コマーシャル（読よみ）こまーしゃる（その他た表記ひょうき）commercial

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コマーシャルは、その制作せいさく面めんから、次つぎの5種類しゅるいに分わけることができる。

(1)生せい(なま)コマーシャル　スタジオ放送ほうそう中ちゅうまたは中継ちゅうけい放送ほうそう中ちゅう、テレビカメラを通とおしてそのまま放送ほうそうされるCMで、生なまCMあるいは生なまコマとも略称りゃくしょうされる。

(2)VTR・CM　ビデオテープに収録しゅうろくされたCMをいう。生なまCMに比くらべ、効果こうか的てきな演出えんしゅつや編集へんしゅう技術ぎじゅつを駆使くしできる。また、コンピュータ・グラフィクス（CG）などによる制作せいさく技術ぎじゅつの進歩しんぽもあって、かつてのコマーシャル・フィルムにかわって、CMの主流しゅりゅうとなっている。

(3)コマーシャル・フィルム　映像えいぞうと音声おんせいを編集へんしゅうし、フィルムで一ひとつのパッケージにしたCMで、CFと略称りゃくしょうされることが多おおい。

(4)カードCM　テロップ・カードにつくって放送ほうそうするCM。

(5)スライドCM　スライドにつくったCM。

　また、コマーシャルは、放送ほうそう形態けいたい面めんから、「その種類しゅるいをプログラム・コマーシャル、スポットコマーシャル、パーティシペーシング・コマーシャルおよび案内あんないコマーシャルとする」と日本民間放送連盟にほんみんかんほうそうれんめいの放送ほうそう基準きじゅんは規定きていしているが、実際じっさいの放送ほうそうでは前まえ二に者しゃが中心ちゅうしんとなる。プログラム・コマーシャルは、番組ばんぐみ提供ていきょうスポンサーが番組ばんぐみの提供ていきょう時間じかん内ないに挿入そうにゅうするコマーシャルで、番組ばんぐみCMともよばれる。その許容きょよう放送ほうそう時間じかん量りょうは、社団しゃだん法人ほうじん日本民間放送連盟にほんみんかんほうそうれんめい（略称りゃくしょうは民放連みんぽうれん）の自主じしゅ規制きせいで規定きていされており、テレビの場合ばあい、5分ふん以内いないの番組ばんぐみは1分ふん、10分ふん番組ばんぐみは2分ふん、20分ふん番組ばんぐみは2分ふん30秒びょう、30分ふん以上いじょうの番組ばんぐみは番組ばんぐみ放送ほうそう時間じかんの10％、となっている。ラジオの場合ばあいは、5分ふん番組ばんぐみで1分ふん、10分ふん番組ばんぐみで2分ふん、15分ふん番組ばんぐみで2分ふん30秒びょう、20分ふん番組ばんぐみで2分ふん40秒びょう、25分ふん番組ばんぐみで2分ふん50秒びょう、30分ふん以上いじょうの番組ばんぐみは番組ばんぐみの長ながさの10％、となっている。番組ばんぐみCMは、通常つうじょう番組ばんぐみ開始かいしアナウンス直後ちょくごの前まえCM、中間ちゅうかんの中なかCM、終了しゅうりょうアナウンス直前ちょくぜんの後のちCMに分わかれている。CMの長ながさは15秒びょうが標準ひょうじゅんで、30秒びょう以上いじょうのものは一般いっぱんに長ちょう尺しゃく(ちょうじゃく)CMとよばれる。また、番組ばんぐみ開始かいしアナウンス直前ちょくぜんに入いれるものをカウキャッチャーcowcatcher、番組ばんぐみ終了しゅうりょうアナウンスのあとにつけるCMをヒッチハイクhitchhikeといい、いずれもスポット的てき効果こうかをねらって挿入そうにゅうされるCMである。

　もう一ひとつは、スポット・コマーシャルである。番組ばんぐみに関係かんけいなく、番組ばんぐみと番組ばんぐみとの間あいだ（ステーション・ブレークstation break、略りゃくしてステブレという）に挿入そうにゅうされるコマーシャルで、スポットCMあるいは単たんにスポットともよばれる。ステーション・ブレークは、テレビの場合ばあい通常つうじょう1分間ふんかんで、5秒びょう、10秒びょう、15秒びょう、30秒びょう、60秒びょうのCMが収容しゅうようされるが、そのうち15秒びょうCMがもっともよく使つかわれる。ラジオの場合ばあいのステブレは40～60秒間びょうかんで、20秒びょうスポットが比較的ひかくてき多おおい。なお、番組ばんぐみ提供ていきょうと銘打めいうたずに番組ばんぐみ内ないのCM枠わくのみを買かうパーティシペーティング・コマーシャルparticipating commercialは、スポットCMと同おなじものと解げすることができる。案内あんないコマーシャルは、一般いっぱんに案内あんないまたはガイドなどの名称めいしょうでよばれ、ステーション・ブレーク以外いがいで局きょくが編成へんせいする時とき間あいだ枠わくに集中しゅうちゅうして放送ほうそうするコマーシャルをいう。

　テレビメディアの広告こうこく計画けいかくをするにあたって、広告こうこく主ぬしは、それぞれの広告こうこく目標もくひょうによって、番組ばんぐみCMとスポットCMを効率こうりつ的てきに使つかい分わけている。たとえば、新しん商品しょうひん発売はつばいキャンペーンで商品しょうひん知名度ちめいどを上あげようとするときはスポットCMを、消費しょうひ者しゃに対たいして特定とくていのイメージを持続じぞく的てきに訴求そきゅうしようとするときは、番組ばんぐみを長期ちょうきにわたって提供ていきょうしている。このように、番組ばんぐみCMおよびスポットCMには、それぞれ特性とくせいがある。とりわけスポットCMは、地域ちいき、放送ほうそう局きょく、時間じかん帯たい、期間きかんなどの選択せんたくの自由じゆう性せいがあるだけではなく、訴求そきゅうの迅速じんそく性せいやそのインパクトの大おおきさから、購買こうばいへ結むすび付つける力ちからが強つよい、とされている。そのため、番組ばんぐみを提供ていきょうする広告こうこく主ぬしは広範囲こうはんいに及およぶが、スポットCMの広告こうこく主ぬしは、購買こうばいと直結ちょっけつしやすい食品しょくひん、飲料いんりょう、化粧けしょう品ひん、洗剤せんざい、薬品やくひんなど消費しょうひ財ざいに偏在へんざいしている。

　また、スポットCMを実施じっしする場合ばあい、対象たいしょうとなる視聴しちょう者しゃ（ターゲット・オーディエンス）の1週間しゅうかんのライフスタイルに合あわせて、彼かれらにもっとも効率こうりつ的てきに訴求そきゅうしていく露出ろしゅつパターンが考慮こうりょされる。そのパターンには以下いかの七ななつの基本きほん的てきな型かたがある。

(1)逆ぎゃくL型がた　相対そうたい的てきに若わかい会社かいしゃ員いんを対象たいしょうとする型かたで、このタイプの層そうが七ななつの基本きほん系けいのなかでもっとも多おおく、平日へいじつの夜よるから深夜しんや、および土ど・日曜日にちようびの全日ぜんじつに投入とうにゅうする。

(2)全ぜん日型にっけい　専業せんぎょう主婦しゅふを主おもに対象たいしょうとする型かたで、平日へいじつおよび土ど・日曜日にちようびのほぼ全日ぜんじつに投入とうにゅうする。

(3)ヨの字じ型がた　自営じえい業者ぎょうしゃ等とうを主おもに対象たいしょうとする型かたで、平日へいじつの朝あさ、昼ひる、夜よるから深夜しんやおよび土ど・日曜日にちようびの全日ぜんじつに多おおく投入とうにゅうする。

(4)コの字じ型がた　相対そうたい的てきに経済けいざい観念かんねんが高たかく、規則正きそくただしい生活せいかつを営いとなみ、比較的ひかくてき年齢ねんれい層そうが高たかい勤労きんろう者しゃ層そうを対象たいしょうとする型かたで、2番目ばんめに多おおいタイプ。平日へいじつの朝あさ、夕方ゆうがたから深夜しんやおよび土曜日どようびの全日ぜんじつに多おおく投入とうにゅうする。

(5)逆ぎゃくF型がた　有職ゆうしょくの若年じゃくねん層そう等とうを対象たいしょうとする型かたで、平日へいじつの深夜しんやを重点じゅうてんに、平日へいじつの昼ひると夕方ゆうがた以降いこうおよび土ど・日曜日にちようびに投入とうにゅうする。

(6)深夜しんや型がた　18～20歳さい代だいの若者わかものや学生がくせい等とうを対象たいしょうとする型かたで、平日へいじつと土ど・日曜日にちようびを通とおして深夜しんやに集中しゅうちゅう的てきに投入とうにゅうする。

(7)全日ぜんじつ昼ひる型がた　リタイアした高こう年齢ねんれい者しゃ層そう等とうを主おもに対象たいしょうとする型かたで、平日へいじつと土ど・日曜日にちようびの全日ぜんじつに投入とうにゅうし、とくに午後ごごの投入とうにゅうが多おおい。

［伊藤いとう誠二せいじ］

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ところで、日本にっぽんで民間みんかん放送ほうそうが発足ほっそくする初期しょきのころ、民放みんぽう関係かんけい者しゃは、日本人にっぽんじんの放送ほうそうコマーシャルへの拒否きょひ反応はんのうを、真剣しんけんに恐おそれていた。長ながい間あいだのNHKラジオのみの聴取ちょうしゅ習慣しゅうかんや日本人にっぽんじんの商人しょうにん蔑視べっし(べっし)意識いしきから、番組ばんぐみの途中とちゅうや番組ばんぐみと番組ばんぐみの間あいだに「物売ものうり」の声こえを挿入そうにゅうすることへの反感はんかんが予想よそうされたからである。商業しょうぎょう放送ほうそうという呼称こしょうを避さけて「民間みんかん放送ほうそう」という呼よび方かたを選えらんだことや、民放みんぽうラジオが開局かいきょくした1951年ねん（昭和しょうわ26）に初はじめて決きめられた日本にっぽん民間みんかん放送ほうそう連盟れんめいの「放送ほうそう基準きじゅん」のなかに「コマーシャルは、短みじかいほどよい」という一節いっせつがあることなどに、それは示しめされている。民放連みんぽうれん放送ほうそう基準きじゅんは、当時とうじ、番組ばんぐみ提供ていきょうの場合ばあいのプログラム・コマーシャルの長ながさについて、「5分ふん番組ばんぐみでは1分ふん以内いない」、「30分ふん番組ばんぐみでは3分ふん以内いない」などCM量りょうの自主じしゅ規制きせいを設もうけていた。

　だが、番組ばんぐみCMの規制きせい外がいにあったスポットCMの量りょうは、時代じだいとともに増加ぞうかしている。1960年代ねんだい後半こうはん以降いこうその勢いきおいはとりわけ顕著けんちょで、1990年代ねんだいに入はいると、スポットCMの扱あつかい額がくはテレビ局てれびきょくの年間ねんかん総そう扱あつかい額がくの半分はんぶんを各かく年としとも超こえ、民放みんぽうテレビ局てれびきょく経営けいえいの根幹こんかんを担になうに至いたっている。この状況じょうきょうは当分とうぶんの間あいだ続つづき、経営けいえいの在あり方かたが変化へんかしない限かぎり不変ふへんだと思おもわれる。同時どうじに、コマーシャルは国民こくみん生活せいかつのなかにすっかり定着ていちゃくし、生活せいかつ情報じょうほうとして現代げんだい生活せいかつになくてはならないものとなり、時代じだいの気分きぶんを豊ゆたかにする存在そんざいにすらなっている。反面はんめん、その社会しゃかい的てき影響えいきょうについての論議ろんぎも盛さかんになされ、CM過剰かじょう論ろんの声こえも聞きかれた。そのため、民放連みんぽうれんは1975年ねんに、テレビCMの総量そうりょうをスポットCMやガイドを含ふくめ、「週間しゅうかん放送ほうそう総そう時間じかんの18％以内いない」とする放送ほうそう基準きじゅんの改正かいせいを行おこなっており、2011年ねん（平成へいせい23）時点じてんでもこの基準きじゅんは遵守じゅんしゅ(じゅんしゅ)されている。21世紀せいきに入はいって、放送ほうそう界かいの多たチャンネル化か、デジタル化かはさらに進すすんでいるが、コマーシャルが日常にちじょう生活せいかつに不可欠ふかけつのものであることに変かわりはないといえる。

［伊藤いとう誠二せいじ］

『広告こうこく批評ひひょう編へん『広告こうこく大だい入門にゅうもん』（1992・マドラ出版しゅっぱん）』▽『全日本ぜんにほんCM放送ほうそう連盟れんめい編へん『ACC　CM年鑑ねんかん』各かく年とし版ばん（宣伝せんでん会議かいぎ）』▽『電通でんつう出版しゅっぱん事業じぎょう部ぶ編へん・刊かん『電通でんつう広告こうこく年鑑ねんかん』各かく年とし版ばん』▽『東京とうきょうコピーライターズクラブ編へん『コピー年鑑ねんかん』各かく年とし版ばん（宣伝せんでん会議かいぎ）』▽『日本民間放送連盟にほんみんかんほうそうれんめい編へん『日本にっぽん民間みんかん放送ほうそう年鑑ねんかん』各かく年とし版ばん（コーケン出版しゅっぱん）』▽『日本にっぽん広告こうこく業ぎょう協会きょうかい教育きょういくセミナー委員いいん会かい編へん『広告こうこくビジネス入門にゅうもん』各かく年とし版ばん（日本にっぽん広告こうこく業ぎょう協会きょうかい）』