん，遣や辯士べんし王おう介かい諭さとし降くだ散ち毛もう諸しょ洞ほら蠻，以散毛げ兩子ふたご入にゅう覲，因いん進言しんげん曰：「元帥げんすい蔡邦光こう，昔むかし征せい散ち毛け蠻而死し，可か念ねん也。」帝みかど曰：「散ち毛け既すんで降くだ而殺之の，其何以懷遠とお！」乃擢蔡邦光こう之子ゆきこ，陞為管かん軍ぐん總そう管かん，佩虎符ふ，賜たまもの散ち毛け兩子ふたご金銀きんぎん符ふ各かく一いち，并賜其酋長ちょう以金虎とら符ふ。遙はるか授文安やす參さん知ち政事せいじ，行ぎょう四川南道宣慰使。十じゅう九きゅう年ねん春はる，入にゅう覲，擢龍虎とら衞まもる上じょう將軍しょうぐん、中書ちゅうしょ左ひだり丞すすむ，行ぎょう江西えにし省しょう事ごと，到いた官かん踰月，以疾卒そつ。

子こ艮うしとら之の，襲かさね佩虎符ふ、昭あきら勇いさむ大將軍だいしょうぐん、管かん軍ぐん萬まん戶こ，歷れき湖南こなみ宣せん慰副使ふくし，岳たけ州しゅう路ろ總そう管かん，卒そつ。

劉りゅう整せい

劉りゅう整せい字じ武たけ仲なか，先さき世よ京きょう兆ちょう樊川人じん，徙鄧州しゅう穰みのる城じょう。整せい沉毅有ゆう智謀ちぼう，善ぜん騎射きしゃ。金きむ亂らん，入にゅう宋そう，隸荊湖みずうみ制せい置おけ使し孟はじめ珙麾下か。珙攻金きむ信しん陽ひ，整せい為ため前ぜん鋒ほこさき，夜よる縱たて驍勇十じゅう二に人にん，渡わたり塹登城とじょう，襲かさね擒とりこ其守，還かえ報ほう。珙大驚おどろき，以為唐から李り存そん孝こう率りつ十じゅう八はち騎き拔洛陽ひ，今いま整せい所しょ將はた更さら寡，而取信しん陽ひ，乃書其旗曰「賽さい存そん孝こう」。累るい遷潼川かわ十じゅう五軍州安撫使，知ち瀘州軍ぐん州しゅう事ごと。

整せい以北いほく方かた人じん，扞西邊べ有功ゆうこう，南方みなかた諸しょ將しょう皆みな出で其下，呂りょ文德ふみのり忌き之の，所しょ畫策かくさく輒擯沮，有功ゆうこう輒掩而不白しろ，以俞興きょう與あずか整せい有ゆう隙すき，使つかい之これ制せい置おけ四川しせん以圖整せい。興きょう以軍事ぐんじ召整，不ふ行くだり，遂とげ誣搆之の，整せい遣や使つかい訴臨安やす，又また不ふ得とく達たち。及向士し璧、曹世雄ゆう二に將はた見み殺ころせ，整せい益えき危不自じ保たもて，乃謀款附。

中ちゅう統すべ二に年ねん夏なつ，整せい籍せき瀘州十じゅう五ご郡ぐん、戶と三さん十じゅう萬まん入にゅう附ふ。世よ祖そ嘉よしみ其來，授夔府ふ行あるき省しょう，兼けん安やす撫なで使し，賜金しきん虎とら符ふ，仍賜金銀きんぎん符ふ以給其將校こう之の有功ゆうこう者しゃ。俞興攻おさむ瀘州，整せい出で寶たから器き分ぶん士卒しそつ，激げき使し戰せん，戰せん數すう十じゅう合ごう，敗はい之の。復ふく遣や使つかい以宋所しょ賜たまもの金字こんじ牙きば符ふ及佩印しるし入いれ獻けんじ，請益屯たむろ兵へい、厚あつ儲もうか積せき為ため圖ず宋そう計けい。

三さん年ねん，入朝にゅうちょう，授行中書ちゅうしょ省しょう於成都と、潼川兩りょう路みち，賜たまもの銀ぎん萬まん兩りょう，分ふん給きゅう軍ぐん士し之の失業しつぎょう者しゃ，仍兼都と元帥げんすい，立たて寨諸山しょざん，以扼宋そう兵へい。同列どうれつ嫉整功こう，將はた謀はかりごと陷おちい之これ，整せい懼，請分帥そち潼川。七なな月がつ，改あらため潼川都と元帥げんすい，宣せん課か茶ちゃ鹽しお以餉軍ぐん。四よん年ねん五ご月がつ，宋そう安やすし撫なで高だか達たち、溫ゆたか和進わしん逼成都と，整せい馳はせ援之。宋そう兵へい聞賽存そん孝こう至いたり，遁去，將はた擣潼川がわ，又また與あずか整せい遇ぐう于錦江きんこう而敗。至いたり元もと三さん年ねん六ろく月がつ，遷昭武たけ大將軍だいしょうぐん、南京なんきん路ろ宣撫せんぶ使し。

四よん年ねん十じゅう一いち月がつ，入朝にゅうちょう，進言しんげん：「宋そう主ぬし弱じゃく臣しん悖もと，立國りっこく一隅いちぐう，今こん天啟てんけい混こん一いち之これ機き。臣しん願ねがい效こう犬馬けんば勞ろう，先攻せんこう襄じょう陽ひ，撤其扞蔽。」廷議沮之。整せい又また曰：「自じ古こ帝王ていおう，非ひ四海しかい一家かずや，不為ふため正統せいとう。聖せい朝あさ有ゆう天下でんか十じゅう七なな八はち，何なに置おけ一いち隅すみ不問ふもん，而自棄じき正統せいとう邪よこしま！」世よ祖そ曰：「朕ちん意い決けつ矣。」五ご年ねん七なな月がつ，遷鎮國上くにがみ將軍しょうぐん、都と元帥げんすい。九月くがつ，偕都元帥げんすい阿おもね朮うけら督とく諸しょ軍ぐん，圍かこえ襄じょう陽ひ，城しろ鹿しか門もん堡及白河しらかわ口こう，為ため攻おさむ取と計けい。率りつ兵へい五ご萬まん，鈔略沿江諸もろ郡ぐん，皆みな嬰城避其銳するど，俘人民じんみん八はち萬まん。六ろく年ねん六ろく月がつ，擒とりこ都みやこ統みつる唐から永なが堅けん。七なな年ねん三さん月がつ，築ちく實じつ心しん臺だい于漢水中すいちゅう流りゅう，上うえ置おけ弩いしゆみ砲ほう，下した為石ためし囤五，以扼敵てき船せん。且與阿おもね朮うけら計けい曰：「我わが精兵せいびょう突騎，所しょ當とう者しゃ破やぶ，惟おもんみ水すい戰せん不ふ如宋耳みみ。奪だつ彼かれ所長しょちょう，造みやつこ戰艦せんかん，習水軍ぐん，則のり事ごと濟ずみ矣。」乘じょう驛えき以聞，制せい可か。既すんで還かえ，造船ぞうせん五ご千せん艘そう，日にち練ねり水軍すいぐん，雖雨不能ふのう出で，亦また畫が地ち為ため船せん而習之の，得とく練ねり卒そつ七なな萬まん。八はち月がつ，復ふく築ちく外そと圍かこえ，以遏敵てき援。

八はち年ねん五ご月がつ，宋そう帥そち范文虎とら遣や都みやこ統みつる張ちょう順じゅん、張ちょう貴たか，駕が輪わ船せん，饋襄陽ひ衣ころも甲かぶと，邀擊ようげき，斬き順じゅん，獨どく貴き得とく入城にゅうじょう。九月くがつ，陞參知ち河南かなん行ゆき中書ちゅうしょ省しょう事ごと。九きゅう年ねん（三さん）〔正ただし〕月がつ，加か諸しょ翼つばさ漢かん軍ぐん都と元帥げんすい。^[7]襄じょう陽ひ帥そち呂りょ文ぶん煥登城とじょう觀かん敵てき，整せい躍おど馬うま前ぜん曰：「君きみ昧於天命てんめい，害がい及生靈れい，豈あに仁者じんしゃ之の事こと！而又齷齪あくせく不能ふのう戰せん，取と羞於勇者ゆうしゃ，請與君くん決けつ勝負しょうぶ。」文ぶん煥不答こたえ，伏ふく弩いしゆみ中ちゅう整せい。三月さんがつ，破やぶ樊城外郭がいかく，斬首ざんしゅ二に千せん級きゅう，擒とりこ裨將十じゅう六ろく人にん。諜知文ぶん煥將遣や張ちょう貴たか出城でしろ求もとむ援，乃分部ぶ戰艦せんかん，縛ばく草くさ如牛狀じょう，傍はた漢かん水すい，綿めん亘わたる參まいり錯，眾莫測所用しょよう。九月くがつ，貴き果はて夜よる出で，乘じょう輪わ船せん，順流じゅんりゅう下か走はし，軍ぐん士し覘知之の，傍はた岸がん爇草牛うし如晝，整せい與あずか阿おもね朮うけら麾戰艦かん，轉戰てんせん五ご十じゅう里り，擒とりこ貴き于櫃門もん關せき，餘よ眾盡殺ころせ之これ。

十一月じゅういちがつ，詔みことのり統すべ水軍すいぐん四よん萬まん戶こ。宋そう荊湖制せい置おけ李り庭にわ芝しば以金印しるし牙きば符ふ，授整漢かん軍ぐん都と元帥げんすい、盧の龍りゅう軍ぐん節度せつど使し，封ふう燕つばめ郡ぐん王おう，為ため書しょ，使つかい永えい寧やすし僧そう持じ送おく整せい所しょ，期き以間整せい。永えい寧やすし令れい得とく之の，驛えき以聞于朝，敕張易えき、姚樞雜ざつ問とえ，適てき整せい至いたり自軍じぐん，言げん︰「宋そう怒いか臣しん畫策かくさく攻おさむ襄じょう陽ひ，故こ設しつらえ此以殺ころせ臣しん，臣しん實じつ不知ふち。」詔みことのり令れい整復せいふく書しょ謂いい：「整せい受命じゅめい以來いらい，惟おもんみ知ち督とく厲戎兵へい，舉垂亡ほろび孤城こじょう耳みみ。宋そう若わか果はて以生靈れい為ため念ねん，當とう重おも遣や信しん使し，請命朝廷ちょうてい，顧為此小數すう，何なに益えき於事！」

時とき圍かこえ襄じょう陽ひ已やめ五ご年ねん，整せい計けい樊、襄じょう唇くちびる齒ぱ也，宜むべ先攻せんこう樊城。樊城人じん以柵蔽城，斬き木き列れつ置おけ江中えなか，貫ぬき以鐵索てっさく。整せい言げん於丞相しょう伯はく顏がお，令れい善ぜん水すい者しゃ斷だん木き沉索，督戰とくせん艦かん趨城下か，以回回かい砲擊ほうげき之の，而焚其柵。十じゅう年ねん正月しょうがつ，遂とげ破やぶ樊城，屠ほふ之これ。遣や唐から永なが堅けん入にゅう襄じょう陽ひ，諭さとし呂りょ文ぶん煥，乃以城じょう降くだ。上うえ功いさお，賜たまもの整せい田た宅たく、金きむ幣ぬさ、良りょう馬ば。

整せい入朝にゅうちょう，奏そう曰：「襄じょう陽ひ破やぶ，則のり臨安搖ゆら矣。若わか將しょう所しょ練ねり水軍すいぐん，乘じょう勝かち長驅ちょうく，長江ながえ必皆非ひ宋そう所有しょゆう。」遂とげ改行かいぎょう淮西樞密院すうみついん事ごと，駐ちゅう正せい陽ひ，夾淮而城，南みなみ逼江，斷だん其東西とうざい衝。十じゅう一いち年ねん，陞驃騎き衞まもる上じょう將軍しょうぐん、行あるき中書ちゅうしょ左ひだり丞すすむ。宋そう夏貴なつき悉水軍ぐん來らい攻おさむ，破やぶ之これ于大人おとな洲しゅう。十じゅう二に年ねん正月しょうがつ，詔みことのり整せい別べつ將兵しょうへい出で淮南ワイナン，整せい銳するど欲ほし渡江とのえ，首將しゅしょう止どめ之の，不ふ果はて行ぎょう。丞相じょうしょう伯はく顏がお入にゅう鄂，捷とし至いたり，整せい失しつ聲ごえ曰：「首くび帥そち止どめ我わが，顧使我わが成功せいこう後人こうじん，善ぜん作者さくしゃ不ふ必善成なり，果然かぜん！」其夕，憤いきどお惋而卒そつ，年ねん六ろく十じゅう三さん。贈おく龍虎りゅうこ衞まもる上じょう將軍しょうぐん、中書ちゅうしょ右みぎ丞すすむ，諡おくりな武敏たけとし。

子こ垣かき，嘗從父ちち戰敗せんぱい昝萬まん壽ことぶき于通泉いずみ；埏，管かん軍ぐん萬まん戶こ；均ひとし，榷茶提ひさげ舉；垓，都と元帥げんすい。孫まご九きゅう人にん，克仁かつひと，知ち房州ぼうしゅう。

校勘こうかん記き

1. 宋そう總統そうとう祁昌　按本卷まき楊大淵ふち傳でん附ふ楊文安あん傳作でんさく「宋そう都みやこ統みつる祁昌」，「都みやこ統みつる」係がかり宋そう軍ぐん官職かんしょく，疑うたぐ「總そう」當とう作さく「都と」。
2. 陳ひね子こ閏うるう　北きた監かん本ほん作さく「陳ひね子こ潤じゅん」。按本卷まき楊大淵おおふち傳つたえ「閏うるう」亦また作さく「潤じゅん」。
3. 盧の植しょく　北きた監かん本ほん作さく「盧の埴はに」。按本卷まき楊大淵おおふち傳つたえ「植うえ」亦また作さく「埴はに」。
4. 蔡邦（兒こ）〔光ひかり〕　從道つぐみち光本みつもと改あらため。
5. 夏なつ遣や元帥げんすい李り吉きち略りゃく開ひらき州しゅう　按前文ぜんぶん敍じょ至いたり元もと九きゅう年ねん九きゅう月がつ事ごと，後ご文ぶん又また有ゆう十じゅう一いち年ねん春はる三さん月がつ事ごと，此「夏なつ」當とう指ゆび至いたり元もと十じゅう年ねん夏なつ。「夏なつ」疑うたぐ上うわ脫だっ「十じゅう年ねん」。
6. 閏うるう（十じゅう）〔六ろく〕月がつ　按前文ぜんぶん有ゆう至いたり元もと九きゅう年ねん，後こう文ぶん有ゆう十じゅう一いち年ねん。至いたり元もと九きゅう年ねん至いたり十じゅう一いち年ねん，惟おもんみ十じゅう年ねん有ゆう閏うるう六ろく月がつ，「十じゅう」誤あやま，今こん改あらため。參看さんかん前條ぜんじょう校勘こうかん記き。
7. 九きゅう年ねん（三さん）〔正ただし〕月がつ加か諸しょ翼つばさ漢かん軍ぐん都と元帥げんすい　下しも文ぶん復ふく有ゆう「三さん月がつ」與あずか此處ここら重じゅう。本ほん書卷しょかん七世祖紀至元九年正月辛巳條有「命いのち劉りゅう整せい總そう漢かん軍ぐん」，據よりどころ改あらため。