新元しんもと史し/卷まき017

卷まき十じゅう六ろく ◄

新元しんもと史し 卷まき十じゅう七なな 本紀ほんぎ第だい十じゅう七なな

► 卷まき十じゅう八はち

仁じん宗むね下か

　　延のべ祐ゆう元もと年春としはる正月しょうがつ丁ひのと亥い，授前中書ちゅうしょ右みぎ丞すすむ劉りゅう正平しょうへい章あきら政事せいじ、商議しょうぎ中書ちゅうしょ省しょう事ごと。庚かのえ子こ，江こう浙行省しょう左ひだり丞すすむ高だか珪為中書ちゅうしょ參まいり知ち政事せいじ。丁未ていみ，詔みことのり曰：

　　惟おもんみ天てん惟おもんみ祖宗そそう眷佑有ゆう國こく，朕ちん自じ即位そくい於今四よん年ねん。比ひ者しゃ，陰陽いんよう失しつ和わ，災わざわい異い屢見，豈あに朕ちん修おさむ協きょう之の未み至いたり歟？抑そもそも官吏かんり未み選せん，而政令れい之の或ある乖歟？思おもえ以迴天心てんしん、召和氣わき，側がわ身み修行しゅぎょう。實じつ切きり朕ちん衷。庸いさお敕有司し，務つとむ共きょう乃職，爰布維新いしん之の令れい。誕敷濟ずみ眾之仁じん。可か改あらため皇すめらぎ慶けい三さん年ねん為ため延のべ祐ゆう元年がんねん。所有しょゆう合あい行ぎょう事理じり，條じょう列れつ於後：一いち，上うえ都と、大だい都と差さ稅ぜい，自じ延のべ祐ゆう元年がんねん蠲免二に年ねん；一いち，曾經賑にぎわい濟ずみ災わざわい戶ど，免めん延のべ元年がんねん差さ稅ぜい；一いち，內外一切いっさい不急ふきゅう之の役やく，截日停とま罷やめ；一いち，普ふ免めん百姓ひゃくしょう欠かけ負ふ錢ぜに糧かて；一いち，流民りゅうみん所しょ至いたり，有司ゆうし勤つとむ加か存そん卹，復ふく免めん差さ役やく三さん年ねん，原はら拋田產さん，盡つき行くだり給きゅう復ふく；一いち，除じょ謀反ぼうほん大逆だいぎゃく、謀殺ぼうさつ祖父母そふぼ父母ちちはは、妻妾さいしょう殺ころせ夫おっと、奴僕どぼく殺ころせ主しゅ及強盜ぬすめ、偽造ぎぞう寶たから鈔、官吏かんり侵おかせ盜ぬすめ錢ぜに糧かて，不在ふざい原ばら宥なだめ外がい，其餘一切いっさい罪ざい犯はん，並行へいこう釋放しゃくほう，一いち，湖こ廣ひろ、雲南うんなん叛蠻如能侮あなど過か，即そく與あずか免罪めんざい。

　　於戲！以實應おう天てん，爰聿新しん於庶政しょせい，用よう孚まこと有ゆう眾，同どう保合もちあい於太和わ。諮はか爾しか多おお方かた。體からだ予よ至いたり意い。

　　庚かのえ戌いぬ，右みぎ丞相じょうしょう禿かぶろ忽ゆるがせ再さい等とう以災變へん，乞罷黜，不ふ允まこと。

　　二に月がつ甲かぶと戌いぬ，侍さむらい御ご史し趙ちょう世よ延のべ為ため中書ちゅうしょ參まいり知ち政事せいじ。壬みずのえ午うま，右みぎ丞相じょうしょう禿かぶろ忽ゆるがせ魯罷，阿おもね散ち為ため中書ちゅうしょ右みぎ丞相じょうしょう、監修かんしゅう國史こくし。癸みずのと未み，中書ちゅうしょ參まいり知ち政事せいじ高だか珪罷為ため集しゅう賢けん大學だいがく士し。

　　三さん月がつ癸みずのと卯う，暹國來貢らいこう方かた物ぶつ。丙午ひのえうま，封ふう駙馬阿おもね魯禿為ため趙ちょう王おう。戊つちのえ申さる。車くるま駕が幸こう上うえ都と。癸みずのと丑うし，中書ちゅうしょ參まいり知ち政事せいじ察罕致仕ちし。是これ月がつ，沅州徭賊蒲がま狗いぬ、向むかい金きむ朝ちょう等とう來らい降くだ。

　　閏うるう三さん月がつ丁ちょう丑うし，馬うま八はち兒じ國こく來貢らいこう方かた物ぶつ。

　　夏なつ四よん月がつ己おのれ酉とり，敕郡縣けん官かん勤つとむ職しょく者しゃ，賜たまもの幣帛へいはく。以鐵木き迭兒錄ろく軍ぐん國重くにしげ事ごと、監修かんしゅう國史こくし。立回たちまわ回國かいこく子こ監かん。是これ月がつ，皇后こうごう宏ひろし吉よし剌氏崩くずし。

　　五月ごがつ戊つちのえ寅とら，京きょう兆府為許衡建魯齋書院，降くだ璽書旌之。

　　六ろく月がつ戊子ぼし，召河南かなん行ゆき省しょう左ひだり丞相じょうしょう卜ぼく伶吉歹至京師けいし，封ふう為ため河南かなん王おう。

　　秋あき七なな月がつ庚午こうご，開ひらき下番しものばん市し舶禁。是これ月がつ，遣や使つかい賜たまもの高麗こうらい國こく宋そう祕ひ閣かく書籍しょせき一いち萬まん七なな千せん卷かん。

　　八はち月がつ戊子ぼし，車くるま駕が至いたり自じ上うえ都と。

　　九月くがつ己おのれ巳み，復ふく以鐵木き迭兒為ため中書ちゅうしょ右みぎ丞相じょうしょう，阿おもね散ち為ため左ひだり丞相じょうしょう。罷やめ陝西せんせい行ゆき御ご史し臺だい。

　　冬ふゆ十じゅう月がつ戊つちのえ申さる，復ふく​​甘肅かんせい屯田とんでん，立たて沙すな、瓜ふり等とう處しょ屯たむろ儲もうか總そう管かん萬まん戶こ府ふ。庚かのえ戌いぬ，遣や張ちょう驢うさぎうま經理けいり江こう南田みなみだ賦ふ。

　　十一月じゅういちがつ戊つちのえ辰たつ，通つう政せい使し蕭しょう拜はい住じゅう為ため中書ちゅうしょ右みぎ丞すすむ。辛からし未み，翰林かんりん學士がくし承うけたまわ旨むね答こたえ失しつ蠻知樞密院すうみついん事ごと。癸みずのと酉とり，前ぜん中書ちゅうしょ右みぎ丞相じょうしょう禿かぶろ忽ゆるがせ魯知樞密院すうみついん事ごと。

　　十二月じゅうにがつ己おのれ亥い，敕中書しょ省しょう，孔子こうし五十三代孫當襲衍聖公者，以名聞みょうもん。庚かのえ子こ，復ふく以翰林りん學士がくし承うけたまわ旨むね李り孟はじめ為ため中書ちゅうしょ平たいら章あきら政事せいじ。

　　二に年ねん正月しょうがつ乙おつ亥い，遣や宣撫せんぶ使し分ぶん十じゅう二道ふたみち，問もん民みん疾やまし苦にが，黜陟官吏かんり。命中めいちゅう書しょ臣しん分ぶん領りょう庶務しょむ。禁きん南みなみ人じん販買妻子さいし為ため驅か。是これ月がつ。黃き聖せい許もと復ふく叛，陷おちい忠ただ州しゅう。

　　二に月がつ己おのれ卯う朔ついたち，會かい試ためし進士しんし於禮部ぶ。壬みずのえ丈たけ，雲南うんなん王おう老ろう的てき來朝らいちょう。

　　三月さんがつ己おのれ卯う，廷試進士しんし，賜たまもの忽ゆるがせ都と答こたえ兒じ、張ちょう起おこり巖いわお等とう五ご十じゅう六ろく人にん及第きゅうだい、出身しゅっしん有ゆう差さ。庚午こうご，上うえ皇太后こうたいごう尊號そんごう曰儀天てん興きょう聖せい慈仁明にんみょう懿壽元もと合ごう德とく泰たい寧やすし福ぶく慶けい後ご皇太后こうたいごう。免めん延のべ祐ゆう二年四月初一日以前百姓拖欠課稅，官吏かんり失陷しっかん短みじか少しょう錢ぜに糧かて，亦また與あずか免めん徵ちょう。丁ちょう丑うし。中書ちゅうしょ平たいら章あきら政事せいじ張ちょう驢うさぎうま出で為ため江こう浙行省しょう平たいら章あきら政事せいじ。

　　夏なつ四よん月がつ戊つちのえ寅とら朔ついたち，日にち有ゆう食しょく之の。辛からし巳み。賜たまもの進しん十恩榮宴於翰林院。辛からし丑うし，賜たまもの會かい試ためし下か第だい舉人從したがえ七なな品ひん官かん致仕ちし，及教授きょうじゅ、學がく正ただし、山やま長等ながら有ゆう差さ，後ご不為ふため例れい。乙おつ巳み，車くるま駕が幸こう上うえ都と。丙午ひのえうま，封ふう諸王しょおう察八兒為汝寧王。

　　五月ごがつ戊つちのえ申さる朔ついたち，復ふく立りつ陝西せんせい行ゆき御ご史し臺だい。乙おつ丑うし，秦しん州しゅう成紀しげのり縣けん山移やまうつり，陷沒かんぼつ民みん居きょ。甲かぶと戌いぬ，授宦者しゃ續ぞく元もと暉あきら昭文あきふみ館かん大學だいがく士し。

　　六ろく月がつ戊つちのえ戌いぬ，河かわ決けつ鄭てい州しゅう。丙午ひのえうま，緬はる國王こくおう進しん其子脫だつ剌合來貢らいこう方かた物ぶつ。

　　秋あき七なな月がつ乙おつ卯う，贛州賊ぞく蔡五九きゅう等とう作さく亂みだれ，自稱じしょう洞ほら王おう。己おのれ丑うし，命いのち鐵てつ木き迭兒總そう宣政のぶまさ院いん事ごと，詔みことのり諭さとし中外ちゅうがい。

　　八はち月がつ丙へい​​戌いぬ，蔡五九陷汀州寧化縣，僭號蔡王，遣や江こう浙行古平こだいら章あきら政事せいじ張ちょう驢うさぎうま等とう討之。己おのれ丑うし，車くるま駕が至いたり自じ上うえ都と。乙未おとみ，以蔡五ご九きゅう之の亂みだれ，罷やめ江こう浙經理けいり田た賦ふ及冒括くく田租でんそ。壬みずのえ寅とら，詔みことのり江こう浙行省しょう印しるし《農のう桑くわ輯要》萬まん部ぶ，頒行各かく路みち。旌表貴き州しゅう達たち魯花赤あか相しょう兀孫妻つま脫だつ脫だつ真しん死し節ぶし。

　　九きゅう月がつ丁未ていみ，敕吏部ぶ尚書しょうしょ王おう居きょ仁じん鞠きく張ちょう驢うさぎうま括くく江こう浙田租でんそ，通つう死し九きゅう人にん之の罪つみ。壬みずのえ戌いぬ，蔡五九きゅう伏ふく誅。

　　冬ふゆ十じゅう月がつ丁ちょう丑うし，封ふう託たく忽ゆるがせ赤あか為ため威い寧やすし郡ぐん王おう，忽ゆるがせ兒じ赤あか帖じょう木き兒じ不ふ花はな為ため趙ちょう國こく公こう。庚かのえ辰たつ，淮西廉かど訪おとずれ使し郭かく貫ぬき為ため中書ちゅうしょ參まいり知ち政事せいじ。壬みずのえ午うま，有事ゆうじ於太廟びょう。乙未おとみ，以同知ち樞密院すうみついん事ごと帖じょう木き兒じ脫だつ知ち樞密院すうみついん事ごと。授白雲くも宗そう道人みちひと沈明仁じん榮さかえ祿ろく大夫たいふ、司つかさ空そら。丁ちょう酉とり，加か鐵てつ木き迭兒太たい師し。癸みずのと卯う，八百媳婦蠻來貢馴象。

　　十一月じゅういちがつ丙午ひのえうま，彗星すいせい見み。辛からし未み，以星變へん。赦天下か，免めん民間みんかん拖欠差さ稅ぜい，大だい都と、上うえ都と、興和こうわ三さん路ろ免めん差さ稅ぜい三さん年ねん，其餘路ろ分ぶん輕重けいちょう減免げんめん有ゆう差さ。甲かぶと戌いぬ，封ふう武たけ宗そう長子ながこ和世かずよ王おう束たば為ため周しゅう王おう。左ひだり丞相じょうしょう阿おもね散ち等とう以星變へん，乞罷黜。帝みかど曰：「此朕之の過か，豈あに卿きょう等とう所しょ致，其復乃職。苟政有ゆう差さ廖，勿憚更改こうかい，以安百姓ひゃくしょう。」

　　十二月じゅうにがつ庚かのえ寅とら，旌表汀なぎさ州しゅう寧やすし化か具ぐ民みん賴よりゆき祿ろく孫まご孝行こうこう。是これ月がつ，廣東かんとん黎はじむ賊ぞく陷おちい橫よこ州しゅう永えい淳あつし縣けん，殺ころせ達たち魯花赤あか。

　　三さん年ねん春はる正月しょうがつ乙おつ巳み，特とく授昔寶たから赤あか合あい剌合孫まご、達いたる魯花赤あか脫だつ歡全紫むらさき光ひかり祿ろく大夫たいふ、太ふとし尉じょう。丙午ひのえうま，封ふう前ぜん左ひだり丞相じょうしょう忽ゆるがせ魯答兒じ壽ことぶき國こく公こう。辛からし酉とり，以同知ち樞密院すうみついん事ごと買かい閭知樞密院すうみついん事ごと。是これ月がつ，高麗こうらい國王こくおう王おう燾來朝らいちょう。

　　二に月がつ戊つちのえ寅とら，命いのち湖こ廣行ひろゆき省しょう諭さとし安やす南みなみ，歸かえり占うらない城じょう國王こくおう。

　　三さん月がつ辛からし亥い，授高麗うらら世子せいし王おう昉開府かいふ儀ぎ同どう三さん司つかさ，封ふう沈王。加か將しょう作さく院いん使し呂りょ天てん麟大司し徒と。甲きのえ寅とら，命中めいちゅう書しょ右みぎ丞すすむ蕭しょう拜はい住じゅう等とう護送ごそう周しゅう王おう和世かずよ王おう束たば之の雲南うんなん。癸みずのと亥い，車くるま駕が幸こう上うえ都と。是これ月がつ，德とく慶けい路ろ徭叛。

　　夏なつ四よん月がつ壬みずのえ午うま，敕衛輝てる、昌平しょうへい官吏かんり修おさむ殷いん比ひ干ひ、唐から狄仁傑すぐる祠ほこら。庚かのえ子こ，上うえ都と留守るす憨剌閤ごう兒じ知ち樞密院すうみついん事ごと。

　　五月ごがつ辛からし亥い，江こう西行さいぎょう省しょう右みぎ丞すすむ斡赤為ため典てん瑞みず院いん使し、大だい司つかさ徒と。庚申こうしん，大だい都と留守るす伯はく鐵てつ木き兒じ、中書ちゅうしょ右みぎ丞すすむ蕭しょう拜はい住じゅう並なみ為ため中書ちゅうしょ平たいら章あきら政事せいじ，左ひだり丞すすむ阿おもね里さと海かい牙きば為ため右みぎ丞すすむ，參まいり知ち政事せいじ郭かく貫ぬき為ため左ひだり丞すすむ，多た議ぎ不ふ花はな為ため參さん知ち政事せいじ。

　　六ろく月がつ乙おつ亥い，封ふう孟子もうこ父ちち為ため邾國公こう，母はは為ため邾國宣せん獻けんじ夫人ふじん。丙へい子こ，橫よこ、融とおる、賓まろうど、柳やなぎ等ひとし州しゅう徭叛。己おのれ卯う，詔みことのり諭さとし百官ひゃっかん各かく勤つとむ其職，毋隳廢はい庶政しょせい。

　　秋あき七なな月がつ壬みずのえ子こ，命いのち御ご史し大夫たいふ伯はく忽ゆるがせ、脫だつ歡答剌罕整せい治ち臺だい綱つな，仍詔諭さとし中外ちゅうがい。乙おつ卯う，封ふう月がつ魯帖木き兒じ為ため保ほ恩おん王おう。丙へい寅とら，燕つばめ帖じょう木き兒じ知ち樞密院すうみついん事ごと。

　　八はち月がつ癸みずのと酉とり，兵部ひょうぶ尚書しょうしょ乞塔為ため中書ちゅうしょ參まいり知ち政事せいじ。己おのれ卯う，車くるま駕が至いたり自じ上うえ都と。

　　九きゅう月がつ辛からし丑うし，中書ちゅうしょ左ひだり丞すすむ郭かく貫ぬき罷やめ為ため集しゅう賢けん大だい學士がくし，集しゅう賢けん大だい學士がくし王おう毅あつし為ため中書ちゅうしょ左ひだり丞すすむ。

　　冬ふゆ十じゅう月がつ辛からし未み，江南こうなん行こう臺だい侍さむらい御ご史し高だか昉為中書ちゅうしょ參まいり知ち政事せいじ。壬みずのえ申さる，有事ゆうじ於太廟びょう。是これ月がつ，周しゅう王おう和世かずよ王おう束たば至いたり延のべ安やす，陝西せんせい行ゆき省しょう左ひだり丞相じょうしょう阿おもね思おもえ罕、平たいら章あきら政事せいじ塔とう察兒、行くだり臺だい御ご史し大夫たいふ禿かぶろ魯卜、御ご史し中ちゅう丞すすむ脫だつ歡與周しゅう王おう常つね侍さむらい教化きょうか等とう奉たてまつ和世かずよ王おう束たば舉兵反はん。

　　十一月じゅういちがつ壬みずのえ寅とら，命いのち監かん察御史し監かん治ち嶺みね北きた行ぎょう省しょう。乙おつ巳み，改あらため澧州路ろ安やす撫なで司し為ため安定あんてい軍民ぐんみん府ふ。

　　十二月じゅうにがつ庚午こうご，知ち樞密院すうみついん事ごと禿かぶろ忽ゆるがせ魯為陝西せんせい行ゆき省しょう左ひだり丞相じょうしょう。丁ちょう亥い，立たて皇子おうじ碩德せきとく八はち剌為皇太子こうたいし，兼けん中書ちゅうしょ令れい、樞くるる密使みっし。以同知ち樞密院すうみついん事ごと牀ゆか兀兒知ち樞密院すうみついん事ごと。

　　四よん年ねん春はる正月しょうがつ戊つちのえ申さる，詔みことのり曰：

　　朕ちん仰おおせ惟おもんみ太ぶと祖そ皇帝こうてい聖せい訓くん。若わか曰應天てん順じゅん人じん，惟おもんみ以至誠しせい，保安ほあん天下でんか，宣せん遵正道どう，重じゅう念ねん列聖れっせい繼承けいしょう丕祚，我わが世よ祖そ皇帝こうてい混こん一いち之これ初はつ，顧予菲德，懼勿克かつ荷に，不ふ遑寧處しょ。比ひ者しゃ和世かずよ王おう束たば年ねん幼よう，聽信僉人阿おもね思おもえ罕等謀はかりごと為ため不軌ふき，構亂我家わがや，已やめ為ため陝西せんせい行ゆき省しょう行ぎょう臺だい管かん軍ぐん官等かんとう將はた叛賊阿おもね思おもえ罕、教化きょうか、徹とおる裏うら哥思等とう斬首ざんしゅ以徇。其同謀はかりごと及協從者じゅうしゃ，欲よく一いち概がい加か誅，有ゆう所しょ不ふ忍にん。宜むべ推曠蕩とろけ之の恩おん，開ひらき以自新しん之これ路ろ。可か大赦たいしゃ天下でんか。凡常ぼんじょう赦所不ふ原はら者しゃ，罪つみ無む輕重けいちょう，咸赦除じょ之の。若わか有ゆう避罪進しん從したがえ逆ぎゃく黨とう竄匿者しゃ，赦書到いた日ひ，限げん百ひゃく日にち內出首くび，與あずか免めん本ほん罪ざい。限外げんがい不ふ首くび。復ふく罪ざい如舊。敢以赦前事ごと告つげ訐者，以其罪ざい罪ざい之の。

　　乙おつ卯う，叫さけべ囊寧王おう按灰代だい遼りょう王おう脫だっ銳するど鎮雲南みなみ。丙へい辰たつ，知ち樞密院すうみついん事ごと完かん者しゃ為ため雲南うんなん行ゆき省しょう平たいら章あきら政せい亨とおる。

　　閏月じゅんげつ壬みずのえ申さる，流りゅう魏ぎ王おう阿木あぎ哥於耽羅ら，尋ひろ移うつり大だい青島ちんたお。庚かのえ辰たつ，晉すすむ封ふう鎮遠王おう孛羅為ため冀王。丙へい戌いぬ，詔みことのり曰：

　　朕ちん荷に上天じょうてん之の鴻おおとり禧，纂列聖れっせい之の丕緒。比ひ承うけたまわ皇太后こうたいごう慈訓，若わか稽世祖そ皇帝こうてい成なり憲けん，深ふか惟おもんみ國本こくほん，宜むべ建けん儲もうか嗣。親王しんのう、大田おおた詢謀僉同，皇子おうじ碩德せきとく八剌地居嫡長，天てん錫すず仁孝にんこう，可か以主重器じゅうき，奉たてまつ宗そう祧。已やめ於延祐ゆう三さん年ねん十二月じゅうにがつ十じゅう九きゅう曰，授以金寶きんぽう，立たて為ため皇太子こうたいし，中書ちゅうしょ令れい、摳密使みっし一如いちにょ舊制きゅうせい。因いん前ぜん盛典せいてん，庸いさお布ぬの新しん條じょう：一いち，勉勵べんれい學がく枝えだ，以作人才じんさい，一いち，勸すすむ課か農のう桑くわ，耕作こうさく以時；一いち，免めん探さがせ馬ば赤あか軍人ぐんじん合あい納おさめ糧かて稅ぜい；一いち，經けい行ぎょう屯たむろ戍軍馬ば勿騷擾そうじょう百姓ひゃくしょう；一いち，免めん各かく路みち差さ稅ぜい有ゆう差さ；一いち，停とま罷やめ內外不急ふきゅう之の役やく；一いち，免めん徵ちょう應おう合あい追つい賠系官かん錢ぜに糧かて；一いち，存そん卹鰥寡孤獨こどく，一いち，嶽たけ瀆、帝王ていおう、忠臣ちゅうしん烈士れっし，除じょ常つね祀まつ外そと，長ちょう吏擇日び致祭。於戲！萬國ばんこく以貞，允まこと屬ぞく元もと良之よしゆき重じゅう；四方しほう其訓，永えい建太けんた平之ひらの基もと。諮はか爾しか市民しみん，體たい予よ至いたり意い。

　　辛からし卯う，封ふう別べつ帖じょう木き兒じ為ため汾陽王おう。

　　二に月がつ甲かぶと辰たつ，敕州縣けん復ふく置おけ杜もり倉くら。

　　三さん月がつ辛からし卯う，車くるま駕が幸こう上うえ都と。甲かぶと午うま，高麗こうらい國こく遣や使つかい來らい獻けんじ方かた物ぶつ。

　　夏なつ四よん月がつ壬みずのえ寅とら，加太かだ常つね禮儀れいぎ院いん使し拜はい住じゅう大だい司つかさ徒と。戊つちのえ申さる，答とう合ごう孫まご寇邊，吳ご王おう禿かぶろ烈れつ納おさめ等とう敗はい其眾於和懷ふところ。己おのれ未み，翰林かんりん學士がくし承うけたまわ旨むね忽ゆるがせ都と魯兒迷失、劉りゅう賡等譯やく《大學だいがく衍義》以進，敕翰林學りんがく土ど阿おもね柃帖木き兒じ，以國語ご譯やく之の。

　　五月ごがつ辛つら未み，授上都と留守るす闊闊出で開府かいふ儀ぎ同どう三さん司つかさ、大だい司つかさ徒と。乙おつ亥い，封ふう鄆國大長おおちょう公主こうしゅ忙せわし哥臺為ため皇すめらぎ姑しゅうと大長おおちょう公主こうしゅ。壬みずのえ午うま，翰林かんりん學士がくし承うけたまわ旨むね赤あか因いん帖じょう木き兒じ為ため中書ちゅうしょ平たいら章あきら政事せいじ，平たいら章あきら政事せいじ兀伯都と剌罷為ため集しゅう賢けん大學だいがく士し。己おのれ丑うし，中書ちゅうしょ左ひだり丞すすむ阿おもね里さと海かい涯為中書ちゅうしょ平たいら章あきら政事せいじ，參まいり知ち政事せいじ乞塔為ため中書ちゅうしょ右みぎ丞すすむ，高こう昉為中書ちゅうしょ左ひだり丞すすむ，參議さんぎ換かわ住じゅう、張ちょう思おもえ明あきら並なみ為ため參さん知ち政事せいじ。

　　六ろく月がつ戊つちのえ申さる，鐵てつ木き迭兒罷やめ，左ひだり丞相じょうしょう阿おもね散ち為ため中書ちゅうしょ右みぎ丞相じょうしょう。己おのれ酉とり，兀伯都と剌復為ため中書ちゅうしょ平たいら章あきら政事せいじ。壬みずのえ子こ，中書ちゅうしょ參まいり知ち政事せいじ張はり思おもえ明あかり罷やめ為ため工こう部ぶ尚書しょうしょ，工こう部ぶ尚書しょうしょ王おう桂かつら為ため中書ちゅうしょ參まいり知ち政事せいじ。丁ちょう巳み。安やす南國なんごく來貢らいこう方かた物ぶつ。

　　秋あき七なな月がつ乙おつ亥い，中書ちゅうしょ平たいら蕈政事事ことごと孟はじめ罷やめ為ため翰林かんりん學がく上じょう承うけたまわ旨むね，江こう浙行省しょう左ひだり丞すすむ王おう毅あつし為ため中書ちゅうしょ平たいら章あきら政事せいじ。壬みずのえ午うま，特とく授中衛まもる親おや軍ぐん都と指揮しき使し勃蘭奚為太ふとし尉じょう。己おのれ丑うし，成紀しげのり山崩やまくずれ，壓死あっし居きょ民みん。

　　八はち月がつ丙へい申さる。車くるま駕が至いたり自じ上うえ都と。

　　九きゅう月がつ丙へい寅とら，宣せん徽使伯はく答こたえ沙すな為ため中書ちゅうしょ右みぎ丞相じょうしょう，阿おもね散ち改あらため左ひだり丞相じょうしょう。故事こじ右みぎ丞相じょうしょう必用ひつよう蒙こうむ古こ勳くん臣しん，阿おもね散ち回かい回かい人じん，遂とげ固辭こじ，帝みかど允まこと之これ。

　　冬ふゆ十じゅう月がつ甲かぶと午うま朔ついたち，有事ゆうじ於太廟びょう。壬みずのえ寅とら，遣や御ご史し大夫たいふ伯はく忽ゆるがせ、參まいり知ち政せい亨とおる王おう桂かつら陝西せんせい嶽だけ鎮，並なみ賑にぎわい成紀しげのり縣けん災わざわい民みん。

　　十一月じゅういちがつ己おのれ卯う，浚揚州しゅう運河うんが。辛からし卯う，以高麗うらら國王こくおう王おう燾為開府かいふ儀ぎ同どう三さん司つかさ、駙馬、高麗こうらい國王こくおう。

　　十二月じゅうにがつ乙おつ巳み，置おけ詹事院いん。以郭貫ぬき為ため太子たいし詹事。丁ちょう巳み，禿かぶろ滿まん迭兒知ち樞密院すうみついん事ごと。特とく授晉王おう府ふ長ちょう吏按攤出金きん紫むらさき光ひかり祿ろく大夫たいふ，封ふう魯國公こう。

　　五ご年ねん春はる正月しょうがつ丙へい子こ，安やす南國なんごく來貢らいこう方かた物ぶつ。丁ちょう亥い，會かい試ためし進士しんし於禮部ぶ。加か湖こ廣行ひろゆき省しょう平たいら章あきら政事せいじ買かい住じゅう大だい司つかさ農みのり、魯國公こう。

　　二に月がつ癸巳きし朔ついたち，日にち有ゆう食しょく之の。丁ちょう酉とり，封ふう諸しょ王おう晃あきら火ひ帖じょう木き兒じ為ため喜き王おう，禿かぶろ滿まん帖じょう木き兒じ為ため武平ぶへい王おう。

　　三さん月がつ戊つちのえ辰たつ，廷試進士しんし，賜たまもの忽ゆるがせ都と達たち兒じ、霍希賢けん等とう五ご十じゅう人にん及第きゅうだい、出身しゅっしん有ゆう差さ。乙おつ亥い，特とく授安遠とお王おう、駙馬醜みにく漢かん開府かいふ儀ぎ同どう三さん司つかさ、錄ろく軍ぐん國重くにしげ事ごと、知ち樞密院すうみついん事ごと。加か晉すすむ王おう府ふ內史拾得しゅうとく閭榮祿ろく大夫たいふ，封ふう桓國公こう。

　　夏なつ四よん月がつ壬みずのえ辰たつ，安吉やすよし王おう乞臺普ふ濟ずみ卒そつ。己おのれ亥い，耽ふけ羅ら獵りょう戶ど成なり​​金きん等とう作さく亂みだれ，敕高麗うらら國王こくおう討之。庚かのえ戌いぬ，侍さむらい御ご史し敬けい儼げん為ため中書ちゅうしょ參まいり知ち政事せいじ。戊つちのえ午うま，車くるま駕が幸こう上うえ都と。

　　五月ごがつ辛からし酉とり朔ついたち，八番順元蠻酋來獻方物。丁ちょう卯しげる，御ご史し中ちゅう丞すすむ赤あか列れつ赤あか為ため中書ちゅうしょ右みぎ丞すすむ。己おのれ卯う，隴西縣けん山崩やまくずれ，壓死あっし居きょ民みん。

　　六ろく月がつ乙おつ巳み，妖人趙ちょう子玉こだま等ひとし謀はかりごと往高麗うらら迎むかい魏たかし王おう阿木あぎ哥為亂みだれ，事こと覺さとし伏ふく誅。

　　秋あき七なな月がつ己おのれ未み朔ついたち，加か宦者李り邦くに寧やすし開府かいふ儀ぎ同どう三さん司し。辛からし酉とり，遣や吏部尚書しょうしょ卜ぼく顏がお、必闍赤あか買かい閭使高麗こうらい，貢みつぎ問とい魏ぎ王おう阿おもね王おう哥及耽羅ら叛狀。壬みずのえ申さる，諸王しょおう也舍、失しつ刺とげ吉よし等ひとし，坐すわ附ふ叛王不ふ裡うら牙きば敦あつし，持もち兩端りょうたん，流りゅう也舍於江西にし，失しつ刺とげ吉きち於湖廣ひろ。壬みずのえ午うま，罷やめ河南かなん行ゆき省しょう左ひだり丞すすむ陳ちん英えい等とう所しょ括くく民田たみだ。

　　八はち月がつ庚かのえ子こ，車くるま駕が至いたり自じ上うえ都と。

　　九きゅう月がつ癸みずのと亥い，大だい司つかさ農みのり買かい住じゅう進しん司つかさ農みのり丞すすむ苗なえ好こう謙けん所しょ撰せん《載の桑くわ圖說ずせつ》，使つかい印しるし千せん本ほん散ち之これ民間みんかん。丙へい寅とら，廣こう酉とり蠻酋黃き法ほう扶、何なに凱等來らい獻けんじ方かた物ぶつ。丁ちょう卯しげる，中書ちゅうしょ右みぎ丞すすむ亦また列れつ赤あか為平ためひら章あきら政事せいじ，左ひだり丞すすむ高だか昉為右みぎ丞すすむ，參まいり知ち政事せいじ換かわ住じゅう為ため左ひだり丞すすむ，吏部尚書しょうしょ燕つばめ只ただ乾いぬい為ため參さん知ち政事せいじ。丙へい戌いぬ，僉太常つね禮儀れいぎ院いん事ごと狗いぬ兒じ為ため中書ちゅうしょ參まいり知ち政事せいじ。丁ちょう亥い，立だて行ぎょう宣政のぶまさ院いん於杭州しゅう。

　　冬ふゆ十じゅう月がつ己おのれ丑うし，播州ばんしゅう南みなみ寧やすし蠻酋洛らく麼叛，敕恩州しゅう守もり臣しん換かわ住じゅう哥招諭さとし之の，洛らく麼來獻けんじ方かた物ぶつ。甲かぶと午うま，有事ゆうじ於太廟びょう。

　　十一月じゅういちがつ己おのれ巳み，以同知ち樞密院すうみついん事ごと忠嘉ただよし知ち樞密院すうみついん事ごと。

　　十二月じゅうにがつ壬みずのえ辰たつ，特とく授集賢けん大だい學士がくし脫だつ列れつ大だい司つかさ徒と。

　　六年春正月丁已朔，暹國來貢らいこう方かた物ぶつ。癸みずのと酉とり，特とく授同知ち徽政院いん事こと醜みにく驢うさぎうま答こたえ剌罕金きん紫むらさき光ひかり祿ろく大夫たいふ、太ふとし尉じょう。己おのれ卯う，廣東かんとん徭賊趙ちょう郎ろう庚かのえ等とう作さく亂みだれ，敕江西行さいぎょう省しょう討之。是これ月がつ，前ぜん中書ちゅうしょ右みぎ丞すすむ尚文なおふみ為ため太子たいし詹事。

　　二に月がつ丁ちょう亥い朔ついたち，日にち有ゆう食しょく之の。丁ちょう酉とり，雲南うんなん闍裡愛あい俄にわか、永昌えいしょう蒲がま蠻阿八剌等並叛，敕雲南みなみ行ぎょう省しょう討之。

　　三さん月がつ丁ちょう巳み，以天壽てんじゅ節ぶし釋しゃく重しげる囚しゅう一いち人にん。辛からし酉とり，召見太子たいし詹事尚文なおふみ於嘉禧殿之の後こう閣かく。帝みかど謂いい太ふとし保ほ曲きょく出で曰：「是ぜ世よ祖そ皇帝こうてい效力こうりょく人じん也。」又また詔みことのり文ぶん曰：「託たく汝なんじ善ぜん輔太子たいし，有ゆう言げん勿吝，此朕意い也。」丙へい寅とら，待まち授翰林りん學士がくし承うけたまわ旨むね八兒思不花開府儀同三司、大だい司つかさ徒と。己おのれ巳み，晉すすむ封ふう保ほ恩おん王おう月がつ魯帖木き兒じ為ため恩おん王おう。

　　及四よん月がつ庚かのえ子こ，車くるま駕が幸こう上うえ都と。鐵てつ木き迭兒為ため太子たいし太ふとし師し。

　　五月ごがつ丙へい子こ，加か安やす南國なんごく王おう陳ひね益えき稷きび開府かいふ儀ぎ同どう三さん司し。是これ月がつ，雲南うんなん行ゆき省しょう左ひだり丞すすむ朵兒只ただ討永昌えいしょう南みなみ窩清蠻，大敗たいはい之の，其酋阿良あら等とう降くだ。

　　六ろく月がつ癸みずのと丑うし，以羽林りん軍ぐん萬まん人にん隸東宮とうぐう。

　　秋あき七なな月がつ丙へい辰たつ，緬はる國こく來貢らいこう方かた物ぶつ。來らい安やす路ろ部ぶ官かん岑世興きょう叛，賜たまもの璽書招諭之の。壬みずのえ戌いぬ，以者連れん怯おびえ耶兒萬戶府隸東宮，置おけ右みぎ率りつ衛まもる府ふ。甲かぶと戌いぬ，皇すめらぎ姊各國かっこく大長おおちょう公主こうしゅ作さく佛事ぶつじ，擅釋全ちょん寧やすし路ろ重じゅう囚しゅう二に十じゅう七なな人にん。敕按問もん全ちょん寧やすし官かん吏阿縱たて不法ふほう，仍追囚しゅう還かえ獄ごく。

　　八はち月がつ甲かぶと申さる，河東かとう山さん西道さいどう宣せん慰使張はり思おもえ明あきら為ため中書ちゅうしょ參まいり知ち政事せいじ。庚かのえ子こ，車くるま駕が至いたり自じ上うえ都と。

　　閏うるう八はち月がつ壬みずのえ申さる，太ふとし博はく、御ご史し大夫たいふ伯はく忽ゆるがせ為ため大師だいし。

　　九きゅう月がつ甲かぶと申さる，徽政使し朵帶為ため太ふと傅でん，中書ちゅうしょ參議さんぎ欽察為ため中書ちゅうしょ參まいり知ち政事せいじ。癸みずのと卯う，詔みことのり四宿衛以貪污受刑奪職不敘者，勿令入にゅう禁きん庭にわ。

　　冬ふゆ十じゅう月がつ乙おつ卯う，詔みことのり嚴げん鞠きく白雲しらくも宗道そうどう士し沈明仁じん奸惡かんあく。戊つちのえ午うま，遣や中書ちゅうしょ右みぎ丞相じょうしょう伯はく答こたえ沙すな授皇太子たいし玉だま冊さつ。辛からし酉とり，札さつ魯忽赤あか鐵てつ木き兒じ不ふ花はな為ため御ご史し大夫たいふ。

　　十一月じゅういちがつ丙へい子こ，詔みことのり曰：朕ちん惟おもんみ世よ祖そ裡うら帝みかど憲章けんしょう，隆たかし古こ垂たれ裕ひろし，萬世ばんせい灼然，垂たれ訓くん豫よ建けん嫡嗣。是ぜ以協謀はかりごと僉同，立たて皇子おうじ碩德せきとく八はち剌為皇太子こうたいし。若わか稽冊命いのち，屬ぞく當とう舉行，於今十じゅう月がつ七なな日にち授以玉だま冊さつ，大慶たいけい禮れい成なり。於戲！天地てんち之の德とく，宗むね社しゃ之の靈れい，國本くにもと既すんで崇たかし，人心じんしん攸系。諮はか爾しか有ゆう眾，體たい予よ至いたり懷ふところ。

　　十一月じゅういちがつ辛からし卯う，木き邦くに路ろ蠻酋帶たい邦くに作さく亂みだれ，敕雲南みなみ行ぎょう省しょう招撫之の。乙おつ巳み，祕書ひしょ卿きょう苫とま思おもえ丁ひのと為ため大だい司つかさ徒と。

　　十二月じゅうにがつ壬みずのえ戌いぬ，命いのち皇すめらぎ大子だいご參まいり決けつ國事こくじ。封ふう宋そう儒周頤為道どう國こく公こう。壬みずのえ申さる，中書ちゅうしょ平たいら章あきら政事せいじ王おう毅あつし以親老ろう致仕ちし，許もと之の，仍賜其父幣帛へいはく。

　　七年春正月辛巳朔，司つかさ天たかし監かん奏そう，是ぜ日び日食にっしょく。帝みかど齋とき居きょ損そん膳ぜん，輟朝賀ちょうが，既すんで而不食しょく。癸みずのと未み，帝みかど御ご大明だいめい，受諸王おう百官ひゃっかん賀が。丁ちょう亥い，帝みかど不ふ豫よ。辛からし丑うし，崩くずし於光天てん官かん，年ねん三さん十じゅう有ゆう五ご，在位ざいい九きゅう年ねん。癸みずのと卯う，葬そう起おこり輦谷。三さん月がつ乙未おとみ，上うえ尊たかし諡おくりな曰聖文ぶん欽孝皇帝こうてい，廟びょう號ごう仁じん宗むね，國語こくご曰普顏がお篤あつし皇帝こうてい。

　　史し臣しん曰：「仁ひとし宗孝むねたか慈恭儉きょうけん，不ふ邇聲色しょく，不ふ殖ふえ貨利。侍さむらい宗むね戚勳舊きゅう，始終しじゅう以禮，大臣だいじん親おや老ろう，時じ加か恩おん齎。有司ゆうし奏そう大だい辟，輒惻怛移時じ，晉すすむ寧やすし侯こう甲かぶと兄弟きょうだい五ご人にん，俱坐法ほう死し，帝みかど憫之，宥なだめ一いち人にん以養其父母ちちはは。崇たかし尚なお儒學じゅがく，興きょう科か舉之法ほう，得とく士し為ため多た，可か謂いい元之もとゆき令れい主しゅ矣。然しか受制母后ぼこう，嬖倖之の臣しん見み權けん用事ようじ，雖稔知ち其惡，猶なお曲きょく貸かし之の。常つね問とい右みぎ丞相じょうしょう阿おもね散ち曰：‘卿きょう日び行ぎょう何事なにごと。’對たい曰：‘臣しん等とう奉行ぶぎょう詔みことのり旨むね而已。’帝みかど曰：‘祖宗そそう遣や訓くん，朝廷ちょうてい大法たいほう，卿きょう輩やから狁不遵守じゅんしゅ，況きょう朕ちん之の詔みことのり旨むね乎。’其切責せめ宰相さいしょう如此。有ゆう君くん而無臣しん，惜哉！」