ヒメマス（英語えいご表記ひょうき）kokanee salmon
Oncorhynchus nerka

サケ目めサケ科かの魚さかな。ベニザケの陸封りくふう型がた。原産地げんさんちは北海道ほっかいどうの阿寒湖あかんこと網走川あばしりがわ上流じょうりゅうのチミケップ湖ちみけっぷこである。1894年ねんに支笏湖しこつこに移うつり殖ふえされ，アイヌ語ごでカパッチェプ（薄うすい魚さかな。ヤマベに比くらべると扁平へんぺいなので）と呼よばれ，1908年ねんに姫鱒ひめますの名なが北海道庁ほっかいどうちょうの森脇もりわき幾いく茂しげるにより与あたえられた。支笏湖しこつこよりさらに日本にっぽん各地かくちへ移うつり殖ふえされ，和かず井内いうち貞行さだゆき（1858-1922）による十和田湖とわだこへの移うつり殖ふえの話はなしは有名ゆうめいである。体からだ背部はいぶは灰はい青色あおいろ，腹部ふくぶは銀ぎん白色はくしょくで，産卵さんらん期きには雌雄しゆうとも緑みどり褐色かっしょくと朱しゅ紅色こうしょくの婚姻こんいん色しょくを体側たいそくの中央ちゅうおう部ぶのみに現あらわす。深ふかくて冷つめたい湖水こすいに適てきして生息せいそくし，群むれをなして中層ちゅうそうを泳およぎ，ときに水面すいめんに姿すがたを現あらわす。ふつう4年ねんで成熟せいじゅくする。産卵さんらん期きは9月がつ下旬げじゅんから11月がつ下旬げじゅんで，湖みずうみに流入りゅうにゅうする河川かせんに遡上そじょう（そじよう）してれき底そこに産卵さんらんする。卵たまごは直径ちょっけい3.5～4.0mmで，1腹はらの卵たまご数すうはふつう100～800粒つぶ程度ていどである。動物どうぶつプランクトンをおもな餌えさとし，ときにはスジエビ，小型こがたの魚さかななどを捕食ほしょくする。体長たいちょうは20～30cm，ときに40cmになる。釣つりの対象たいしょうとして喜よろこばれ，美味びみで塩焼しおやき，フライ，冷凍れいとうの刺身さしみで食たべる。
執筆しっぴつ者しゃ：松下まつした 克己かつみ