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厚生経済学(コウセイケイザイガク)とは? 意味や使い方 - コトバンク

厚生こうせい経済けいざいがくみ)コウセイケイザイガク英語えいご表記ひょうき)welfare economics

翻訳ほんやくwelfare economics

デジタル大辞泉だいじせん厚生こうせい経済けいざいがく」の意味いみみ・例文れいぶん類語るいご

こうせい‐けいざいがく【厚生こうせい経済けいざいがく

社会しゃかい経済けいざいてき厚生こうせい分析ぶんせき対象たいしょうとし、経済けいざい政策せいさく理論りろんてき基礎きそあきらかにしようとする経済けいざいがくいち分野ぶんや創始そうししゃピグーで、主著しゅちょ厚生こうせい経済けいざいがく」の題名だいめい由来ゆらいする。

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こうせい‐けいざいがく【厚生こうせい経済けいざいがく

  1. 名詞めいし ( [英語えいご] Welfare Economics, Economics of Welfare の訳語やくご ) イギリス経済けいざい学者がくしゃピグーがいちきゅうねん発表はっぴょうしたちょ厚生こうせい経済けいざいがく」にもちいてから一般いっぱんしたことば。従来じゅうらい自由じゆう放任ほうにん主義しゅぎ経済けいざいがくたいして国民こくみん経済けいざいてき福祉ふくしあるいは厚生こうせい改善かいぜん基準きじゅんとして経済けいざい政策せいさく基礎きそ理論りろん展開てんかいする経済けいざいがくいち分野ぶんや

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日本にっぽんだい百科全書ひゃっかぜんしょ(ニッポニカ)厚生こうせい経済けいざいがく」の意味いみ・わかりやすい解説かいせつ

厚生こうせい経済けいざいがく
こうせいけいざいがく
welfare economics

厚生こうせい経済けいざいがくは、通常つうじょう、A・C・ピグーの主著しゅちょ厚生こうせい経済けいざいがくThe Economics of Welfare(1920)からはじまった経済けいざいがくいち分野ぶんやかいされているが、ピグーが同書どうしょ導出みちびきだした命題めいだいのかなりの部分ぶぶんは、とくに厚生こうせい経済けいざいがく銘打めいうつこともなく簡単かんたんかたちでだが、のA・マーシャルべているし、A・スミス以来いらい主要しゅよう経済けいざいがくのほとんどすべては、実質じっしつじょうおおかれすくなかれ厚生こうせい経済けいざいがくだ、と論者ろんしゃもいる。まただい世界せかい大戦たいせん以後いごになると、経済けいざい政策せいさく基礎きそ理論りろん規範きはんてき経済けいざいがく一般いっぱん厚生こうせい経済けいざいがくとよぶ傾向けいこうひろまっており、さらにK・J・アローはじまる社会しゃかいてき選択せんたく理論りろんや、1970ねん前後ぜんこう内外ないがいでほぼ市民しみんけん獲得かくとくしたとみてよい公共こうきょう経済けいざいがくpublic economicsをも厚生こうせい経済けいざいがくふくめるかかについても意見いけんかれており、現在げんざい厚生こうせい経済けいざいがくについてほぼだれもが承認しょうにんする定義ていぎは、社会しゃかい厚生こうせいないし福祉ふくしwelfareを問題もんだいにする経済けいざい分析ぶんせきという非常ひじょう漠然ばくぜんとした一般いっぱんてきなもの以外いがい、ないにひとしい。

 ピグーについていうと、かれ社会しゃかい厚生こうせい一般いっぱんのなかで直接ちょくせつ間接かんせつ貨幣かへい測定そくていできる部分ぶぶんを「経済けいざいてき厚生こうせい」とよび、両者りょうしゃ一般いっぱんただし(プラス)の相関そうかん関係かんけいがあるという想定そうていのもとに、国民こくみん分配ぶんぱいぶん国民こくみん所得しょとく)を中心ちゅうしん考察こうさつすすめ、生産せいさん分配ぶんぱい変動へんどう三面さんめんかんする有名ゆうめいな「厚生こうせい経済けいざいがくさん命題めいだい」を導出みちびきだした。このうち変動へんどうあつかった部分ぶぶんは『厚生こうせい経済けいざいがく』のだい2はん(1924)以降いこう独立どくりつの『産業さんぎょう変動へんどうろん』(1926)にうつされたため、以後いご厚生こうせい経済けいざいがくとしてはしずかがくめんだけがおもにろんじられるようになった。しかし、「条件じょうけんにしてひとしいかぎり、社会しゃかい経済けいざいてき厚生こうせい貧富ひんぷ懸隔けんかく減少げんしょうすればするほど増大ぞうだいする」という分配ぶんぱいかんするだい命題めいだいは、ピグーが暗黙あんもくうら想定そうていしていた効用こうよう基数きすうせい絶対ぜったいてきおおきさでの測定そくてい可能かのうせい)と効用こうよう個人こじんあいだでの比較ひかく可能かのうせい前提ぜんていがないかぎり、厳密げんみつには導出どうしゅつ不可能ふかのうだが、そのどちらの前提ぜんていもが経験けいけんてきには実証じっしょう不可能ふかのうであることが、1930年代ねんだい前半ぜんはんに、K・G・ミュルダール、より直接ちょくせつのきっかけとしてはL・C・ロビンズによって批判ひはんされた。以後いご厚生こうせい経済けいざいがくは、効用こうよう基数きすうせい仮定かていててじょすうてき効用こうよう概念がいねんをとり、また効用こうよう個人こじんあいだでの比較ひかく可能かのうせい仮定かてい必要ひつようとする分配ぶんぱい問題もんだいをほぼはなれて、生産せいさんめん分析ぶんせき限定げんていし、「パレート最適さいてき概念がいねん中心ちゅうしんに、補償ほしょう原理げんりなどを随伴ずいはんする、J・R・ヒックスやN・カルドアらが中心ちゅうしん通称つうしょうしん厚生こうせい経済けいざいがく」new welfare economicsの局面きょくめん移行いこうした。

 しん厚生こうせい経済けいざいがくは、当初とうしょ効用こうようかんするさきふたつの仮定かていてることによって価値かち判断はんだんから自由じゆうになったと想定そうていしていたようであるが、社会しゃかい経済けいざいてき厚生こうせいを、社会しゃかい構成こうせいしている個々人ここじん経済けいざいてき厚生こうせい総和そうわとみなすてんでは、依然いぜんとして価値かち判断はんだんふくんでおり、このてんが1930年代ねんだい末葉まつようからA・バーグソン(当時とうじはA・バークとしょうした)やP・A・サミュエルソンらの社会しゃかいまと厚生こうせい関数かんすうsocial welfare function構想こうそうともな研究けんきゅうによって徐々じょじょあきらかにされ、その延長線えんちょうせんじょうに、1951ねんにアローの一般いっぱん可能かのうせい定理ていり提出ていしゅつされるにおよんで、厚生こうせい経済けいざいがくは、一時いちじ、まったくまったかのかんていした。

 冒頭ぼうとういたように、現在げんざい厚生こうせい経済けいざいがくなにをさすかはひとによって一定いっていしていないし、今日きょう経済けいざい政策せいさくろんでは効率こうりつ公正こうせい関係かんけいわれたり、次善じぜん理論りろんろんじられたり、様相ようそうはかなり多様たようしているが、依然いぜんそこで中心ちゅうしんてき役割やくわりえんじているのはしん厚生こうせい経済けいざいがくかんがかた、ことに「パレート最適さいてき概念がいねんで、「すべての競争きょうそう均衡きんこうはパレート最適さいてきてんであり、すべてのパレート最適さいてきてん競争きょうそう均衡きんこうである」という命題めいだいが「厚生こうせい経済けいざいがく基本きほん定理ていり」とよばれている。また、公害こうがい分析ぶんせきなどで重要じゅうよう役割やくわりえんじている内部ないぶ外部がいぶ経済けいざいろん私的してき限界げんかいじゅん生産せいさんぶつ社会しゃかいてき限界げんかいじゅん生産せいさんぶつとの乖離かいり(かいり)などの問題もんだいは、マーシャルにはじまり、ピグーが展開てんかいしたかんがえの線上せんじょうのものである。

早坂はやさか ただし

『A・C・ピグーちょ永田ながたきよし監訳かんやく厚生こうせい経済けいざいがくぜん4さつ(1953~55・東洋経済新報社とうようけいざいしんぽうしゃ)』今井いまい賢一けんいちちょ価格かかく理論りろんⅡ』(1971・岩波書店いわなみしょてん)』岡野おかの行秀ゆきひで根岸ねぎしたかしへん公共こうきょう経済けいざいがく』(1973・有斐閣ゆうひかく)』あら憲治けんじろうへん経済けいざいがく2 厚生こうせい経済けいざいがく』(1976・有斐閣ゆうひかく)』熊谷くまがい尚夫ひさおちょ厚生こうせい経済けいざいがく』(1978・そうぶんしゃ)』

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改訂かいてい新版しんぱん 世界せかいだい百科ひゃっか事典じてん厚生こうせい経済けいざいがく」の意味いみ・わかりやすい解説かいせつ

厚生こうせい経済けいざいがく (こうせいけいざいがく)
welfare economics

規範きはん経済けいざいがくともばれ,所与しょよ価値かち判断はんだんらして経済けいざい組織そしき運行うんこう機能きのう評価ひょうかすることを課題かだいとする。経済けいざいがくのこの分野ぶんやはじめて体系たいけいてきあつかったA.C.ピグー主著しゅちょ厚生こうせい経済けいざいがく》(1920)の標題ひょうだいしたがって,厚生こうせい経済けいざいがくばれることがおおい。

 厚生こうせい経済けいざいがくは,特定とくてい価値かち判断はんだん提唱ていしょうないし主張しゅちょうするものではなく,考察こうさつあたいするとおもわれる所与しょよ価値かち判断はんだん帰結きけつしめすことがその課題かだいである。これまでに考察こうさつされた価値かち判断はんだんなか中心ちゅうしんてきなものはパレート改善かいぜん基準きじゅんである。どの個人こじん満足まんぞく水準すいじゅん低下ていかさせず,すくなくとも1人ひとり個人こじん満足まんぞく水準すいじゅんたかめる変化へんかをパレート改善かいぜんという。実現じつげん可能かのう資源しげん配分はいぶんで,もはやパレート改善かいぜん不可能ふかのうなものをパレート最適さいてきという。これは,資源しげんがむだなく効率こうりつてき使つかわれている状態じょうたいである。厚生こうせい経済けいざいがく確立かくりつした中心ちゅうしんてき命題めいだいひとつに,外部がいぶ経済けいざい外部がいぶ経済けいざい外部がいぶ経済けいざい外部がいぶ経済けいざい)あるいは公共こうきょうざいがない経済けいざいにおいて,完全かんぜん競争きょうそう市場いちば均衡きんこうとして達成たっせいされる資源しげん配分はいぶんはパレート最適さいてきであり,またぎゃくに,任意にんいのパレート最適さいてき完全かんぜん競争きょうそう市場いちば均衡きんこうとして達成たっせいできるという基本きほん定理ていりがある。現実げんじつ市場いちば完全かんぜん競争きょうそう厳密げんみつには成立せいりつしていないから,そのはたらきにまかせておけばパレート最適さいてき達成たっせいされるという必然ひつぜんせいはないが,完全かんぜん競争きょうそう状態じょうたいちかづけることによってパレート最適さいてきちかいものを実現じつげんしようとする経済けいざい政策せいさく根拠こんきょとなるものは,この基本きほん定理ていりである。しかし,この定理ていり成立せいりつ背後はいごには,外部がいぶ経済けいざい外部がいぶ経済けいざい公共こうきょうざい存在そんざいしないという大前提だいぜんていがある。放送ほうそうきょく放送ほうそうサービスや国家こっか国防こくぼうサービスのような公共こうきょうざい現実げんじつ存在そんざいし,外部がいぶ経済けいざい公害こうがいというかたちでもみることができる。したがって市場いちばにおける競争きょうそう完全かんぜんであってもパレート最適さいてき達成たっせいされる必然ひつぜんせいはなくなり,独占どくせんてき要素ようそ排除はいじょして競争きょうそう完全かんぜん状態じょうたいちかづけるという政策せいさく理論りろんてき根拠こんきょよわくなる。かりに上記じょうき大前提だいぜんてい満足まんぞくされたとしよう。この場合ばあいでも,ある産業さんぎょう完全かんぜん競争きょうそう成立せいりつせず,その状況じょうきょう変更へんこうできないものとしたとき,のこりの産業さんぎょうのありかたはどうあるべきかという問題もんだいがある。のこりの産業さんぎょうがどうあろうとも,厚生こうせい経済けいざいがく基本きほん定理ていりにより,パレート最適さいてき達成たっせい困難こんなんであろう。この場合ばあい問題もんだい次善じぜんsecond best問題もんだいばれ,そのかいのこりの産業さんぎょう完全かんぜん競争きょうそう成立せいりつせしめることとはことなることがられている。この主張しゅちょう次善じぜん定理ていりばれる。

 パレート最適さいてき達成たっせいがいくつかの理由りゆうさまたげられるとき,経済けいざい政策せいさく問題もんだいとしては,なんらかの改善かいぜん実行じっこうすることがかんがえられる。おおくの経済けいざい政策せいさく効果こうかはある個人こじんには有利ゆうり作用さようほか個人こじんには不利ふり作用さようするから,一般いっぱんにパレート改善かいぜん実行じっこうするものではない。したがってパレート改善かいぜんという価値かち判断はんだんだけにたよれば,経済けいざい政策せいさく可否かひ決定けっていできない場合ばあいおおい。そこで,この価値かち判断はんだんつぎのように拡張かくちょうすることがかんがえられた。ふたつの資源しげん配分はいぶんA,Bについて,Aを個人こじんあいださい分配ぶんぱいして資源しげん配分はいぶんCに到達とうたつしてCがBのパレート改善かいぜんとなるようにすることが可能かのうなとき,AがBよりいと判断はんだんするのである。このかんがかた補償ほしょう原理げんりばれるが,この原理げんりによれば,AがBより同時どうじにBがAよりいという矛盾むじゅんした判断はんだんしょうずることがあり,このままのかたちでは使つかえない。そこで,いくつかの変形へんけいされた補償ほしょう原理げんり提案ていあんされたが,成功せいこうしているとはいえない。

 厚生こうせい経済けいざいがく基本きほん定理ていり次善じぜん定理ていり補償ほしょう原理げんり関係かんけいする価値かち判断はんだん資源しげん配分はいぶん効率こうりつせいにかかわるものであるが,資源しげん配分はいぶん公正こうせいかんする価値かち判断はんだん考察こうさつ対象たいしょうとなる。ふるくから論議ろんぎされているものは個人こじんあいだ平等びょうどう配分はいぶん正当せいとうしようとするものであるが,十分じゅうぶん根拠こんきょいだすのは困難こんなんである。一般いっぱん価値かち判断はんだん表現ひょうげんする方法ほうほうとして,評価ひょうかすべき資源しげん配分はいぶんにそののぞましさにおうじて数値すうちてる社会しゃかいてき厚生こうせい関数かんすうという概念がいねんもちいられることがあるが,これを民主みんしゅてき手続てつづきしたがって構成こうせいすることは不可能ふかのうであるというK.J.アローの一般いっぱん可能かのうせい定理ていりられている。これは,厚生こうせい経済けいざいがく基礎きそ社会しゃかいてき価値かち判断はんだん形成けいせいには困難こんなんともなうことをしめしている。この定理ていり出発しゅっぱつてんとして社会しゃかいてき選択せんたく理論りろんばれる分野ぶんや発展はってんしている。
執筆しっぴつしゃ


厚生こうせい経済けいざいがく (こうせいけいざいがく)
The Economics of Welfare

ケンブリッジ学派がくは経済けいざい学者がくしゃピグー主著しゅちょ。1920年刊ねんかんだい4はん33年刊ねんかん功利こうり主義しゅぎ伝統でんとうけついで,社会しゃかいのすべての人々ひとびと効用こうよう総和そうわ最大さいだいにすることが経済けいざい政策せいさく目標もくひょうであるとみる立場たちばから,生産せいさん効率こうりつ分配ぶんぱい平等びょうどうのためのしょ政策せいさくろんじている。おもな内容ないようは,(1)福祉ふくし国民こくみん所得しょとくとの関係かんけい,(2)資源しげん配分はいぶん効率こうりつのための政策せいさく,(3)分配ぶんぱい平等びょうどう国民こくみん所得しょとくおおきさにおよぼす影響えいきょう,などである。このうち(2)に関連かんれんして,資源しげん投入とうにゅう私的してき生産せいさんせい社会しゃかいてき生産せいさんせいとの不一致ふいっち重要じゅうようされている。本書ほんしょだい1はんまえちょとみ厚生こうせいWealth and Welfare》(1912)を増補ぞうほしたものであるが,そのうち財政ざいせい景気けいき変動へんどうかんする部分ぶぶんはそれぞれべつ単行たんこうしょにゆずられて,だい2はん以降いこう本書ほんしょからははぶかれている。
執筆しっぴつしゃ

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百科ひゃっか事典じてんマイペディア厚生こうせい経済けいざいがく」の意味いみ・わかりやすい解説かいせつ

厚生こうせい経済けいざいがく【こうせいけいざいがく】

国民こくみん経済けいざい研究けんきゅうにおいて社会しゃかい経済けいざいてき厚生こうせい福祉ふくし)を中心ちゅうしん問題もんだいとする経済けいざいがく国民こくみんぶん配分はいぶん国民こくみん所得しょとく)の増加ぞうか平等びょうどう安定あんてい厚生こうせい増大ぞうだいさせるとしたピグー著書ちょしょ厚生こうせい経済けいざいがく》がそのはじまり。ざい効用こうよう厚生こうせいとしたピグーが批判ひはんされたのち社会しゃかいてき厚生こうせいたかめる最適さいてき経済けいざい組織そしき究明きゅうめいするヒックスらのしん厚生こうせい経済けいざいがくまれ,個人こじん効用こうよう社会しゃかいてき厚生こうせい関数かんすう導入どうにゅうされた。
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厚生こうせい経済けいざいがく
こうせいけいざいがく
The Economics of Welfare

イギリスの経済けいざい学者がくしゃ A.C.ピグー主著しゅちょで,厚生こうせい経済けいざいがく古典こてん。 1920年刊ねんかん。 A.マーシャルの経済けいざいがくもとづいて基数きすうてき効用こうよう個人こじんあいだ効用こうよう比較ひかく前提ぜんていとする厚生こうせい経済けいざいがく確立かくりつした。ピグーは実質じっしつ国民こくみん所得しょとく国民こくみん分配ぶんぱいぶんび,つぎの3つの規範きはんてき命題めいだい,すなわち (1) 事情じじょう不変ふへんならば,国民こくみん分配ぶんぱいぶん増大ぞうだい経済けいざいてき厚生こうせい増大ぞうだいする傾向けいこうがある,(2) 事情じじょう不変ふへんならば,国民こくみん分配ぶんぱいぶんのうち貧者ひんじゃぞくする部分ぶぶん増加ぞうかし,分配ぶんぱいがより平等びょうどうになるほど経済けいざいてき厚生こうせい増大ぞうだいする傾向けいこうがある,(3) 国民こくみん分配ぶんぱいぶん変動へんどうすくなくなるほど経済けいざいてき厚生こうせい増大ぞうだいする傾向けいこうがある,を判断はんだん基準きじゅんとして,それらを実現じつげんするように公共こうきょう政策せいさく提案ていあんした。

厚生こうせい経済けいざいがく
こうせいけいざいがく
welfare economics

さまざまな経済けいざい環境かんきょうにおいて最適さいてき状態じょうたいなにであるかを規定きていし,実際じっさい経済けいざい運営うんえいされているメカニズムがその最適さいてき状態じょうたい達成たっせいできるかか,達成たっせいできないときにはどのような政策せいさく必要ひつようか,などを分析ぶんせきする経済けいざいがくいち分野ぶんや。すなわち社会しゃかい厚生こうせい概念がいねん内容ないよう制約せいやくくわえて経済けいざい政策せいさく妥当だとうかどうかの基準きじゅん確立かくりつし,その応用おうよう企図きとする経済けいざいがくである。「かくあるべし」という規範きはん命題めいだい追究ついきゅうする学問がくもんであって,「こうである」という実証じっしょう命題めいだい追究ついきゅうする実証じっしょう経済けいざいがく positive economicsと対照たいしょうをなす。 J.ベンサムを起源きげんとし,ケンブリッジ学派がくはの A.ピグーが『厚生こうせい経済けいざいがく』 The Economics of Welfare (1920) で体系たいけいてき展開てんかいした。

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世界せかいだい百科ひゃっか事典じてん旧版きゅうばんうち厚生こうせい経済けいざいがく言及げんきゅう

【ケンブリッジ学派がくは】より

…マーシャルが主著しゅちょ経済けいざいがく原理げんり》(1890)を出版しゅっぱんしたのはこのような時期じきであったから,かれ資本しほん企業きぎょう労働ろうどうしゃという階級かいきゅうあいだ調和ちょうわてき発展はってん基本きほんてき関心かんしんけ,短期たんきでは労資ろうし対抗たいこう関係かんけいがあるようにみえるが,長期ちょうきでは〈国民こくみん分配ぶんぱいぶんnational dividend〉(国民こくみん所得しょとく同義どうぎ厚生こうせい経済けいざいがくてき使つかわれた)が増大ぞうだいするため,両者りょうしゃ調和ちょうわ可能かのうであるとかんがえたのである。これにたいし,マーシャルの後継こうけいしゃA.C.ピグーの《厚生こうせい経済けいざいがく》(1920)は,だい1大戦たいせん前後ぜんこうのイギリスの経験けいけんって理論りろん展開てんかいされている。…

【ピグー】より

著書ちょしょは30さつちかく,パンフレットや論文ろんぶんは100へんをこえる。かれたかめた《厚生こうせい経済けいざいがく》(1920,4はん1933)は,社会しゃかい経済けいざいてき厚生こうせいないし福祉ふくし最大さいだいにするという目標もくひょうからみて,自由じゆう市場いちば経済けいざいのはたらきはどこまで有効ゆうこうで,どこに欠陥けっかんをもつかをあきらかにし,それを是正ぜせいするための経済けいざい政策せいさく理論りろん展開てんかいしている。ピグーはまたはやくから労働ろうどう問題もんだい失業しつぎょう問題もんだい関心かんしんをいだいていたが,とくに《失業しつぎょう理論りろん》(1933)はケインズのはげしい批判ひはん対象たいしょうとなった。…

経済けいざい厚生こうせい】より

…とくに問題もんだいとなるのは,かく個人こじん効用こうよう総和そうわ経済けいざい厚生こうせいとする操作そうさ背後はいごにある,個人こじんあいだ効用こうよう比較ひかくできるという判断はんだんである。このようなピグーの厚生こうせい経済けいざいがく批判ひはんし,できるだけれられやすい価値かち判断はんだんだけにもとづいて,経済けいざい厚生こうせい最大さいだいかんがえるのがしん厚生こうせい経済けいざいがくである。すなわち,ひと効用こうようげんずることなしには,だれの効用こうようをも増加ぞうかしえない状態じょうたい最適さいてきとする基準きじゅん採用さいようするものであり,この結果けっか所得しょとく分配ぶんぱい問題もんだいはなされ,資源しげん配分はいぶん問題もんだいだけがあつかわれることになった。…

社会しゃかいてき厚生こうせい】より

…いかなる定義ていぎによろうとも,社会しゃかいてき厚生こうせい種々しゅじゅ経済けいざいてき経済けいざいてき要因よういん影響えいきょうけようが,とくに直接ちょくせつまたは間接かんせつ貨幣かへいという測定そくてい尺度しゃくど関連かんれんづけられる部分ぶぶんを,A.C.ピグー経済けいざいてき厚生こうせいんだ。経済けいざいてき厚生こうせい影響えいきょうする要因よういん研究けんきゅうし,それをできるかぎりたかめるための制度せいど政策せいさくのありかた考察こうさつするのが,厚生こうせい経済けいざいがくである。 ところで,個人こじん厚生こうせい定義ていぎするひとつの方法ほうほうは,それを個人こじん自発じはつてき選択せんたく行動こうどうむすびつけることである。…

【ロンドン学派がくは】より

…この代表だいひょうしゃとみなされているのはロビンズLionel Charles Robbins(1898‐1984)とF.A.vonハイエクである。ロビンズは処女しょじょさく経済けいざいがく本質ほんしつ意義いぎ》(1932)において,有名ゆうめいな〈経済けいざいがく希少きしょうせい定義ていぎ〉をあたえるとともに,そうことなる個人こじん基数きすうてき効用こうよう比較ひかく可能かのうせい前提ぜんていとするA.C.ピグーの〈きゅう厚生こうせい経済けいざいがく基礎きそきびしく批判ひはんした。厚生こうせい経済けいざいがくから分配ぶんぱいかんする〈科学かがくてき価値かち判断はんだん放逐ほうちくし,資源しげん配分はいぶん効率こうりつせい確保かくほにのみ科学かがくとしての厚生こうせい経済けいざいがく可能かのうせいみとめるN.カルドア,J.R.ヒックス,A.P.ラーナーらの〈しん厚生こうせい経済けいざいがくは,ロビンズによるこの批判ひはん契機けいきとして誕生たんじょうしたものである。…

※「厚生こうせい経済けいざいがく」について言及げんきゅうしている用語ようご解説かいせつ一部いちぶ掲載けいさいしています。

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