先天せんてん性せい横隔膜おうかくまくヘルニアに対たいするダブル内視鏡ないしきょう下か胎児たいじ手術しゅじゅつの実験じっけん的てき研究けんきゅう

基盤きばん研究けんきゅう(C)

伊東いとう 充宏みつひろ  東京大学とうきょうだいがく, 医学部いがくぶ・附属ふぞく病院びょういん, 助手じょしゅ (40261995)

800千せん円えん (直接ちょくせつ経費けいひ: 800千せん円えん)

我々われわれは今いままでに、羊ひつじやラットの横隔膜おうかくまくヘルニア(以下いか、CDH)モデルを使用しようし、胎児たいじの気管きかんを閉塞へいそくすることによってCDHに合併がっぺいする低てい形成けいせい肺はいの成長せいちょうを促進そくしんさせることが可能かのうであることを証明しょうめいしてきた。ヒトの妊娠にんしん子宮しきゅうは外科げか的てき処置しょちによって容易よういに収縮しゅうしゅくし早産そうざんにつながるため、胎児たいじ手術しゅじゅつの臨床りんしょう応用おうようを可能かのうにするには、妊娠にんしん子宮しきゅうに対たいし、より侵おかせ襲かさねの少すくない内視鏡ないしきょう的てきアプローチが望のぞまれる。羊ひつじを用もちいた実験じっけんでは、極細ごくぼそ径みちファイバーによる胎児たいじ気管きかんへのアプローチは技術ぎじゅつ的てきに非常ひじょうに困難こんなんであることが判明はんめいしたので、今回こんかい我々われわれは硬性こうせい鏡きょうを使用しようして胎児たいじの気管きかん内ないに特殊とくしゅなバルーンを留置りゅうちする方法ほうほうを開発かいはつした。胎児たいじの呼吸こきゅう運動うんどうによるバルーンの喀出を防止ぼうしするため、バルーンの形状けいじょうをシリンダー型がたとし、妊娠にんしん羊ひつじを用もちいてその評価ひょうか実験じっけんを行おこなった。その結果けっか、離脱りだつ型がたバルーンによる胎児たいじ気管きかん閉塞へいそくが技術ぎじゅつ的てきに十分じゅうぶん可能かのうであり、肺はい成長せいちょうを促進そくしんさせることが示しめされた。また、子宮しきゅう切開せっかい創そうは当初とうしょの約やく10cmから約やく1cmに短縮たんしゅくすることが可能かのうであった。子宮しきゅう創そうの縮小しゅくしょう化かは、胎児たいじ手術しゅじゅつのアキレス腱あきれすけんともいわれる術後じゅつごの早産そうざんを予防よぼうする上じょうで非常ひじょうに重要じゅうようであり、その意味いみでも今回こんかいの実験じっけん結果けっかは有意義ゆういぎであった。バルーンによる肺はい成長せいちょう効果こうかは気管きかん結紮けっさつまたはクリッピングによる方法ほうほうと同等どうとうであった。従したがって、この方法ほうほうを臨床りんしょう応用おうようした場合ばあい、アメリカから報告ほうこくされている臨床りんしょう結果けっかと同等どうとうの効果こうかが期待きたいできると思おもわれる。今後こんご解決かいけつすべき問題もんだい点てんとして、7例れい中ちゅう1例れいでバルーンの逸脱いつだつが認みとめられたことと、バルーンによる圧迫あっぱくが原因げんいんで気管きかん軟化なんか症しょうが惹起じゃっきされたことが挙あげられる。バルーンの性状せいじょうや形態けいたいに工夫くふうを凝こらし、さらには胎児たいじの大おおきさによって使用しようするバルーンのサイズを変更へんこうするなどの対策たいさくが必要ひつようであろう。