チェアーサイドで行おこなうインプラント周囲しゅういの歯槽しそう骨こつ破壊はかいのリスク診断しんだん

基盤きばん研究けんきゅう(C)

荒川あらかわ 光ひかり  岡山大学おかやまだいがく, 大学院だいがくいん・医い歯学しがく総合そうごう研究けんきゅう科か, 助手じょしゅ (30304314)

4,000千せん円えん (直接ちょくせつ経費けいひ: 4,000千せん円えん)

我々われわれは,当とう院いんで口腔こうくうインプラント治療ちりょうを受うけ,メインテナンス中ちゅうの全ぜん患者かんじゃ64名めいに対たいし,歯は周しゅう病びょうの病態びょうたい把握はあくに用もちいる分子生物学ぶんしせいぶつがく的てき手法しゅほう,すなわち歯は周しゅう病びょう原因げんいん菌きんに対たいする末梢まっしょう血清けっせい抗体こうたい価かの測定そくてい,PCR法ほうを用もちいたPICF中ちゅうの細菌さいきん検査けんさを行おこなっている.その結果けっかを踏ふまえ,継続けいぞく管理かんりを行おこなっているが,インプラント周囲しゅういの重度じゅうどの骨ほね吸収きゅうしゅうを呈ていするインプラント周囲しゅうい炎えん患者かんじゃ4名めいを経験けいけんした.そこで,この4名めいの患者かんじゃに対たいし,インプラント周囲しゅうい歯肉はにく溝みぞ滲出しんしゅつ液えき中ちゅう(PICF)の好こう中ちゅう球だまコラゲナーゼ(MMP-8)の検出けんしゅつを試こころみた.また,このインプラント周囲しゅうい炎えん患者かんじゃ4名めいのうち同意どういが得えられた3名めいに対たいし,従来じゅうらいの歯は周しゅう外科げか治療ちりょうを行おこない,臨床りんしょう検査けんさおよびMMP-8を用もちいた生物せいぶつ学がく的てき手法しゅほうで治療ちりょう効果こうかを検討けんとうした.
[方法ほうほう]
1.対象たいしょうはインプラント周囲しゅうい炎えん患者かんじゃ4名めいとし,年齢ねんれい,部位ぶい等とうをマッチングさせた患者かんじゃをメンテナンス中ちゅうの全ぜん患者かんじゃ64名めいから4名めい抽出ちゅうしゅつし,コントロールとした.
2.また,インプラント周囲しゅうい炎えん患者かんじゃ4名めいのうち治療ちりょうの同意どういを得えられた3名めいに対たいし,歯は周しゅう外科げかを行おこなった.
3.申請しんせい者しゃらが妥当だとう性せいを検討けんとうした方法ほうほうを用もちいて,歯は周しゅう外科げか施術しじゅつ前後ぜんこうにPICFを採取さいしゅした.また,従来じゅうらい行おこなわれている歯は周しゅう検査けんさ,術じゅつ前まえおよび術後じゅつご3カ月かげつには規格きかく化かレントゲン撮影さつえいを行おこなった.
4.採取さいしゅしたPICF中ちゅうのMMP-8の検出けんしゅつは抗こうMMP-8モノクロナール抗体こうたいを用もちいたWestern blottingにより行いった.
[結果けっか]
1.進行しんこう性せいの骨ほね吸収きゅうしゅうが認みとめられるPICF中ちゅうからのみMMP-8が検出けんしゅつされ,MMP-8と骨ほね破壊はかい進行しんこう程度ていどとの関連かんれん性せいを示唆しさする結果けっかを得えた.
2.歯は周しゅう外科げか施術しじゅつ前まえにはMMP-8が検出けんしゅつされたが,施術しじゅつ後ごには検出けんしゅつされなかった.また,3カ月かげつ後ごのレントゲン所見しょけんでは,術じゅつ前まえと比較ひかくして,骨ほね吸収きゅうしゅうの程度ていどは「変化へんかなし」もしくは「骨ほね添加てんか」が認みとめられた.すなわち,PICF中ちゅうのMMP-8は,治療ちりょう効果こうかの判定はんていにも有用ゆうようであることが示唆しさされた.