新元しんもと史し/卷まき052

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河かわ渠みぞ一いち

河かわ渠みぞ一いち[编辑]

河かわ防ぼう至いたり正せい河かわ防ぼう記き[编辑]

至いたり元もと十じゅう七なな年ねん，世せい祖そ以學士がくし都と實じつ為ため詔みことのり討使，佩虎符ふ，尋ひろ河かわ源げん於萬まん里り之の外そと。都と實じつ既すんで受命じゅめい，道みち河かわ州しゅう，至いたり州しゅう東ひがし六ろく十里之寧河驛。驛えき西南せいなん有山ありやま，曰殺馬ば關せき，行ぎょう一いち日にち至いたり巔。西上にしがみ愈いよいよ高こう，四閱月始抵河源。是ぜ冬ふゆ，還かえ報むくい，並なみ圖ず其城傳でん位置いち以聞。其後，翰林かんりん學士がくし潘はん昂のぼる霄從都と實みのる之の弟おとうと曰闊闊出者しゃ得とく其說，撰せん為ため《河かわ源げん志こころざし》。臨川りんせん朱しゅ思おもえ本ほん又また從したがえ八里吉思家，得とく帝みかど師し民みん所藏しょぞう梵字ぼんじ書しょ，而以華はな文ぶん譯やく之の，與あずか昂のぼる霄所志こころざし，互有詳しょう略りゃく。舊きゅう史し採と《河かわ源げん志こころざし》，而以思おもえ本ほん之これ說せつ注ちゅう其下，參差しんし不一ふいつ。

按河源げん在ざい吐蕃朵甘思おもえ西にし鄙ひなび，有泉ありいずみ百ひゃく餘あまり泓，沮洳散渙きよし，弗どる可か逼視，方ぽう可か七なな八はち十じゅう里り，履くつ高山こうざん下瞰かかん，燦若列れつ星ぼし，故こ名めい敦あつし淖爾。火ひ敦あつし，譯わけ言げん星宿せいしゅく；淖爾，譯わけ言げん海うみ子こ也。思おもえ本ほん曰：河かわ源げん在中ざいちゅう州しゅう西南せいなん，直ちょく四川馬湖蠻部之正西三千餘里，雲南うんなん麗うらら江こう宣撫せんぶ司し之の西北せいほく千せん五ご百ひゃく餘あまり里さと，帝みかど師し撒思加地かじ之の西南せいなん二に千せん餘あまり里さと。水みず從したがえ地ち湧出ゆうしゅつ如井。其井百ひゃく餘あまり，東北とうほく流りゅう百ひゃく餘あまり里さと，彙為大澤おおさわ，曰火敦あつし淖爾。羣流奔輳，近きん五ご七なな里り，匯二に巨きょ澤さわ，名めい阿おもね剌淖爾なんじ。自じ西にし而東，連れん屬ぞく吞噬，行ぎょう一いち日にち。迤邐東ひがし匯成川かわ，號ごう赤あか賓まろうど河かわ。又また二に三さん日にち，有水ありみず西南せいなん來らい，名めい亦また裡うら出で，水みず與あずか赤あか賓まろうど河合かわい。又また三さん四よん日にち，有水ありみず南みなみ來らい，名めい忽ゆるがせ闌たけなわ水すい。又また有水ありみず東南とうなん來らい，名めい耶裏術じゅつ。水みず合流ごうりゅう入にゅう赤あか賓まろうど河かわ，其流寢ね大だい，始はじめ名めい黃河こうが，然しか水みず猶なお清きよし。思おもえ本ほん曰：忽ゆるがせ闌たけなわ河かわ源げん，出自しゅつじ南山なんざん，其地大山おおやま峻嶺しゅんれい，綿めん亙わた千里せんり，水流すいりゅう五ご百ひゃく餘あまり里さと，注ちゅう耶裏出で河かわ。耶裏出で河かわ源げん，亦また出自しゅつじ南山なんざん，西北せいほく流りゅう五ご百ひゃく里り，始はじめ與あずか黃河こうが合あい。又また一いち二に日にち，歧為八はち九きゅう股また，名めい耶孫斡倫，譯わけ言げん九きゅう渡わたり。通廣みちひろ五ご、七里しちり，可か度ど馬ば。又また四よん五ご日にち，水みず渾濁，土人どじん抱だき革かわ囊，騎き過か之これ。自じ是ぜ兩りょう山やま夾束。廣こう可か一いち里り、二に里り或ある半はん里さと，其深叵測。朵甘思おもえ東北とうほく有ゆう大雪山たいせつざん，最高さいこう，番ばん語ご騰あが乞裏塔とう，即そく崑こん崙，山腹さんぷく至いたり頂いただき，皆みな雪ゆき，冬ふゆ夏なつ不ふ消けし。自じ九渡水至崑崙，行ぎょう二に十じゅう日にち。思おもえ本ほん曰：自じ渾水東北とうほく流りゅう二に百ひゃく餘あまり里さと，與あずか懷ふところ裏うら火ひ圖ず河合かわい。懷ふところ裏うら火ひ圖ず河かわ源げん自じ南山なんざん，水みず正せい北きた偏へん西にし流りゅう八はち百ひゃく餘あまり里さと。與あずか黃河こうが合あい。又また東北とうほく流りゅう百ひゃく餘あまり里さと，過か郎ろう麻あさ哈地。又また正せい北きた流りゅう百ひゃく餘あまり里さと，乃折而西北きた流りゅう二に百ひゃく餘あまり里さと，又また折おり而正北きた流りゅう百ひゃく餘あまり里さと，又また折おり而東流りゅう，過か崑崙山こんろんざん下か。番ばん名めい亦また耳みみ麻あさ不ふ剌山。其山高だか峻たかし非常ひじょう，山麓さんろく綿めん亙わた五ご百ひゃく餘あまり里さと，河かわ隨ずい山やま足あし東ひがし流りゅう，過か撒思加か闊即、闊提地ち。

河かわ行ぎょう雪山ゆきやま南みなみ半日はんにち，又また四よん五ご日にち，至いたり地名ちめい闊即及闊提ひっさげ，二に地相ちそう屬ぞく。又また三さん日にち，地名ちめい哈剌別べつ裏うら赤あか爾なんじ，四よん達たち之の衝也，多た寇盜，有ゆう官かん兵へい鎮之。近きん北きた二に日にち，河水こうすい過か之これ。思おもえ本ほん曰：河かわ過か闊提，與あずか亦また西にし八はち思おもえ今こん河合かわい。亦また西にし八思今河源自鐵豹嶺之北，正せい北きた流りゅう凡五百ひゃく餘あまり里さと，與あずか黃河こうが合あい。雪山ゆきやま以西いせい，人にん鮮少せんしょう，吐番部落ぶらく多た處ところ山南さんなん。山やま不ふ穹峻，水みず亦また散漫さんまん，獸しし有ゆう髦牛，野の馬ば、狼おおかみ、狍、羱羊之これ類るい。其東，山やま益えき高だか，地ち益えき漸やや下した，岸きし狹せま處しょ，狐きつね可か越えつ而過之の。行くだり五ご六ろく日にち，有水ありみず西南せいなん來らい，名めい納おさめ鄰哈刺とげ，河かわ譯やく言げん細ほそ黃河こうが也。思おもえ本ほん曰：哈剌河かわ自白じはく狗いぬ嶺みね之の北きた。水みず西北せいほく流りゅう五ご百ひゃく餘あまり里さと，與あずか黃河こうが合あい。又また兩日りょうじつ，有水ありみず南みなみ來らい，名めい乞裏馬出うまだし河かわ。二水にすい合流ごうりゅう入にゅう河かわ。思おもえ本ほん曰：自じ哈刺河かわ與あずか黃河こうが合あい，正せい北きた流りゅう二に百ひゃく餘あまり里さと，過か阿おもね以伯站，折おり而西北きた流りゅう，經けい崑こん崙之北きた二に百ひゃく餘あまり里さと，與あずか乞裏馬出うまだし河合かわい。乞裏馬出うまだし河かわ源げん自じ成なり、茂しげ州しゅう之の西北せいほく，岷山之の北きた，水北すいほく流りゅう，即そく古こ當とう州しゅう境さかい，正せい北きた流りゅう四よん百ひゃく餘あまり里さと，折おり而西北きた流りゅう，又また五ご百ひゃく餘あまり里さと，與あずか黃河こうが合あい。

河かわ水北すいほく行ゆき，轉うたて西にし流りゅう，過か雪山ゆきやま北きた，一向いっこう東北とうほく流りゅう，約やく行くだり半月はんつき，至いたり貴德たかのり州しゅう，地名ちめい必赤裡うら，始はじめ有ゆう州しゅう治ち官かん府ふ。州しゅう隸吐蕃しげる等とう處しょ慰司，司つかさ治おさむ河かわ州しゅう。又また四よん五ご日にち，至いたり積せき石いし州しゅう，即そく後世こうせい所しょ誤認ごにん之の小しょう積せき石山いしやま，非ひ《禹貢》導しるべ河かわ之の積せき石せき。五日いつか，至いたり河かわ州しゅう安やす鄉關きょうかん。一いち日にち，至いたり打だ羅ら坑あな。東北とうほく行ゆき一いち日にち，洮河水南すいなん來らい入にゅう河かわ。思おもえ本ほん曰：自じ乞裏馬出うまだし河かわ與あずか黃河こうが合あい，又また西北せいほく流りゅう，與あずか鵬おおとり贊さん河合かわい。折おり而西北きた流りゅう三さん百ひゃく餘あまり里さと，又また折おり而東北とうほく流りゅう，過か西にし寧やすし州しゅう、貴德たかのり州しゅう、馬うま嶺みね凡八百ひゃく餘あまり里さと，與あずか邈水合あい。又また東北とうほく流りゅう，過か土橋どばし站古積せき石いし州しゅう來らい羌城、廓くるわ州しゅう構米站界都城みやこのじょう凡五百ひゃく餘あまり里さと，過か河かわ州しゅう與野よの龐河合あい。又また東北とうほく流りゅう百ひゃく餘あまり里さと，過か踏白城じょう銀川ぎんかわ坫，與あずか湟水、浩ひろし亹河合あい。又また東北とうほく流りゅう百ひゃく餘あまり里さと，與あずか洮河合あい。以上いじょう皆みな番地ばんち。

又また一いち日にち，至いたり蘭あららぎ州しゅう，過か北きた卜ぼく渡わたり，至いたり鳴な沙すな河かわ，過か應おう吉里よしざと州しゅう。正せい東ひがし行ぎょう，至いたり寧やすし夏なつ府ふ南みなみ。東ひがし行ぎょう，即そく東ひがし勝かつ州しゅう，隸大同だいどう路ろ。自發じはつ源みなもと至いたる漢かん地ち，南北なんぼく澗溪，細流さいりゅう旁つくり貫つらぬけ，莫知紀き極きょく。山やま皆みな石せき，至いたり小しょう積せき石せき方かた林りん木き暢茂のぶしげ。世よ言げん河かわ九きゅう折おり，彼かれ地ち有ゆう二に折おり，乞裏馬出うまだし河かわ一いち折おり也。貴德たかのり州しゅう二に折おり也，過か此始入いれ小しょう積せき石せき。思おもえ本ほん曰：自じ是ぜ逕蘭州しゅう，又また東北とうほく流りゅう，至いたり寧やすし夏なつ府ふ。出で塞ふさが過か遊牧ゆうぼく地ち，凡八百ひゃく餘あまり里さと。過か豐ゆたか州しゅう西にし受降城じょう，折おり而正東ひがし流りゅう，過か遊牧ゆうぼく地ち古こ天德てんとく軍ぐん中ちゅう受降城じょう、東ひがし受降城じょう，凡七なな百ひゃく餘あまり里さと。折おり而正南みなみ流りゅう，過か大同だいどう路ろ雲くも內州、東ひがし勝かつ州しゅう，與あずか黑河くろかわ合あい。又また正南せいなん流りゅう，過か保德やすのり州しゅう。葭かや州しゅう及興州しゅう境さかい，又また過か臨州，凡千餘里より，與あずか保德やすのり州しゅう乞那河合かわい。又また南みなみ流りゅう三さん百ひゃく里り，與あずか延のべ安やす河合かわい。又また南みなみ流りゅう三さん百ひゃく里り，與あずか汾河合あい。又また南みなみ流りゅう二に百ひゃく里り，過か河中かわなか府ふ。遇ぐう潼關與太よた華はな大山おおやま綿めん亙わた，水勢すいせい不可ふか復ふく南みなみ，乃折而東流りゅう。大概たいがい河かわ源げん東北とうほく流りゅう，所しょ歷れき皆みな西番にしのばん地ち，至いたり蘭あららぎ州しゅう凡四千せん五ご百ひゃく餘あまり里さと，始はじめ入にゅう中國ちゅうごく。又また東北とうほく流りゅう過か沙漠さばく地ち，凡二に千せん五ご百ひゃく餘あまり里さと。始はじめ入にゅう河かわ東境ひがしさかい內。又また南みなみ流りゅう至いたり河中かわなか，凡千八はち百ひゃく餘あまり里さと。通計つうけい九きゅう千せん餘あまり里さと。蓋ぶた舊きゅう史し所しょ述じゅつ如此。

至いたり我わが大だい清きよし乾いぬい隆たかし間あいだ平ひら西域せいいき，始はじめ知ち蔥嶺為ため河かわ之の初はつ源みなもと，都みやこ實みのる所しょ訪おとずれ星宿せいしゅく海うみ及重出じゅうしゅつ之の源みなもと耳みみ。然しか河かわ為ため中國ちゅうごく患千有餘ゆうよ年ねん，世せい祖そ欲よく窮きゅう其源委い，以施疏導之これ方かた，勤つとむ民みん之の至いたり意い也。今こん撮つまみ其大要たいよう，載の於篇首へんしゅ，以備一いち代だい之の掌てのひら故こ云うん。

自じ河かわ徙而南みなみ，衝決之の患。至いたり元もと而日甚。其治河かわ之の法ほう，凡物料りょう工程こうてい輪わ運うん，以至疊たたみ埽修堤つつみ之の事こと，皆みな沿襲宋そう金きん舊法きゅうほう，承うけたまわ用よう百ひゃく年ねん，著しる為ため條じょう格かく者しゃ也。

河かわ防ぼう之の令れい九きゅう：

一いち、每歲まいさい進すすむ舊きゅう部ぶ官かん一員いちいん，沿河上下じょうげ。兼けん行戶ゆくど、工こう部ぶ事ごと，督とく令れい分ぶん治ち都と水すい監かん及京府ふ州しゅう縣守あがたもり漲みなぎ，從したがえ實じつ規ぶんまわし措，修おさむ固かた堤つつみ岸がん。如所行ぎょう事務じむ，有可ゆか久ひさし為ため例れい者しゃ，即そく關せき移うつり本部ほんぶ，仍候安やす流りゅう，就便檢けん覆くつがえ。次つぎ年春としはる，工こう物ぶつ料りょう訖，即行そっこう還かえ職しょく。

一いち、分ぶん治ち都と水すい監かん及勾當とう河かわ防ぼう事務じむ，並なみ馳はせ驛えき。

一いち、州しゅう縣けん提つつみ舉管勾河防ぼう官かん，每まい六ろく月がつ一いち日にち至いたり八はち月がつ終おわり，各かく輪わ一員いちいん守もり漲みなぎ，九きゅう月がつ一いち日にち還かえ職しょく。

一いち、沿河兼帶けんたい河かわ防ぼう知ち縣けん官かん，雖非漲みなぎ月つき，亦また輪わ上じょう提ひさげ控ひかえ。一應いちおう沿河州しゅう縣けん。若わか規ぶんまわし措有方かた，能のう禦大患たいかん，及守護しゅご不ふ謹，以致堤つつみ岸がん疏虞者しゃ，具ぐ以奏聞そうもん。

一いち、河かわ橋きょう埽兵，遇ぐう天壽てんじゅ聖せい節ふし及元日び、清明せいめい、冬至とうじ、立春りっしゅん俱給假かり一いち日にち。祖父母そふぼ、父母ちちはは吉凶きっきょう二に事こと，並なみ自身じしん婚こん娶めと，俱紿假かり三さん日にち。妻子さいし吉凶きっきょう二に事こと。給きゅう假かり二に日にち。其河水すい平安へいあん月がつ分ぶん，每月まいつき朔ついたち給きゅう假かり一いち日にち。若わか水勢すいせい危險きけん，不用ふよう此令。

一いち、沿河州しゅう府ふ遇ぐう河かわ防ぼう危險きけん之の際さい，若わか兵力へいりょく不足ふそく，勸すすむ率りつ水みず手しゅ人じん戶と協きょう濟ずみ救護きゅうご至いたり，有ゆう乾いぬい濟ずみ或ある難なん迭辦須當進しん暫差伕役者しゃ，州しゅう府ふ提つつみ控ひかえ官かん與あずか都と水すい監かん及巡河かわ官かん同どう為ため計けい度ど，移うつり下司くだし縣けん，以遠いえん近きん量りょう數すう差遣さけん。

一いち、河かわ防ぼう軍ぐん疾やまし疫須醫い治者ちしゃ，都と水すい監かん移うつり文ぶん近きん京きょう州しゅう縣けん，約やく取と所ところ須藥物ぶつ並なみ從したがえ官給かんきゅう。

一いち、河かわ埽堤岸がん遇ぐう霖雨水あまみず漲みなぎ變へん時じ，分ふん都と水すい司し與あずか都と巡じゅん河かわ官かん往來おうらい提ひさげ控ひかえ，官かん兵へい多おお方かた用心ようじん固かた護まもる，無む致為害がい，仍每月がつ具ぐ河かわ埽平安へいあん申さる覆くつがえ尚書しょうしょ省しょう工こう部ぶ呈てい閱。

一いち、除じょ滹沱、漳、沁等河かわ有ゆう埽兵守護しゅご外がい，其餘大川おおかわ巨きょ浸ひた如有臥が著ちょ沖おき刷すり危險きけん等とう事ごと，並なみ仰おおせ所管しょかん官かん事ごと約やく置おけ差さ夫おっと作さく急きゅう救護きゅうご，其盧溝みぞ河かわ行ぎょう流ながれ去ざ處しょ，每まい遇ぐう泛漲，當該とうがい縣けん官かん與あずか崇たかし福ぶく埽官司し一同いちどう協きょう濟ずみ防護ぼうご，差さ官かん一員系監勾之職或提控巡檢。

每歲まいさい守もり漲みなぎ河かわ防ぼう之これ制せい六ろく：

一いち、開ひらき河かわ。宜むべ於上流りゅう相しょう視し地形ちけい，審しん度ど水性すいせい，測はか望もち斜はす高だか，於冬月がつ記き料りょう，至いたり次じ年春としはる興きょう役やく開ひらき挑，須漲月がつ前まえ終おわり畢。待まち漲みなぎ水みず發はつ隨ずい勢いきおい去さ隔へだた堰せき水すい入いれ新しん河かわ。又また須審勢ぜい疏導。假かり如河勢ぜい丁字ていじ正せい撞堤岸がん，剪灘截嘴，撩淺開ひらき挑費功こう不便ふべん，但ただし可か解かい目前もくぜん之の急きゅう，亦また有久ありひさ而成河かわ者しゃ，如相地形ちけい，取と直ちょく開ひらき挑，先さき須鈐𠮴〈謂いい上下じょうげ平岸ひらぎし口こう也。〉，分水ぶんすい勢ぜい，以解堤つつみ岸がん之の危。若わか欲ほし全ぜん奪だつ大勢おおぜい，更さら於對岸たいがん拋下木石ぼくせき修おさむ刺とげ，於刺影かげ水勢すいせい漸やや以木石せき鈐固河口かこう，因いん復ふく填はま實じつ，損そん而復修おさむ，至いたり堅固けんご不ふ摧塌，則のり新しん河かわ迤邐暢とおる流りゅう，舊きゅう河かわ自然しぜん淤實。

一いち、閉河。先行せんこう檢けん視し舊きゅう河岸かわぎし口こう，兩りょう岸きし植しょく立たて表ひょう桿，次じ系けい影かげ水すい浮橋うきはし，使役しえき夫おっと得とく於兩岸がん通過つうか。於上口こう下か撒星樁，拋下木石ぼくせき鎮壓ちんあつ狂瀾きょうらん，然しか後ご兩りょう岸きし各かく進すすむ草くさ紝三道どう、土ど紝兩道どう，又また於中心ちゅうしん拖下席せき袋ぶくろ土ど包つつみ。若わか兩りょう岸きし進すすむ紝。至近しきん合あい龍りゅう門もん時じ，得用とくよう手持てもち土ど袋ぶくろ土ど包つつみ拋下，兼けん鳴な羅ら鼓こ以敵河かわ勢ぜい。既すんで閉後，於紝前ぜん卷まき攔頭壓あつ埽於紝上，修おさむ壓あつ口こう堤つつみ。若わか紝眼水出みずいで。再さい以膠土ど填はま塞ふさが牢固ろうこ，仍設邊べ檢けん以防滲漏。

一いち、定平さだへい。先さき正せい四方しほう位置いち，於四角しかく各かく立だて一いち表ひょう，當とう心しん安置あんち水平すいへい。其制長ちょう二に尺しゃく四よん寸すん，廣こう二に寸すん五ご分ふん，高こう二に寸すん。先立さきだて樁於下か，高こう四よん尺しゃく，纂在內，樁上橫よこ坐すわ水平すいへい。兩頭りょうとう各かく開ひらき小池こいけ，方ぽう一いち寸すん七なな分ふん，深ふか一いち寸すん三さん分ふん，注水ちゅうすい於中，以取平たいら。或ある中なか心こころ又また開ひらき池ち者しゃ，方ぽう深ふか同どう，身み內開槽そう子こ，廣こう深ふか各かく五ご分ふん，令れい水みず通過つうか兩頭りょうとう池子いけご內，各かく用水ようすい浮子一いち枚まい，方ぽう一いち寸すん五ご分ふん，高こう一寸いっすん二に分ふん，刻こく上じょう頭あたま，例れい薄うす只ただ厚あつ一いち分ふん，浮於池ち內，望もち兩頭りょうとう水すい浮之首くび，參まいり直ちょく遙はるか對立たいりつ表ひょう處しょ，於表身み畫が記き，即そく知ち地形ちけい高下こうげ。

一いち、修おさむ砌みぎり石いし岸がん。先さき開ひらけ掘ほ檻おり子こ嵌はま坑あな，若わか用よう闊二に尺しゃく，深ふか二に丈たけ，開ひらけ與あずか地平ちへい。順じゅん河かわ先さき鋪しき線せん道どう板いた一いち，次じ立りつ簽樁八はち，各かく長二ちょうじ丈たけ，內打釘くぎ五ご尺しゃく入地いりじ，外そと有ゆう一いち丈たけ五ご尺しゃく。於簽樁上，安やす跨またが塌木板ばん六ろく，每まい留とめ三板さんぱん，每まい板いた鑿二に孔あな中間ちゅうかん。撒子木き六ろく，於撒子こ木上きのうえ勻鋪稈草柬。先さき用よう整せい石せき修おさむ砌みぎり，修おさむ及一丈たけ。後こう用よう荒石あらいし再さい砌みぎり一いち丈たけ。一いち例れい高だか五ご尺しゃく。第だい二に層そう，除じょ就簽柱ばしら外がい，依よ前ぜん鋪しき塌木板ばん、撒子木き、稈草，再さい用よう石段いしだん修おさむ砌みぎり，高こう五ご尺しゃく。第だい三さん層そう，亦また如之，高こう一いち丈たけ。功こう就，通つう高だか二に丈たけ。

一いち、卷まき埽。其制亦また昉於竹ちく楗石菑，今こん則のり布ぬの薪たきぎ芻以卷まき之の，環たまき竹ちく緪以固かた之これ，絆きずな木き以系之の，掛かけ石せき以墜之の，舉其一いち二に以稱之の，則のり曰「𡘝」〈音おと混こん〉。𡘝既すんで下か，又また填はま以薪芻，謂いい之の盤ばん簟。兩りょう𡘝之これ交，或ある不ふ相あい接せっ，則包のりかね以網子こ索さく，塞ふさが以稈草そう，謂いい之の孔あな塞ふさが盤ばん簟。孔あな塞ふさが之これ費ひ，有ゆう過か於埽槊者。蓋ぶた隨ずい水すい去さ者しゃ太ふとし半はん故こ也。其𡘝最下さいか者しゃ，謂いい之の撲なぐ崖がけ草そう，又また謂いい之の入水じゅすい埽。𡘝之これ最上さいじょう者しゃ，謂いい之の爭そう高だか埽。河かわ勢ぜい向むかい著ちょ，恐おそれ難がた固かた護まもる，先さき於堤下か掘ほ坑あな卷まき埽以備之，謂いい之の卷まき埽。疊たたみ二に三さん四よん五ご而卷者しゃ，以沙壤疏惡あく，近きん水みず即そく潰つぶせ，必借埽力以捍之の也。下した𡘝既すんで朽くち，則のり水すい刷すり而去，上うえ𡘝壓あつ之の，謂いい之の實じつ墊。又また卷まき新しん埽以壓あつ於上，俟定而後止どめ。凡埽去水すい近こん者しゃ，謂いい之の向むかい著ちょ。去さ水みず遠とお者しゃ，謂いい之の退すさ背せ。水みず入にゅう埽下者しゃ，謂いい之の緊刷。若わか暴水漲みなぎ溢，下しも埽既去さ，上うえ埽動搖どうよう，謂いい之の埽喘。

一いち、築城ちくじょう。此非河かわ事ごと，以水圯近河かわ，州しゅう縣けん亦また或ある用よう之の。城しろ高だか四よん十じゅう尺しゃく則そく加か厚あつ二に十じゅう尺しゃく。其上斜はす收おさむ，減げん高だか之の半はん。若わか高だか增ぞう一いち尺しゃく，則のり其下亦また加か厚あつ一いち尺しゃく，上うえ收おさむ亦また減げん其半。若わか高だか減げん，則のり亦また減げん之の。開ひらき地ち深ふか五ご尺しゃく，其廣視し城じょう之の厚あつ。每まい身み一いち十じゅう五ご步ほ，栽永定てい柱はしら一いち，長ちょう視し城じょう之これ高だか，徑みち一いち尺しゃく至いたり一いち尺しゃく二に寸すん。夜よる乂柱各かく二に。每まい築ちく高だか二に尺しゃく，橫よこ用よう經木きょうぎ一いち。甕う城じょう至いたり馬面うまづら之の類るい，準じゅん此。他た如工程こうてい之の限かぎり，輸運之の直じき，與あずか夫おっと合ごう用よう物ぶつ料りょう之の多寡たか，皆みな綜核詳密しょうみつ，品ひん式しき粲つばら然しか，為ため都と水みず司し奉行ぶぎょう之の條例じょうれい云うん。

世よ祖そ中ちゅう統すべ以前いぜん，河かわ患無可か考こう。至いたり元もと九きゅう年ねん七なな月がつ，衛まもる輝てる路ろ新鄉しんごう縣けん河かわ決けつ北岸ほくがん五ご十じゅう餘よ步ほ。八はち月がつ，北岸ほくがん又また決けつ八はち十じゅう二に步ほ，去さ廣こう盈みつる倉くら僅三さん十じゅう步ほ。遣や都と水すい監かん丞すすむ馬うま良りょう弼偕本ほん路ろ官かん相しょう視し，僉丁夫おっと修築しゅうちく之の。二に十じゅう三さん年ねん十じゅう月がつ，河かわ決けつ開封かいふう、祥さち符ふ、陳ちん留とめ、杞、太ふとし原はら、通つう許もと、鄢陵、扶溝、洧川、尉じょう氏し、陽ひ武たけ、延のべ津つ、中ちゅう牟、原武はらたけ、睦むつみ州しゅう十じゅう五ご處しょ，僉南京きょう民夫たみお二に十じゅう萬まん四よん千せん三さん百ひゃく二に十じゅう三さん人にん分ぶん築ちく堤防ていぼう。二に十じゅう五ご年ねん正月しょうがつ，河かわ決けつ襄じょう邑，又また決きま太ふと康やすし、通つう許もと、杞三さん縣けん，陳ちん、穎二に州しゅう皆みな水すい，命いのち本道ほんどう宣せん慰司督とく修おさむ堤つつみ之これ役やく。二に十じゅう九きゅう年ねん三さん月がつ，敕都水すい監かん二に十じゅう八はち年ねん，丞相じょうしょう完かん澤さわ奏そう置おけ都と水すい監かん於京師し，歲さい以官一いち、令れい史し二に、奏そう差さ二に、壕ごう寨官二に，分ふん監かん於汴治ち決河けっか。分ぶん視し黃河こうが河かわ堤つつみ堰せき。

元げん貞さだ二に年ねん九きゅう月がつ，河かわ決けつ杞、封ふう邱、祥さち符ふ、寧やすし陵りょう，襄じょう邑五ご縣けん。大德だいとく元年がんねん七なな月がつ，河かわ決けつ杞縣蒲がま口こう，遣や尚書しょうしょ耶懷、御ご史し劉りゅう賡與廉かど訪おとずれ使し尚なお文相ぶんしょう視し，籌長久之ひさゆき計けい。文ぶん上じょう言げん：「長ちょう河かわ萬まん里り，湍猛東ひがし注ちゅう，盟めい津つ以下いか，地平ちへい土ど疏，盪徙不ふ常つね，失しつ禹故過か，流りゅう患中土ど。治ち得とく其當，則のり力りょく省しょう而患遲おそ，失しつ之の則のり功こう費ひ而患速そく。今こん陳ひね留とめ抵東西とうざい百ひゃく有餘ゆうよ里さと，南岸なんがん故こ河口かこう十じゅう一いち，巳み塞ふさが者しゃ二に，自じ涸者六ろく，通つう水みず者しゃ三さん，岸きし高だか於水六ろく七なな尺しゃく或ある四よん五ご尺しゃく。北岸ほくがん高だか於水，僅三さん四よん尺しゃく，或ある高下こうげ與あずか水みず等とう。大だい較南高だか於北，約やく八はち九きゅう尺しゃく，堤つつみ安やすし得とく不ふ決けつ，水みず安やす得え不ふ北きた也。蒲がま口こう今こん決けつ千せん有餘ゆうよ步ふ，迅快東ひがし行ぎょう，得とく河かわ舊きゅう瀆，行ぎょう二に百ひゃく里り，至いたり歸き德とく，復ふく會かい正せい流りゅう。若わか強つよ加か涸遏，上うえ決けつ下か潰つぶせ，終おわり究きわむ無む成なり。揆之今日きょう河北かほく郡ぐん縣けん順じゅん水すい之これ性せい，遠とお築ちく長堤ちょうてい以御氾濫はんらん。歸かえり德とく、徐じょ、邳聽民みん避衝決けつ，圖ず所しょ安やす，量りょう給きゅう淤田，俾為永なが業ぎょう。他た決けつ視し此。即そく救すくい患之，浪なみ策さく也。蒲がま口こう不ふ塞ふさが便びん。。」議ぎ上じょう，山東さんとう長ちょう吏爭言ごと，若わか不ふ塞ふさが蒲がま口こう，河北かほく良田よしだ必盡化か魚ぎょ鱉之區く，廷議從したがえ之これ，命いのち河南かなん行ゆき省しょう官かん董ただし其役，凡修七なな提ひさげ二に十じゅう有ゆう五ご處しょ，總そう三さん萬まん九きゅう千せん九きゅう十じゅう二に歲さい，用よう葦あし束たば四よん十じゅう萬まん四よん千せん，徑みち尺じゃく柱ばしら二に萬まん四よん千せん七なな百ひゃく二に十じゅう，役やく民夫たみお七なな千せん九きゅう百ひゃく餘人よにん。明年みょうねん，蒲がま口こう復ふく決けつ。自じ是ぜ，修築しゅうちく之の役やく無む歲とし無む之これ。

至大しだい二に年ねん七なな月がつ，河かわ決けつ封ふう邱縣。三さん年ねん十じゅう一いち月がつ，河北かほく河南かなん道どう廉れん訪おとずれ司し言げん：

黃河こうが決けつ溢，千里せんり蒙こうむ害がい。浸ひた城郭じょうかく，漂室廬いおり，壤禾稼，百姓巳罹其毒，然しか後ご訪おとずれ求もとめ修治しゅうじ之これ法ほう。而且眾議紛まがえ紜，互陳利害りがい，當事とうじ者しゃ疑惑ぎわく不ふ決けつ，必須ひっす上じょう請。比ひ至いたり議定ぎてい，其害滋しげる大だい，所謂いわゆる不ふ預あずか巳み然しか之これ弊へい。大抵たいてい黃河こうが伏ふく槽そう之の時とき，水勢すいせい似に緩なる，觀かん之の不足ふそく為ため害がい，一いち遇ぐう霖潦，湍良邊べ猛たけし。自じ孟はじめ津つ以東いとう，土ど性せい疏薄，崩潰ほうかい決けつ溢，可か翹足而待。

近きん歲とし潁、亳之民みん，幸こう河北かほく徙，有司ゆうし不能ふのう遠慮えんりょ，失しつ於規畫が，使つかい陂濼盡つき為ため陸地りくち。東ひがし至いたり杞縣三さん汊口，播河為ため三さん。官吏かんり建言けんげん，相そう次じ湮塞南北なんぼく二に汊，使つかい三河之水合而為一。下流かりゅう既すんで不通ふつう暢とおる，自然しぜん上じょう溢。由よし是ぜ觀かん之の，是ぜ自じ奪だつ分ぶん洩も之これ利也としや。故こ上下じょうげ潰つぶせ決ぎま，為ため害がい日び甚。今こん水勢すいせい趨下，有ゆう復ふく入にゅう鉅野、梁やな山さん之の意い。苟不為ふため遠とお計けい，不出ふしゅつ數すう年ねん，曹、濮、濟すみ、鄆蒙害がい必矣。

今いま之の所謂いわゆる治水ちすい者しゃ，議論ぎろん雖多，並無ならびな良策りょうさく。水みず監かん之の官かん，既すんで非ひ精選せいせん，知ち河かわ之の利害りがい者しゃ，百ひゃく無む一いち二に。雖每年まいとし累るい驛えき而至，名めい為ため巡じゅん河かわ，徒と應おう故事こじ。問とい地形ちけい之の高下こうげ，則のり懵不知ふち。訪おとずれ水勢すいせい之の利り病びょう，則のり非ひ所しょ習。乃或妄興事端じたん，勞ろう民みん動どう眾，阻違水性すいせい，翻こぼし為ため後患こうかん。

為ため今いま之の計けい，莫若於汴粱置都と水分すいぶん監かん，妙みょう選せん廉れん幹みき、深ふか知ち水すい患之人じん，專任せんにん其事。可か疏者疏之，可か增ぞう者しゃ增ぞう之の，可か防ぼう者しゃ防ぼう之の。職掌しょくしょう既すんで專せん。則のり事ごと功こう可か立りつ。較之河かわ已やめ決ぎま溢，民みん已やめ被害ひがい，然しか後こう鹵莽從事じゅうじ以勞民みん者しゃ，不可ふか同日どうじつ而語矣。

中書ちゅうしょ首くび下か其議於都水すい監かん。先さき是ぜ省しょう臣しん奏そう升ます都と水すい監かん為ため正せい三さん品ひん，添設二に員いん，鑄い分ぶん監かん印しるし，巡視じゅんし御ご河かわ，就令提ひさげ點てん黃河こうが之の事こと。至いたり是ぜ，本ほん監かん議ぎ：「為ため御ご河添こうぞえ官かん鑄い印しるし，兼けん提ひさげ點てん黃河こうが，若わか分ぶん監かん在ざい彼かれ，則のり有ゆう妨さまたげ御ご河かわ公事こうじ。況きょう黃河こうが巳み有ゆう拘かかわ該官司つかさ正ただし官かん提ひさげ調ちょう，莫若使し分ぶん監かん者しゃ以十じゅう月がつ往，與あずか各かく處しょ官かん司し巡視じゅんし缺かけ壞，會計かいけい工程こうてい，俟年終おわり分ぶん監かん新官しんかん至いたり，則のり交割代だい還かえ，庶不相しょう誤あやま。」

工こう部ぶ言げん：「大德だいとく九きゅう年ねん，黃河こうが決けつ徙，逼近汴粱，幾いく至いたり浸ひた沒ぼつ。本ほん處しょ官吏かんり權けん宜むべ開ひらけ薰かおる盆ぼん口こう，分ふん入いれ巴ともえ河かわ，以殺其勢，遂とげ使し正せい河水こうすい緩なる，並なみ趨支沆。緣えん巴ともえ河かわ舊きゅう隘，不足ふそく吞伏。明年みょうねん急きゅう遣や蕭しょう都と水みず等とう閉塞へいそく，而其勢ぜい愈いよいよ大だい，卒そつ無む成功せいこう。致連年ねん為ため害がい，南みなみ至いたり歸き德とく，北きた至いたり濟ずみ寧やすし，盡つき患淪胥，欲ほし為ため經久つねひさ之の計けい，非ひ用よう通知つうち古今ここん水利すいり之の人ひと專任せんにん其事，終おわり無む補ほ益えき。河南かなん憲司けんじ所しょ言げん詳しょう悉，都と水すい監かん止とめ援舊例れい議ぎ擬なずらえ未み合ごう。如量設しつらえ專せん官かん，精選せいせん廉かど幹みき、深ふか知ち地形ちけい水勢すいせい者しゃ，任にん以河防ぼう之の職しょく，往來おうらい巡視じゅんし，以時疏塞，庶可除じょ異こと日び之の患。」省議しょうぎ及令都と水分すいぶん監かん專せん治ち河かわ防ぼう，任にん滿まん交代こうたい云うん。

延のべ祐ゆう元年がんねん八はち月がつ，河南かなん行ゆき省しょう言げん：「黃河こうが涸出之の地ち，水みず泊はく污地，多た為ため勢家せいけ所しょ據よりどころ，忽ゆるがせ遇ぐう泛溢，水無みずなし所しょ歸き。由よし此觀之の，非ひ河かわ侵おかせ人じん，人にん自じ侵おかせ水すい。擬なずらえ差さ知ち水利すいり都と水すい監かん官かん偕行，廉れん訪おとずれ司し相しょう視し，可か以疏辟堤障さわ，未み至いたり泛溢，先さき加か修治しゅうじ，用よう力りょく少しょう而成功せいこう多た。又また汴梁路ろ睢州諸處しょしょ，決けつ口數くちかず十じゅう，內開封かいふう縣けん小しょう黃村こうそん計けい會かい月がつ堤つつみ一道いちどう，所しょ擬なずらえ不一ふいつ，宜よろし委い行ぎょう省しょう官かん與本よもと道みち憲司けんじ、都と水分すいぶん監かん官かん及州縣けん正せい官かん，親おや歷れき按驗，從したがえ長講ちょうこう議ぎ。。」由ゆかり是ぜ遣や太ふと常つね丞すすむ郭かく奉たてまつ政せい、前ぜん都と水すい監かん丞すすむ邊べ丞すすむ務つとむ、都と水すい監かん卿きょう朵兒只ただ、河南かなん行ゆき省しょう石せき右みぎ丞すすむ、本道ほんどう廉れん訪おとずれ副使ふくし站木赤あか、汴梁路ろ判官ほうがん張はり承うけたまわ恩おん。上うえ至いたる河陰かいん，下しも至いたり陳ひね州しゅう，與あずか拘かかわ該州縣けん官かん沿河相しょう視し。開封かいふう縣けん小しょう黃河こうが口こう，測はか置おけ比ひ舊きゅう減げん六ろく尺しゃく，陳ちん留とめ，通つう許もと、太ふとし康かん舊きゅう有ゆう蒲がま葦あし之の地ち，後ご以塞西河にしがわ、塔とう河かわ諸口しょくち，以便種しゅ植うえ，故こ他た處しょ連年れんねん潰つぶせ決ぎま。

公おおやけ議ぎ：「治水ちすい之の道みち，惟おもんみ當とう順じゅん其性之の自然しぜん。黃河こうが遷徙不ふ常つね。每歲まいさい泛溢兩りょう岸きし，時じ有ゆう衝決。強つよ為ため閉塞へいそく，巳み及農時じ，科か樁僉。發はつ丁ひのと夫おっと，動どう至いたり數すう萬まん，所しょ費ひ不可ふか勝紀かつのり，民みん不堪ふかん命いのち。蓋ぶた自治じち之の法ほう，惟おもんみ宜よろし順じゅん水すい疏泄。今いま相しょう視し上じょう抵河陰かげ，下しも抵歸德とく。夏なつ水盛みずもり漲みなぎ，甚於常つね年とし，以小黃き河口かこう分ぶん洩も之これ故こ，並無ならびな衝決，此其明あかり驗けん也。若わか將はた小しょう黃村こうそん河口かこう堵と閉，必移患於鄰封。決けつ上流じょうりゅう南岸なんがん，則のり汴梁被害ひがい。決けつ下流かりゅう北岸ほくがん，則のり山東さんとう可か擾。事こと難なん兩全りょうぜん，當とう遺のこ小しょう就大。詳しょう視し陳ひね州しゅう，最さい為ため低てい窪くぼ被ひ水みず之の地ち。今こん歲とし麥むぎ禾不收おさむ，民みん飢かつえ特とく甚，請免陳ひね州しゅう差さ稅ぜい。賑にぎわい其饑民みん。陳ひね留とめ、通つう許もと、太ふとし康かん縣けん被災ひさい之の家いえ，依よ例たとえ取ど勘かん賑恤しんじゅつ。其小黃村こうそん河口かこう仍舊通どおり流りゅう，築ちく月つき堤つつみ及障水すい堤つつみ以資抵捍。別べつ難なん擬なずらえ議ぎ。」中書ちゅうしょ省しょう韙之，依よ議ぎ施行しこう。

至いたり五ご年ねん正月しょうがつ。河北かほく河南かなん道どう廉れん訪おとずれ副使ふくし奧おく屯たむろ言ごと：「近年きんねん河かわ決けつ杞縣小しょう黃き村口むらぐち，滔滔とうとう南みなみ流りゅう，莫能禦遏，陳ちん、穎瀕河かわ膏あぶら腴之地ち浸ひた沒ぼっ大半たいはん，百姓ひゃくしょう流亡りゅうぼう。今こん水みず迫はさま汴城。遠とお無數むすう里さと，倘值霖雨水あまみず溢。倉卒そうそつ何なん以為計けい。方今ほうこん農のう隙すき，宜よろし為ため講究こうきゅう，使つかい水すい歸き故こ道みち，達たち於江、淮，不ふ惟おもんみ陳ひね、潁之民みん得とく遂とげ其生，亦また可か除じょ汴梁異こと日び之の患。」於是大だい司つかさ農みのり下か都と水すい監かん移うつり文ぶん分ぶん監かん修治しゅうじ，自じ六ろく年ねん十じゅう一いち月がつ一いち日興にっこう工こう，至いたり七なな年ねん三さん月がつ九きゅう日にち工こう畢，北きた至いたる槐えんじゅ疙疽兩りょう舊きゅう堤つつみ，南みなみ至いたる窯かま務つとむ汴堤，通つう長ちょう二に十じゅう里さと二に百ひゃく四よん十じゅう三さん步ほ。創そう修おさむ護まもる城じょう堤つつみ一道いちどう，長ちょう七なな千せん四よん百ひゃく四よん十じゅう三さん步ほ。堤下つつみした廣こう十じゅう六ろく步ほ，上うえ廣こう四よん步ほ，高こう一いち丈たけ，六ろく尺しゃく為ため一いち工こう。計けい工こう二に十じゅう五ご萬まん三さん千せん六ろく百ひゃく八はち十じゅう，用よう夫おっと八はち千せん四よん百ひゃく五ご十じゅう三さん，除じょ風雨ふうう妨さまたげ工こう。三さん十じゅう日にち畢。內流水すい河かわ溝みぞ，南北なんぼく闊二に十じゅう步ほ，水深すいしん五ご尺しゃく。修おさむ堤つつみ闊二に十じゅう四よん步ほ，上うえ廣こう八はち步ほ，高こう一いち丈たけ五ご尺しゃく，積せき十じゅう二に萬まん尺しゃく，取と土ど稍やや遠とお，四よん十じゅう尺しゃく為ため一いち工こう，計けい三さん萬まん工こう。用よう夫おっと萬まん人にん。每まい步ふ用よう大だい樁二，計けい四よん十じゅう，各かく長一ちょういち丈たけ三さん尺しゃく。徑みち四よん寸すん。每まい步ふ草くさ束たば千せん，計けい二に萬まん束たば，簽柱四よん，計けい八はち十じゅう樁，各かく長ちょう八はち尺しゃく，徑みち三さん寸すん。大船おおぶね二に，梯はしご钁繩索さく備焉。

是ぜ年ねん七なな月がつ，滎澤縣けん塔とう海かい莊しょう河かわ決けつ，未み幾いく，開封かいふう縣けん蘇そ村むら及七なな里さと寺てら復ふく決けつ二に口くち。本省ほんしょう平たいら章あきら政事せいじ站馬赤あか親おや率りつ本ほん路ろ官かん及都水分すいぶん監かん並なみ工こう修築しゅうちく。至いたり治ち元年がんねん正月しょうがつ興きょう工こう，條じょう堤つつみ岸がん四よん十じゅう六ろく處しょ，計けい工こう一いち百ひゃく二に十じゅう五ご萬まん六ろく千せん四よん百ひゃく九きゅう十じゅう四よん，用よう夫おっと三さん萬まん一いち千せん四よん百ひゃく一いち十じゅう三さん。八はち年ねん，河かわ決けつ原武はらたけ縣けん，浸ひた灌數屬ぞく，其工役やく案あん牘無徵ちょう莫得而詳焉。

泰たい定じょう二に年ねん，御ご史し姚煒以河屢決，請立行あるき都と水すい監かん於汴梁はり，仍令沿河州しゅう縣けん知ち河かわ防ぼう事ごと。從したがえ之これ。是ぜ年ねん，睢州河かわ決けつ。三さん年ねん，鄭てい州しゅう陽ひ武たけ縣けん又また決けつ，漂民房ぼう一いち萬まん六ろく千せん餘あまり家か。五ご年ねん，蘭らん陽ひ縣けん河又かわまた決けつ。

至いたり順じゅん元年がんねん六ろく年ねん，曹州濟ずみ陰かげ縣けん魏ぎ家か道口みちぐち河かわ決けつ。先さき是ぜ，堤つつみ將すすむ潰つぶせ，濟すみ陰かげ縣けん防ぼう河かわ官かん與あずか縣けん尹いん郝承務つとむ差さ募つの民夫たみお創はじめ修おさむ護まもる水月すいげつ堤つつみ，又また以水勢すいせい大だい，復ふく築ちく月つき堤つつみ於北。功こう未み竟，水みず忽ゆるがせ泛溢，新舊しんきゅう三さん堤つつみ俱決。明日あした，外堤そとつつみ復ふく壞，湍流迅猛，有ゆう蛇へび出沒しゅつぼつ於中，所しょ上じょう樁工，一いち埽無遺のこ。缺かけ口こう東西とうざい五ご百ひゃく餘よ步ほ，深ふか二に丈餘じょうよ。外堤そとつつみ缺かけ口こう，東西とうざい四よん百ひゃく餘よ步ほ，又また磨すり子こ口こう護まもる水すい堤つつみ，低てい薄うす不足ふそく禦水，東西とうざい長ちょう一いち千せん五ご百ひゃく步ほ。乃先築ちく磨すり子こ口こう，七なな月がつ十じゅう六ろく日興にっこう工こう，二に十じゅう八はち日にち工こう畢。郝承務つとむ言げん：「魏ぎ家か道口みちぐち磚堌等とう村むら缺かけ口こう，累るい下か樁土，衝決不ふ存そん，堤つつみ周回しゅうかい皆みな泥どろ淖，人にん不可ふか居い，又また無む取と土ど之の處しょ。且沛郡ぐん安樂あんらく等とう堡，去歲きょさい旱ひでり災わざわい，今こん復ふく水すい澇，民みん皆みな缺食けっしょく，難なん於差僉。其不經水けいすい村むら堡，先さき巳み遍へん差さ補ほ築ちく黃き家か橋きょう、磨すり子こ口こう諸處しょしょ堤つつみ堰せき，似に難なん重役じゅうやく。請俟秋涼しゅうりょう水みず退すさ，僉夫修理しゅうり，庶蘇民力みんりょく。計けい沖おき壞新舊きゅう堤つつみ七なな處しょ，共きょう一いち萬まん二に千せん二に百ひゃく十じゅう六ろく步ほ，下した廣こう十じゅう二に步ほ，上うえ廣こう十じゅう四よん步ほ，高こう一いち丈たけ二に尺しゃく，計けい用よう夫おっと六ろく千せん三さん百ひゃく人にん。樁九百ひゃく九きゅう十じゅう，葦あし箔はく一いち千せん三さん百ひゃく二に十じゅう，草くさ束たば一いち萬まん六ろく千せん五ご，六ろく十じゅう尺しゃく為ため一いち工こう，無む風雨ふうう妨さまたげ工こう，度ど五ご十じゅう日にち可か畢。」

郝承務つとむ又また言げん：「九きゅう月がつ三さん日興にっこう工こう，連日れんじつ風雨ふうう，辛からし馬頭めず、孫まご家か道口みちぐち堤つつみ又また壞，計けい工こう役やく倍ばい於元數すう，添差二に千せん人にん同どう築ちく。二に十じゅう六ろく日にち，元もと與あずか武たけ成しげる、定てい陶すえ二縣分築魏家道口八百二十步工竣。其辛馬頭めず孫まご家か道口みちぐち之の缺かけ口こう，南北なんぼく闊一百ひゃく四よん十じゅう步ほ，內水地ち五ご十じゅう步ほ，深ふか者しゃ二に丈たけ，淺あさ者しゃ亦また不ふ下した八はち九きゅう尺しゃく，補ほ築ちく七なな日にち工こう竣。又また創つく築ちく月つき堤つつみ一道いちどう，斜はす長ちょう一いち千せん六ろく百ひゃく二に十じゅう七なな步ほ，內武城じょう、定てい陶すえ分ぶん築ちく一いち百ひゃく五ご十じゅう步ほ，實じつ築ちく一いち千せん四よん百ひゃく七なな十じゅう七なな步ほ。惟おもんみ堌頭魏ぎ家か道口みちぐち外堤そとつつみ未み築きずけ，以冬寒かん土ど凍こお，俟來春らいしゅん補ほ築ちく焉。」

是これ年ねん，遣や太ふと禧宗禋院都と事ごと蓋ぶた苗なえ行ぎょう視し河かわ道どう。苗なえ還かえ言げん：「河口かこう淤塞，今こん不治ふち，異い日にち必為中原なかはら大患たいかん。」都と水すい監かん難なん之の，事こと遂とげ寢ね。不ふ及十じゅう五ご年ねん，而白茅堤かやつつみ之の口くち決けつ。

至いたり正せい四よん年ねん正月しょうがつ，河かわ決けつ曹州，僱民夫おっと一いち萬まん五ご千せん八はち百ひゃく人にん築ちく之これ。五月ごがつ，大だい霖雨，平地ひらち水深すいしん二に丈たけ，河かわ暴溢，決けつ白茅ちがや堤つつみ，曹、濮、濟すみ、袞皆水すい。十じゅう月がつ，議ぎ築ちく黃河こうが堤つつみ堰せき。六ろく年ねん，以河決けつ，立河たちかわ南みなみ、山東さんとう等ひとし處ところ行あるき都と水すい監かん，專治せんじ河かわ防ぼう。九きゅう年ねん三さん月がつ，河北かわきた決けつ。五月ごがつ，白茅ちがや河東かとう注ちゅう沛縣，遂とげ成なり巨きょ浸ひた。是ぜ年ねん冬ふゆ，帝みかど命いのち集しゅう羣臣廷議，言げん人人ひとびと殊こと，惟おもんみ監かん察御史し餘あまり闕言：

禹河自大じだい伾而下か，釃為二に渠みぞ，皆みな東北とうほく流りゅう。自じ周しゅう定じょう王おう時じ，河かわ始はじめ南みなみ徙。訖於漢かん，而禹之の故こ道みち始はじめ失しつ。自じ瓠ひさご子こ再さい決けつ，而其流りゅう為ため屯たむろ氏し諸しょ河かわ。其後河かわ入いれ千せん乘じょう，偶合於禹所しょ治ち河かわ，由ゆかり是ぜ而訖東都とうと。至いたり唐とう，河かわ不為ふため患者かんじゃ千せん數すう百ひゃく年ねん。趙ちょう宋そう時じ，河又かわまた南みなみ決けつ。至いたり於南渡わたり，乃由彭城合あい汴、泗東南みなみ以入淮，而漢之の故こ道又みちまた失しつ。

嘗考中國ちゅうごく之これ地ち，西南せいなん高だか而東北下きたしも，故こ水みず至いたり中國ちゅうごく而入海いりうみ者しゃ，一いち皆みな趨於東北とうほく。古河ふるかわ自じ龍りゅう門もん即そく穿ほじ西山にしやま，踵かかと趾而入にゅう大陸たいりく。地ち之の最下さいか者しゃ也。河かわ之これ行ぎょう於冀州しゅう，北方ほっぽう也，數すう千せん年ねん而徙千せん乘じょう。自じ漢かん而後，千せん數すう百ひゃく年ねん而徙彭城。然しか南方なんぽう之の地ち，本ほん高だか於北，故こ河かわ之の南みなみ徙也難なん，而其北きた徙也易えき。自じ宋そう南みなみ渡わたり至いたり今いま，殆二に百ひゃく年ねん，而河旋北，乃地勢ちせい使し然しか，非ひ關かん人じん力也りきや。

比ひ者しゃ河北かほく破やぶ金きむ堤つつみ，逾豐沛、曹、鄆諸郡ぐん大だい受其害がい，天子てんし哀あい民みん之の墊溺，乃疏柳河やなかわ，欲よく引之南みなみ，工こう不ふ就。今こん諸しょ臣しん集しゅう議ぎ，多た主しゅ濬河故こ道みち，復ふく引河以南いなん入にゅう彭城，築堤ちくてい起おこり曹南訖嘉祥さち，東西とうざい三さん百ひゃく里り，以障河かわ之の北きた流りゅう，則のり漸やや可か以導之の使つかい南みなみ。

嗟乎！諺ことわざ有ゆう之の曰：不ふ習為吏，眂巳成なり事ごと。今いま所謂いわゆる南みなみ流りゅう故こ道者どうしゃ，非ひ河かわ之の故こ道也みちや。使つかい反はん於大おだい禹北流りゅう之の故こ道みち，由よし漢かん之の千せん乘じょう以入海いりうみ，則のり國家こっか將はた無水むすい患千餘よ年ねん，如東漢かん與あずか唐から之これ時じ，而又何なん必障而排之の，使つかい南みなみ乎？

今こん廟堂びょうどう之の議ぎ，非ひ以南いなん為ため壑也。其慮以為河かわ之の北きた，則のり會かい通どおり之の漕こげ廢はい。不知ふち河かわ即そく北きた。而會通どおり之の漕こげ不ふ廢はい。何なに也？漕こげ以汶，而不以河也。河北かほく流りゅう，則のり汶自彭城以下いか必微微びび。則のり吾われ有ゆう制せい而治之の，亦また可か以行舟ぶね以漕粟あわ，所謂いわゆる浮於汶達於河者しゃ是也これや。闕特防ぼう鉅野，而使河かわ不ふ妄行。俟河復ふく千せん乘じょう故こ道みち，然しか後こう復ふく相しょう水すい之の宜むべ而修治之はるゆき。此千古せんこ之の明あかり鑑かん，非ひ一いち人にん之の私わたし言げん也。

十じゅう年ねん四よん月がつ，以軍士し五ご百ひゃく人にん修おさむ白茅ちがや河かわ堤つつみ。十二月じゅうにがつ，命いのち大だい司つかさ農みのり禿かぶろ魯、工こう部ぶ尚書しょうしょ成なり遵行視し決河けっか，議ぎ其疏塞之の法ほう以聞。十じゅう一いち年ねん春はる，遵等自じ濟すみ寧やすし、曹、濮、大名おおな行ゆき數すう千里せんり，掘ほ井い以量地形ちけい之の高下こうげ，測はか岸きし以究水勢すいせい之の深淺しんせん，以為河かわ之の故こ道みち不可ふか復ふく，其議有ゆう八はち。時とき右みぎ丞相じょうしょう脫だつ脫だつ復ふく相しょう，銳するど於任事ごと。都と漕こげ運うん使し賈魯以治河かわ二に策さく進すすむ：其一，修築しゅうちく北きた堤つつみ，以製橫よこ潰つぶせ，則のり用よう工こう省しょう；其一，疏塞並なみ舉，挽河復ふく故こ道みち，其功數すう倍ばい。脫だつ脫だつ韙魯後ご策さく。及遵興きょう禿かぶろ魯至，力ちから陳ひね不可ふか。脫だつ脫だつ不ふ聽，以其事ごと屬ぞく魯。遷魯為ため工こう部ぶ尚書しょうしょ，總そう治ち河かわ防ぼう使し。發はつ汴梁、大名だいみょう十じゅう三さん路ろ民夫たみお十じゅう五ご萬まん，廬いおり州しゅう等とう處しょ十じゅう八はち翼つばさ軍ぐん二に萬まん，自じ黃き陵りょう岡南おかみなみ達たち白茅ちがや，放ひ於黃堌、哈只等とう口こう，又また自じ黃き陵りょう西にし至いたり楊青村合むらあい於故道どう，凡二に百ひゃく八はち十じゅう里さと百ひゃく五ご十じゅう四よん步ほ有ゆう奇き。命中めいちゅう書しょ右みぎ丞すすむ玉だま樞くるる虎とら兒じ哈等率りつ衛まもる軍ぐん以鎮之の。自じ四よん月がつ興きょう工こう，至いたり十じゅう一いち月がつ，水みず土工どこう畢，諸しょ埽諸堤つつみ成しげる，河かわ復ふく故こ道みち，南みなみ匯於淮，又また東ひがし入にゅう於海。帝みかど遣や使者ししゃ報祭ほうさい河かわ伯はく，召告還かえ京師けいし，論功ろんこう超ちょう拜はい榮さかえ祿ろく大夫たいふ、集あつまり賢けん大だい學士がくし，賜たまもの脫だつ脫だつ世襲せしゅう達たち刺とげ罕，命いのち翰林かんりん學士がくし承うけたまわ旨むね歐おう陽ひ元もと撰せん河かわ平たいら碑ひ，以旌勞ろう繢。元治もとはる河かわ三さん大役たいやく：曰蒲口こう，曰小黃村こうそん，曰白茅堤かやつつみ。當時とうじ名めい臣しん多た謂いい宜むべ頎水勢ぜい，勿堙塞，其言率りつ迂まが不ふ可用かよう。脫だつ脫だつ黜成遵，從したがえ賈魯，挽河復ふく故こ道みち，尤ゆう為ため不ふ世よ之の功こう。歐おう陽ひ元もと作さく《至いたり正せい河かわ防ぼう記き》，載の其施功こう次第しだい詳しょう矣。用よう附ふ著ちょ左ひだり方かた，俾治河かわ者しゃ有ゆう考こう焉。

治ち河かわ一也かずや，有ゆう疏，有ゆう浚，有ゆう塞ふさが，三さん者しゃ異い焉。釃河之の流ながれ，因いん而導之の，謂いい之の疏。去さ河かわ之の淤，因いん而深之の，謂いい之の浚。抑そもそも河かわ之の暴，因いん而扼之の，謂いい之の塞ふさが。疏濬之の別べつ，有ゆう四よん：曰生地ち，曰故道どう，曰河身み，曰減水げんすい。河かわ身み地ち有ゆう直ちょく有ゆう紆，因いん直ちょく而鑿之の，可か就故道どう。故こ道みち有高ありだか有ゆう卑，高こう者しゃ平之ひらの以趨卑，高こう相しょう就，則のり高だか不ふ壅，卑不瀦，慮おもんばか夫おっと壅生潰つぶせ，瀦生堙也。河かわ身み者しゃ，水みず雖通行つうこう，身み有ゆう廣狹こうきょう。狹せま難なん受水，水みず溢悍，故こ狹せま者しゃ，以計辟之。廣こう難なん為ため岸がん，岸きし善よし崩くずし，故こ廣ひろ者しゃ以計御ご之これ。減水げんすい河かわ者しゃ，水みず放ひ曠，則のり以制其狂，水みず墮突，則のり以殺其怒。

治おさむ堤つつみ一也かずや，有ゆう創そう築きずけ、修築しゅうちく、補ほ築ちく之これ名めい，有刺ゆうし水すい堤つつみ有ゆう截河堤つつみ，有ゆう護岸ごがん堤つつみ，有ゆう縷水堤つつみ，有ゆう石船いしぶり堤つつみ。

治ち埽一也かずや，有ゆう岸がん埽、水みず埽，有ゆう龍りゅう尾お、欄らん頭あたま、馬頭ばとう等ひとし埽。其為埽臺及推卷まき、牽制けんせい、薶掛之の法ほう，有用ゆうよう土ど、用石もちいし、用よう鐵てつ、用草もちくさ、用木ようぼく、用木ようぼく戈ほこ、用よう緪之方かた。

塞ふさが河かわ一也かずや，有ゆう缺かけ口こう，有ゆう豁口，有ゆう龍口りゅうぐち。缺かけ口こう者しゃ，巳み成川なりかわ。豁口者しゃ，舊きゅう常つね為ため水すい所しょ豁，不ふ退すさ則のり口こう下か於堤，水みず漲みなぎ則のり溢出於口。龍口りゅうぐち者しゃ，水みず之これ所しょ會かい，自じ新しん河かわ入いれ故こ道之みちゆき□也。

此外不能ふのう悉書，因いん其用功こう之の次第しだい而就述じゅつ於其下か焉。

其浚故こ道みち，深ふか廣こう不等ふとう，通つう長ちょう二に百ひゃく八はち十じゅう里さと百ひゃく五ご十じゅう四よん步ほ而強。功こう始はじめ自白じはく茅ちがや，長ちょう百ひゃく八はち十じゅう二に里さと。繼つぎ自じ黃き陵りょう岡おか至いたる南みなみ白茅ちがや，生地きじ十じゅう里さと。口くち初はつ受，廣こう百ひゃく八はち十じゅう步ほ，深ふか二丈にじょう有ゆう二に尺しゃく，巳み下か停とま廣こう百ひゃく步ほ，高下こうげ不等ふとう，相そう折おり深ふか二丈にじょう及泉。曰停、曰折者しゃ，用もちい古こ算法さんぽう，因いん此推彼かれ，知ち其勢之の低てい昂のぼる，相あい準じゅん折おり而取勻停也。南みなみ白茅ちがや至いたり劉りゅう莊しょう村むら接せっ入にゅう故こ道みち十じゅう里さと，通つう折おり墾廣八はち十じゅう步ほ，深ふか九きゅう尺しゃく。劉りゅう莊そう至いたり專せん固かた百ひゃく有ゆう二に里さと二に百ひゃく八はち十じゅう步ほ，通つう折おり廣こう六ろく十じゅう步ほ，深ふか五ご尺しゃく。專せん固かた至いたり黃き固かた，墾生地ち八はち里り，而廣百ひゃく步ほ，底そこ廣こう九きゅう十じゅう步ほ，高下こうげ相しょう折おり，深ふか丈たけ有ゆう五ご尺しゃく。黃き固かた至いたり哈只口こう，長五ちょうご十じゅう一いち里さと八はち十じゅう步ほ，相あい折おり停とま廣こう墾六ろく十じゅう步ほ。深ふか五ご尺しゃく。乃浚凹裡減水げんすい河かわ，通つう長ちょう九きゅう十じゅう八はち里さと百ひゃく五ご十じゅう四よん步ほ。凹裏村むら缺かけ河口かこう生地きじ，長三ちょうぞう里さと四よん十じゅう步ほ，面めん廣こう六ろく十じゅう步ほ，底そこ廣こう四よん十じゅう步ほ，深ふか一いち丈たけ四よん尺しゃく。自じ凹裡生地きじ以下いか舊きゅう河かわ身み至いたり張はり讚たたえ店てん，長ちょう八はち十じゅう二に里さと五ご十じゅう四よん步ほ。上うえ三さん十じゅう六ろく里り，置おけ廣こう二に十じゅう步ほ，探さがせ五ご尺しゃく。中ちゅう三さん十じゅう五ご里り，墾廣二に十じゅう八はち步ほ，深ふか五ご尺しゃく。下した十じゅう里さと二に百ひゃく四よん十じゅう步ほ，墾廣二に十じゅう六ろく步ほ，深ふか五ご尺しゃく。張ちょう讚たたえ店てん至いたり楊青村むら，接せっ入にゅう故こ道みち，墾生地ち十じゅう有ゆう三さん里さと六ろく十じゅう步ほ，面めん廣こう六ろく十じゅう步ほ，底そこ廣こう四よん十じゅう步ほ，深ふか一いち丈たけ四よん尺しゃく。

其塞專せん固かた缺かけ口こう，修おさむ堤つつみ三さん重じゅう，並なみ補ほ築ちく凹裡減水げんすい河かわ南岸なんがん豁口，通つう長ちょう二に十じゅう里さと三さん百ひゃく十じゅう有ゆう七なな步ほ。其創築ちく河目かわめ前ぜん第だい一いち重じゅう西堤にしづつみ，南北なんぼく長ちょう三さん百ひゃく三さん十じゅう步ほ，面めん廣こう二に十じゅう五ご步ほ，底そこ廣こう三さん十じゅう三さん步ほ，樹き植うえ樁橛，實じつ以土牛うし、草くさ葦あし、雜ざつ梢こずえ相しょう兼けん，高こう丈たけ有ゆう三さん尺しゃく。堤つつみ前ぜん置おけ龍りゅう尾大びだい埽。言げん龍りゅう尾お者しゃ，伐き大樹たいじゅ連れん梢こずえ系けい之の堤つつみ旁つくり，隨ずい水上すいじょう下か，以破囓岸浪なみ者しゃ也。築ちく第だい二に重じゅう正せい堤つつみ，並なみ補ほ兩りょう端はし舊きゅう堤つつみ，通つう長ちょう十じゅう有ゆう一いち里さと三さん百ひゃく步ほ。缺かけ口こう正せい堤つつみ長ちょう四よん里さと。兩りょう堤つつみ相しょう接せっ舊きゅう堤つつみ，置おけ樁堵閉河身み，長ちょう百ひゃく四よん十じゅう五ご步ほ，用土ようど牛うし、稍やや土ど、草くさ葦あし相しょう兼けん修築しゅうちく。底そこ廣こう三さん十じゅう步ほ，修おさむ高だか二に丈たけ。其岸上じょう土工どこう修築しゅうちく者しゃ，長三ちょうぞう里さと二に百ひゃく十じゅう有ゆう五ご步ほ有ゆう奇き，高廣たかひろ不等ふとう，通つう高だか一いち丈たけ五ご尺しゃく。補ほ築ちく舊きゅう堤つつみ者しゃ，長七ちょうしち里さと三さん百ひゃく步ほ，表おもて裡うら倍ばい薄うす七なな步ほ，增ぞう卑六ろく尺しゃく，計けい高こう一いち丈たけ。築ちく第だい三重みえ東後ひがしご堤つつみ，並なみ接せっ修おさむ舊きゅう堤つつみ，高廣たかひろ不等ふとう，通つう長ちょう八はち里さと。補ほ築ちく凹裡減水げんすい河かわ南岸なんがん豁口四よん處しょ。置おけ樁木、草くさ土ど相しょう兼けん，長ちょう四よん十じゅう七なな步ほ。

於是塞ふさが黃き凌しのげ全ぜん河かわ，水中すいちゅう及岸上きしがみ修おさむ堤つつみ，長ちょう三さん十じゅう六ろく里さと百ひゃく三さん十じゅう六ろく步ほ。其脩大堤おおつつみ刺とげ水すい者しゃ二に，長ちょう十じゅう有ゆう四よん里さと七なな十じゅう步ほ。其西復ふく作さく大堤おおつつみ剌水者しゃ一いち，長ちょう十じゅう有ゆう六ろく里さと百ひゃく三さん十じゅう步ほ。內創築ちく岸きし上土あげつち堤つつみ，西北せいほく起おこり李すもも八はち宅たく西堤にしづつみ，東南とうなん至いたり舊きゅう河かわ焊，長ちょう十じゅう里さと百ひゃく五ご十じゅう步ほ，顛廣四よん步ほ，趾廣三さん之これ，高こう丈たけ有ゆう五ご尺しゃく。仍築舊きゅう河岸かわぎし至いたり入水じゅすい堤つつみ，長ちょう四よん百ひゃく三さん十じゅう步ほ，趾廣三さん十じゅう步ほ，顛殺其六之の一いち，接せっ修おさむ入水じゅすい。

兩りょう岸きし埽堤並行へいこう。作さく西にし埽者，夏なつ人じん水すい工こう，徵ちょう自じ靈れい武ぶ。作東さくとう埽者，漢人かんど水みず工こう，徵ちょう自じ近畿きんき。其法以竹絡からま實じつ以小石せき，每まい埽不等とう，以蒲葦あし線せん腰こし索さく徑みち寸すん許もと者しゃ從したがえ鋪しき，廣こう可か一いち二に十じゅう步ほ，長ちょう可か二に三さん十じゅう步ほ。又また以曳埽索徑みち三さん寸すん或ある四よん寸すん，長ちょう二に百ひゃく餘よ尺しゃく者しゃ衡鋪之の。相あい間あいだ復ふく以竹葦あし麻あさ菻大纖，長ちょう三さん百ひゃく尺しゃく者しゃ為ため管かん心こころ索さく，就係綿めん腰こし索さく之の端はし於其上じょう，以草數すう千せん束たば，多た至いたり萬まん餘あまり，勻布厚あつ鋪しき於綿腰こし索さく之の上うえ，□而納之の。丁ちょう夫おっと數すう千せん，以足踏實。推卷稍やや高こう，即そく以水工こう二に人にん立りつ其上，而號於眾，眾聲力りょく舉，用もちい小しょう大だい推梯，推捲成なり埽，高下こうげ長短ちょうたん不等ふとう。大だい者しゃ高だか二に丈たけ，小者こもの不ふ下した丈餘じょうよ。又また用もちい大だい索さく，或ある互為腰こし索さく，轉てん致河濱はま。選せん健けん丁ちょう操みさお管かん心こころ索さく，順じゅん掃臺立りつ踏，或ある掛かけ之の臺たい中ちゅう鐵てつ貓大橛之上じょう，以漸縋すが之これ下水げすい。埽後掘ほ地ち為ため渠みぞ，陷おちい管かん心こころ索さく渠みぞ中ちゅう，以散草くさ厚あつ覆くつがえ，築ちく之の以土，其上覆くつがえ以土牛うし、雜草ざっそう、小しょう埽梢土ど，多寡たか厚あつ薄うす，先後せんご隨ずい宜よろし。修おさむ疊たたみ為ため埽臺，務つとむ使し牽制けんせい土下はした，縝密堅けん壯たけし，互為犄角，埽不動搖どうよう。日にち力不足ちからぶそく，火ひ以繼之の。積せき累るい既すんで畢。復ふく施ほどこせ前ぜん法ほう，卷かん埽以厭いや先さき下之したの掃，量りょう淺あさ深ふか，制せい埽厚薄うす，疊じょう之の多た至いたり四よん埽而止どめ。兩りょう埽之間あいだ，置おけ竹ちく絡からま，高こう二に丈たけ或ある三さん丈たけ，圍かこえ四よん丈たけ五ご尺しゃく，實じつ以小石せき、土ど牛うし。既すんで滿まん，係がかり以竹纜ともづな。其兩旁つくり並なみ埽，密みつ下か大だい樁，就以竹ちく絡からま大だい竹腰たけこし索さく係がかり於樁上じょう。東西とうざい兩りょう埽及其中竹ちく絡からま之これ上じょう，以草土ど等とう築ちく為ため埽臺，約やく長ちょう五ご十じゅう步ほ或ある百ひゃく步ほ。再さい下した埽，即そく以竹索さく或ある麻あさ索さく長ちょう八はち百ひゃく尺しゃく或ある五ご百ひゃく尺しゃく者しゃ一いち二に，雜ざつ廁其餘あまり管かん心こころ索さく之の間あいだ。俟埽入水じゅすい之これ後ご，其餘管かん心こころ索さく如前薶掛，隨ずい以管心しん長ちょう索さく遠どお置おけ五ご七なな十じゅう步ほ之の外そと，或ある鐵てつ貓，或ある大だい樁，曳而係がかり之の，通つう管かん束たば累日るいじつ所しょ下之したの埽，再さい以草土ど等とう物ぶつ通どおり修成しゅうせい堤つつみ。又また以龍尾大びだい埽，密みつ掛かけ於護堤つつみ大だい樁，分析ぶんせき水勢すいせい。其堤長ちょう二に百ひゃく七なな十じゅう步ほ，北きた廣こう四よん十じゅう二に步ほ，中廣なかひろ五ご十じゅう五ご步ほ，南みなみ廣こう四よん十じゅう二に步ほ。自じ顛至趾，通つう高だか三さん丈たけ八はち尺しゃく。

其截河かわ大堤おおつつみ，高廣たかひろ不等ふとう，長ちょう十じゅう有ゆう九きゅう里さと百ひゃく七なな十じゅう七なな步ほ。其在黃き陵りょう北岸ほくがん者しゃ，長ちょう十じゅう里さと四よん十じゅう一いち步ほ。築ちく岸きし上土あげつち堤つつみ，西北せいほく起おこり東西とうざい故こ堤つつみ，東南とうなん至いたり河口かこう，長ちょう七なな里さと九きゅう十じゅう七なな步ほ，顛廣六ろく步ほ，趾倍之の二に強きょう二に步ほ，高こう丈たけ有ゆう五ご尺しゃく。接せっ修おさむ入水じゅすい。施ほどこせ土ど牛うし，小しょう埽梢草そう雜ざつ土ど，多少たしょう厚あつ薄うす，隨ずい宜むべ修おさむ疊たたみ。及不竹ちく絡からま，安やす大だい柱はしら，系けい龍りゅう尾お埽，如前兩りょう堤つつみ法ほう。唯ただ修おさむ疊たたみ埽臺，增ぞう用よう白しろ闌たけなわ小石こいし，並なみ埽上及前洊修埽堤一いち，長ちょう百ひゃく餘よ步ほ，直ちょく抵龍口こう。稍やや北きた，欄らん頭あたま三さん埽並行へいこう，大堤おおつつみ廣こう與あずか刺とげ水すい二に堤つつみ不同ふどう。通つう前列ぜんれつ四よん埽，間あいだ以竹絡からま，成なり一いち大だい堤つつみ，長ちょう二に百ひゃく八はち十じゅう步ほ，北きた廣こう百ひゃく一いち十じゅう步ほ，其顛至いたり水面すいめん高だか丈たけ有ゆう五ご尺しゃく，水面すいめん至いたり澤さわ腹はら高だか二に丈たけ五ご尺しゃく，通つう高だか三さん丈たけ五ご尺しゃく。中流ちゅうりゅう廣こう八はち十じゅう步ほ，其顛至いたり水面すいめん高だか丈たけ有ゆう五ご尺しゃく，水面すいめん至いたり澤さわ腹はら高だか五ご丈たけ五ご尺しゃく，通つう高だか七なな丈たけ。並なみ創そう築ちく縷水橫堤よこづつみ一はじめ，東起ひがしおこし北きた截河大堤おおつつみ，西にし抵西刺とげ水すい大堤おおつつみ，又また一いち堤つつみ，東起ひがしおこし中ちゅう刺とげ水すい大堤おおつつみ，西にし抵西刺とげ水すい大堤おおつつみ。又また一いち堤つつみ，東起ひがしおこし中ちゅう刺とげ水すい大堤おおつつみ，西にし抵西刺とげ水すい大堤おおつつみ。通つう長ちょう二に里さと四よん十じゅう二に步ほ，亦また顛廣四よん步ほ，趾三之の，高こう丈たけ有ゆう二に尺しゃく。修おさむ黃き陵りょう南岸なんがん，長ちょう九きゅう里さと六ろく十じゅう步ほ。內創岸がん土ど堤つつみ，東北とうほく起おこり新しん補ほ白茅ちがや故こ堤つつみ，西南せいなん至いたり舊きゅう河口かこう，高廣たかひろ不等ふとう，長八ちょうはち里さと二に百ひゃく五ご十じゅう步ほ。

乃入水じゅすい作さく石船いしぶり大堤おおつつみ。益えき由よし是ぜ秋あき八はち月がつ二に十じゅう九きゅう日にち乙おつ巳み，道みち故こ河かわ流りゅう，先さき所しょ修おさむ北岸ほくがん西中にしなか刺とげ水すい及截河かわ三さん堤つつみ猶なお短たん，約やく水みず尚ひさし少しょう，力りょく未み足あし恃。決河けっか勢ぜい大だい，南北なんぼく廣こう四よん百ひゃく餘よ步ほ，中流ちゅうりゅう深ふか三さん丈餘じょうよ，益えき以秋漲みなぎ，水みず多た故こ河かわ十じゅう之の八はち，兩りょう河かわ爭そう流りゅう，近きん故こ河口かこう，水みず刷すり岸がん北きた行ぎょう，洄漩湍急。難むずかし以下いか埽。置おけ埽行或ある遲おそ。恐おそれ水すい盡つき湧ゆう入にゅう決河けっか，因いん淤故河かわ，前ぜん功こう隨ずい墮。魯乃精せい思おもえ入にゅう故こ河かわ之これ方かた，以九きゅう月がつ七なな日にち癸みずのと丑うし，逆流ぎゃくりゅう排はい大船おおぶね二に十じゅう七なな艘そう，前後ぜんご連れん以大桅或長ちょう樁，用よう大麻たいま索さく、竹たけ緪絞縛ばく，綴つづり為ため方舟はこぶね。又また用もちい大麻たいま索さく、竹たけ緪，用船ようせん身み繳繞上下じょうげ，令れい牢ろう不可ふか破やぶ，乃以鐵てつ貓於上じょう流石さすが垂たれ之の水中すいちゅう。又また以竹緪絕長ちょう七なな八はち百ひゃく尺しゃく者しゃ，係かかり兩りょう岸きし大だい橛上，每まい緪或石せき垂たれ二に舟ふね或ある三さん舟ふね，使つかい不ふ得とく下か，船腹せんぷく略りゃく鋪しき散ち草くさ，滿まん貯小石せき，以合子こ板いた釘くぎ合あい之の。復ふく以埽密みつ佈合子こ板ばん上じょう，或ある二に重じゅう或ある三さん重じゅう，以大麻たいま索さく縛ばく之の急きゅう。復ふく縛ばく橫木よこぎ三道於頭桅，皆みな以索維之，用よう竹ちく編へん笆，夾以草くさ石せき，立だて之の梔くちなし前まえ，約やく長ちょう丈餘じょうよ，名めい曰水簾すだれ梔くちなし。復ふく以木搘柱，使つかい簾すだれ不ふ偃僕。然しか後こう選せん水すい工こう便びん捷とし者しゃ，每まい船ふね各かく二に人にん，執と斧鑿ふさく，立だて船せん首尾しゅび，岸上きしがみ捶鼓為ため號ごう，敢鳴，一時いちじ齊ひとし鑿，須臾しゅゆ舟ぶね穴あな，水みず入いれ，舟ふね沉，遏決河けっか。水みず怒いか溢，故こ河水こうすい暴增。即そく重じゅう樹水きすい簾すだれ，令れい後ご復ふく布ぬの小しょう掃土牛うし白しろ闌たけなわ長ちょう稍やや，雜ざつ以土草くさ等とう物ぶつ。隨ずい以填垛。繼つぎ之の以石船せん下か詣まい實地じっち，出水しゅっすい基もと趾漸高だか，復ふく捲めく大だい埽以壓あつ之の。前ぜん船ふね勢ぜい略りゃく定じょう，尋ひろ用よう前ぜん法ほう，沉餘船せん，以竟後ご功こう。昏曉百ひゃく刻こく，役やく夫おっと分ぶん番ばん甚勞，無む少しょう間斷かんだん。船ふね堤つつみ之これ後ご，草くさ埽三道どう並なみ舉，中置ちゅうち竹ちく絡からま盛もり石せき，並なみ埽置樁，繫纜四よん埽及絡，一如修北截水堤之法。第だい以中流りゅう水深すいしん數すう丈たけ，用よう物ぶつ之の多た，施工しこう之の大だい，倍ばい他た堤つつみ。距北岸がん才ざい四よん五ご十じゅう步ほ，勢いきおい迫さこ東ひがし河かわ，沆峻若わか自じ天てん降くだ，探さがせ淺あさ叵測。於是先さき卷まき下大しもおお埽約高だか二に丈たけ者しゃ，或ある四よん或ある五ご，始はじめ出水しゅっすい面めん。修おさむ至いたり河口かこう一いち二に十じゅう步ほ，用よう工こう尤ゆう艱。薄うす龍口りゅうぐち，喧やかまし豗猛疾やまし，勢いきおい撼埽基もと，陷おちい裂きれ欹傾，俄にわか遠とお故こ所ところ。眾議沸騰ふっとう，以為難なん合ごう，然しか勢いきおい不ふ容よう巳み。魯神色しょく不動ふどう，機き解ほどけ捷とし出で，進しん官かん史し工こう徒と十じゅう餘あまり萬まん人にん，日にち加か獎諭，辭じ旨むね懇こん至いたり，眾皆感激かんげき赴功。十一月じゅういちがつ十じゅう一いち日にち丁ちょう巳み，龍口りゅうぐち遂とげ合あい，決河けっか絕ぜっ流りゅう，故こ過か復ふく通どおり。

又また於堤前ぜん通卷つうかん欄らん頭あたま埽各一いち邊へん，多た者しゃ或ある三さん或ある四よん。前ぜん埽出水しゅっすい，管かん心こころ大だい索さく系けい前ぜん埽，陲後闌たけなわ頭あたま埽之後ご，後こう埽管心こころ大だい索さく亦また係かかわ小しょう埽，石せき垂たれ前ぜん欄らん頭あたま埽之前まえ，後先あとさき羈縻，以錮其勢。又また於所交索上じょう，及兩埽之間あいだ，壓あつ以小石せき白しろ闌たけなわ土ど牛うし，草くさ土ど相しょう半はん，厚あつ薄うす多寡たか，相そう勢ぜい措置そち。

埽堤之これ後ご。自じ南岸なんがん復ふく修一しゅういち堤つつみ，抵巳閉之龍口りゅうぐち，長ちょう二に百ひゃく七なな十じゅう步ほ。船ふね堤つつみ四よん邊へん成なり堤つつみ，用よう農家のうか場じょう圃之具ぐ曰轆軸じく者しゃ，穴あな石せき立木たちき如比櫛くし，薶前埽之旁つくり。每まい步ふ置おけ一いち轆軸。以橫木よこぎ貫ぬき其後，又また穴あな石せき，以徑二寸餘麻索貫之，系けい橫木よこぎ上じょう，密みつ掛かけ龍りゅう尾大びだい埽，使つかい夏秋なつあき潦にわたずみ水すい、冬ふゆ春はる凌しのげ簿ぼ，不ふ得とく肆力於岸。此堤接せっ北岸ほくがん截河大堤おおつつみ，長ちょう二に百ひゃく七なな十じゅう步ほ，南みなみ廣こう百ひゃく二に十じゅう步ほ，顛至水面すいめん高だか丈たけ有ゆう七なな尺しゃく，水面すいめん至いたり澤さわ復ふく高だか四よん丈たけ二に尺しゃく。中流ちゅうりゅう廣こう八はち十じゅう步ほ，顛至水面すいめん高だか丈たけ有ゆう五ご尺しゃく，水面すいめん至いたり澤さわ腹はら高だか五ご丈たけ五ご尺しゃく，通つう高だか七なな丈たけ。仍治南岸なんがん護まもる堤つつみ埽一，通つう長ちょう一いち百ひゃく三さん十じゅう步ほ，南岸なんがん護岸ごがん馬頭めず埽三道どう，通つう長ちょう九きゅう十じゅう五ご步ほ，修築しゅうちく北岸ほくがん隈くま防ぼう，高廣たかひろ不等ふとう，通つう長ちょう二に百ひゃく五ご十じゅう四よん里さと七なな十じゅう一いち步ほ。

白茅ちがや河口かわぐち至いたる板いた城じょう，補ほ築ちく舊きゅう堤つつみ，長ちょう二に十じゅう五ご里さと二に百ひゃく八はち十じゅう五ご步ほ。曹州板ばん城じょう至いたる英えい賢かしこ村むら等とう處しょ，高廣たかひろ不等ふとう，長ちょう一いち百ひゃく三さん十じゅう三さん里さと二に百ひゃく步ほ。稍やや岡おか至いたる碭山縣けん，增ぞう培つちかえ舊きゅう堤つつみ，長ちょう八はち十じゅう五ご里さと二に十じゅう步ほ。歸かえり德とく府ふ哈只口こう至いたり徐じょ州しゅう路ろ三さん百ひゃく餘あまり里さと，修おさむ完かん缺かけ口こう一いち百ひゃく七なな十じゅう處しょ，高廣たかひろ不等ふとう，積せき修おさむ計けい三さん里さと二に百ひゃく五ご十じゅう六ろく步ほ。亦また思おもえ剌店縷水月がつ堤つつみ高廣たかひろ不等ふとう，長六ちょうろく里さと三さん十じゅう步ほ。

其用物ぶつ之の凡，樁木大だい者しゃ二に萬まん七なな千せん，榆柳雜ざつ稍やや六ろく十じゅう六ろく萬まん六ろく千せん，帶たい稍やや連れん根株ねかぶ者しゃ三さん千せん六ろく百ひゃく，藁わら桔蒲葦あし雜草ざっそう以束計けい者しゃ七なな百ひゃく三さん十じゅう三さん萬まん五ご千せん有ゆう奇き，竹竿たけざお六ろく十じゅう二に萬まん五ご千せん。葦あし席せき十じゅう有ゆう七なな萬まん二に千せん，小石こいし二に千せん般，繩なわ索さく小しょう大だい不等ふとう五ご萬まん七なな千せん，所しょ沉大船せん百ひゃく有ゆう二に十じゅう。鐵てつ纜ともづな三さん十じゅう有ゆう二に，鐵てつ貓三さん百ひゃく三さん十じゅう有ゆう四よん，竹たけ篾以斤きん計けい者しゃ十じゅう有ゆう五ご萬まん，石せき垂石たるいし三さん千せん塊かたまり，鐵てつ鉆萬まん四よん千せん二に百ひゃく有ゆう奇き，大だい釘くぎ三さん萬まん三さん千せん二に百ひゃく三さん十じゅう有ゆう二に。其餘若木わかき龍りゅう、蠶かいこ椽木、麥むぎ秸、扶樁、鐵てつ叉また、鐵てつ吊つるし、枝えだ麻あさ、搭火鉤かぎ，汲水きゅうすい、貯水ちょすい等とう具ぐ，皆みな有ゆう成なり數すう。

官吏かんり俸給ほうきゅう，軍民ぐんみん農のう糧かて、工錢こうせん，醫藥いやく、祭祀さいし、賑恤しんじゅつ、驛えき置おけ馬乘うまのり及運竹ちく木き、沉船、渡船とせん、下しも樁等工こう，鐵てつ、石いし、竹たけ、木き、繩なわ索さく等とう匠たくみ傭やとい資し，兼けん以和買かい民地みんち為ため河かわ，並なみ應用おうよう雜ざつ物ぶつ等價とうか，通計つうけい中ちゅう統すべ鈔百ひゃく八はち十じゅう四よん萬まん五ご千せん六ろく百ひゃく三さん十じゅう六ろく錠じょう有ゆう奇き。

魯嘗有ゆう言ごと：「水みず工こう之の功こう，視し土工どこう之の功こう為ため難なん；中流ちゅうりゅう之の功こう，視し河かわ濱之はまの功こう為ため難なん；決河けっか口こう，視し中流ちゅうりゅう又また難なん；北岸ほくがん之の功こう，視し南岸なんがん為ため難なん。用よう物ぶつ之これ性せい。草くさ雖至柔やわら，柔やわら能のう狎水，水みず漬づけ之の生なま泥どろ，泥どろ與あずか草くさ並なみ，力ちから重じゅう如碇。然しか維持いじ夾輔，纜ともづな索さく之の功こう實じつ多た。」蓋ぶた由よし魯習知しゅうち河かわ事ごと，故こ其功之これ所しょ就如此。是ぜ役やく也，朝廷ちょうてい不ふ惜重費ひ，不ふ吝しわ高こう爵，為ため民みん辟害。脫だつ脫だつ能のう體たい上意じょうい，不ふ憚はばか焦こげ勞ろう，不ふ恤浮議ぎ，為國ためくに拯民。魯能竭其心こころ思おもえ智計ともよし之の巧たくみ，乘じょう其精神せいしん膽きも氣き之の壯たけし，不ふ惜劬瘁，不ふ畏かしこ譏そし評ひょう，以報君くん相しょう知人ちじん之の明あかり。宜むべ悉書之の，使つかい職しょく史し氏し者しゃ有ゆう所しょ考證こうしょう也。」