あご（読よみ）アゴ

顎骨がっこつ(がくこつ)を中心ちゅうしんに形成けいせいされている摂食せっしょくに役やくだつ器官きかんで、上うえ(うわ)あごと下したあごとに分わかれている。円えん口こう類るい（ヤツメウナギなど）を除のぞく脊椎せきつい(せきつい)動物どうぶつにある。円えん口こう類るいにはあごがなく、口くちで腐肉ふにくや他たの魚類ぎょるいなどに吸着きゅうちゃくして養分ようぶんを摂取せっしゅするが、軟骨なんこつ魚類ぎょるい以上いじょうの脊椎動物せきついどうぶつでは鰓えら弓ゆみ(さいきゅう)をつくる骨ほねからあごが発生はっせいする。無む脊椎動物せきついどうぶつであごとよばれるものは群ぐんにより異ことなり、昆虫こんちゅう類るいは大だいあごと小しょうあご、甲殻こうかく類るいは大だい顎あごと第だい1、第だい2小しょう顎あごが口器こうきの一部いちぶとなっている。ウニ類るいの「アリストテレスの提灯ちょうちん(ちょうちん)」とよばれる口器こうきでは5個この歯はがあごの主要しゅよう部ぶをなしている。

［川島かわしま誠一郎せいいちろう］

　人体じんたいのあごを構成こうせいしている骨格こっかくは上顎じょうがく骨こつ(じょうがくこつ)と下しも顎骨がっこつである。いわゆる上うえあご、下しもあごである。上顎じょうがく骨こつは頭蓋とうがい(とうがい)骨ほねのうち、顔面がんめん頭蓋とうがいに属ぞくする骨ほねで、脳のう頭蓋とうがいの一部いちぶと縫合ほうごう結合けつごうしていて不動ふどうであるが、下しも顎骨がっこつは左右さゆうの側がわ頭骨とうこつの下しも顎あご窩(か)と顎あご関節かんせつを形成けいせいし、可動かどう性せいである。つまりあごの運動うんどうとは、顎あご関節かんせつを中心ちゅうしんとした下しも顎骨がっこつの運動うんどうをさすわけである。あごの開閉かいへい運動うんどうやそしゃく運動うんどうの場合ばあい、固定こていされた上顎じょうがく骨こつに対たいして下しも顎骨がっこつは前後ぜんご運動うんどうを行おこなっている。ところで、表面ひょうめんからみた顔面がんめんのあごの範囲はんいは定義ていぎがあるわけではなく、はっきりしていない。下した唇くちびるの下方かほうの範囲はんいを一般いっぱんにあごとよぶが、解剖かいぼう学名がくめいでは頤(おとがい)部ぶとよぶ。この突出とっしゅつ部ぶは人間にんげんの特徴とくちょうであって、高等こうとうな類人猿るいじんえんでも形成けいせいされていない。鼻はなの下部かぶや側面そくめんの耳みみの前方ぜんぽうあたりも広ひろい意味いみであごとよぶ場合ばあいもある。「あごが外はずれる」というのは顎あご関節かんせつの脱臼だっきゅう(だっきゅう)であって、側がわ頭骨とうこつの下しも顎あご窩に収容しゅうようされている下した顎骨がっこつの下しも顎あご頭あたまが前方ぜんぽうに外はずれる場合ばあいをいう。下した顎骨がっこつを下したにさげて開口かいこうすると外耳がいじ孔あなの前方ぜんぽうに皮膚ひふの陥おちい凹(かんおう)部ぶが生しょうじるが、この位置いちが下しも顎あご窩にあたる。下した顎骨がっこつは人類じんるい進化しんかの過程かていでは形かたちが縮小しゅくしょう化かの傾向けいこうを示しめしているが、老齢ろうれいによっても下しも顎骨がっこつの体からだ部ぶは低ひくく薄うすくなるうえ、歯はの脱落だつらくによってあごの外見がいけんも小ちいさくなり、乳幼児にゅうようじの形かたちに近ちかくなる。下した顎骨がっこつの形態けいたいは、このように年齢ねんれいによって著いちじるしく変化へんかするために、あごの外観がいかんも変化へんかする。あごの後のち縁えんの角度かくど（下しも顎あご角かくという）は幼児ようじでは約やく140度ど、成人せいじんでは約やく120度どだが、老齢ろうれいになると、またこの角度かくどは大おおきくなる。

［嶋しま井い和世かずよ］