目次 動物と植物 進化と系統からみた動物 単細胞の動物 多数の細胞からなる動物 細胞が組織を形成せず,口や消化管がない動物 細胞が規則正しく並んで組織を形成し,ふつう口と消化管がある動物 人間と動物 動物 どうぶつ とは,他 た の生物 せいぶつ を食 た べて独立 どくりつ 生活 せいかつ をする生物 せいぶつ の総称 そうしょう で,分類 ぶんるい 学 がく 上 じょう ,植物 しょくぶつ 界 かい に対 たい して動物界 どうぶつかい Animaliaを構成 こうせい する。
動物 どうぶつ と植物 しょくぶつ 動物 どうぶつ も植物 しょくぶつ もその体 からだ は,水 みず ,無機 むき 塩 しお ,炭水化物 たんすいかぶつ ,脂肪 しぼう ,タンパク質 たんぱくしつ からなるが,消耗 しょうもう した成分 せいぶん を補 おぎな い,新 あたら しい組織 そしき をつくるなど,生活 せいかつ に必要 ひつよう なエネルギーを得 え るためには栄養分 えいようぶん が必要 ひつよう である。緑色 みどりいろ 植物 しょくぶつ は栄養分 えいようぶん としての炭水化物 たんすいかぶつ を,光 ひかり のエネルギーを用 もち いた炭酸 たんさん 同化 どうか (光合成 こうごうせい )によって大気 たいき 中 ちゅう の二酸化炭素 にさんかたんそ と水 みず からつくり出 だ す能力 のうりょく をもっている(独立 どくりつ 栄養 えいよう )。これは葉 は 緑 みどり 体 たい のなかで行 おこな う。ところが動物 どうぶつ は,このように無機質 むきしつ を組 く み合 あ わせて有機 ゆうき 質 しつ をつくる能力 のうりょく をもたないから,栄養分 えいようぶん としての炭水化物 たんすいかぶつ やタンパク質 たんぱくしつ は,複雑 ふくざつ な有機物 ゆうきぶつ ,つまり生物 せいぶつ 自身 じしん の生産 せいさん 物 ぶつ という形 かたち でなければ取 と り入 い れられない(従属 じゅうぞく 栄養 えいよう )。すなわち動物 どうぶつ は,生 い きるために植物 しょくぶつ や動物 どうぶつ を食 た べ,それを分解 ぶんかい して自己 じこ に特有 とくゆう な物質 ぶっしつ に変 か えなければならない。
植物 しょくぶつ は光合成 こうごうせい を行 おこな うために,葉 は 緑 みどり 体 たい のある葉 は や枝 えだ を広 ひろ げ,できるだけ多 おお くの日光 にっこう を受 う けとめるように進化 しんか した。二酸化炭素 にさんかたんそ ,水 みず ,無機 むき 塩 しお はどこにでもあるから,それらを得 え るために移動 いどう する必要 ひつよう はなく,地中 ちちゅう に根 ね をはって静止 せいし していればよかった。ところが動物 どうぶつ は,食物 しょくもつ を探 さが し求 もと めて動 うご き回 まわ る必要 ひつよう があった。もちろん動物 どうぶつ にも,サンゴ,カイメン,ウミユリのように移動 いどう をしないものもあるが,それらは水 みず に浮 う いて漂 ただよ うプランクトン を食 た べているためで,動物 どうぶつ としては例外 れいがい である。
このように動物 どうぶつ は運動 うんどう する必要 ひつよう があるので,体 からだ はやわらかく,自由 じゆう に曲 ま げられなければならない。植物 しょくぶつ の細胞 さいぼう を包 つつ んでいるのがセルロースからなる硬 かた い細胞 さいぼう 壁 かべ であるのに対 たい して,動物 どうぶつ の細胞 さいぼう がやわらかい原形 げんけい 質 しつ 膜 まく で包 つつ まれていることや,体 からだ 壁 かべ と内臓 ないぞう の間 あいだ などに体腔 たいこう があるのは,おそらくこのためであろう。体 からだ は,移動 いどう に便利 べんり な球 たま または楕円 だえん に近 ちか い形 かたち となって,運動 うんどう 器官 きかん (筋 すじ 組織 そしき ,支持 しじ 組織 そしき などで形成 けいせい されたひれ,脚 きゃく など)と消化 しょうか 器官 きかん (歯 は ,胃 い ,腸 ちょう など)が発達 はったつ し,それらの組織 そしき に酸素 さんそ を供給 きょうきゅう するのに必要 ひつよう な呼吸 こきゅう 系 けい (えら,気管 きかん ,肺 はい など)と循環 じゅんかん 系 けい が現 あらわ れ,運搬 うんぱん 役 やく の血液 けつえき などとともに,それらはしだいに効率 こうりつ のよいものに改良 かいりょう されていった。また,代謝 たいしゃ の最終 さいしゅう 産物 さんぶつ を体外 たいがい に排出 はいしゅつ する腎臓 じんぞう のような排出 はいしゅつ 器官 きかん が発達 はったつ した。一方 いっぽう ,食物 しょくもつ を探 さが すのに必要 ひつよう な目 め (眼 め ),触角 しょっかく などの感覚 かんかく 器官 きかん と神経 しんけい 系 けい およびその中枢 ちゅうすう である脳 のう が現 あらわ れ,脳 のう の発達 はったつ につれて記憶 きおく や学習 がくしゅう の能力 のうりょく がしだいに高 たか まり,直面 ちょくめん した事態 じたい を判断 はんだん し,推理 すいり に基 もと づいて行動 こうどう するものさえも見 み られるようになった。
以上 いじょう のような諸点 しょてん で,動物 どうぶつ は植物 しょくぶつ と顕著 けんちょ に異 こと なっている。もちろん動物 どうぶつ も種々 しゅじゅ の方法 ほうほう で生殖 せいしょく し,特殊 とくしゅ な生殖 せいしょく 器官 きかん が発達 はったつ するが,この点 てん は基本 きほん 的 てき には植物 しょくぶつ と異 こと ならない。しかしこのような動物 どうぶつ と植物 しょくぶつ の違 ちが いは,原生動物 げんせいどうぶつ ,細菌 さいきん など,単細胞 たんさいぼう の下等 かとう 生物 せいぶつ では明 あき らかでないことが多 おお い。たとえば,原生動物 げんせいどうぶつ の鞭 むち 毛虫 けむし 類 るい には,植物 しょくぶつ のように独立 どくりつ 栄養 えいよう のものと,動物 どうぶつ のように従属 じゅうぞく 栄養 えいよう のものがみられ,動物 どうぶつ とも植物 しょくぶつ ともつかないものが少 すく なくない。
進化 しんか と系統 けいとう からみた動物 どうぶつ 現在 げんざい 地球 ちきゅう 上 じょう に生息 せいそく (棲息 せいそく )する動物 どうぶつ はきわめて多種 たしゅ 多様 たよう で,125万 まん 以上 いじょう の種 たね が知 し られているが,いまだに研究 けんきゅう の十分 じゅうぶん でない分野 ぶんや が少 すく なくないので,将来 しょうらい その総数 そうすう はおそらく200万 まん 種 しゅ 以上 いじょう に達 たっ するであろう。
動物 どうぶつ の化石 かせき は先カンブリア時代 せんかんぶりあじだい 末期 まっき からも発見 はっけん されているが,それらはきわめて不完全 ふかんぜん である。しかしカンブリア紀 き になると,原生動物 げんせいどうぶつ の有 ゆう 孔 あな 虫 ちゅう や放散 ほうさん 虫 ちゅう ,海綿動物 かいめんどうぶつ のフツウカイメン(普通 ふつう 海綿 かいめん ),腔腸動物 こうちょうどうぶつ (刺 とげ 胞動物 どうぶつ )のクラゲ,棘 とげ 皮 がわ (きよくひ)動物 どうぶつ のウミユリ,星 ほし 口 こう (ほしくち)動物 どうぶつ ,軟体動物 なんたいどうぶつ ,環 たまき 形 がた 動物 どうぶつ の多毛 たもう 類 るい ,節足動物 せっそくどうぶつ の三 さん 葉虫 はむし ,鋏 やっとこ 角 かく (きようかく)類 るい および甲殻 こうかく 類 るい など,形態 けいたい 的 てき にはっきり異 こと なった門 もん が突然 とつぜん 現 あらわ れるので,各 かく 門 もん の間 あいだ の系統 けいとう 的 てき な関係 かんけい を化石 かせき をたどって確 たし かめることはほとんど不可能 ふかのう である。したがって門 もん の間 あいだ の系統 けいとう 関係 かんけい は,形態 けいたい や発生 はっせい から推定 すいてい するほかない。このため,系統 けいとう 関係 かんけい にはいくつかの異 こと なった説 せつ があり,いまだに安定 あんてい するに至 いた っていない。以下 いか は,動物 どうぶつ の進化 しんか 経路 けいろ の概略 がいりゃく を示 しめ して,複雑 ふくざつ きわまりない動物界 どうぶつかい を単純 たんじゅん 化 か して示 しめ そうと試 こころ みたものである。示 しめ した種 たね 数 すう は現生 げんなま 種 しゅ の概数 がいすう 。
動物 どうぶつ 界 かい には,個体 こたい が単一 たんいつ の細胞 さいぼう からなり,偽足 ぎそく (ぎそく)や鞭 むち 毛 げ ,繊毛 せんもう などで運動 うんどう する単細胞動物 たんさいぼうどうぶつ と,体 からだ が複数 ふくすう の細胞 さいぼう からなる多 た 細胞 さいぼう 動物 どうぶつ がある。前者 ぜんしゃ は原生動物 げんせいどうぶつ 亜 あ 界 かい ,後者 こうしゃ は後生 ごしょう 動物 どうぶつ 亜 あ 界 かい に分類 ぶんるい される。最近 さいきん では前者 ぜんしゃ を原生 げんせい 生物 せいぶつ 界 かい ,後者 こうしゃ を動物界 どうぶつかい とすることも多 おお い。
単細胞 たんさいぼう の動物 どうぶつ 原生動物 げんせいどうぶつ 亜 あ 界 かい には,鞭 むち 毛虫 けむし 類 るい (ミドリムシ,ボルボックス),根 ね 足 あし 虫 むし 類 るい (アメーバ,有 ゆう 孔 あな 虫 ちゅう ),胞子 ほうし 虫 むし 類 るい (胞子 ほうし 虫 ちゅう ),繊毛 せんもう 虫 むし 類 るい (ゾウリムシ,ツリガネムシ)など多数 たすう の類 るい がある(3万 まん 種 しゅ 以上 いじょう )。これらはそれぞれ,独立 どくりつ の門 もん とされることもあるが,すべてをまとめて原生動物 げんせいどうぶつ 門 もん とするのがふつうである。現在 げんざい 見 み られる原生動物 げんせいどうぶつ は,どれも高度 こうど に進化 しんか したもので,単細胞 たんさいぼう とはいえその構造 こうぞう はきわめて複雑 ふくざつ で,後生 ごしょう 動物 どうぶつ の祖先 そせん らしい原始 げんし 的 てき なものは見当 みあ たらない。
多数 たすう の細胞 さいぼう からなる動物 どうぶつ 原生動物 げんせいどうぶつ 以外 いがい のすべての動物 どうぶつ を一括 いっかつ して後生 ごしょう 動物 どうぶつ 亜 あ 界 かい とする。後生 ごしょう 動物 どうぶつ は,原生動物 げんせいどうぶつ の原始 げんし 的 てき なものから分 わ かれ出 で たに違 ちが いないが,どのようなプロセスで多 た 細胞 さいぼう の動物 どうぶつ になったのか明 あき らかでない。後生 ごしょう 動物 どうぶつ 亜 あ 界 かい には体制 たいせい の異 こと なった中 なか 生 なま 動物 どうぶつ ,側 がわ 生 せい 動物 どうぶつ ,真正 しんしょう 後生 ごしょう 動物 どうぶつ の3類 るい がある。
細胞 さいぼう が組織 そしき を形成 けいせい せず,口 くち や消化 しょうか 管 かん がない動物 どうぶつ この範疇 はんちゅう (はんちゆう)には,中 ちゅう 生 せい 動物 どうぶつ と海綿動物 かいめんどうぶつ が含 ふく まれる。
(1)中 ちゅう 生 せい 動物 どうぶつ 門 もん タコなどの腎臓 じんぞう に寄生 きせい するニハイチュウ など,約 やく 80種 しゅ からなる〈中 ちゅう 生 せい 動物 どうぶつ 〉は,体 からだ 皮 がわ 細胞 さいぼう が集 あつ まってできた表層 ひょうそう が管 かん をつくり,その中 なか に生殖 せいしょく 細胞 さいぼう を包 つつ んでいる。しかし食物 しょくもつ を取 と り入 い れる口 くち や胃 い をもたないだけでなく,細胞 さいぼう が規則正 きそくただ しく並 なら んで組織 そしき を構成 こうせい することもない。原生動物 げんせいどうぶつ の胞子 ほうし 虫 むし 類 るい に近 きん 縁 えん で,それと真正 しんせい 後生 ごしょう 動物 どうぶつ の中間 ちゅうかん のものではないかともいわれるが,寄生 きせい 生活 せいかつ のため組織 そしき が退化 たいか した真正 しんしょう 後生 ごしょう 動物 どうぶつ (扁 ひらた 形 がた 動物 どうぶつ に近 ちか い)とも見 み られ,真相 しんそう がよくわかっていない。
(2)側 がわ 生 せい 動物 どうぶつ 〈海綿動物 かいめんどうぶつ 門 もん 〉(カイメン ,約 やく 9000種 しゅ )だけからなり,海 うみ または淡水 たんすい に生息 せいそく ,雌雄 しゆう 異体 いたい または同体 どうたい 。体 からだ は2種類 しゅるい の細胞 さいぼう (アメーバ状 じょう 細胞 さいぼう と襟 えり 細胞 さいぼう )からなり,ふつう壺 つぼ 状 じょう で下端 かたん で他物 たぶつ に着生 ちゃくせい する。上端 じょうたん に1個 いっこ の大 だい 孔 あな ,体 たい 壁 かべ には多数 たすう の小 しょう 孔 あな があり,中央 ちゅうおう に胃 い 腔がある。体 からだ 壁 かべ は,アメーバ状 じょう 細胞 さいぼう からなる外側 そとがわ の皮 かわ 層 そう と,襟 えり 細胞 さいぼう からなる内側 うちがわ の胃 い 層 そう で形成 けいせい され,それら2層 そう の細胞 さいぼう 層 そう の間 あいだ は間 あいだ 充 たかし (かんじゆう)ゲルで満 み たされ,骨 ほね 片 へん がある。襟 えり 細胞 さいぼう は鞭 むち 毛 げ をもち,その運動 うんどう で水 みず は小 しょう 孔 あな から胃 い 腔に流 なが れこみ,大 だい 孔 あな から外 そと へ出 で る。襟 えり 細胞 さいぼう は,水 みず とともに胃 い 腔に入 はい ってきた食物 しょくもつ をとらえて細胞 さいぼう 内 ない に取 と り入 い れ,原生動物 げんせいどうぶつ のようにその中 なか で消化 しょうか する。したがって,胃 い 腔は実 じつ は胃 い でなく,大 だい 孔 あな も口 くち ではない。皮 かわ 層 そう と胃 い 層 そう を形成 けいせい する細胞 さいぼう は互 たが いにゆるく集合 しゅうごう しているだけで,真 しん の組織 そしき を形成 けいせい しない。各 かく 細胞 さいぼう は刺激 しげき 感受性 かんじゅせい をもつが,細胞 さいぼう 間 あいだ の協同 きょうどう 作業 さぎょう はまったく行 おこな われず,個体 こたい としてのまとまりが貧弱 ひんじゃく で,形 かたち や大 おお きさが不安定 ふあんてい である。もちろん筋肉 きんにく ,神経 しんけい ,感覚 かんかく 細胞 さいぼう などもない。この類 るい は,原生動物 げんせいどうぶつ より一段 いちだん と進化 しんか した状態 じょうたい にあることは確 たし かであるが,真正 しんしょう 後生 ごしょう 動物 どうぶつ への進化 しんか の一 いち 過程 かてい を示 しめ すものとは考 かんが えられない。
細胞 さいぼう が規則正 きそくただ しく並 なら んで組織 そしき を形成 けいせい し,ふつう口 くち と消化 しょうか 管 かん がある動物 どうぶつ このような動物 どうぶつ を真正 しんせい 後生 ごしょう 動物 どうぶつ という。いくつかの組織 そしき は集 あつ まって,一定 いってい の働 はたら きをもつ器官 きかん を形成 けいせい し,寄生 きせい 生活 せいかつ で体制 たいせい が退化 たいか した類 るい を除 のぞ けば,口 くち と消化 しょうか 管 かん がある。原生動物 げんせいどうぶつ ,中 ちゅう 生 せい 動物 どうぶつ ,側 がわ 生 せい 動物 どうぶつ 以外 いがい のすべての動物 どうぶつ を含 ふく み,体制 たいせい がきわめて変化 へんか に富 と むが,放射 ほうしゃ 相称 そうしょう 動物 どうぶつ と左右 さゆう 相称 そうしょう 動物 どうぶつ に大別 たいべつ できる。
(1)体 からだ が放射 ほうしゃ 相称 そうしょう の動物 どうぶつ このような動物 どうぶつ を放射 ほうしゃ 相称 そうしょう 動物 どうぶつ という。腔腸動物 こうちょうどうぶつ 門 もん と有 ゆう 櫛 くし 動物 どうぶつ 門 もん からなり,もっとも原始 げんし 的 てき な真正 しんせい 後生 ごしょう 動物 どうぶつ で,この類 るい から残 のこ りのすべての類 るい が分 わ かれ出 で たのではないかと考 かんが えられている。〈腔腸動物 こうちょうどうぶつ 門 もん 〉は刺 とげ 胞動物 どうぶつ 門 もん ともいい,約 やく 9000種 しゅ よりなる。体 からだ が放射 ほうしゃ 相称 そうしょう で,体 からだ 壁 かべ は外 そと 胚葉 はいよう と内 うち 胚葉 はいよう の2層 そう からなり,内 うち 胚葉 はいよう に囲 かこ まれた原 はら 腸 ちょう が消化 しょうか 器官 きかん の腔腸となり,内 うち 胚葉 はいよう 細胞 さいぼう が細胞 さいぼう 内 ない 消化 しょうか を行 おこな う。腔腸は消化 しょうか のほか,呼吸 こきゅう や排出 はいしゅつ の作用 さよう もする。原口 はらぐち は成体 せいたい の口 くち となるが,肛門 こうもん はなく,中 ちゅう 胚葉 はいよう もない。しかし外 そと 胚葉 はいよう の円柱 えんちゅう 状 じょう の細胞 さいぼう の間 あいだ には,感覚 かんかく 細胞 さいぼう ,神経 しんけい 細胞 さいぼう ,刺 とげ 細胞 さいぼう などがある。海 うみ ,まれに淡水 たんすい に生息 せいそく し雌雄 しゆう 異体 いたい 。ヒドラ,イソギンチャク ,サンゴなどのように海中 かいちゅう の岩 いわ などに固着 こちゃく しているものと,クラゲのように浮遊 ふゆう 性 せい のものがある。クラゲの動 うご きを見 み れば明 あき らかなように,いくつかの筋肉 きんにく が統制 とうせい のとれた運動 うんどう をし,個体 こたい としてのまとまりがある。〈有 ゆう 櫛 くし 動物 どうぶつ 門 もん 〉はクシクラゲ 類 るい ともいい,約 やく 140種 しゅ よりなる。海 うみ 生 せい 。雌雄 しゆう 同体 どうたい で刺 とげ 細胞 さいぼう がなく,体 からだ が放射 ほうしゃ 相称 そうしょう でないが,その他 た の点 てん は腔腸動物 こうちょうどうぶつ によく似 に ている。
(2)体 からだ は左右 さゆう 相称 そうしょう となり,一定 いってい の方向 ほうこう に進 すす むのに適 てき する動物 どうぶつ 左右 さゆう 相称 そうしょう 動物 どうぶつ と呼 よ ばれ,前記 ぜんき 以外 いがい のすべての動物 どうぶつ を含 ふく み,中 ちゅう 胚葉 はいよう がある。体 からだ は相称 そうしょう 面 めん が一 ひと つしかない左右 さゆう 相称 そうしょう で,前後 ぜんご ,背 せ 腹 はら の別 べつ があり,前 ぜん 端 はし には感覚 かんかく 器官 きかん と口 くち が集 あつ まっていることが多 おお く(頭 あたま 化 か ),一定 いってい の方向 ほうこう に進 すす むのに適 てき している。ヒトデやウニの成体 せいたい は放射 ほうしゃ 相称 そうしょう であるが,幼生 ようせい は左右 さゆう 相称 そうしょう であるから,成体 せいたい の体型 たいけい は二 に 次 じ 的 てき に変形 へんけい したものと考 かんが えられる。扁 ひらた 形 がた 動物 どうぶつ を除 のぞ けばつねに口 くち と肛門 こうもん があり,消化 しょうか した食物 しょくもつ と未 み 消化 しょうか のものが消化 しょうか 管 かん のなかで混 こん じる不都合 ふつごう がない。左右 さゆう 相称 そうしょう 動物 どうぶつ は,発生 はっせい に際 さい して放射 ほうしゃ 相称 そうしょう 動物 どうぶつ と同 おな じ状態 じょうたい (囊胚)をかならず経過 けいか するので,後者 こうしゃ から分 わ かれて進化 しんか したものと考 かんが えられている。分 わ かれた時代 じだい は明 あき らかでないが,およそ10億 おく 年 ねん ほども昔 むかし であったろう。左右 さゆう 相称 そうしょう 動物 どうぶつ には,胚 はい の原口 はらぐち が成体 せいたい の口 くち となり,肛門 こうもん が別 べつ にできる旧 きゅう 口 くち 動物 どうぶつ と,成体 せいたい の口 くち が原口 はらぐち とは別 べつ に口 くち 陥 おちい から形成 けいせい され,肛門 こうもん が原口 はらぐち またはその付近 ふきん に形成 けいせい される新口 にのくち 動物 どうぶつ がある。これらは,それぞれ別個 べっこ に腔腸動物 こうちょうどうぶつ から分 わ かれ出 で て,互 たが いに異 こと なった方向 ほうこう に進化 しんか していったものと考 かんが えられる。
(1)旧 きゅう 口 くち 動物 どうぶつ 胚 はい の原口 はらぐち が成体 せいたい の口 くち になった類 るい で,先口 せんくち 動物 どうぶつ ともいう。多 おお くは中枢 ちゅうすう 神経 しんけい 系 けい が体 からだ の腹 はら 側 がわ にあるので,腹 はら 神経 しんけい 類 るい ともいう。環 たまき 形 がた 動物 どうぶつ ,軟体動物 なんたいどうぶつ ,節足動物 せっそくどうぶつ など多数 たすう の門 もん が含 ふく まれ,次 じ の2類 るい に大別 たいべつ できる。
体 からだ が前 ぜん 体 からだ ,中 ちゅう 体 からだ ,後 ご 体 からだ の3部 ぶ に分 わ かれないもの 骨格 こっかく がある場合 ばあい は,外 そと 骨格 こっかく である。これは細胞 さいぼう が分泌 ぶんぴつ した硬 かた い物質 ぶっしつ からなり,脊椎動物 せきついどうぶつ の骨 ほね のような生 い きた組織 そしき ではない。
(a)二 に 次 じ 体腔 たいこう がないもの 〈扁 ひらた 形 がた 動物 どうぶつ 門 もん 〉は寄生 きせい 生活 せいかつ のフタゴムシ,カンテツ,エキノコックス,ジョウチュウなどのほか自由 じゆう 生活 せいかつ のウズムシなど,約 やく 1万 まん 7000種 しゅ がある。体制 たいせい が簡単 かんたん で肛門 こうもん がない。外 そと 胚葉 はいよう と内 うち 胚葉 はいよう の間 あいだ に中 ちゅう 胚葉 はいよう からできた間 あいだ 充 たかし 織 お があり,そこにある隙間 すきま に血液 けつえき やリンパに似 に た働 はたら きをする体液 たいえき があるが,二 に 次 じ 体腔 たいこう (真 ま 体腔 たいこう )はない。血管 けっかん 系 けい がないかわり,盲 めくら 囊の腸 ちょう が体 からだ 全体 ぜんたい に広 ひろ がっていて栄養 えいよう を運 はこ ぶ。しばしば眼 め がある。雌雄 しゆう 同体 どうたい ,ときに異体 いたい 。〈曲 きょく 形 がた 動物 どうぶつ 門 もん 〉は内 うち 肛動物 どうぶつ ともいい,スズコケムシ約 やく 150種 しゅ よりなる。口 くち と肛門 こうもん ,排出 はいしゅつ 孔 あな ,生殖 せいしょく 孔 あな を囲 かこ む触手 しょくしゅ 冠 かんむり があり,有 ゆう 柄 え で多 おお くは群 ぐん 体 たい をつくって海 うみ や淡水 たんすい にすむ。〈紐 ひも 形 がた 動物 どうぶつ 門 もん 〉はヒモムシとも呼 よ ばれ,約 やく 1400種 しゅ よりなる。表皮 ひょうひ 筋肉 きんにく 層 そう と血管 けっかん があり,多 おお くは海産 かいさん (まれに淡水 たんすい や陸生 りくせい )で伸縮 しんしゅく 自在 じざい な吻(ふん)を長 なが くのばして獲物 えもの を捕食 ほしょく する。この2門 もん は扁 ひらた 形 がた 動物 どうぶつ に近 きん 縁 えん なものと思 おも われる。〈線形 せんけい 動物 どうぶつ 門 もん または袋 ふくろ 形 がた 動物 どうぶつ 門 もん 〉には寄生 きせい 生活 せいかつ のギョウチュウ ,カイチュウ,糸状 いとじょう 虫 ちゅう (フィラリア),センモウチュウ (旋毛 せんもう 虫 ちゅう ),ジンチュウ(腎 じん 虫 ちゅう )などのほか,海 うみ ,淡水 たんすい ,陸 りく で自由 じゆう 生活 せいかつ をするワムシ,イタチムシ,センチュウ(線 せん 虫 ちゅう )など約 やく 2万 まん 4000種 しゅ 。体 からだ は長 なが い紐 ひも 状 じょう で,クチクラの外 そと 甲 かぶと がある。腸 ちょう はまっすぐ体 からだ を貫 つらぬ き,肛門 こうもん が総 そう 排出 はいしゅつ 口 こう に終 お わり,体腔 たいこう は,扁 ひらた 形 がた 動物 どうぶつ の間 あいだ 充 たかし 織 お に見 み られる隙間 すきま が合一 ごういつ してできた一 いち 次 じ 体腔 たいこう で,真 しん の体腔 たいこう ではない。雌雄 しゆう 異体 いたい である。腔腸動物 こうちょうどうぶつ に近 ちか い原始 げんし 的 てき なものとも,また真 ま 体腔 たいこう 動物 どうぶつ が退化 たいか したものともいわれ,系統 けいとう がはっきりしない。イタチムシを腹 はら 毛 げ 動物 どうぶつ 門 もん ,ワムシを輪形 りんけい 動物 どうぶつ 門 もん ,ハリガネムシ を類 るい 線形 せんけい 動物 どうぶつ 門 もん ,トゲカワを動 どう 吻動物 どうぶつ 門 もん などと細分 さいぶん することが多 おお い。
(b)中 ちゅう 胚葉 はいよう で囲 かこ まれた二 に 次 じ 体腔 たいこう (真 ま 体腔 たいこう )ができ,体 からだ が曲 ま げやすくなっているもの 多 おお くは外套 がいとう (がいとう)膜 まく からの分泌 ぶんぴつ 物 ぶつ で形成 けいせい された殻 から があり,軟 やわ らかい体 からだ を保護 ほご する。〈軟体動物 なんたいどうぶつ 門 もん 〉は多 た 板 いた 類 るい (ヒザラガイ),腹足類 ふくそくるい (巻貝 まきがい ),掘 ほ 足 あし 類 るい (ツノガイ),二枚貝 にまいがい 類 るい (斧 おの 足 あし 類 るい ),頭 とう 足 あし 類 るい (イカ,タコ)など,海 うみ ,淡水 たんすい ,陸 ろく に生息 せいそく する約 やく 7万 まん 種 しゅ が含 ふく まれる。二枚貝 にまいがい 類 るい では頭部 とうぶ が退化 たいか しているが,他 た のものには頭部 とうぶ があり,そこに口 くち と重要 じゅうよう な感覚 かんかく 器官 きかん がある。開放 かいほう 血管 けっかん 系 けい があり,心臓 しんぞう は二 に 次 じ 体腔 たいこう (囲 かこえ 心 こころ 腔)に囲 かこ まれる。水生 すいせい のものはえらで呼吸 こきゅう するが,陸生 りくせい のものは外套 がいとう 膜 まく の一部 いちぶ が変化 へんか した肺 はい で呼吸 こきゅう する。雌雄 しゆう 異体 いたい ,または同体 どうたい 。多 おお くのものでは性 せい 細胞 さいぼう が囲 かこえ 心 こころ 腔の中 なか にあり,繊毛 せんもう ろうと(漏斗 ろうと )を通 とお って外 そと に出 で るが,この点 てん は環 たまき 形 がた 動物 どうぶつ に等 ひと しい。腎臓 じんぞう が腎 じん 管 かん であること,トロコフォラ に似 に た幼生 ようせい とらせん卵 たまご 割 わり が見 み られることも環 たまき 形 がた 動物 どうぶつ によく似 に ているので,これらは近 きん 縁 えん の関係 かんけい にあると考 かんが えられる。頭 あたま 足 あし 類 るい は,無 む 脊椎動物 せきついどうぶつ としての進化 しんか のほとんど頂点 ちょうてん に達 たっ している。すなわち,循環 じゅんかん 系 けい は大 だい 部分 ぶぶん が閉鎖 へいさ 的 てき で,食道 しょくどう を取 と り囲 かこ む大 おお きな脳 のう があり,眼 め はレンズ眼 め で,構造 こうぞう や性能 せいのう が脊椎動物 せきついどうぶつ の眼 め によく似 に ている。血管 けっかん 系 けい のない〈星 ほし 口 こう 動物 どうぶつ 門 もん 〉(ホシムシ 類 るい 約 やく 140種 しゅ ,海 うみ 生 せい )と,閉鎖 へいさ 血管 けっかん 系 けい をもつ〈ユムシ動物 どうぶつ 門 もん 〉(ユムシ 類 るい 約 やく 145種 しゅ ,海 うみ 生 せい )は,性 せい 細胞 さいぼう を運 はこ ぶ腎 じん 管 かん や幼生 ようせい の形態 けいたい から見 み て,軟体動物 なんたいどうぶつ と環 たまき 形 がた 動物 どうぶつ の中間 ちゅうかん に位置 いち するものと考 かんが えられる。
(c)二 に 次 じ 体腔 たいこう がある点 てん は軟体動物 なんたいどうぶつ に等 ひと しいが,体 からだ が体 からだ 節 ぶし に分 わ かれ,表面 ひょうめん が硬 かた い外 そと 骨格 こっかく でまもられていて,足 あし はあってもごく短 みじか いもの 〈環 たまき 形 がた 動物 どうぶつ 門 もん 〉はゴカイ,ミミズ,ヒルなど,約 やく 1万 まん 4000種 しゅ 以上 いじょう よりなる。海 うみ ,淡水 たんすい ,陸 りく で自由 じゆう 生活 せいかつ をするものが多 おお いが,寄生 きせい 性 せい のものもある。体 からだ は紐 ひも 状 じょう に長 なが く,体 からだ 節 ぶし に分 わ かれている。頭部 とうぶ 以外 いがい の体 からだ 節 ぶし は,互 たが いによく似 に ていて,それぞれに1対 つい の二 に 次 じ 体腔 たいこう と神経 しんけい 節 ぶし および腎 じん 管 かん がある。腸 ちょう はまっすぐな管 かん で,口 くち は頭部 とうぶ の腹 はら 側 がわ に,肛門 こうもん は体 からだ の後端 こうたん 部 ぶ にある。血管 けっかん 系 けい は完全 かんぜん に閉鎖 へいさ され,血液 けつえき 細胞 さいぼう には呼吸 こきゅう 物質 ぶっしつ (クロロクルオリン またはヘモグロビン )がある。前進 ぜんしん は,表皮 ひょうひ にある剛毛 ごうもう と,体側 たいそく 部 ぶ にあるいぼ状 じょう の足 あし (いぼ足 あし )で行 おこな う。雌雄 しゆう 異体 いたい または同体 どうたい 。ミミズは毛細管 もうさいかん で,ヒルは皮膚 ひふ で呼吸 こきゅう する。ゴカイにはレンズ眼 め をもったものがある。この類 るい は,外形 がいけい は顕著 けんちょ に異 こと なるが,軟体動物 なんたいどうぶつ に近 きん 縁 えん と考 かんが えられる。水辺 みずべ のコケの中 なか などにすむ微小 びしょう なクマムシ類 るい 〈緩 なる 歩 ふ 動物 どうぶつ 門 もん 〉(約 やく 110種 しゅ )は,つめを備 そな えた4対 つい のごく短 みじか い足 あし で歩 ある く。呼吸 こきゅう 器官 きかん や循環 じゅんかん 器官 きかん はない。陸生 りくせい の肉食 にくしょく 脊椎動物 せきついどうぶつ に寄生 きせい する〈舌 した 形 がた 動物 どうぶつ 門 もん 〉(シタムシ類 るい ,約 やく 60種 しゅ )も4対 つい の足 あし をもつが,そのうちの2対 つい はふつう退化 たいか する。これらは環 たまき 形 がた 動物 どうぶつ と節足動物 せっそくどうぶつ の中間 ちゅうかん のものであろう。熱帯 ねったい の湿地 しっち に生息 せいそく する〈有 ゆう 爪 つめ (ゆうそう)動物 どうぶつ 門 もん 〉(カギムシ類 るい ,120種 しゅ )は,目 め だった頭 あたま 節 ぶし がなく,体 からだ の分節 ぶんせつ が同質 どうしつ 的 てき で,いぼ足 あし に節 ふし がないなどの点 てん が環 たまき 形 がた 動物 どうぶつ に等 ひと しいが,いぼ足 あし の先端 せんたん にはつめがあり,体腔 たいこう が一 いち 次 じ と二 に 次 じ がいっしょになった混成 こんせい 体腔 たいこう で,キチン性 せい のクチクラ(外 そと 骨格 こっかく )をもち,原始 げんし 的 てき な気管 きかん があるなどの点 てん は節足動物 せっそくどうぶつ に等 ひと しく,後者 こうしゃ の祖先 そせん に近 ちか いものと考 かんが えられる。
(d)節 ふし のある長 なが い足 あし ができて歩行 ほこう が自由 じゆう になり,感覚 かんかく 器官 きかん が発達 はったつ するもの 〈節足動物 せっそくどうぶつ 門 もん 〉は体 からだ は体 からだ 節 ぶし の一部 いちぶ が合一 ごういつ して,頭部 とうぶ ,胸部 きょうぶ ,腹部 ふくぶ などとなり,足 あし (脚 あし )は長 なが くのびて多 おお くの可動 かどう 性 せい の節 ふし に分 わ かれ,先端 せんたん にはつめがあって歩 ある くのに適 てき する。体 からだ の表面 ひょうめん はキチン性 せい のクチクラでおおわれる(キチン骨格 こっかく )。心臓 しんぞう は長 なが い管状 かんじょう で,感覚 かんかく 器官 きかん としては,この類 るい に固有 こゆう の1対 つい の複眼 ふくがん が発達 はったつ するほか,たいてい単眼 たんがん や触角 しょっかく などがある。脳 のう は前 ぜん 大脳 だいのう ,中 ちゅう 大脳 だいのう ,後 ご 大脳 だいのう に分 わ かれる。触角 しょっかく とあごがない節 ふし 口 こう (せつこう)綱 つな (カブトガニ,約 やく 5種 しゅ ,海 うみ 生 せい ),蛛形(ちゆけい)綱 つな (サソリ,クモ,ダニなど,約 やく 8万 まん 5000種 しゅ ,陸生 りくせい )および皆 みな 脚 あし (かいきやく)綱 つな (ウミグモ,約 やく 1200種 しゅ ,海 うみ 生 せい ),対 たい をなしたはさみ状 じょう の上 うえ あご(大 だい あご)をもつ甲殻 こうかく 綱 つな (ミジンコ,フジツボ,エビ,カニなど,約 やく 4万 まん 8000種 しゅ ,海 うみ ,淡水 たんすい ,水辺 みずべ ),気管 きかん で呼吸 こきゅう し多数 たすう の脚 あし がある多 た 足 あし 上 じょう 綱 つな (ムカデ,ヤスデなど,1万 まん 3500種 しゅ ,陸生 りくせい ),同 おな じく気管 きかん で呼吸 こきゅう するが,脚 あし が3対 たい (6本 ほん )しかない昆虫 こんちゅう 綱 つな (約 やく 95万 まん 種 しゅ 以上 いじょう 100万 まん 種 しゅ を超 こ えるともいわれる)がある。昆虫 こんちゅう 類 るい は地上 ちじょう のあらゆる環境 かんきょう に進出 しんしゅつ し,その多 おお くが2対 つい の翅を獲得 かくとく して空中 くうちゅう にまで生活 せいかつ 圏 けん を広 ひろ げた。またシロアリ,アリ,ハチなどのように,社会 しゃかい 生活 せいかつ をするものも見 み られる。気管 きかん 系 けい は翅の中 なか にまで広 ひろ がり,全身 ぜんしん にくまなく酸素 さんそ を送 おく るが,そのかわり血管 けっかん 系 けい は退化 たいか している。節足動物 せっそくどうぶつ は,種類 しゅるい 数 すう において全 ぜん 動物 どうぶつ の半分 はんぶん ,あるいはそれ以上 いじょう を占 し め,海 うみ ,淡水 たんすい ,陸 りく のあらゆる環境 かんきょう に栄 さか えている。
体 からだ が前 ぜん 体 からだ ,中 ちゅう 体 からだ ,後 ご 体 からだ の3部 ぶ に分 わ かれるもの 細胞 さいぼう 内 ない にできた内 うち 骨格 こっかく が見 み られ,この点 てん は原始 げんし 的 てき な新口 にのくち 動物 どうぶつ に似 に ている。 と同 おな じく旧 きゅう 口 くち 動物 どうぶつ である。〈触手 しょくしゅ 動物 どうぶつ 門 もん 〉がこれに属 ぞく し,海 うみ 生 せい のホウキムシ類 るい (ホウキムシ綱 つな ,約 やく 10種 しゅ ),コケムシ類 るい (外 そと 肛綱,約 やく 5000種 しゅ )およびシャミセンガイ 類 るい (腕 うで 足 あし 綱 つな ,約 やく 380種 しゅ )を含 ふく む。これらはそれぞれ,別 べつ の門 もん とされることもあるが,どれも固着 こちゃく 性 せい の原始 げんし 的 てき な旧 きゅう 口 くち 動物 どうぶつ で,口 くち を取 と り巻 ま く触手 しょくしゅ の集 たか り(触手 しょくしゅ 冠 かんむり )の外側 そとがわ に肛門 こうもん がある。触手 しょくしゅ 冠 かんむり は,中 ちゅう 体 たい の上皮 じょうひ 細胞 さいぼう 中 ちゅう にできる軟骨 なんこつ 状 じょう の内 うち 骨格 こっかく で支 ささ えられる。後 こう 体 からだ は袋 ふくろ 状 じょう に管 かん または殻 から のなかにぶら下 さ がっている。繊毛 せんもう をもった触手 しょくしゅ は,食物 しょくもつ のプランクトンだけでなく,酸素 さんそ を含 ふく んだ水 みず をも口 くち に送 おく る。体 からだ が3部 ぶ に分 わ かれること,内 うち 骨格 こっかく ができる傾向 けいこう が見 み られることなどは原始 げんし 的 てき な新口 にのくち 動物 どうぶつ に等 ひと しいから,この類 るい は,旧 きゅう 口 くち 動物 どうぶつ と新口 にのくち 動物 どうぶつ の分岐 ぶんき 点 てん 近 ちか くに位置 いち するものと考 かんが えられる。最古 さいこ の化石 かせき は約 やく 6億 おく 年 ねん 前 まえ のカンブリア紀 き 下部 かぶ から知 し られるが,現在 げんざい と形態 けいたい がほとんど違 ちが っていない。
(2)新口 にのくち 動物 どうぶつ 胚 はい の原口 はらぐち が成体 せいたい の肛門 こうもん になり,口 くち が二 に 次 じ 的 てき にできる類 るい で,体 からだ は3部 ぶ に分 わ かれ,真 しん の体腔 たいこう (二 に 次 じ 体腔 たいこう )がある。骨格 こっかく ができる場合 ばあい は,生 い きている硬 かた い組織 そしき で形成 けいせい された内 うち 骨格 こっかく で,外 そと 骨格 こっかく はない。
血管 けっかん 系 けい がないもの ヤムシ類 るい 約 やく 110種 しゅ よりなる〈毛 もう 顎 あご 動物 どうぶつ 門 もん 〉は,体 からだ が左右 さゆう 相称 そうしょう で頭部 とうぶ ,胴 どう 部 ぶ ,尾 び 部 ぶ の3部 ぶ からなり,神経 しんけい 系 けい は腹 はら 側 がわ にあり,呼吸 こきゅう 器 き ,排出 はいしゅつ 器 き がない。胚 はい の原口 はらぐち の位置 いち に成体 せいたい の肛門 こうもん があるが,発生 はっせい は触手 しょくしゅ 動物 どうぶつ に似 に ている。ヒトデ,ウニ,ウミユリ,ナマコなど,約 やく 7400種 しゅ からなる〈棘皮動物 きょくひどうぶつ 門 もん 〉は,体 からだ が放射 ほうしゃ 相称 そうしょう であるが,腔腸動物 こうちょうどうぶつ の放射 ほうしゃ 相称 そうしょう とは違 ちが って二 に 次 じ 的 てき に変 か わったもので,幼生 ようせい には左右 さゆう 相称 そうしょう の時期 じき がある。外 そと 胚葉 はいよう の下 した にある結合 けつごう 組織 そしき 中 ちゅう に内 うち 骨格 こっかく がある。血管 けっかん 系 けい はなく,そのかわり呼吸 こきゅう ,循環 じゅんかん ,運動 うんどう に関係 かんけい した特有 とくゆう の水 みず 管 かん 系 けい がある。神経 しんけい 系 けい には中枢 ちゅうすう (脳 のう )がない。最古 さいこ の化石 かせき はカンブリア紀 き から知 し られる。
血管 けっかん 系 けい ができ,神経 しんけい 系 けい は背 せ 側 がわ にあるもの 〈有 ゆう 鬚 ひげ (ゆうしゆ)動物 どうぶつ 門 もん 〉はヒゲムシの類 るい ,約 やく 160種 しゅ 。体 からだ は3部 ぶ に分 わ かれ,前 ぜん 体 からだ に多数 たすう の触手 しょくしゅ があり,呼吸 こきゅう と食物 しょくもつ の摂取 せっしゅ をする。口 くち や腸 ちょう は発生 はっせい 初期 しょき にはあるが,後 のち になくなる。血管 けっかん 系 けい と心臓 しんぞう があり,神経 しんけい 系 けい は背 せ 側 がわ にある。体腔 たいこう は半 はん 索 さく 動物 どうぶつ と同 おな じく,各 かく 体 からだ 部 ぶ に分 わ かれている。ギボシムシなど約 やく 95種 しゅ からなる〈半 はん 索 さく 動物 どうぶつ 門 もん 〉は,体 からだ が前 ぜん 体 からだ (吻),中 ちゅう 体 たい (襟 えり ),後 こう 体 からだ (腹 はら または尾 お )の3部 ぶ に分 わ かれ,前 ぜん 体 からだ には無 む 対 たい の,中 ちゅう 体 からだ と後 こう 体 からだ にはそれぞれ1対 つい の体腔 たいこう がある。口 くち と腸 ちょう があり,呼吸 こきゅう は脊索 せきさく 動物 どうぶつ と同様 どうよう ,前 ぜん 腸 ちょう にできた鰓 えら 裂 きれ (さいれつ)で行 おこな う。血管 けっかん 系 けい と心臓 しんぞう があり,主部 しゅぶ は腹 はら 側 がわ に位置 いち し,神経 しんけい 系 けい は腹 はら 側 がわ にもあるが,主部 しゅぶ は背 せ 側 がわ のものである。
体 からだ の背 せ 側 がわ に体 からだ を左右 さゆう にくねらせて運動 うんどう するのに適 てき した脊索 せきさく ができるもの 〈脊索 せきさく 動物 どうぶつ 〉がこれに属 ぞく する。残 のこ りの動物 どうぶつ 全部 ぜんぶ を含 ふく む類 るい で,ホヤ,ナメクジウオからヒトまでが入 はい り,少 すく なくとも発生 はっせい の途中 とちゅう では次 つぎ のような特徴 とくちょう を示 しめ す。細胞 さいぼう でできた弾力 だんりょく 性 せい のある棒状 ぼうじょう の脊索 せきさく があって,中軸 ちゅうじく 骨格 こっかく の役 やく をする。脊索 せきさく の両側 りょうがわ には多数 たすう の筋 すじ 節 ぶし があり,これらを収縮 しゅうしゅく させ,体 からだ を左右 さゆう にくねらせて前進 ぜんしん する。しかし脊索 せきさく は,多 おお くの高等 こうとう な類 るい では,発生 はっせい の途中 とちゅう で脊椎 せきつい に置 お き換 か えられる。中枢 ちゅうすう 神経 しんけい は脊索 せきさく の背 せ 側 がわ にあり,中空 なかぞら ,管状 かんじょう で曲 ま げやすく変 か わっている。前 ぜん 腸 ちょう に鰓 えら 裂 きれ ,中 ちゅう 胚葉 はいよう で包 つつ まれた体腔 たいこう ,ほんとうの尾 お (肛門 こうもん より後 うし ろの部分 ぶぶん )がある。この類 るい は,このように多数 たすう の重要 じゅうよう な特徴 とくちょう を共有 きょうゆう するため,単一 たんいつ の門 もん 〈脊索 せきさく 動物 どうぶつ 門 もん 〉とされることがある。しかし,これらを二 ふた つの門 もん に分 わ ける見解 けんかい もあり,ここでは後者 こうしゃ に従 したが っておく。
(a)はっきりした頭 あたま がなく,体 からだ は胴 どう と舵 かじ 状 じょう の尾 お からなり,軟骨 なんこつ または硬骨 こうこつ の脊柱 せきちゅう や頭骨 とうこつ はないもの 〈原 はら 索 さく 動物 どうぶつ 門 もん 〉が含 ふく まれ,これに脊索 せきさく が幼生 ようせい の尾 お 部 ぶ にしかない被 ひ 囊(ひのう)亜 あ 門 もん と,脊索 せきさく が成体 せいたい にもあり,体 からだ の全長 ぜんちょう にわたっている頭 あたま 索 さく (とうさく)亜 あ 門 もん がある。被 ひ 囊亜門 もん はオタマボヤ,ホヤ,サルパの類 るい で,約 やく 2500種 しゅ があり,海 うみ 生 せい 。血管 けっかん は開放 かいほう 性 せい ,口 くち から入 はい った水 みず を鰓 えら 裂 きれ から体外 たいがい に出 だ し,呼吸 こきゅう をすると同時 どうじ にプランクトンをとらえて食 た べるろ過食 かしょく 者 しゃ である。雌雄 しゆう 同体 どうたい 。頭 あたま 索 さく 亜 あ 門 もん は無 む 頭 あたま 類 るい ともいい,ナメクジウオ約 やく 35種 しゅ がある。海 うみ 生 せい 。神経 しんけい 管 かん の前 ぜん 端 はし が広 ひろ がって脳 のう 胞となるが,これはほんとうの脳 のう ではない。赤血球 せっけっきゅう がない。前者 ぜんしゃ と同 おな じくろ過食 かしょく 者 しゃ であるが,雌雄 しゆう 異体 いたい で,眼 め 点 てん がある。
(b)軟骨 なんこつ または硬骨 こうこつ の脊柱 せきちゅう と頭骨 とうこつ ができて脳 のう を包 つつ み眼 め はレンズ眼 め で,ヘモグロビンを含 ふく んだ赤血球 せっけっきゅう ができて酸素 さんそ を運 はこ ぶ能率 のうりつ が高 たか まるもの 〈脊椎動物 せきついどうぶつ 門 もん 〉がこれに属 ぞく する。これには次 つぎ のような進化 しんか の段階 だんかい を異 こと にする現生 げんなま の綱 つな があり,これらは魚類 ぎょるい と四足 しそく 動物 どうぶつ の2上 じょう 綱 つな に整理 せいり される。なお魚類 ぎょるい と両生類 りょうせいるい は,胚 はい に羊 ひつじ 膜 まく ができないので一括 いっかつ して無 む 羊 ひつじ 膜 まく 類 るい と呼 よ ばれることがあり,ふつう体外 たいがい 受精 じゅせい である。爬虫類 はちゅうるい ,鳥類 ちょうるい ,哺乳類 ほにゅうるい の3綱 つな は,胚 はい が羊 ひつじ 膜 まく で保護 ほご されるので有 ゆう 羊 ひつじ 膜 まく 類 るい と呼 よ ばれ,終生 しゅうせい 空気 くうき 呼吸 こきゅう で,体内 たいない 受精 じゅせい である。鳥類 ちょうるい ,哺乳類 ほにゅうるい は恒温 こうおん 性 せい で,心臓 しんぞう は2心房 しんぼう 2心室 しんしつ よりなる。
(イ)魚類 ぎょるい 水生 すいせい でひれとえらがあり,脚 あし がない。そのうち無 む 顎 あご (むがく)綱 つな はヤツメウナギ など,約 やく 45種 しゅ からなる。海 うみ ,淡水 たんすい 生 せい であごがなく,鼻孔 びこう は1個 いっこ ,対 たい 鰭 ひれ (ついき)はない。原則 げんそく としてろ過食 かしょく 性 せい で,歯 は は表皮 ひょうひ 性 せい で角質 かくしつ 。以下 いか のものには可動 かどう 性 せい の上 うえ あごと下 した あごがあり,真皮 しんぴ 性 せい の歯 は をそなえ,鼻孔 びこう が2個 こ ,対 たい 鰭 ひれ が2対 たい ある。軟骨 なんこつ 魚 ぎょ 綱 つな はサメ,エイなど,約 やく 900種 しゅ からなる。海 うみ 生 せい で骨格 こっかく は軟骨 なんこつ 性 せい ,鰓 えら 蓋 ぶた (さいがい)がなく鰓 えら 裂 きれ が露出 ろしゅつ する。ろ過食 かしょく 性 せい でなく,おもに遊泳 ゆうえい 動物 どうぶつ を捕食 ほしょく する。硬骨魚 こうこつぎょ 綱 つな は,チョウザメ,ウナギ,アユ,シーラカンス ,肺魚 はいぎょ など,約 やく 2万 まん 4000種 しゅ が含 ふく まれる。前者 ぜんしゃ に似 に るが骨格 こっかく が硬骨 こうこつ に変 か わり,鰓 えら 蓋 ぶた がある。海 うみ から淡水 たんすい まで生息 せいそく 圏 けん を広 ひろ げている。
(ロ)四足 しそく 動物 どうぶつ 成体 せいたい は空気 くうき 呼吸 こきゅう で,四肢 しし をもち,あごがある。骨格 こっかく は硬骨 こうこつ 性 せい ,多 おお くは鼓膜 こまく がある。両生 りょうせい (棲)綱 つな はイモリ,カエル,アシナシイモリ など,約 やく 4500種 しゅ を含 ふく む。幼生 ようせい は淡水 たんすい 生 せい でえらで呼吸 こきゅう するが,成体 せいたい は多 おお くは陸生 りくせい で肺 はい で空気 くうき を呼吸 こきゅう し,対 たい 鰭 ひれ が四肢 しし に変 か わって陸上 りくじょう の歩行 ほこう に適 てき する。爬虫綱 つな はカメ,トカゲ,ヘビ,ワニなど,約 やく 6000種 しゅ からなる。多 おお くは陸生 りくせい だが,淡水 たんすい ,海 うみ にも生息 せいそく する。殻 から のある卵 たまご を陸上 りくじょう に産 う み,変 へん 温 ゆたか 性 せい 。中耳 ちゅうじ 小骨 こぼね は1個 いっこ ,体 からだ は表皮 ひょうひ 性 せい のうろこでおおわれる。鳥 とり 綱 つな は,ダチョウ,ペンギン,カモメ,キジ,スズメなど,約 やく 8600種 しゅ を含 ふく む。中耳 ちゅうじ 小骨 こぼね は1個 いっこ ,上 うえ あごと下 した あごが方 かた 骨 こつ (ほうこつ)と関節 かんせつ 骨 こつ で関節 かんせつ し,下 しも あごが数個 すうこ の骨 ほね でできているなど,爬虫類 はちゅうるい に似 に るが,前肢 ぜんし が翼 つばさ になり,皮膚 ひふ がうろこの変化 へんか してできた羽 はね でおおわれる。現生 げんなま のものには歯 は がない。卵生 らんせい で,巣 す をつくり,雛 ひな を育 そだ てる。哺乳 ほにゅう 綱 つな は,カモノハシ,カンガルー,サル,ウシなど,約 やく 4500種 しゅ よりなる。下 した あごは歯 は 骨 こつ だけでできていて,上 うえ あごの鱗 うろこ 骨 こつ (りんこつ)と関節 かんせつ する。方 かた 骨 こつ と関節 かんせつ 骨 こつ が加 くわ わって中耳 ちゅうじ 小骨 こぼね が3個 こ になり,内耳 ないじ の骨 ほね 性 せい 迷路 めいろ が蝸牛 かぎゅう 殻 から (かぎゆうかく)となり,コルチ器 き が発達 はったつ して,聴覚 ちょうかく が鋭 するど くなった。コウモリ,トガリネズミ ,イルカなどでは超 ちょう 音波 おんぱ を声帯 せいたい から発 はっ して方向 ほうこう 探知 たんち を行 おこな う。また,鼻腔 びこう (びこう)ができ,多 おお くのものでは嗅覚 きゅうかく (きゆうかく)が鋭 するど い。ほとんどのものが胎生 たいせい で,子 こ を乳腺 にゅうせん から分泌 ぶんぴつ する乳汁 にゅうじゅう で育 そだ てる。皮膚 ひふ には毛 け ,汗腺 かんせん ,臭 におい 腺 せん ができる。大脳 だいのう は体 からだ の大 おお きさに比 くら べきわめて大 おお きいだけでなく,記憶 きおく ,思考 しこう などの精神 せいしん 作用 さよう をつかさどる新 しん 皮質 ひしつ がその表面 ひょうめん をほとんどおおい,いわゆる知能 ちのう が高 たか い。歯 は が分化 ぶんか するなど,器官 きかん 系 けい が極度 きょくど に発達 はったつ し,体制 たいせい が動物 どうぶつ 中 ちゅう もっとも複雑 ふくざつ である。
脊椎動物 せきついどうぶつ は化石 かせき が多 おお く,系統 けいとう 発生 はっせい がほぼ完全 かんぜん に近 ちか いまで解明 かいめい されている。最古 さいこ の無 む 顎 あご 類 るい はオルドビス紀 き 前期 ぜんき に現 あらわ れ,これから絶滅 ぜつめつ した板 いた 皮 がわ (ばんぴ)綱 つな (あごがあり,体 からだ の前半 ぜんはん は骨質 こっしつ の甲 かぶと でおおわれる。骨格 こっかく の一部 いちぶ は骨質 こっしつ )がシルル紀 き に分 わ かれ,デボン紀 き に栄 さか えた。軟骨 なんこつ 魚類 ぎょるい と硬骨魚 こうこつぎょ 類 るい は,生 う まれたばかりの板 いた 皮 かわ 類 るい からシルル紀 き にほぼ同時 どうじ に分 わ かれたと推定 すいてい されるが,最古 さいこ の化石 かせき は硬骨魚 こうこつぎょ 類 るい がシルル紀 き 後期 こうき ,軟骨 なんこつ 魚類 ぎょるい はデボン紀中 きちゅう 期 き にならないと見 み られない。両生類 りょうせいるい はデボン紀 き 後期 こうき に,原始 げんし 的 てき な硬骨魚 こうこつぎょ 類 るい (肺魚 はいぎょ 類 るい )から分 わ かれ,爬虫類 はちゅうるい は石炭 せきたん 紀中 きちゅう 期 き に,原始 げんし 的 てき な両生類 りょうせいるい のセイモウリア から,鳥類 ちょうるい は三 さん 畳 じょう 紀 き 後期 こうき に,爬虫類 はちゅうるい の中 なか の恐竜 きょうりゅう とワニの共通 きょうつう の先祖 せんぞ から分 わ かれたと推定 すいてい されるが,最古 さいこ の化石 かせき はジュラ紀 じゅらき 後期 こうき に始祖 しそ 鳥 とり が見 み られるにすぎない。哺乳類 ほにゅうるい も三 さん 畳 じょう 紀 き 後期 こうき に爬虫類 はちゅうるい の中 なか の単 たん 弓 ゆみ 類 るい から分 わ かれ出 で たらしく,三 さん 畳 じょう 紀 き 末 まつ に最古 さいこ の哺乳類 ほにゅうるい エオゾストロドンが現 あらわ れている。しかし,単 たん 弓 ゆみ 類 るい は石炭 せきたん 紀 き 後期 こうき に早 はや くも他 た の爬虫類 はちゅうるい と分 わ かれて別個 べっこ の進化 しんか 経路 けいろ を取 と っているから,単 たん 弓 ゆみ 類 るい は原始 げんし 的 てき な哺乳類 ほにゅうるい だと考 かんが えることもできる。執筆 しっぴつ 者 しゃ :今泉 いまいずみ 吉 よし 典 のり
人間 にんげん と動物 どうぶつ いかなる民族 みんぞく も,さまざまの動物 どうぶつ を比喩 ひゆ に使 つか ってことわざや寓話 ぐうわ をつくりあげている。何 なに 種類 しゅるい もの動物 どうぶつ が登場 とうじょう する《イソップ物語 ものがたり 》がそのもっとも代表 だいひょう 的 てき な例 れい である。しかしそうした雑多 ざった な動物 どうぶつ イメージの使用 しよう になんらかの法則 ほうそく 性 せい はないものだろうか。ヨーロッパに関 かん する限 かぎ り一 いち 応 おう 次 じ のような傾向 けいこう 性 せい に基 もと づいて,動物 どうぶつ イメージが変化 へんか していったと考 かんが えることができる。すなわちまず鹿 しか のシンボルであり,次 つ いで羊 ひつじ のシンボル,それから牛馬 ぎゅうば のシンボルといった順序 じゅんじょ での変化 へんか である。そしてそれらのシンボルの移行 いこう は,ヨーロッパ人 じん が狩猟 しゅりょう 段階 だんかい から牧畜 ぼくちく 段階 だんかい ,次 つ いで農業 のうぎょう 段階 だんかい に移行 いこう したことに対応 たいおう する。つまり狩猟 しゅりょう 段階 だんかい には鹿 しか のイメージが,牧畜 ぼくちく 段階 だんかい には羊 ひつじ のイメージが,農業 のうぎょう 段階 だんかい には牛馬 ぎゅうば のイメージが対応 たいおう するわけである。
実際 じっさい ,デンマーク,ゴネスドロブの泥炭 でいたん の沼 ぬま から出土 しゅつど した銀 ぎん めっきの銅 どう の大 だい 鉢 はち にはいろいろの森 もり の動物 どうぶつ に囲 かこ まれて鎮座 ちんざ する〈角 かく のある神 かみ 〉がレリーフで描 えが かれているが,これは鹿 しか の角 かく をもつ神像 しんぞう であり,ケルト人 じん が崇拝 すうはい していたものである。またパリのノートル・ダム大 だい 聖堂 せいどう の真下 ました から発掘 はっくつ された祭壇 さいだん の石 いし にも,Cernunnos(ラテン語 らてんご で〈角 かく あるもの〉の意 い )の銘 めい とともに,やはり2本 ほん の鹿 しか の角 かく を生 は やした神像 しんぞう が刻 きざ まれている。そしてこれもキリスト教 きりすときょう 布教 ふきょう 以前 いぜん にケルト人 じん の間 あいだ で崇拝 すうはい されていた神 かみ の姿 すがた である。そしてこれらの有 ゆう 角 かく 神 しん は,ギリシア神話 しんわ の半 はん 獣 しし 神 しん パンなどのイメージと複 ふく 合 あわ しながら,やがてキリスト教 きりすときょう 文化 ぶんか の下 した で悪魔 あくま として零落 れいらく していくことになる。その場合 ばあい は鹿 しか とともに山羊 やぎ のイメージも付与 ふよ された。
次 つぎ にキリスト教 きりすときょう では好 この んで羊 ひつじ のシンボルが使 つか われる。羊 ひつじ は主人 しゅじん に従順 じゅうじゅん な動物 どうぶつ として,神 かみ およびキリストに信仰 しんこう をささげるキリスト教徒 きりすときょうと のシンボルとされる。しかしキリスト教 きりすときょう 文化 ぶんか 圏 けん では単 たん に羊 ひつじ を信者 しんじゃ のシンボルに使 つか うだけでなく,羊 ひつじ をめぐるさまざまのイメージ群 ぐん を総動員 そうどういん して,キリスト教 きょう 的 てき 世界 せかい の構造 こうぞう の総体 そうたい を表現 ひょうげん しようとする試 こころ みがなされた。すなわち,羊 ひつじ を信者 しんじゃ のシンボルとすれば,羊 ひつじ 飼 か いは信者 しんじゃ の保護 ほご をつとめとする聖職 せいしょく 者 しゃ ,そしてその聖職 せいしょく 者 しゃ に司 つかさ 牧 まき の任 にん を授 さづ けるキリストのシンボルとなる(善 よ き羊 ひつじ 飼 か い )。キリスト自身 じしん が小 しょう 羊 ひつじ にたとえられることもあり,〈神 かみ の小 しょう 羊 ひつじ Lamb of God〉はキリストの称号 しょうごう の一 ひと つである。また羊 ひつじ を守 まも る囲 がこ いは教会 きょうかい のシンボルとなった。さらにそうした羊 ひつじ に襲 おそ いかかって連 つ れ去 さ るオオカミは,キリスト教徒 きりすときょうと を教会 きょうかい から離脱 りだつ させ,異 こと なった教団 きょうだん へと誘惑 ゆうわく する異端 いたん のシンボルとなり,そうしたオオカミと身体 しんたい を張 は って戦 たたか い,羊 ひつじ 飼 か いおよび羊 ひつじ たちのために全力 ぜんりょく を尽 つ くす牧羊 ぼくよう 犬 けん は,異端 いたん 撲滅 ぼくめつ のための説教 せっきょう 修道 しゅうどう 士 し や十字軍 じゅうじぐん 戦士 せんし のシンボルとなった。そのもっとも典型 てんけい 的 てき な図像 ずぞう 表現 ひょうげん がフィレンツェ ,サンタ・マリア・ノベラのフレスコ画 が であろう。そこにはカタリ派 は に説教 せっきょう するドミニクスとともに,羊 ひつじ ,オオカミ,牧羊 ぼくよう 犬 けん が描 えが かれている。羊 ひつじ がキリスト教徒 きりすときょうと の,オオカミがカタリ派 は の,そして牧羊 ぼくよう 犬 けん がドミニコ会 かい 士 し の寓意 ぐうい であることはいうまでもない。
キリスト教徒 きりすときょうと はやがて羊 ひつじ だけでなく,子 こ 牛 うし を使 つか ってたとえられるようになる。16世紀 せいき ころのヨーロッパの絵本 えほん には,子 こ 牛 うし が牧場 ぼくじょう で跳 と びはねており,そこに天上 てんじょう から神 かみ の2本 ほん の手 て がのばされ,一方 いっぽう の手 て はむちをにぎり,もう一方 いっぽう の手 て は香油 こうゆ のつぼをもっているといったたぐいの図柄 ずがら がしばしば見受 みう けられる。これはむちによる懲 こ らしめと,香油 こうゆ による鎮痛 ちんつう ,癒(いや)しということを意味 いみ しており,キリスト教徒 きりすときょうと に対 たい する神 かみ の権威 けんい と慈愛 じあい の両方 りょうほう を象徴 しょうちょう したものである。このようにキリスト教徒 きりすときょうと をたとえるのに,羊 ひつじ よりは牛 うし が好 この んで使 つか われだしたということは,牛 うし のほうが羊 ひつじ より体 からだ も大 おお きくて力 ちから も強 つよ く,ときには反抗 はんこう 的 てき であることからみて,近代 きんだい における人間 にんげん の神 かみ に対 たい する自立 じりつ を暗示 あんじ しているのかもしれない。
次 つぎ にヨーロッパにおける馬 うま のもつイメージであるが,ヨーロッパ中世 ちゅうせい では馬 うま は一方 いっぽう では騎士 きし の乗物 のりもの であり,それゆえ力強 ちからづよ く,しかも高貴 こうき な存在 そんざい とされた。しかし他方 たほう では馬 うま は農民 のうみん ,とくに富農 ふのう の所有 しょゆう 物 ぶつ であり,犂 すき 耕 こう (りこう)に際 さい しては牛 うし に比 くら べてはるかにスピーディであり力 ちから においても勝 か っていた。それゆえ馬 ば はまた強力 きょうりょく なエネルギーのシンボルだったのである。さてこうした強力 きょうりょく な馬 うま は近代 きんだい の蒸気 じょうき 機関 きかん の出現 しゅつげん の結果 けっか 無用 むよう の存在 そんざい となる。とはいえ,蒸気 じょうき 機関 きかん のみならず電力 でんりょく を使 つか うモーターに至 いた るまでその出力 しゅつりょく が何 なに 馬力 ばりき (馬力 ばりき は文字 もじ どおり英語 えいご のhorse powerの直訳 ちょくやく )であるなどといわれるのは,人間 にんげん が馬 うま のエネルギーを使 つか っていたことの記憶 きおく からくるのである。西 にし ヨーロッパ世界 せかい は世界中 せかいじゅう で最初 さいしょ にしかもスムーズに農業 のうぎょう 社会 しゃかい から工業 こうぎょう 社会 しゃかい へと移行 いこう したのであるが,それは西 にし ヨーロッパの農業 のうぎょう が人力 じんりき に頼 たよ らず,牛馬 ぎゅうば の力 ちから に頼 たよ っていたからであり,蒸気 じょうき 機関 きかん の発明 はつめい は,牛馬 ぎゅうば よりももっと便利 べんり で強力 きょうりょく な動力 どうりょく 源 げん を見 み つけだそうとした努力 どりょく のあらわれだったといえよう。本来 ほんらい ,騎乗 きじょう を意味 いみ するrideや,家畜 かちく を追 お ったり馬車 ばしゃ を駆 か ることを意味 いみ するdriveが,自動車 じどうしゃ などにも使 つか われること,機関 きかん 車 しゃ をiron horse(鉄 てつ の馬 うま )ということなどにはその間 あいだ の事情 じじょう がうかがえる。なお,馬 うま はプラトンからS.フロイトに至 いた るまで情欲 じょうよく のシンボルとしても考 かんが えられてきた。仏教 ぶっきょう にも〈意馬心猿 いばしんえん 〉ということばがあって統制 とうせい しがたい私欲 しよく のたとえとする。
ヨーロッパ以外 いがい の地域 ちいき でも,狩猟 しゅりょう 生活 せいかつ ,牧畜 ぼくちく 生活 せいかつ ,農業 のうぎょう 生活 せいかつ に応 おう じて,それに対応 たいおう する動物 どうぶつ イメージが生 う まれてくる。例 たと えば中国 ちゅうごく では,狩猟 しゅりょう に関 かん しては,〈中原 なかはら に鹿 しか を逐(お)う〉という表現 ひょうげん があり,牧畜 ぼくちく に関 かん しては,〈民 みん を牧 まき するは羊 ひつじ を牧 まき すると異 こと ならず〉ということばがある。そして日本 にっぽん には〈牛馬 ぎゅうば の粉 こな 骨 こつ 〉といういい方 かた がある。しかし中国 ちゅうごく はともかくとして日本 にっぽん は過去 かこ において牧畜 ぼくちく になじみが薄 うす かったので,当然 とうぜん のこととして牧畜 ぼくちく イメージは皆無 かいむ に近 ちか い。そのかわり日本 にっぽん には狩猟 しゅりょう イメージが豊 ゆた かであり,鹿 しか や猪 いのしし は神格 しんかく 化 か されたり,使 つか わしめとなったりした。しかし鹿 しか や猪 いのしし のイメージも狩猟 しゅりょう 段階 だんかい から農業 のうぎょう 段階 だんかい に移 うつ るにつれて変化 へんか し,例 たと えば京都 きょうと 府 ふ 北桑田 きたくわだ 郡 ぐん の諏訪 すわ 神社 じんじゃ での御 ご 狩 かり の神事 しんじ では,神主 かんぬし や氏子 うじこ が実際 じっさい に狩 か りを行 おこな い獲物 えもの を神 かみ に供 そな えるのに対 たい し,京都 きょうと 市 し の松尾 まつお 神社 じんじゃ での追上 おいあ げの神事 しんじ は猪 いのしし や鹿 しか を里 さと から山 やま に追 お い返 かえ すだけのものとなっている。執筆 しっぴつ 者 しゃ :山下 やました 正男 まさお