古くから広く親しまれている日本の代表的な植物で,秋の七草の一つとしてよく知られている。古くは芽子と記し,ハギと読んだ。一般にハギと呼ばれる植物はマメ科ハギ属の中のヤマハギ節に属する数種類を含むもので,特定の種類ではなく,外観の似ている種類の総称である。ふつうにハギと呼ばれるのはヤマハギ,ミヤギノハギ,ニシキハギ,ツクシハギのことで,ときにマルバハギも含まれる。
ハギの一般的な特徴は次のとおりである。低木または低木状の多年草で,落葉性,茎はよく枝分れするかあるいは根もとから多数に分かれて伸び,花期には枝のしだれることが多い。葉は3小葉をもつ複葉であり,小葉はほぼ楕円形,花は紅紫色で,長さ1~2cmあり,多数が穂に集まって咲き,美しい。果実は小型であまり目だたず,扁平な楕円形で,伏した短毛があり,中に1個の種子を入れる。ハギは観賞用のほかに,家畜の飼料として用いられ,また砂防のため土手や道路わきなどの斜面に植えられる。本来の生育地も日当りのよい草原,裸地,林のへりなどであるため,これに適している。民間薬として,根を乾燥して煎じて,めまいやのぼせを静めるのに効があるといわれている。葉を乾かして茶の代用とし,種子を粉にして飯に混ぜて食用とした。そのほかにも,枝を切ってほうきとしたり,垣根や屋根に用いた。また皮をはいで縄を作ったという。
ミヤギノハギ(宮城野萩)L.thunbergii Nakaiは公園や庭などに広く植えられている多年草で,高さ2mに達し,茎はよくしだれる。小葉は長楕円形で先がとがっており,花の時期には表面は無毛。夏から秋に咲く花は紅紫色で長さ15~18mm,萼の裂片は狭卵形で,先は長く伸びてとがる。本州の日本海側地方に生育するケハギから園芸化されたもので,日本の固有種。
ヤマハギ(山萩)L.bicolor Turcz.は日当りのよい山地の草原,林のまわりなどに生育する半低木で,高さ2mに達する。小葉は楕円形で,先はミヤギノハギほどではないが少しとがるか,円く,葉の表面は無毛または少し毛がある。花は7~9月に咲き,ミヤギノハギより小さく,長さ11~15mm。北海道から九州にみられ,朝鮮,中国,ウスリー地方に分布する。
ツクシハギ(筑紫萩)L.homoloba Nakaiはヤマハギによく似ているが,小葉は厚質で,先はとがらず,表面にはまったく毛がない。晩夏から秋に咲く花は紅紫色で,旗弁の背側はやや白い。本州,四国,九州に分布し,日本の固有種である。
ニシキハギ(錦萩)L.japonica Baileyはミヤギノハギによく似ており,公園や庭で広く栽培されている。日当りのよい平地から山地にふつうにみられる半低木で,ミヤギノハギと異なり茎の下部は木質で,冬も枯れずに残っており,高さ約1.5mに達する。小葉は楕円形で先はミヤギノハギほどとがらず,表面に一面に細かい毛がある。花は紅紫色で8~10月に咲き,長さ12~17mm。本州中部以西,四国,九州,朝鮮,中国に分布する。
マルバハギ(円葉萩)L.cyrtobotrya Miq.は以上に述べたハギと異なって,花穂が短く,花があまり目だたない。小葉の先は円く,しばしばへこむ。秋に咲く花は紅紫色で,萼の裂片の先が針状に伸びている。本州,四国,九州の日当りのよい山地にふつうにはえ,朝鮮,中国に分布する。
キハギ(木萩)L.buergeri Miq.は名のように木本のハギで,花は淡黄色で一部紅紫色であり,いわゆるハギには含まれない。
メドハギ(目処萩)L.juncea (L.f.) Pers.var.subsessilis Miq.は草地,荒地,川原など低地でふつうにみられる多年草。晩夏から秋に咲く花は淡黄色で長さ6~7mm,葉腋(ようえき)に2~4個が集まってつき,ハギのように花穂をつくらない。閉鎖果が多い。日本全土にふつうに生育し,東アジア,ヒマラヤ,アフガニスタンに分布する。
執筆者:大橋 広好